「食品衛生行政」国の動き 令和元年11月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政省令の制定について

 2019(令和元)年11月7日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、「食品衛生法等の一部を改正する法律」の施行に関し、「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」,「食品衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令」及び「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令」が公布されたことに伴い。その主な内容及び留意すべき事項を示したものでその主なものは次の通り。

(1)公衆衛生上必要な措置に関する事項に関し、各事業者団体が作成した手引書を厚生労働省のホームページに順次掲載しているので、営業者がHACCPに沿った衛生管理を円滑に行えるよう、手引書に沿った監視指導を実施されたいこと。

(2)法第50 条の2第1項及び第2項の基準が実際に適用されるのは令和3年6月1日であることから、法令に基づく措置については、この省令が施行されてから1年間は旧基準(改正前の法第50 条第2項に基づき都道府県が条例で定めた基準)に基づき行うこと。

(3)改正法附則第5条中「従来の基準によることとする」とは、従来の条例で規定する管理運営基準に則った衛生管理の実施を指すものであり、旧条例基準に従って、衛生管理計画の作成等を求めるものではないこと。

(4) 法第50 条の2第3項に基づき条例で定める公衆衛生上必要な措置は、同条第1項の規定の範囲内で定めることができるとされているが、国の規定において衛生管理の基準を定めることとしたのは、国際整合的な衛生管理の実施を全国の食品等事業者に求めることを目的としていることから、条例において公衆衛生上必要な措置を定める場合にあっては、その必要性等を十分に考慮されたいこと。
 法第50 条の2第3項に基づき条例を定める場合にあっては、厚生労働省と事前に相談されたいこと。

(5) 使用水等の管理について
・ 「飲用に適する水」には水道水を含まないこととしたこと。
・「食品、添加物等の規格基準」において規定される「食品製造用水(水道水又は26 項目の基準に適合する水)」と本規定の「飲用に適する水」は異なることとしたこと。
・殺菌装置又は浄水装置を設置している場合には、装置が正常に作動しているかを定期的に確認し、その結果を記録すること。なお、殺菌装置又は浄水装置の設置は義務ではなく、定期的な水質検査により飲用に適する水であることを確認することでも可能であること。

(6)HACCPに沿った衛生管理の基準について
 小規模な事業者等にあっては、その取り扱う食品の特性又は営業の規模に応じ、施行規則別表第18 第8号において「取り扱う食品の特性又は規模に応じ、前各号に掲げる事項を簡略化して公衆衛生上必要な措置を行うことができる」とあるのは、厚生労働省が内容を確認した手引書に則って衛生管理を実施することにより、HACCP に沿った衛生管理に適合するものとして取り扱うものであること。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000564239.pdf

2 令和元年度食品衛生法等の規定に基づく食品等の表示に係る年末一斉取締りの実施について

 2019(令和元)年11月14日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」に基づき食品衛生の監視指導の強化が求められる年末において、食品等の表示の適正を確保する観点から、全国一斉に標記取締りを実施するもので、特に食品表示基準に定める表示事項(食品表示法第6条第8項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令第5条第1項に定める事項に係るものに限る。)が遵守されるよう監視指導をお願いするとしている。
 なお、実施時期は令和元年12 月1日から同月31 日まで。
 また、関係者に下記事項について周知を図ることとしている(主なもの)。

(1)新基準への移行について
 食品表示基準附則第4条に規定する経過措置により旧基準に基づく表示が認められる猶予期間が、令和2年3月31 日までであること。
(2)アレルゲンを含む食品として特定原材料に準ずるものへの「アーモンド」の追加について。
(3)「ゲノム編集技術応用食品でない」旨の表示については、表示に係る適切な管理体制を有しない食品関連事業者が安易に行うことは望ましくないこと。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_191125_0003.pdf

3 食品表示の適正化に向けた取組について

 2019(令和元)年11月25日、消費者庁表示対策課食品表示対策室は標記について公表した。その主な内容は次の通り。

 消費者庁は、食品衛生の監視指導の強化が求められる年末において、食品の表示・広告の適正化を図るため、都道府県等と連携し、食品表示法、景品表示法及び健康増進法の規定に基づき取組を実施することとした
 国及び都道府県等においては、食中毒などの健康被害の発生を防止するため、従来から食品衛生の監視指導を強化してきたところ、例年どおり、この時期に合わせ、食品等の表示の信頼性を確保する観点から、食品表示の衛生・保健事項に係る取締りの強化を全国一斉に実施する。

(1)実施時期:令和元年12 月1日から同月31 日まで
(2)主な監視指導事項
ア アレルゲン、期限表示等の衛生・保健事項に関する表示
イ 保健機能食品を含めた健康食品に関する表示
ウ 生食用食肉、遺伝子組換え食品等に関する表示
エ 道の駅や産地直売所、業務用加工食品に関する表示
オ 食品表示基準に基づく表示方法の普及・啓発
(3)個人売買における要冷蔵食品の常温配送に係る注意喚起について
 昨今、フリーマーケットアプリケーションサービスやオークションアプリケーションサービスを利用する一部の者の個人売買において、「冷蔵配送では匿名配送ができない。」、「冷蔵配送では配送料が高額になる。」といった安全性への配慮のない、安易な理由により要冷蔵食品を常温配送する事例が散見されていることを踏まえ、食中毒発生防止の観点から別添2の啓発パンフレット等を活用し、一般消費者への注意喚起を図る。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_191125_0003.pdf

4 令和元年度食品衛生法等の表示に係る夏期一斉取締り結果について

 2019(令和元)年11月25日、消費者庁は標記結果を公表した。その主な内容は次の通り。

 地方公共団体(都道府県、保健所設置市及び特別区の保健部局)による、食品等の表示に係る令和元年度夏期一斉取締りの指導件数等は以下のとおり。
・食品表示法の措置概要(件数)
 命令0、指示0、命令及び指示以外の措置1,941
・営業施設への監視指導施設数356,205
・表示違反が確認された施設数
 食品表示法に基づく衛生事項1,108、保健事項157、品質事項522
 健康増進法第31条第1項175
・収去した食品等の検体数、違反件数等
 収去検体数15,658、違反検体数320
 違反の主なもの、アレルゲン37、期限表示21、保存方法18、製造者加工者65、添加物59、栄養成分49、品質事項16
 表示違反に対する措置、命令及び指示以外の措置210
・営業施設別表示基準違反発見施設数に打ち主なもの
 飲食店営業224、魚介類販売業187、菓子製造業137、食肉販売業93、そうざい製造業50

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_191125_0002.pdf

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_191125_0001.pdf