平成28年2月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 食品安全の明日をともに考える国際シンポジウムの開催と参加者募集

平成28年2月16日、内閣府食品安全委員会事務局は標記シンポジウムの開催と参加者募集を公表した。 その内容は、「リスク(健康への悪影響が発生する確率と影響の程度)」とは「ある」「ない」という絶対的なものではなく、確率で表現される不確かさをもった概念であり、私たちは数多くのリスクと常に共存しています。しかしながら、生存のための危機回避という人間の本能的な能力のために、私たちはリスクに敏感で、客観的に理解するのは難しいものです。 そこで、WHO(世界保健機関)の専門家をお招きし、世界における食品安全の現状・動向と日本に対する期待という視点から御講演いただくとともに、これからの食品安全はどうあるべきかなどについて、各分野の有識者の方々とパネルディスカッションを行うとしている。 ・開催日時:平成28年3月18日(金)14:00〜17:00 ・応募締切日時:平成28年3月11日(金)17:00 ・主な内容 基調講演 「世界における食品安全の現状・動向と日本に対する期待」 WHO(世界保健機関)食品安全・人畜共通感染症部長 宮城島 一明 パネルディスカッション、テーマ「食品安全の明日」 http://www.fsc.go.jp/koukan/annai/tokyo_risk_annai280318.html2 加熱時に生じるアクリルアミドに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)の意見・情報の募集 平成28年2月17日、内閣府食品安全委員会事務局評価第一課は「加熱時に生じるアクリルアミド評価書(案)」について意見・情報の募集を公表した。評価書(案)の概要は次のとおり。 なお、締切日時は、平成28年3月17日(木)17:00必着となっている。 食品中のアクリルアミドは、食品の原材料に含まれているアミノ酸の一種であるアスパラギンが、揚げる、焼く、焙るなどの120 ℃以上の加熱により、果糖、ブドウ糖等の還元糖とアミノカルボニル反応(メイラード反応)と呼ばれる化学反応を起こす過程で生成することが知られ、これが主な生成経路であると考えられている。 発がん性については、マウスではハーダー腺、乳腺、肺、前胃等で、またラットでは乳腺、甲状腺、精巣等で発がん頻度の有意な増加がみられている。遺伝毒性については、in vitro試験及びin vivo試験の多くの試験で陽性であった。したがって、アクリルアミドは遺伝毒性を有する発がん物質であると判断した。 日本人における食事由来のアクリルアミド摂取による非発がん影響について、一定のばく露マージンが確保されていることから極めてリスクは低いと判断した。また、発がん影響のリスクについては、疫学研究において、職業性ばく露等の高ばく露集団も含め、アクリルアミドばく露量とがんの発生率との関連に一貫した傾向はみられていないことから、ヒトにおける健康影響は明確ではないが、動物実験から求めたBMDL10( benchmark dose lower confidence limit:ベンチマークドーズ信頼下限値)と日本人の食品からのアクリルアミドの推定摂取量から算出したばく露マージンが十分ではないことから、公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えないと判断した。 このため、ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則に則り、引き続き合理的に達成可能な範囲で、できる限りアクリルアミドの低減に努める必要がある。 http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc5_aa_acrylamide_280217.html3 食品安全委員会セミナー「加熱時に生じるアクリルアミドの食品健康影響評価及び低減対策について」の開催と参加者募集 平成28年2月17日、内閣府食品安全委員会事務局は標記セミナーの開催と参加者募集を公表した。 ・申込締切日時:平成28年3月2日(水)17:00 ・開催日時:平成28年3月3日(木)10:00~12:00(9:30受付開始) ・会場:食品安全委員会事務局会議室(東京都港区赤坂5-2-20 赤坂パークビル22階) ・募集人数:約150名 ・参加料:無料 ・プログラム(予定): (1)講演 「加熱時に生じるアクリルアミドに係る食品健康影響評価(案)について」 青木 康展 加熱時に生じるアクリルアミドワーキンググループ座長 髙﨑 洋介 食品安全委員会事務局評価第一課評価調整官 川村 孝 加熱時に生じるアクリルアミドワーキンググループ専門委員 (2)講演 「食品中のアクリルアミドの低減対策について」 阪本 和広 農林水産省消費・安全局食品安全政策課課長補佐 (3)全体討議 http://www.fsc.go.jp/koukan/annai/tokyo_risk_annai160303.html4 コーデックスに係る国際シンポジウムを開催 平成28年2月22日、厚生労働省は、農林水産省と共同で標記国際シンポジウムの開催を公表した。 ・参加募集人数:100 名 (先着順) ・申込締切日:平成28年3月11日(金) ・開催日時:平成 28 年3月22日(火)13:30~17:30 (開場 13:00) ・開催場所:イイノカンファレンスセンター Room A(東京都千代田区内幸町2丁目1番1号 4階) ・プログラム内容 第1部 最近のコーデックス委員会の動向について 1.基調講演 (1) コーデックス委員会の動向 世界保健機関食品安全部 部長 宮城島 一明 氏 (2) EUにおける食品安全およびコーデックスに関する活動 欧州委員会保健衛生・食品安全総局 ユニット長 Ella STRICKLAND 氏 (3) アフリカにおける食品安全およびコーデックスに関する活動 ケニア農業畜水産省畜産局 獣医部長/アフリカ地域調整国代表 Moses GICHIA 氏 2.パネルディスカッション 第2部 食品由来疾病による世界的負荷について 1.基調講演 (1) 食品由来疾病による世界的負荷 世界保健機関食品安全部 部長 宮城島 一明 氏 (2) 日本における食品由来疾病の負荷とその政策評価について 東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学 教授 渋谷 健司 氏 2.質疑応答 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000111704.html5 廃棄食品の不正流通事案を受けた食品等事業者の監視指導の徹底について通知 平成28年2月26日、厚生労働省は医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課長名をもって、各都道府県等衛生主管部(局)長宛に標記通知を出した。 これは、これまでの調査により、ダイコー(株)(廃棄物処理事業者)に廃棄物処理が依頼されていた21 社の35 品目(60 製品)が、みのりフーズ(食品事業者)の施設内に保管されていたことが分かっている(平成28 年2 月24 日時点)事案を受けたもので、別添「廃棄食品の不正流通に関する今後の対応」では、本事案を受けて、動植物性残さを取り扱う全国の産業廃棄物処理業者を対象とした地方公共団体による立入検査が実施されたが、本事案以外に食品の転売を行っていた事例の報告はなかったとし、また、環境省及び農林水産省による廃棄物処理業者に係る対策:透明性と信頼性の強化、排出事業者による対策:食品廃棄物の転売防止対策の強化等記載されている。 通知の主な内容は次のとおり。 本日開催された「食品安全行政に関する関係府省連絡会議」において、「廃棄食品の不正流通に関する今後の対応」が別添のとおり取りまとめられた。 これを踏まえ、各都道府県等におかれては、食品等事業者の状況を十分に把握するとともに、下記により監視指導を実施するようお願いする。 また、平成28 年度の食品衛生監視指導計画に基づく立入検査において、営業実態が不明である又はない食品の製造・販売を行う食品等事業者に対して、具体的な措置を講じた場合には、当該事業者を探知した経緯、措置の内容、改善等の状況について当課まで報告するようお願する。 記 1. 関係団体の協力を得る等により、日頃から食品等事業者の営業状況等の情報収集に努めること。 2. 食品衛生監視指導計画に基づく立入検査を実施した際に、営業実態が確認できない場合にあっては、事前通告を行うこと等により営業者と事前に連絡を取った上で改めて立入検査の実施に努めること。 3. 食品衛生監視指導計画に基づく立入検査を実施した際に、営業実態がないことを確認した場合は、廃業の届出を出させる等、必要な措置を講じること。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000114019.pdf