平成27年7月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 平成25年度野菜中のダイオキシン類の実態調査結果公表

平成27年7月1日、農林水産省消費・安全局は、平成25年度に野菜等に含まれるダイオキシン類の実態調査を行い、その結果を公表した。  農産物の汚染については、大気中の粒子などに結合したダイオキシン類が植物の上から降りかかること等が原因と考えられており、調査結果の概要は次のとおり。  農産物中のダイオキシン類濃度の経年変化を把握するため、環境影響を受けやすいと考えられる露地栽培の非結球葉菜類等(ほうれんそう、こまつな等)を前回調査した平成22年度の調査結果と比較したところ、統計的に有意な差は見られなかった。  ダイオキシン類は脂溶性であるため、農産物から摂取されるダイオキシン類の量は魚介類や肉に比べて非常に少ないことが過去のデータより知られており、今回、野菜類からのダイオキシン類摂取量をダイオキシン類濃度の高い品目のデータを用いて推定したが、ダイオキシン類の耐容一日摂取量と比較して百分の一未満と低かったため、野菜類から摂取されるダイオキシン類による健康リスクは小さいと考えられる。 (参考)食品からのダイオキシン類一日摂取量調査について  厚生労働省が平成25年度に実施した食品からのダイオキシン類一日摂取量調査(平成26年10月23日公表)では、我が国における農畜水産物を含む食品全体からのダイオキシン類の摂取量は0.58 pg-TEQ/kg体重/日で、耐容一日摂取量(4pg-TEQ/kg体重/日)より低いと報告されている。 1) 耐容一日摂取量(TDI: Tolerable Daily Intake) 人が生涯にわたり毎日摂取しても健康に悪影響が現れないと判断される一日当たりの摂取量。 2) pg(ピコグラム) 1兆分の1グラム 3) TEQ(毒性等量: Toxic Equivalent Quantity) ダイオキシン類は種類ごとに毒性の強さが異なるため、摂取したダイオキシン類の量は、種類ごとの毒性の強さを換算する係数を乗じて得た値を総和した値(毒性等量)として表示。 http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/150701.html2 インターネット等で販売される母乳に関する注意喚起  平成27年7月3日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部監視安全課長及び雇用均等・児童家庭局母子保健課長の連名で各都道府県等衛生主管部(局)長及び母子保健主管部(局)長宛に「インターネット等で販売される母乳に関する注意喚起の依頼について」通知した。その内容は次のとおり。  今般、母乳をインターネット上で売買している実態があるとの報道がありました。  既往歴や搾乳方法、保管方法等の衛生管理の状況が不明な第三者の母乳を乳幼児が摂取することは、病原体や医薬品等の化学物質等が母乳中に存在していた場合、これらに暴露するリスクや衛生面でのリスクがあります。  各自治体におかれましては、妊産婦訪問、新生児訪問、乳幼児健康診査等の保健指導の機会等や広報誌等の媒体を積極的に利用し、妊産婦や乳幼児の養育者に対して、こうしたリスクについて広く注意喚起方お願いします。  なお、貴管内において、母乳を販売している事業者を把握した際は、事業実態を確認の上、必要な指導を行うようお願いします。 (参考)母乳を通じて感染する可能性がある病原体の例 ・HIV(ヒト免疫不全ウイルス) ・HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/tyuuikanki.pdf3 欧州委員会(EC)保健衛生・食の安全総局(DG SANTE)が食品照射2013年度報告書を発行した旨公表  平成27年7月2日、食品安全委員会が公表した食品安全情報に次の情報があった。  欧州委員会(EC)保健衛生・食の安全総局(DG SANTE)は、6月12日、ECが食品照射2013年度報告書を発行した旨公表した。  この報告書はECから欧州議会と理事会に提出されるもので、2013年度(2013年1月1日~12月31日)においてイオン化放射線照射を使って処理された食品及び食品原料に関する報告書である。この報告書には、欧州連合(EU)加盟26ヶ国がECに提出した情報を編集したものが含まれている。マルタと2013年7月にEUに参加したクロアチアは2013年のデータを提出していない。概要は以下のとおり。  EU加盟13か国で承認を受けた放射線照射施設合計25か所のうち、同年中に照射が行われた国はベルギー、チェコ、ドイツ、エストニア、スペイン、フランス、オランダ、ハンガリー及びポーランドで、照射が行われなかった国はブルガリア、イタリー、ルーマニア及びイギリスであった。処理トン数の多い順ではベルギー(1ヶ所)で3399.3トン、オランダ(2ヶ所)で1678.6トン、スペイン(3ヶ所)で871.0トン、欧州全体での放射線照射食品は合計6876.2トンであった。放射線照射を受けた主な物品2品目は、冷凍カエルの脚(46.4%)と乾燥ハーブ・香辛料(24.4%)でその他乾燥野菜・果物、エビ、鶏肉等であった。分析した5713サンプルのうち5511サンプル(96.5%)は法令を遵守していたが、130サンプル(2.3%)が遵守しておらず、73サンプル(1.5%)が結果を出せない状態のものであった。遵守していない主な理由は、前年同様に不正表示と禁止された放射線照射であった。 参照リンクはこちら4 食中毒予防のポイント「バーベキューやピクニックでの食中毒」注意喚起  平成27年7月17日、食品安全委員会は、ホームページ「食中毒予防のポイント」を更新した。その内容は次のとおり。  夏は、レジャーやイベントなどで、外で調理、飲食する機会が増える季節です。その一方で、気温や湿度が高く、食中毒の原因となる細菌(腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌など)が増殖しやすい季節でもあります。十分気をつけて、以下の食中毒予防のポイントに注意し、楽しい季節を過ごしましょう。  生肉、生レバーなど(腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ属菌 )  生の魚介類など(腸炎ビブリオ ) ※豚肉(内臓、レバーなどを含む)、ジビエ(シカ肉、イノシシ肉など)は、特にE型肝炎ウイルスや寄生虫により肉の内部まで汚染されている可能性があるので、中心部まで十分に加熱して食べましょう。 「肉、魚介類には食中毒を起こす細菌、ウイルス、寄生虫が付いている可能性があること」 「生肉、生レバー、生魚介などの生ものに使用する箸やトングは生もの専用にすること」 「食べるためのお箸で生ものを触らないこと」 「よく焼けば細菌、ウイルス、寄生虫は死滅する。」 http://www.fsc.go.jp/sonota/e1_bbq_food_poisoning_e2.html5 と畜・食鳥検査等に関する実態調査の結果通知  平成27年7月17日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛にと畜・食鳥検査等に関する平成26年度実績の調査結果を取りまとめ通知した。その主な内容は次のとおり。 (1) 一般と畜場数、179施設、簡易と畜場数、5施設、 (2) と畜頭数は一般と畜場で、牛1,160,506頭、馬13,270頭、豚16,040,210頭、めん羊5,437頭、山羊3,324頭、簡易と畜場では、豚175頭、めん羊137頭 (3) 生食用馬レバーの加工基準に適合していると畜場及び出荷実績 自治体 と畜場名 出荷実績 福岡県 県南食肉センター ○ 福岡県 うきは市と畜場 ○ 熊本県 千興ファーム食肉センター ○ 熊本市 熊本市食肉センター ○ (4) と畜料金 平日平均手数料(円)牛8,866、豚2,290、馬8,483、めん羊2,073 (5) と畜検査手数料 平日平均手数料(円)牛806、豚340、馬803、めん羊・山羊225 (6) 規模別食鳥処理場数 大規模食鳥処理場149 処理羽数が年間30万羽以下の認定小規模食鳥処理場1,982 合計2,131 (7) 規模別処理羽数 大規模食鳥処理場744,706,831 認定小規模食鳥処理場23,916,313 合計768,623,144(内訳ブロイラー676,979,447、成鶏89,691,991、その他1,951,706) (8) 食鳥検査手数料 平均(円)ブロイラー4.25、成鶏4.25 (9) と畜場におけるHACCP導入状況(平成27年4月1日現在))牛138施設中、導入している27施設19.6%、導入する予定はない25施設18.1%、豚155施設中、導入している21施設13.5%、導入する予定はない36施設23.2% (10) 食鳥処理場におけるHACCP導入状況(平成27年4月1日現在) 大規模食鳥処理場、ブロイラー115施設中、導入している35施設30.4%、導入する予定はない11施設9.6%、成鶏45施設中、導入している2施設4.3%、導入する予定はない6施設13.0%、認定小規模食鳥処理場、ブロイラー842施設中導入している1施設0.1%、導入する予定はない755施設89.7%、成鶏445施設中、導入している0、導入する予定はない379 施設85.2% (11) と畜検査員及び食鳥検査員数 検査員の資格を持っている職員数 と畜検査員数2,685人、食鳥検査員数、総数3,256人(自治体職員3,003人、指定検査機関職員253人) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000091905.pdf6 乳に含まれるアフラトキシンM1 の取扱い通について通知  平成27年7月23日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部長名をもって各都道府県知事等に標記通知を出した。アフラトキシンを含有する食品については、「アフラトキシンを含有する食品の取扱いについて」(平成23年3月31日付け食安発0331第5号)に基づき、総アフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1 及びG2 の総和)が10μg/kgを超えて検出された食品は、食品衛生法第6条第2号に違反するものとして扱っているところである。  今般、薬事・食品衛生審議会における審議の結果、食品安全委員会の食品健康影響評価、国際動向及び国内流通品中の含有実態を踏まえ、乳中のアフラトキシンM1(以下「AFM1」という。)を、食品衛生法第6条第2号に基づき規制することは適当であるとの結論が得られたので次により取扱われることとなった。なお、適用期日は、平成28年1月23日からである。  AFM1を含有する食品の取扱い  AFM1が0.5μg/kg を超えて検出する乳は、食品衛生法第6条第2号に違反するものとして取り扱うこと。  ただし、乳とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26 年厚生省令第52 号)第2条第1項に規定するものをいう。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/20150723-1.pdf なお、同日試験法が通知されている。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/20150723-5.pdf7 食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正  平成27年7月29日、食品衛生法施行規則の一部を改正する省令(平成27 年厚生労働省令第126 号)及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成27 年厚生労働省告示第331 号)が公布されたことに伴い、厚生労働省は医薬食品局食品安全部長名をもって各都道府県知事等に運用通知を出した。 改正の概要は下記のとおりである。 (1) 省令関係 食品衛生法(以下「法」という。)第10 条の規定に基づき、アンモニウムイソバレレートを省令別表第1に追加したこと。 (2) 告示関係 1) ミネラルウォーター類、冷凍果実飲料及び原料用果汁以外の清涼飲料水のうち、原材料等に由来して当該食品中に存在し、かつ、発育し得る微生物を除去するのに十分な効力を有する方法で除菌を行ったものについても、十分な効力を有する方法で殺菌を行ったものと同様に10℃以下で保存しなければならないとする保存基準の対象外としたこと。 2) 非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品の成分規格であるサルモネラ属菌について、近年、硫化水素非産生性などの非定型の菌による食中毒が報告されていることから、非定型の菌についても規制対象とするよう改正を行ったこと。 なお、試験法は別途通知で示されている。 3) 法第11条第1項の規定に基づき、アンモニウムイソバレレートの成分規格を設定し、それに伴う所要の改正を行ったこと。また、同規定に基づき、「着香の目的以外に使用してはならない。」と使用基準を設定したこと。 4) 法第11条第1項の規定に基づき、グルコン酸亜鉛について、「特別用途表示の許可又は承認を受けた食品(病者用食品に限る。)に使用できる」旨及びケイ酸カルシウムについて、「適切な製造工程管理を行い、食品中で目的とする効果を得る上で必要とされる量を超えないものとする」旨の使用基準を改正したこと。また、ケイ酸カルシウムの使用基準の改正に伴い、二酸化ケイ素の使用基準を改正したこと。 (3) 施行・適用期日 省令関係及び告示関係は公布日から施行。ただし、告示関係の食肉製品のサルモネラ属菌に係る規格については、公布の日から6月以内に限り(平成28年1月29日)、なお従前の例によることができるとされている。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/syourei-kokuji-kaisei.pdf8 食品、添加物等の規格基準に定めるサルモネラ属菌及び黄色ブドウ球菌の試験法の改正  平成26年7月29日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部長名をもって各都道府県知事等に標記改正通知を出した。その内容は次のとおり。  食品、添加物等の規格基準(以下「告示」という。)に定めるサルモネラ属菌及び黄色ブドウ球菌の試験法について、国際整合性を図る観点から改正されたもので、具体的には、「食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について」(平成5年3月17日付け衛乳第54号。以下「平成5年通知」という。)及び「食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について」(平成10年11月25日付け生衛発第1674 号。以下「平成10年通知」という。)が次のとおり改正された。  なお、本通知は、平成28年1月29日から適用することとし、それまでの間、なお従前の例によることができることとしており、これに伴い告示改正されたサルモネラ属菌の従前の( )書きの削除は、実質平成28年1月29日から適用されることとなる。 (1) 平成5年通知のうち、別紙1を別添のとおり改めることによりサルモネラ属菌及び黄色ブドウ球菌の試験法が改正された。 (2) 平成10 年通知のうち、第2の2の(2)のア中「別紙に示す試験法により、」(殺菌液卵のサルモネラ属菌の試験法)を「平成5年3月17日付け衛乳第54 号に示す試験法により、」に改め、別紙を削除することにより、食肉製品のサルモネラ属菌試験法と同じ方法にした。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/sikenhou.pdf9 飲食店営業等に係る営業許可等について  平成27年7月29日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部監視安全課長名をもって各都道府県衛生主管部(局)長等に「規制改革実施計画」(平成27 年6月30 日閣議決定)を踏まえ、標記通知を出した。なお、本通知は、地方自治法第245条の4第1項の規定による技術的な助言であるとしており、その内容は次のとおり。 (1) 飲食店など複数の業種を営む場合の営業許可について  営業者が複数の業種を営む場合、一の施設が食品衛生法第52条に基づき都道府県知事が定めたそれぞれの業種に係る基準を満たし、公衆衛生上支障がないと認められる場合には、施設を業種毎に専用のものとしなくてもよく、一の施設に対して二つ以上の営業を許可することは差し支えないこと。また、これは新規の営業の許可を受ける場合だけではなく、既に営業を行っている営業者が追加で別の営業許可を受ける場合も同様であること。 (2) 臨時的に食品を提供する際の規制について  各都道府県等において、地域の実情に応じて実施している臨時的な食品提供に係る規制について、その考え方や許可要件に関する情報をホームページに掲載することにより営業者に分かりやすい形で公表すること。また、これらについて営業者に分かりやすく説明するよう努めること。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000092810.pdf