「食品衛生行政」国の動き 平成30年1月
(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄
1 香川県における高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜の確認について
平成30年1月11日、農林水産省は標記プレスリリースを行った。その主な内容は次のとおり。香川県における高病原性鳥インフルエンザが疑われる事例については、遺伝子検査の結果、H5亜型であり、高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜であることが確認されました。
今後、病原性及びNA亜型について動物衛生研究部門(注)において検査を実施します。
また、高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針に基づき、当該農場(肉用鶏約5.1万羽)及び当該農場の関連農場(肉用鶏約4万羽)で飼養されている家きんについて、疑似患畜として処分いたします。
同日、食品安全委員会は、本件に関して、次のとおり考え方を公表した。鳥インフルエンザに関する食品安全委員会の考え方は、以下のとおりです。
食品安全委員会は、我が国の現状において、家きんの肉や卵を食べることにより、ヒトが鳥インフルエンザウイルスに感染する可能性はないと考えています。
(1)鳥インフルエザウイルスがヒトに感染するためには、ヒトの細胞表面の受容体に結合しなくてはなりません。 私達ヒトの受容体はヒト型であり、トリ型とは異なるとされています。
(2)鳥インフルエンザウイルスは酸に弱く、ヒトの体内で胃酸などの消化液により不活化されると考えています。
農林水産省、プレスリリース
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/180111_8.html
食品安全委員会、考え方
http://www.fsc.go.jp/sonota/tori/tori_infl_ah7n9.html
2 香川県における高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜の確認について通知
平成30年1月12日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次のとおり。農林水産省より各都道府県知事宛て通知を発出したとの情報提供がありましたのでお知らせします。
引き続き、食鳥処理場における鳥インフルエンザを疑う場合のスクリーニング検査及び感染の疑われる生体の搬入防止の指導等の実施についてご対応をお願いします。
平成30年1月11日、農林水産省消費・安全局長から都道府県知事に通知された内容の主なものは次のとおり。
香川県における高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜の確認に伴う監視体制の強化について香川県内の家きん飼養農場において死亡家きんが増加した旨、香川県に対して通報があり、高病原性鳥インフルエンザの遺伝子検査を実施したところ、H5亜型であることが確認されました。このことから、高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針(平成27年9月9日農林水産大臣公表。以下「防疫指針」という。)に基づき、当該死亡家きんについて、高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜と判定しました。
本事例は国内での、今シーズン初めての発生事例となります。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000191050.pdf
3 食品衛生規制の見直しに関する骨子案(食品衛生法等の改正骨子案)を示す
平成30年1月16日、厚生労働省は薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会を開催し、標記骨子案を説明した。その主な内容は次のとおり。①広域的な食中毒事案への対策強化
国や都道府県等が、広域的な食中毒事案の発生や拡大防止等のために、相互に連携や協力を行うことを明記するとともに、連携や協力の体制整備のため、厚生労働大臣が、国や都道府県等の関係者で構成する広域連携協議会を設置することができることとする。
②HACCP(ハサップ)による衛生管理の制度化
我が国の食品衛生管理水準の向上や国際標準化を図り、事業者自らが取り組む衛生管理を推進。現行の「総合衛生管理製造過程承認制度」(食品衛生法第13条)は廃止する。ただし、厚生労働大臣が食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が講じられていると認めた場合に、食品衛生法で定める食品の製造・加工の規格基準に適合しなくとも販売等ができるとする仕組みは維持する。
③特別の注意を要する成分等を含む食品による健康被害情報の収集
健康被害の発生を未然に防止する観点から特別の注意を必要とする成分等※を含有する食品を販売等する事業者は、その製品が健康に被害を生じさせている又は生じさせるおそれがある旨の情報を得た場合は、都道府県等を通じて厚生労働省に報告しなければならないこととする。※厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する。
④国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
食品用器具・容器包装の安全性の確保や規制の国際的整合性の確保のため、人の健康を損なうおそれがない場合を除き、合成樹脂等を対象として、規格が定められていない原材料を使用した器具・容器包装を販売等してはならないこととするとともに、製造者は、適正製造管理規範を遵守しなければならないこととする。
⑤営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設
都道府県ごとに異なる営業許可基準について、厚生労働省令で定める基準を参酌し、条例で定めることとする。現行の政令で定める営業許可業種について、営業実態等を踏まえた見直しを行う。公衆衛生に与える影響が少ない営業を除き、営業を営もうとする者は、あらかじめ都道府県等に届け出なければならないこととする。
⑥食品リコール情報の報告制度の創設
営業者が製造等をした食品等が、食品衛生法に違反をした場合等で、当該食品等を回収するときは、食品衛生上の危害が想定されない場合を除き、回収に着手した旨及び回収の状況を都道府県知事等に報告し、当該報告を受けた都道府県知事等は厚生労働大臣等に報告しなければならないこととする。
⑦輸入食品の安全性確保・食品輸出関係事務の法定化
輸出国において食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための措置(HACCPによる衛生管理)が講じられていることが必要な食品※については、当該措置が講じられていることを輸出国の政府機関が確認した施設等において製造等されたものでなければ、輸入してはならないこととする。※食肉、食鳥肉等を想定。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000191219.pdf
薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000191217.html
4 「食品表示基準について」の一部改正について
平成30年1月19日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その主な内容は次のとおり。アレルゲンを含む食品の表示については、「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号消費者庁次長通知)の「別添 アレルゲンを含む食品に関する表示」において、「特定原材料に準ずるもの」を使用しているか否かを表示することが望ましいとしてきたところ、今般、当該表示方法等を明確にし、アレルギー疾患を有する者の正確な判断に資するため、「表示するよう努めること」と通知の一部を改正した。
また、食品表示法施行後における事業者等からの問合せを受け、食品表示基準の解釈を本通知において明確化すべきと判断した点等についても、併せて別紙新旧対照表のとおり改正した。
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_180119_0008.pdf
同日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県食品表示担当部(局)長宛「食品表示基準Q&A」の一部改正について通知した。その主な内容は次のとおり。
平成29年9月1日に、新たな加工食品の原料原産地表示制度を定めた食品表示基準の一部を改正する内閣府令(平成29年内閣府令第43号)が施行された。
新制度の施行から3か月が経過し、施行後の制度説明会での質疑等を踏まえ、解釈を明確化すべきと判断した点について、「食品表示基準Q&A」)の一部を改正しました。また、その他事業者等からの問合せを受け、本Q&Aにおいて明確化すべきと判断した点等についても、併せて別紙新旧対照表のとおり改正した。おもな改正は次のとおり。
(加工-244)詰め合わせ食品の表示方法について教えてください
(原原-43)輸入された中間加工原材料について国内で行う行為の中で、「国内製造」とならない行為には、どのようなものがありますか
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_180119_0022.pdf
5 2016~2017年オランダにおける未加熱ハム製品の摂取に関連するサルモネラ ・ボビスモルビフィカンス(Salmonella Bovismorbificans)集団感染の情報
平成30年1月24日、食品安全委員会が公表した食品安全総合情報システムにおいて次のとおり標記情報が掲載されている。 Eurosurveillance (Volume 23, Issue 1, 04/Jan/2018)に掲載された論文「2016~2017年オランダにおける未加熱ハム製品の摂取に関連するサルモネラ・ボビスモルビフィカンス集団感染 (Outbreak of Salmonella Bovismorbificans associated with the consumption of uncooked ham products, the Netherlands, 2016 to 2017)、著者Diederik Brandwagt(National Institute for Public Health and the Environment (RIVM), オランダ)ら」の概要は以下のとおり。2017年1月、オランダでSalmonella enteria 血清型Bovismorbificans感染症例の報告が2016年10月以降増加していることが観察された。感染源の特定のため、2016年12月以降の全症例を含む症例対照研究が実施された。ロジスティック回帰分析法を用いて調整オッズ比(aOR)を算出した。疑われる食品材料の流通チェーンを追跡し、微生物学的分析のために検体採取した。ヒト及び食品の分離株を全ゲノムシークエンス法(WGS)を用いて塩基配列決定した。
2016年10月から2017年3月までに、54人のSalmonella Bovismorbificans症例が特定された。塩基配列決定から全員が同一株に感染していることが示された。24症例と37人の対照群が当該調査に参加した。症例は対照群に比べてハム製品をより多く摂取しており(aOR=13;95% CI:2.0-77)、スーパーマーケットチェーンで買い物をしていた(aOR=7;95% CI:1.3-38)。
追跡調査によってベルギーの1か所の食肉加工業者に行き着いた:この加工業者由来の市販ハム1検体はSalmonella Bovismorbificans陽性で、WGSで集団感染株と一致していた。更なる感染防止のために、同一パッチのハム製品全てが市場から除去された。当該研究から、検査によるサルモネラ全血清型のサーベイランスの重要性及び1つの集団感染の調査におけるWGSの有効性が示された。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2017&from_month=12&from_day=16&to=struct&to_year=2018&to_month=01&to_day=05&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc
6 「食品表示基準について」の一部改正について
平成30年2月8日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その内容は次のとおり。今般、食品衛生法(昭和22年法律第233号)第21条の規定に基づく食品添加物公定書第9版が公表されました。 つきましては、「食品表示基準について」別添 添加物2-1の一部を別紙新旧対照表のとおり改正しましたので、関係者に対する周知をお願いします。
食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)、別添 添加物2-1、既存添加物名簿収載品目リストの改正内容。表中、基原・製法・本質欄中、多くの既存添加物について記載内容が、※に改められ、※については表の最後に次のとおり記載された。
※食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第2添加物の部D成分規格・保存基準各条の規定に従う。
なお、組換えDNA技術によって得られた生物を利用して製造された添加物の場合は、厚生労働大臣が定める安全性審査の手続を経た旨が公表されていなければならない。
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_180208_0005.pdf