食品衛生行政の動き(国を中心に)2026年6月

株式会社 中部衛生検査センター 顧問 道野 英司

※URLは6月18日現在

1 令和8年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施

 厚生労働省は6月5日、都道府県等に対して7月1日から8月31日の間、令和8年度食品、添加物等の夏期一斉取締りを実施するよう通知しました。重点となる対象施設は、年間を通して食中毒の頻度が高いとして生食用、加熱不十分な食肉を提供している施設 、鶏肉を飲食店営業者に販売する施設などのほか、夏期に特に食中毒への注意が必要な施設として大量調理施設などとしています。

https://www.mhlw.go.jp/content/001708856.pdf

(東京都の夏期一斉取締り広報)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/05/2026052614


2 HACCP 衛生管理記録アプリの公開

 厚生労働省は6月5日、スマートフォンやタブレットの端末用のHACCP衛生管理記録アプリを公開するとともに、都道府県等に周知を依頼しました。小規模の飲食店などでHACCP導入の課題となっていた衛生管理の記録の負担を軽減し、取り組みを支援するとしています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73595.html


3 畜水産食品の残留有害物質等モニタリング検査実施など

 厚生労働省は6月4日、都道府県等に対し畜水産食品の残留有害物質等モニタリング検査の実施要領を通知するとともに、令和7年度の農産物、畜水産物の検査結果を報告するよう依頼しました。

https://www.mhlw.go.jp/content/001708353.pdf


4 ノロウイルスによる食中毒事例

 厚生労働省は6月1日、令和8年4月、5月報告分のノロウイルス食中毒の原因食品、患者数、発生要因等(事例番号195~270)について都道府県等に情報提供しました。

https://www.mhlw.go.jp/content/001707713.pdf


5 輸入食品に対する検査情報の更新


(検査命令実施通知)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72154.html

(モニタリング検査実施通知)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000201772_00009.html

(違反事例)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/ihan/index.html


6 消費者庁のQ&A策定・改正

 消費者庁は6月5日、 Q&Aの策定・改正についてホームページに掲載し、都道府県等に通知しました。

①「食品に用いる水のろ過等を行う設備に関するQ&A」の策定
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/notice/assets/standards_cms101_260605_01.pdf

➁「「食品用器具及び容器包装の製造に用いる合成樹脂の原材料としてのリサイクル材料の使用に関する指針」に関するQ&A」の改正
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/notice/assets/standards_cms101_260605_02.pdf

➂「 器具及び容器包装のポジティブリスト制度に関するQ&A」を改正
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/notice/assets/standards_cms101_260605_03.pdf


7 令和8年度第3回食品衛生基準審議会新開発食品調査部会

 消費者庁は6月9日、食品衛生基準審議会新開発食品調査部会を開催し、サプリメントの規制の在り方について、錠剤、カプセル剤等の食品の製造等にGMPの遵守を義務付けることが適当である等の中間とりまとめを行いました。
 サプリメント規制のあり方については、厚生労働省の厚生科学審議会食品衛生監視部会において引き続き議論されます。

https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/review_meeting_004/046447.html


8 牛海綿状脳症(BSE)国内対策の見直し(国内と畜牛に関するSRM範囲の変更)

 内閣府食品安全委員会は6月11日、国内と畜牛に関するSRM範囲の変更について、リスク評価結果をとりまとめ、厚生労働省に通知しました。
 現行の「全月齢の扁桃及び回腸遠位部並びに30か月齢超の頭部(舌、頬肉、皮及び扁桃を除く。)、脊髄及び脊柱」から「30か月齢超の頭部(舌、頬肉、皮及び扁桃を除く。)及び脊髄」に変更した場合のリスクの差は非常に小さく、食品を介した人への健康影響は無視できると考えられるとしました。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya15121848002


9 令和7年度 食品表示に関する消費者意向調査報告書

 消費者庁は5月21日、「令和7年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」を公表しました。本年1月に全国の満15歳以上の一般消費者6,050名を対象としたインターネットによるアンケート調査で、「食品表示」がどのようなものか知っていると回答した者の割合は76%、そのうち「商品選択に必要な情報は十分得られている」と回答した者の割合は75%でした。また、「機能性表示食品」を摂取した経験があると回答した者の割合は27%、「消費期限」の正しい説明を選択した者の割合は53%、「賞味期限」の正しい説明を選択した者の割合は54%でした。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2025/assets/food_labeling_cms201_260521_01.pdf


(解説)「令和7年度の食品リコールの状況」

 食料の価格高騰は継続しており、総務省が公表する消費者物価指数は2020年を基準年として本年4月で128まで上昇しています。また、フードロスの削減を推進する観点からも流通や消費の効率化が求められ、小売り店の発注のための需要予測の精度向上や値引き販売による売り切り、賞味期限の延長、フードバンクの活用、外食での食べ切りや食べ残しの持ち帰りなどの取り組みが進められています。
 こうした状況にあっても流通食品のリコール事例は後を絶ちません。最近ではニュースの見出しになるような大手企業の大規模な回収事例は見かけることが少なくなったように思いますが、スーパーマーケットのラベルの貼り間違い、加工食品の腐敗変敗事例や異物混入事例など回収事例は相当数に上っています。
 平成30年に食品衛生法と食品表示法が改正され、令和3年6月から食品リコール情報の届出が義務化されました。食品衛生法については腐敗変敗、異物混入、残留農薬基準超過など同法に違反する又はそのおそれがある食品を回収する場合、また食品表示法についてはアレルゲン、消費期限、加熱を要するかなど食品の安全性に重要な影響を及ぼす表示基準に適合しない食品を回収する場合、食品事業者は遅滞なく、回収の着手やその状況を都道府県等の食品衛生行政当局に届け出なければなりません。この制度は事業者による食品リコール情報を行政が確実に把握し、的確な監視や指導、消費者への情報提供につなげ、食品による健康被害の発生を防止することが目的で、先行していた欧米などの制度を参考にしています。
 食品リコールを実施する食品事業者が届け出る情報は、法人の名称、所在地、回収食品の商品名、一般名称、表示の内容、消費期限、回収の理由、販売先、販売日、販売数量、健康危害の発生の有無などです。厚生労働省のウェブのシステムを使用して届け出ると国、都道府県等の行政当局間で一元的に情報が管理され、消費者や流通業者などどなたでも入手することが可能となります。
 厚生労働省がとりまとめた令和7年度の届出情報の速報値によると、食品衛生法関連の総数は787件で、リコール理由の内訳はシール不良57.1%、異物混入14.5%、残留農薬基準超過9.7%、指定外添加物使用4.8%、規格不適合4.7%、有毒魚であるフグの混入2.0%でした。また、品目ごとでは、農産加工品241件(30.6%)、調理食品140件(17.7%)、畜産加工品97件(12.3%)、農産食品90件(12.2%)などで、加工品、調理食品では腐敗変敗や異物混入が最も多く、農産品では残留農薬基準超過が最も多いリコール理由でした。また、食べると重篤な健康被害や死亡の原因となり得る可能性が高い「CLASS I」に分類される事例は金属異物の混入、レトルト食品の殺菌不足など全体の14%でした。実際に報告された健康被害事例は、カビが生えた菓子による腹痛、フグが混入した加工水産製品による手足のしびれなどのふぐ中毒症状、金属異物が混入した油菓子で口の中をけがした事例でした。
 一方、消費者庁がとりまとめた令和7年度の食品表示法に基づく届出の状況は、総件数1,745件、うち主な理由はアレルゲン表示の不備975件(56%)、期限表示の不備649件(37%)で、その原因は表示管理システムへの誤入力や入力漏れ713件(41%)、貼り間違い672件(39%)、使用原材料の間違い107件(6%)、貼り忘れ74件(4%)でした。業種別ではスーパーマーケットが920件(53%)と最も多く、次いで製造業487件(28%)でした。品目別では調理食品741件(42%)、菓子類311件(18%)、水産物260件(15%)などでした。
 また、食べると重篤な健康被害や死亡の原因となり得る可能性が高い「CLASS I」に分類される事例は1,239件(71%)で、健康被害が実際に発生した32件では菓子類、調理食品、めん・パン類などのアレルギー表示の不備によるアナフィラキシーショック、湿疹、かゆみなどのアレルギー症状が多くを占めました。
 消費者庁では、製造業に対して最新の規格書、配合表と表示の照合、表示ラベルの取り違えが起きない作業環境の整備、出荷時の最終確認を求めています。ラベルの貼り間違いによるアレルゲン表示ミスの9割を占めるスーパーマーケットに対して、表示ラベルと仕様書(作成段階)、現物(貼付段階)、原材料・内容(陳列段階)の確認を複数人で行うよう求めています。