平成27年11月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 HACCPチャレンジ事業を立ち上げ

平成27年11月2日、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課HACCP企画推進室は、「HACCPチャレンジ事業」を立ち上げ、HACCPに取り組む事業者の参加募集を公表した。その主な内容は次のとおり。 我が国の食品衛生の更なる向上を図るためには、食品等事業者の皆様が自ら積極的に衛生管理に取り組むことが大変重要です。 厚生労働省では、世界的にも推奨されている食品の衛生管理手法である「 HACCP ( Hazard Analysis and Critical Control Point、 危害分析・重要管理点)」の普及を推進しています。本事業では、食品等事業者の皆様が自ら積極的に策定、実行している HACCP による衛生管理の取組を応援することにより、 HACCP 導入の輪を全国に広げるとともに、消費者をはじめ多くの方々に広く HACCP を知っていただきたいと考えています。 本事業では、本年11月下旬から HACCP に取り組む食品等事業者の方々の情報をウェブサイトで御覧いただけるようになります。本日から、本事業への参加者を募集しますので、参加方法等の詳細につきましては、別添の実施要領をご参照ください。 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000103039.html 「HACCPチャレンジ事業」実施要領 http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11135000-Shokuhinanzenbu-Kanshianzenka/0000103032.pdf2 平成27年度食品、添加物等の年末一斉取締りの実施通知 平成27年11月6日、厚生労働省は医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長名をもって各都道府県知事等宛に標記通知を出した。その主な内容は次のとおり。 食品衛生法第22条に基づく「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」第3の六により、食品流通量が増加する年末及び食中毒患者が最も発生する冬期における食中毒の発生防止を図るとともに、積極的に食品の衛生確保を図るため、全国一斉に標記取締りを行うこととした。 実施に当たっては、これまでの年末一斉取締りの結果を参考とし、冬期に食中毒患者が増加するノロウイルス食中毒の発生防止のため、大量調理施設に対する監視指導を重点的に行うとともに、腸管出血性大腸菌及びカンピロバクター等による食中毒の発生防止のための対策等について監視指導をお願いする。 実施期間は原則として、平成27年12月1日(火)から12月28日(月)までとしている。 全般的なこととして、「HACCP を用いた衛生管理についての自主点検票及び確認票について」で示した自主点検票等を活用するなどによりHACCPを導入するよう働きかけること。 食品への異物の混入については、健康被害につながるおそれが否定できない食品等の苦情を消費者等から受けた場合は、保健所等へ速やかに報告するよう指導することとしており、個別には、大量調理施設(弁当屋・仕出し屋、旅館、学校、病院等)においては、例年、ノロウイルスによる食中毒が発生しており、大規模な食中毒となる可能性が高いこと、これらの多くはノロウイルスに感染した調理従事者等が汚染源と推察されていることから、 ① 調理従事者の健康状態の把握及び下痢などの感染性疾患の症状がある調理従事者の調理等への従事の自粛 ② 調理等の前及び調理中、トイレの後の流水・石けんによる手洗い(1回では不十分な可能性があるので2回以上)の励行 ③ 調理施設及びトイレの清掃・消毒、特に手指の触れる場所及び調理器具の洗浄・消毒等について監視指導を行うこととしている。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000103538.pdf3 ヒラメの Kudoa(K.) septempunctata に係る食品健康影響評価の結果通知 平成27年11月10日、食品安全委員会は委員長名をもって厚生労働大臣及び農林水産大臣宛に標記について通知した。その要約は次のとおり。 ● ヒラメに寄生するK.septempunctataについては、クドア属粘液胞子虫の一種であり、食中毒の原因とされ、ヒトへの健康影響が報告されている。 ● 食中毒事例又は有症事例の中で、K.septempunctataの胞子数及び喫食量が報告された事例から、おおむね10の7乗個以上の胞子を摂取すると、下痢、おう吐を主体とする症状を呈するものと考えられた。 ● 2013年及び2014年の64件の食中毒事例の原因となったヒラメの産地等について、自治体による遡り調査が行われた結果、輸入養殖ヒラメが44件、国内産天然ヒラメが10件、国内産養殖ヒラメが1件、非公表が2件及び産地不明が7件であった。 ● 2012年に農林水産省が国内のヒラメ養殖場におけるK.septempunctataの食中毒防止対策を通知しており、2013年以降、国内産養殖ヒラメを原因とする食中毒の件数は極めて少ないことから、国内の養殖場等における食中毒防止対策は有効であると推察された。 ● このため、生産段階において、ヒラメをK.septempunctataに感染させない対策を取ることがヒトのリスクを低減させるためには重要であると考えられた。 ● 複数の疾病や危険因子に起因する死亡と障害に対する負荷を比較しうる形で総合的に定量化するための指標として国際的に用いられている障害調整生存年(disability-adjusted life years : DALYs)の試算結果によると、K.septempunctata のDALYsはカンピロバクター属菌又はノロウイルスのDALYsと比較すると値は極めて小さく、疾病負荷は著しく低いと考えられる。リスク管理機関においては、DALYsの試算結果を前提としつつ、取りうる対策について検討することが望まれる。 https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya201511108624 亜塩素酸ナトリウムに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集 平成27年11月11日、内閣府食品安全委員会事務局評価第一課は、厚生労働大臣から諮問のあった標記審議結果(案)がまとめられたことから、広く意見・情報を募ることとした。提出期限平成27年12月10日。審議結果(案)の主な点は次のとおり。 評価に用いた試験成績は、亜塩素酸ナトリウム及び塩素酸ナトリウム等を被験物質とした遺伝毒性、反復投与毒性、発がん性、生殖発生毒性、ヒトにおける知見等に関するものである。 添加物「亜塩素酸ナトリウム」は、溶液のpHの状態により、塩化物イオン(Cl-)、塩素酸イオン(ClO₃-)、二酸化塩素(ClO₂)、亜塩素酸イオン(ClO₂-)に解離し、溶液中に存在する可能性があり、クエン酸、リン酸等により酸性化した亜塩素酸ナトリウム(Acidified Sodium Chlorite;ASC)においては、亜塩素酸イオン(ClO₂-)から亜塩素酸(HClO₂)が生成され、続いて、亜塩素酸イオン(ClO₂-)、塩素酸イオン(ClO₃-)、二酸化塩素(ClO₂)、塩化物イオン(Cl-)が生成される。 今般の添加物「亜塩素酸ナトリウム」の使用基準改正は、ASCとして使用することを要請するものとしている。 添加物「亜塩素酸ナトリウム」の安全性を評価するにあたっては、亜塩素酸イオン及び塩素酸イオンの安全性を評価することが適当であると考え、いずれも安全性に懸念がないと考えた。 使用基準の改正の概要 今般の使用基準改正は、ASCとして使用することを前提としており、厚生労働省の案は次の下線部文のとおり。 亜塩素酸ナトリウムは、かずのこの加工品(干しかずのこ及び冷凍かずのこを除く。)、かんきつ類果皮(菓子製造に用いるものに限る。)、さくらんぼ、生食用野菜類、食肉及び食肉製品、卵類(卵殻の部分に限る。以下この目において同じ。)、ふき、ぶどう及びもも以外の食品に使用してはならない。 亜塩素酸ナトリウムの使用量は、亜塩素酸ナトリウムとして、かずのこの加工品(干しかずのこ及び冷凍かずのこを除く。)、生食用野菜類及び卵類にあっては浸漬液1 kgにつき0.50 g以下、食肉及び食肉製品にあっては浸漬液又は噴霧液1 kgにつき0.50~1.20 gでなければならない。また、使用した亜塩素酸ナトリウムは、最終食品の完成前に分解し、又は除去しなければならない。 亜塩素酸ナトリウムは、食肉及び食肉製品に使用するとき、pH2.3~2.9の浸漬液又は噴霧液を30秒以内で使用しなければならない。 http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_tenkabutu_sodiumchlorite_271111.html http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_tenkabutu_sodiumchlorite_271111.data/pc1_tenkabutu_sodiumchlorite_271111.pdf5 人の健康を損なうおそれがないことが明らかな物質の指定 平成27年11月11日、厚生労働省は医薬・生活衛局生活衛生・食品安全部長名をもって各都道府県知事等宛に「食品衛生法第11条第3項の規定により人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質の一部を改正する件について」通知した。その主な内容は次のとおり。 食品衛生法第11条第3項の規定により人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質の一部を改正する件(平成27年厚生労働省告示第435号)が本日公布され、これにより食品衛生法第11条第3項の規定により人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(平成17年厚生労働省告示第498号)の一部が改正され、新たにイタコン酸、カルシフェロール及び25-ヒドロキシコレカルシフェロール、L-カルニチン、グリセリン酢酸脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルが追加されたこと。 なお、施行・適用期日は公布日から適用されるものである。 また、法に基づく対象外物質の指定にあわせ、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づくイタコン酸、グリセリン酢酸脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルに係る新規農薬登録並びに飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)に基づく25-ヒドロキシコレカルシフェロール及びL-カルニチンの指定並びに基準及び規格の設定が農林水産省において行われること。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000104097.pdf6 食品表示の適正化に向けた取組について 平成27年11月24日、消費者庁表示対策課食品表示対策室は、食品の流通量が増加する年末において、食品の表示・広告の適正化を図るため、都道府県等と連携し、食品表示法、景品表示法及び健康増進法の規定に基づき下記の取組を実施することを公表した。その主な点は次のとおり。 (1)年末一斉取締りの実施について 国及び都道府県等においては、食品の流通量が増加する年末において、食中毒などの健康被害の発生を防止するため、従来から食品衛生の監視指導を強化してきたところですが、例年どおり、この時期に合わせ、食品等の表示の信頼性を確保する観点から、食品表示の衛生・保健事項に係る取締りの強化を全国一斉に実施します(別紙1)。 1) 実施時期:平成27 年12 月1日から同月31 日まで 2) 主な監視指導事項 ア アレルゲン、期限表示等の衛生・保健事項に関する表示 イ 保健機能食品及びいわゆる健康食品の表示 ウ 道の駅や産地直売所における表示 エ 食中毒等の健康被害事案に係る原産地表示調査等の関係機関の連携 オ 新たな食品表示基準に基づく表示方法の普及・啓発 (2)表示の適正化等に向けた重点的な取組について 国及び都道府県等においては、食品表示の適正化を図るため、従来から食品表示法や景品表示法等に基づく各種通知、「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(平成25 年12 月24 日消費者庁公表、平成26 年1月13 日一部改定)等により、監視指導を実施してきたところです。今般、近年のいわゆる健康食品の不適正表示の実態等を踏まえ、年末一斉取締りに当たっては、改めて、次のとおり監視指導とともに、啓発活動を実施します。 2) 主な監視指導事項 ア 保健機能食品と紛らわしい名称等の適正化 イ 保健機能食品の表示の適正化 ウ バランスのとれた食生活の普及啓発 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1485.pdf7 不当景品類及び不当表示防止法施行規則(案)等に関する意見募集 平成27年11月25日、消費者庁表示対策課は、「不当景品類及び不当表示防止法施行規則(案)」及び「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方(案)」に関する意見募集を開始した。その主な内容は次のとおり。 (1) 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)への課徴金制度導入等を内容とする不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成26年法律第118号)が平成26年11月19日に成立し、同月27日に公布。同法は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されるが、施行日に関する政令は公布されていない。 同法の施行に伴い、課徴金対象行為に該当する事実の報告方法及び返金措置に関する計画の認定申請に係る手続の詳細を定める等、不当景品類及び不当表示防止法施行規則を制定する必要があるため。 (2) 不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方(案)において、課徴金額の算定の基礎となる「売上額」、「相当の注意を怠った者でないと認められる」か否か等についての考え方を示すことを予定している。 このため、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方(案)」を定めようとするものである。 この中で、本法上の「表示」及び優良・有利誤認表示として次のように記されている。 本改正法は、優良・有利誤認表示に関する従来の規定を変更したものではないが、本改正法の施行に伴い、事業者が優良・有利誤認表示をする行為をしたとき、消費者庁長官は、その他の要件を満たす限り、その行為をした事業者に対し、課徴金の納付を命じなければならなくなることを踏まえ示すものである。 ア 本法上の「表示」 本法上の「表示」とは、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示」(本法第2条第4項)であり、具体的には、次に掲げるものをいう(昭和37 年公正取引委員会告示第3号)。 ① 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示 ② 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。) ③ ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似する物による広告及び陳列物又は実演による広告 ④ 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声器による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告 ⑤ 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。) このように、事業者が商品又は役務の供給の際に顧客を誘引するために利用するあらゆる表示が本法の「表示」に該当し、容器や包装上のものだけではなく、パンフレット、説明書面、ポスター、看板、インターネットを始めとして、その範囲は広範に及ぶ。口頭によるものも「表示」に該当する。 イ 優良・有利誤認表示 ① 本法第5条第1号及び第2号の規定 本法第5条は、事業者に対し、「自己の供給する商品又は役務の取引」について、同条第1号から第3号までのいずれかに該当する表示をしてはならない旨を定めているところ、優良・有利誤認表示に関する同条第1号及び同条第2号の規定は次のとおりである。 本法第5条は、事業者に対し、「自己の供給する商品又は役務の取引」について、同条第1号から第3号までのいずれかに該当する表示をしてはならない旨を定めているところ、優良・有利誤認表示に関する同条第1号及び同条第2号の規定は次のとおりである。 〔本法〕 (不当な表示の禁止) 第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。 一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 三 (略) ② 優良・有利誤認表示の意義等 本法の不当な表示に関する規制は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による適正な商品又は役務の選択を確保することを目的として行われるものである。このため、特定の表示が「著しく優良であると示す」表示(又は「著しく有利である」と「誤認される」表示)に該当するか否かは、業界の慣行や表示をする事業者の認識により判断するのではなく、表示の受け手である一般消費者に、「著しく優良」(又は「著しく有利」)と誤認されるか否かという観点から判断される。また、「著しく」とは、当該表示の誇張の程度が、社会一般に許容される程度を超えて、一般消費者による商品又は役務の選択に影響を与える場合をいう。すなわち、優良誤認表示(又は有利誤認表示)とは、一般消費者に対して、社会一般に許容される誇張の程度を超えて、特定の「商品又は役務」の内容(又は取引条件)について、実際のもの等よりも著しく優良であると示す表示(又は著しく有利であると誤認される表示)である。このような表示が行われれば、一般消費者は、商品又は役務の内容(又は取引条件)について誤認することとなる。 なお、「著しく優良であると示す」表示(又は「著しく有利である」と「誤認される」表示)か否かの判断に当たっては、表示上の特定の文言、図表、写真等から一般消費者が受ける印象・認識ではなく、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となり、その際、事業者の故意又は過失の有無は問題とされない。 http://www.caa.go.jp/representation/pdf/151125premiums_1.pdf