平成28年10月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 オクタン酸、過酢酸、次亜臭素酸水及び1-ヒドロキシエチリデン-1、1-ジホスホン酸を新たに添加物として指定

平成28年10月6日、厚生労働省は医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長名をもって各都道府県知事等宛、同日公布された食品衛生法施行規則の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について施行通知を出した。その主な内容は次のとおりで、施行は省令及び告示ともに公布の日からとなっている。 第1 改正の概要 1 省令関係 食品衛生法(以下「法」という。)第10条の規定に基づき、オクタン酸、過酢酸、次亜臭素酸水及び1-ヒドロキシエチリデン-1、1-ジホスホン酸を省令別表第1に追加したこと。 2 告示関 (1) 法第11条第1項の規定に基づき、オクタン酸、過酢酸製剤、次亜臭素酸水及び1-ヒ ドロキシエチリデン-1、1-ジホスホン酸の成分規格を設定したこと。また、同項の規定に基づき、オクタン酸、過酢酸、過酢酸製剤、次亜臭素酸水及び1-ヒドロキシエチリデン-1、1-ジホスホン酸の使用基準並びに過酢酸及び過酢酸製剤の製造基準を設定したこと。 (2) 法第11条第1項の規定に基づき、亜塩素酸ナトリウムの使用基準を改正したこと。 第2 運用上の注意 1 製造基準関係 過酢酸製剤については、「過酢酸又はそれぞれの成分規格に適合する酢酸、過酸化水素、1-ヒドロキシエチリデン-1、1-ジホスホン酸若しくはオクタン酸を原料とし、過酢酸若しくは酢酸及び過酸化水素に1-ヒドロキシエチリデン-1、1-ジホスホン酸を混合したもの又はこれにオクタン酸を混合したものでなければならない」との製造基準が設定されたことから、これらの原料以外を添加して製造することは認められないこと。 2 使用基準関係 (1) 亜塩素酸ナトリウムの使用基準に「食肉及び食肉製品」を追加し、使用量は「食肉及び食肉製品にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき0.50~1.20gでなければならない。」とし、「亜塩素酸ナトリウムは、食肉及び食肉製品に使用するときは、pH2.3~2.9の浸漬液又は噴霧液を30秒以内で使用しなければならない。」と規定された。 「食肉製品」とは、スライスハムやスライスベーコン等の食肉製品を製造するに当たってスライス処理する前の塊等も含まれるものであること。 (2) 過酢酸製剤の使用基準が以下のとおり規定された。 「過酢酸製剤は、牛、鶏及び豚の食肉、果実並びに野菜の表面殺菌の目的以外に使用してはならない。過酢酸製剤の使用量は、過酢酸として、鶏の食肉にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき2.0g以下、牛及び豚の食肉にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき1.80g以下、果実及び野菜にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき0.080g以下並びに1-ヒドロキシエチリデン-1、1-ジホスホン酸として、鶏の食肉にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき0.136g以下、牛及び豚の食肉にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき0.024g以下、果実及び野菜にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき0.0048g以下でなければならない。」 (3) 次亜臭素酸水の使用基準が以下のとおり規定された。 「次亜臭素酸水は、食肉の表面殺菌の目的以外に使用してはならない。次亜臭素酸水の使用量は、臭素として食肉(食鳥肉を除く)にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき0.90g以下、食鳥肉にあっては浸漬液又は噴霧液1kgにつき0.45g以下でなければならない。」 3 成分規格関係 今般、指定された次亜臭素酸水は、専用の機器を用い、1、3―ジブロモ―5、5―ジメチルヒダントインを水に溶解して調製される、次亜臭素酸を主成分とする水溶液であり、告示中第2 添加物のD 成分規格・保存基準各条に規定する次亜臭素酸水の定義に合致するものをいうこと。 4 その他 (1) 過酢酸製剤に含まれる過酸化水素の使用基準については、最終食品の完成前に過酸化水素を分解し、又は除去しなければならないが、食品中の過酸化水素の分析法については、本日別途発出された当部基準審査課長通知「食品中の食品添加物分析法の改正について」を参照されたいこと。 (2) 次亜臭素酸水を自家消費にて使用する営業者にあっては、法第52条の規定に基づく添加物製造業の許可は要しないこと。 (3) 「亜塩素酸ナトリウムの使用基準について」(平成25年12月20日付け厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課・監視安全課事務連絡)は廃止すること。 第4 関係通知の改正 大量調理施設衛生管理マニュアル及び漬物の衛生規範をそれぞれ以下のとおり改正すること。 1 大量調理施設衛生管理マニュアル 大量調理施設衛生管理マニュアル(平成9年3月24日付け衛食第85 号別添(最終改正:平成28年7月1日付け生食発0701第5号))のⅡ 重要管理事項の1.原材料の受入れ・下処理段階における管理の注2に、過酢酸製剤が追加され、別添2の原材料等の保管管理マニュアルの1.野菜・果物の注4に、過酢酸製剤が追加され、同じく2.魚介類、食肉類の注5中、「亜塩素酸水、次亜塩素酸水」を「亜塩素酸水、亜塩素酸ナトリウム溶液(魚介類を除く。)、過酢酸製剤(魚介類を除く。)、次亜塩素酸水、次亜臭素酸水(魚介類を除く。)」に改めた。2 漬物の衛生規範 漬物の衛生規範(昭和56年9月24日付け環食第214号別紙(最終改正:平成25年12月13日付け食安監発1213第2号))の第5の1の(8)の①に過酢酸製剤を追加した。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000139150.pdf3 チフス菌による食中毒疑いの発生について通知 平成28年10月7日、厚生労働省は医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その内容は次のとおり。 今般、国立感染症研究所から豊田市等を中心にチフス菌による有症者が発生している旨、また、豊田市から関連資料(報道機関配付資料)の情報提供がありました。(別紙1、2参照) チフス菌による食中毒は、食品衛生法第58条第3項に基づき、直ちに厚生労働大臣に報告する事案です。現在、関係自治体において食中毒及び感染症の両面から原因の調査を進めているところですが、チフス菌による食中毒の被害拡大防止の観点から下記のとおり対応をよろしくお願いします。 記 1. チフス菌による有症者の情報については、感染症部局と連携を図り収集を行うこと。 2. チフス菌による患者の発生を探知した場合は、別紙1、2の情報を参考に本件との関連(9月上旬に豊田市等を訪問し飲食した等)を確認するとともに必要に応じて食中毒調査を実施すること。 また、収集された患者由来菌株について国立感染症研究所に送付すること。 3. 住民等からチフス菌が疑われる症状の相談があった場合は、速やかに医療機関の受診を勧奨するなど適切な対応をすること。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000139250.pdf4 食品衛生管理の国際標準化に関する検討会中間とりまとめ公表 平成28年10月14日、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課は標記中間報告を公表した。厚生労働省は本年3月より「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」を開催し、業界団体からのヒアリング等を行いながら、食品衛生法等におけるHACCPによる衛生管理の制度化に向けた検討を行ってきており、これまで行ってきた議論を踏まえた中間とりまとめをまとめたものである。 今後、中間とりまとめに対するパブリックコメントを行い(平成28年10月17日から11月15日まで)、その結果を踏まえ、年内を目処に最終的なとりまとめを行う予定としており、その主な点は次のとおり。 我が国でHACCPを制度化するに当たっては、コーデックスのガイドラインに基づくHACCP(以下「コーデックスHACCP」という。)の7原則を要件とする基準(基準A)を原則としつつ、小規模事業者や一定の業種については、コーデックスHACCPの7原則の弾力的な運用を可能とするHACCPの考え方に基づく衛生管理の基準(基準B)によることができる仕組みとすることが適当である 基準A(コーデックスHACCPの7原則に基づく衛生管理)コーデックスHACCPの7原則を要件とし、具体的には、別紙の考え方に基づくものとする。 基準B(HACCPの考え方に基づく衛生管理(コーデックスHACCPの7原則の弾力的な運用を可能とする衛生管理))対象は、従業員数が一定数以下等の小規模事業者、又は、提供する食品の種類が多く、かつ、変更頻度が高い業種や一般衛生管理による対応で管理が可能な業種等一定の業種とする。具体的には、危害要因分析、モニタリング頻度の低減、記録の作成・保管の簡素化、重要管理点設定への規格基準の活用等について基準Aよりも弾力的な運用を可能とする。 小規模事業者の範囲については、従業員数、出荷量等について考慮するとともに、地方自治体等の運用にも留意する観点から、食品表示法等の他法における取扱いも参考にし、判断基準を示すべきである http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000139837.html 中間とりまとめ http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11135000-Shokuhinanzenbu-Kanshianzenka/0000139884.pdf5 過酸化水素の規格基準を一部改正 平成28年10月27日、食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件が公布され、過酸化水素の規格基準を一部改正されたことに伴う通知が厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長名をもって各都道府県知事等宛出された。改正は公布日から適用され、その主な内容は次のとおり。 ●改正の概要 食品衛生法第11条第1項の規定に基づき、過酸化水素の規格基準を一部改正し、「釜揚げしらす」及び「しらす干し」に対する使用基準を新たに設定したこと。 (参考:改正後の使用基準は次のとおり) 「過酸化水素は、釜揚げしらす及びしらす干しにあってはその1kgにつき0.005g以上残存しないように使用しなければならない。その他の食品にあっては、最終食品の完成前に過酸化水素を分解し、又は除去しなければならない。」 ●運用上の注意 (1) 「釜揚げしらす」とは、体長(魚のふん端から尾びれの付け根までの長さをいう。)がおおむね5cm以下の魚類を煮熟によってたんぱく質を凝固させたものをいうこと。 「しらす干し」とは、釜揚げしらすを乾燥させたものをいい、ちりめんを含むこと。 (2) 過酸化水素の使用に当たっては、適切な製造工程管理を行い、食品中で目的とする効果を得る上で必要とされる量を超えないものとすること。 (3) 過酸化水素の食品中の分析法については、平成28年10月6日付け当部基準審査課長通知「食品中の食品添加物分析法の改正について」を参照されたいこと。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000141201.pdf6 薬剤耐性菌の食品健康影響評価に関する情報 平成28年10月31日、食品安全委員会は標記情報を公表した。その主な内容は次のとおり。食品安全委員会では、家畜等への抗菌剤の使用により選択される「薬剤耐性菌」について、食品を介してヒトに伝播し健康に影響を及ぼす可能性について、科学的な知見に基づいたリスク評価を行っています。 薬剤耐性菌とは 病原細菌に感染した患者の治療に抗菌剤が使われます。抗菌剤は、菌の分裂を止めてしまう、菌のタンパク質合成や遺伝子の複製を阻害するなど、様々な作用で菌に働きます。これに対して、細菌も抗菌剤を分解する酵素を出したり、抗菌剤の作用部位を変化させて結合できなくするなどして抵抗(耐性化)します。このような耐性化により、抗菌剤の効きが悪いまたは効かなくなった細菌を、薬剤耐性菌といいます。 抗菌剤の使用により、抗菌剤に耐性化していない感受性の細菌が死滅する一方で、薬剤耐性菌が選択的に生き残り、増えることがあります。薬剤耐性には様々なメカニズムが存在しますが、薬剤の使用による選択圧は薬剤耐性の最大の誘導因子の一つです。不要な投薬を長期間続ける等の不適切な抗菌剤の使用は、薬剤耐性菌の問題を顕在化させます。 薬剤耐性菌と食品 抗菌剤は人だけでなく、動物の治療や、飼料中の栄養成分の有効利用のためにも使われています。食品安全委員会では、家畜や水産動物への抗菌剤の使用によって選択される薬剤耐性菌について、畜水産物等の食品を介して、人に対する健康への悪影響が発生する可能性とその程度を、科学的に評価しています。 薬剤耐性菌の食品健康影響評価 薬剤耐性菌の食品健康影響評価では、家畜への抗菌剤の使用状況、家畜由来の細菌での薬剤耐性菌の発生状況など(発生評価)、家畜や水産物がどのくらい薬剤耐性菌に汚染されているかなど(暴露評価)、抗菌剤が人医療でどのくらい重要性や代替薬の有無など(影響評価)について、科学的なデータを用いて検証し、総合的にリスクの程度を推定します。 これまでに評価を行った動物用抗菌剤 – フルオロキノロン剤(牛及び豚用、鶏用) – センデュラマイシンナトリウム – ツラスロマイシン製剤(豚用) – ラサロシドナトリウム – ピリルマイシン製剤(牛用) – サリノマイシンナトリウム – ガミスロマイシン製剤(牛用) – ナラシン – セフチオフル製剤(牛及び豚用) – フラボフォスフォリポール – ツラスロマイシン製剤(牛用) – アビラマイシン – モネンシシンナトリウム – エンラマイシン – ノシヘプタイド http://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/amr_wg/amr_info.html7 冷凍メンチカツによる腸管出血性大腸菌食中毒(疑い)事案について 平成28年11月1日、厚生労働省は医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。これは、一見散発事例と思われる同時多発的な集団事例(diffuse outbreak)と思われ、主な内容は次のとおり。 今般、神奈川県に感染症法に基づく腸管出血性大腸菌感染症発生届が複数届出され、当該事案について調査を行ったところ、共通食が同一販売者の冷凍メンチカツ(当該品は未加熱のメンチカツを凍結した製品で、家庭で加熱調理するもの)であることが判明した。 昨日、神奈川県は冷凍メンチカツから腸管出血性大腸菌を検出したため、事案の概要及び販売者の自主回収情報等について別添のとおり公表した。 次のとおり対応をよろしくお願いする。 (1) 腸管出血性大腸菌による感染症法に基づく届出情報や食品による健康被害の苦情等の相談があった場合は、当該製品及び上記製造者の同様製品の喫食状況を調査し、関連性を確認するとともに、必要に応じて食中毒調査を実施すること。 また、該当する情報を得た場合には当職まで速やかに連絡をお願いしたいこと。 (2) 住民等から本事案及び当該販売者、製造事業者の製品との関連が疑われる症状の相談があった場合は、速やかに医療機関の受診を勧奨するなど適切な対応をすること。 (3) 腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生した場合は、関連性を確認する観点から、平成22年4月16日付け食安発0416第1号「腸管出血性大腸菌O157による広域散発食中毒対策について」に基づき、患者由来菌株を迅速に収集し、国立研究機関等へ送付すること。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000141776.pdf