「食品衛生行政」国の動き 令和元年8月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 と畜・食鳥検査等に関する実態調査の結果について

 2019(令和元)年8月2日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。これは、平成30年度実績を集計したもので、その主なものは次の通り。

・と畜場数  一般と畜場174  簡易と畜場3  計177
・と畜頭数  牛1,061,403  馬9,763  豚16,411,263  めん羊5,164  山羊3,677
・食鳥処理場数  大規模食鳥処理場146  認定小規模食鳥処理1,739  計1,885
・処理羽数  ブロイラー721,601,064  成鶏96,065,985  その他2,430,060
計820,097,109

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000534864.pdf

2 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について

 2019(令和元)年8月5日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件が同日告示され、これにより食品、添加物等の規格基準の一部が改正されたことに伴うもので、その主な内容は次の通り。

 食品衛生法第11 条第1項の規定に基づき、規格基準告示に規定する、農薬イソピラザム、農薬エトフェンプロックス、農薬フェンピロキシメート、飼料添加物ブチルヒドロキシアニソール、動物用医薬品フルメキン、農薬マンデストロビン及び動物用医薬品[モノ,ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]-アルキルトルエンについて、食品中の残留基準値を設定したこと。適用期日は告示の日から適用すること。ただし、下表の農薬等ごとに掲げる食品の残留基準値については、告示の日から起算して6月を経過する日までの間は、なお従前の例によること。

 運用上の注意として、残留基準値欄が空欄になっている食品及び表中にない食品については、一律基準(0.01ppm)が適用される。ただし、フルメキンは、食品、添加物等の規格基準第1 食品の部A 食品一般の成分規格の1に規定する化学的合成品たる抗菌性物質に該当することから、表中にない食品については、本剤を含有するものであってはならないこと。また、今回残留基準値を設定するフルメキンも含め、局所に投与する注射剤については、注射部位直下に当該成分が高濃度に残留する可能性があることから、と畜検査申請書等により当該成分の使用が確認された場合には、その特性に留意して検査を実施すること。

https://www.mhlw.go.jp/content/000535139.pdf

3 平成30年度食料自給率・食料自給力指標について

 2019(令和元)年8月6日、農林水産省は標記自給率及び指標を公表した。
 食料自給率とは、食料の国内生産の国内消費仕向に対する割合で、国内消費をどの程度国内生産で賄えるかを示す指標で,我が国の食料の国内生産及び消費の動向を把握するため、毎年公表。
 食料自給力指標とは、国内生産のみでどれだけの食料を最大限生産することが可能かを試算した指標で,我が国の食料の潜在生産能力の動向を把握するため、平成27年から公表。その主なものは次の通り。

・カロリーベース食料自給率
 平成30年度においては、米の消費が減少する中、主食用米の国内生産量が前年並みとなった一方、天候不順で小麦、大豆の国内生産量が大きく減少したこと等により、37%となった。

・生産額ベース食料自給率
 平成30年度においては、野菜や鶏卵等の単価下落により国内生産額が減少した一方、魚介類の輸出増加等により国内消費仕向額も減少したことから、66%となった。

・主な食品の自給率(%)(食料需給表)
 米 97、小麦 12、いも類 73、大豆 6、野菜 77、牛肉 36、豚肉 48、鶏肉64、  鶏卵 96、牛乳・乳製品 59、食用魚介類 59

・飼料自給率を考慮した畜産物の自給率(%)
 牛肉 10、豚肉 6、鶏肉8、鶏卵 12、牛乳・乳製品 25

http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/190806.html

平成30年度食料自給率・食料自給力指標について
http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/190806-2.pdf

食料需給表
http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/190806-1.pdf

4 訪日外国人に対する食中毒予防に関するリーフレットについて

 2019(令和元)年8月6日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課名をもって各都道府県等衛生主管部(局)食品衛生担当課宛標記事務連絡を出した。その内容は次の通り。

 訪日外国人旅行者数は、平成30 年(2018 年)に3,119 万人(出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」)に達し、増加傾向となっている。
 本年から来年にかけて、ラグビーワールドカップ2019、東京オリンピック・パラリンピック競技大会等の大規模な国際スポーツイベントが開催され、さらなる訪日外国人旅行者数の増加が見込まれている。
 ついては、訪日外国人に対し、日本での食事を、安全に美味しく楽しむためのリーフレット(英語、フランス語、スペイン語、中国語、韓国語、タイ語)を作成しホームページに掲載したので、監視指導の参考として活用されたい。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000536151.pdf

ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html

5 食品表示の全体像に関する報告書

 2019(令和元)年8月9日、消費者委員会食品表示部会標記報告書を公表した。その主な内容は次の通り。

(1)活用される食品表示とするための考え方(結論)
 〇一括表示部分の「分かりやすさ」について、科学的根拠に基づく客観的定義が定まっておらず、改善すべき要素も明確ではなく、消費者の意向に関してもエビデンスが不十分である。
 〇表示事項は、状況や必要とする消費者の態様によって重要性がその都度変わること等から、全ての消費者にとっての重要性は一致しない。優先順位により表示事項を容器と容器以外とに仕分けることには現時点では慎重であるべきである。
 〇ウェブによる食品表示に関しては、整理すべき課題が多く、引き続き検討を行うべきである。
 (2)分かりやすく活用される食品表示とするために(提言)
 〇「分かりやすさ」の定義を明確にするために、また、消費者のより詳細な利活用の実態や問題点等を把握するために、表示可能面積に対する一括表示面積の割合や、一括表示のデザイン、フォント、文字サイズ等の情報量の把握等の科学的アプローチに基づく調査が必要。
 〇ウェブによる食品表示を検討するために、優良事例等の現状を把握する調査が必要。

食品表示の全体像に関する報告書
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/201908_houkoku.pdf

「食品表示の全体像に関する報告書」の概要
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/201908_houkoku_gaiyou.pdf

 食品表示の全体像に関する報告書を受けて、2019(令和元)年8月15日、消費者委員会は食品表示の全体像に関する提言を公表した。その主な内容は次の通り。

 同報告書では、食品表示の全体像に関し、現状の整理から課題の抽出、それに基づく今後の方向性やその具体的方針について、適切な取りまとめが行われたものといえる。
 同報告書は現時点までの議論によって整理された内容に基づくものであることから、将来的に、実態把握のための調査結果を踏まえ、熟議の上で、食品表示が消費者、食品関連事業者等の両者にとって良い方向に改善されることを期待する。

https://www.cao.go.jp/consumer/content/20190815_teigen.pdf

6 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(案)」(器具及び容器包装のポジティブリスト制度導入に伴う規格の設定)に係る御意見の募集について

 2019(令和元)年8月9日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課は標記募集を公表した。締め切りは、9月7日。その主な内容は次の通り。

 食品衛生法等の一部を改正する法律による改正後の食品衛生法第18条第3項において、政令で定める材質(合成樹脂を想定)の原材料であって、これに含まれる物質は、当該原材料を使用して製造される器具若しくは容器包装に含有されることが許容される量又は当該原材料を使用して製造される器具若しくは容器包装から溶出し、若しくは浸出して食品に混和することが許容される量が同条第1項の規格に定められたものでなければならないこととされている。
 今般、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会器具・容器包装部会の審議を踏まえ、規格基準告示を改正し、改正食品衛生法第18条第3項に規定される「政令で定める材質の原材料であって、これに含まれる物質」に関する規格を設定し、その他所要の改正を行う。
 規格基準告示中「第3 器具及び容器包装 A 器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格」につき、別紙に記載する合成樹脂の原材料であって、これに含まれる物質についての規格(基ポリマー及び添加剤等)を定めるため必要な改正を行う。

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190164&Mode=0

ポジティブリスト案について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06143.html

7 製造所固有記号制度の運用に係る周知・普及について

 2019(令和元)年8月9日、消費者庁は次長名をもって各関係団体宛標記通知を出した。また、同日、各都道府県知事等宛指導を依頼する文書を出した。その主な内容は次の通り。

 平成27 年4月1 日に施行された、食品表示法に基づく食品表示基準についは、経過措置期間が2020(令和2)年3月31 日をもって終了となり、経過措置期間終了後に製造される食品は新制度に基づく表示を付す必要がある。
 過措置期間の終了が目前に迫り、現在、固有記号の届出が集中しており、その処理に時間を要している。そのため、これから届出を行う食品関連事業者については、期間に十分な余裕をもって届出をしてください。現在の届出件数と処理状況から、2019(令和元)年12 月27 日(金)までに届出されたものに関しては、令和元年度内に審査が完了するが、それ以降に届出されたものについては、審査完了が年度をまたぐ可能性があることを申し添える。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_190813_0001.pdf

8 平成30年度「輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果」及び「輸入食品監視統計」の公表

 2019(令和元)年8月28日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室は標記結果及び統計を公表した。その主な内容は次の通り。

〇輸入届出件数は約248万件[約243 万件]であり、輸入届出重量は約3,417万トン[約3,375 万トン]。届出に対して206,594 件[200,233 件]の検査を実施し、このうち780 件(延べ813 件)[821 件(延べ852 件)]を法違反として、積み戻し又は廃棄等の措置を講じた。[ ]カッコ内は平成29 年度の数値

〇検査は届出件数の8.3%にあたる206,594 件について実施されている。内訳は、行政検査69,409 件(2.8%:届出件数に対する割合)、登録検査機関検査153,833件(6.2%/うち、検査命令60,373 件)、外国公的検査機関検査4,524 件(0.2%)である。

〇違反となった届出件数780 件を条文別にみると、法第11 条違反の480 件(61.5%)が最も多く、次いで第6 条違反の229 件(29.4%)、第18 条違反36 件(4.6%)、第10 条違反30 件(3.8%)、第9 条違反4 件(0.5%)、第62 条違反1件(0.1%)の順であった。

〇主な違反内訳
第6条(販売等を禁止される食品及び添加物)アーモンド、乾燥いちじく、乾燥なつめやし、香辛料、ごまの種子、チアシード、とうもろこし、ハトムギ、ピスタチオナッツ、ひまわりの種子、ブラジルナッツ、落花生等のアフラトキシンの付着、亜麻の種子、キャッサバ等からのシアン化合物の検出、有毒魚類の混入、生食用まぐろからのサルモネラ属菌の検出、ブランデー等からのメタノールの検出、米、小麦、大豆等の輸送時における事故による腐敗・変敗(異臭・カビの発生)

第9条(病肉等の販売等の禁止)衛生証明書の不添付

第10条(添加物等の販売等の制限)指定外添加物(TBHQ、アズールブルーVX、アゾルビン、アミド化ペクチン、カルミン、キノリンイエロー、サイクラミン酸、パテントブルーV、ホウ酸)の使用

第11条(食品又は添加物の基準及び規格)農産物及びその加工品の成分規格違反(農薬の残留基準超過)、畜水産物及びその加工品の成分規格違反(動物用医薬品の残留基準超過、農薬の残留基準超過等)、その他加工食品の成分規格違反(大腸菌群陽性等)、添加物の使用基準違分規格違反、放射性物質の基準超過、安全性未審査遺伝子組換え食品の検出

第18条(器具又は容器包装の基準及び規格)材質別規格違反

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06382.html

輸入食品監視統計
https://www.mhlw.go.jp/content/000541097.pdf

9 と畜・食鳥検査等に関する実態調査(追加調査事項)の結果について

 2019(令和元)年8月28日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。これには、追加調査した各都道府県別の牛肉、豚肉及び食鳥肉の輸出可能施設一覧が示されている。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000541387.pdf

10 ポリスチレン由来のマイクロプラスチックによる腸への影響に関する論文が公表

 2019(令和元)年9月3日、食品安全委員会が公表した食品安全関係情報に標記情報が掲載されている。
 ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は8月5日、ポリスチレン由来のマイクロプラスチックによる腸への影響に関する論文が公表された旨の情報提供を行った。概要は、以下のとおり。

 BfRの研究チームは、ポリスチレン由来のマイクロプラスチックによる腸組織への影響について研究を行った。その結果、有害な影響を示唆するものはなかった。このことは、研究室での試験で得られた最も重要な結果である。
 研究では、ヒトの腸管上皮細胞(培養)での試験(in vitro)及びマウスでの28日間経口投与試験(in vivo)が行われた。
 In vitro試験では、種々のサイズ(1、4及び10μm)のマイクロプラスチックが用いられた。その結果、最大で直径約4μmのマクロプラスチックが腸管上皮細胞に吸収される場合があることが示された。しかし、動物実験では、大きさが1~10μmのプラスチック粒子を多量投与しても、動物の腸管上皮細胞からは稀にしか検出されなかった。投与量はヒトにおいて現実的と考えられる量を大幅に上回っていたが、マウスの腸組織又は他の臓器への有害な影響は観察されなかった。
 マイクロプラスチックのサイズ及び材料に関しては依然として大きなデータギャップが存在する。したがって、マイクロプラスチックの摂取に関するリスク評価が可能となるためには、更なる試験や研究が必要である。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05200300314

食品安全関係情報
http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2019&from_month=07&from_day=27&to=struct&to_year=2019&to_month=08&to_day=16&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc

11 「ケトジェンヌ」と称する健康食品を使用した消費者に身体被害が生じていることについて

 2019(令和元)年9月6日、消費者庁は消費者安全法第38条第1項の規定に基づき、標記事案を公表した。その主な内容は次の通り。

 「ケトジェンヌ」は、株式会社e.Cycle(本社:東京都渋谷区)が平成31 年3月から販売しているカプセル形状の健康食品で、主にインターネット上で販売されている。
 消費者庁の事故情報データバンクには、「ケトジェンヌ」に関する身体被害に係る事故情報が令和元年4月以降89 件登録されており、本年7月以降の登録件数が増加している。
 登録情報をみると、女性の被害情報が多く(女性62 件、男性26 件、不明1件)、40 歳代以上が多くを占めている)。また、被害の内容として、サプリメントを飲んだら下痢になった、おなかの調子が悪くなったといった消化器障害に分類されるものが多くを占めている。 「ケトジェンヌ」を使用する場合は、上記のような消費者事故等が発生していることを踏まえ、身体被害が生じ得ることに御留意ください。また、「ケトジェンヌ」の使用後に下痢等の体調不良が生じた場合は、速やかに使用を控えた上で、最寄りの医療機関や保健所に相談するようにしてください。

https://www.caa.go.jp/notice/entry/016418/

公表資料
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms204_20190906_1.pdf