「食品衛生行政」国の動き 2021(令和3)年11月

 
(株)中部衛生検査センター顧問
森田邦雄
 

1 「食品安全総合情報システム」公表

 令和3年11月8日、食品安全委員会が公表した標記システムに次の記事が掲載されている。

  https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?year=&from=struct&from_year=2021&from_month=10&from_day=9&to=struct&to_year=2021&to_month=10&to_day=22&max=100

 米国食品医薬品庁(FDA)は、2021年10月15日、食品安全分析に関する省庁間協力(IFSAC)による2019年の食中毒原因推定に関する年次報告書「複数年の集団感染監視データを用いた米国における2019年のサルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌O157、リステリア・モノサイトゲネス及びカンピロバクターによる食中毒の原因の推定」(14ページ)を公表した。

 概要は以下のとおり。
 米国疾病管理予防センター(CDC)、FDA及び米国農務省食品安全検査局(USDA-FSIS)の3省庁によって設置されたIFSACは、優先すべき4つの病原体(サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌O157、リステリア・モノサイトゲネス及びカンピロバクター)について、1998年から直近の年までの集団食中毒のデータを用いて、特定の感染源に起因する食中毒の割合を推定する方法を開発した。

 2019年の推定のデータは、1998年から2019年までに発生した1,532件の集団食中毒から得られたもので、確認された又は疑われた各食品は、それぞれ単一の食品カテゴリーに割り当てられた。当該手法では、直近5年間の集団食中毒データに最も重みが置かれている。食品は、米国の食品規制当局の分類ニーズに沿った17のカテゴリーに食品を分類するIFSACの作成したスキームを用いて分類された。

1. サルモネラ症は、多種多様な食品が原因となっていた。サルモネラ症の75 %以上は、次の7つの食品カテゴリーに起因していた:鶏肉、果物類、豚肉、種子を持つ野菜(seeded vegetables)(トマト等)、その他の作物(種実類等)、七面鳥肉及び卵類。

2. 腸管出血性大腸菌O157感染症は、ほとんどの場合、野菜の生鮮作物(葉物野菜等)及び牛肉に関連していた。疾病の75 %超が、この2つのカテゴリーに関連していた。

3. リステリア・モノサイトゲネス感染症の多くは、乳製品及び果物類と関連していた。疾病の75 %以上がこれら2つのカテゴリーに起因していたが、リステリア・モノサイトゲネスの集団感染発生が稀であることから、この推定は、他の病原体と比べて信頼性が低い。

4. カンピロバクター症は、乳製品を除くと、鶏肉が最も頻繁に関連していた。乳製品以外による食中毒の80 %以上は鶏肉、その他の魚介類(貝類等)及び七面鳥肉に起因しており、同症は鶏肉に最も関連していた。乳製品を除く理由は、他に理由はあるものの、大部分の食品由来の集団カンピロバクター症は、消費が一般的ではない未殺菌乳と関連しており、我々は、カンピロバクター症の原因食品として乳製品が過大評価されると考えるからである。乳製品を算定から除くことで、鶏肉等、広く消費される食品から、重要な疾病の原因食品が明らかとなる。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05700350105

2 食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の公布について

 令和3年11月18日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。

 これは、食品衛生法施行規則の一部を改正する省令が同日公布され食品衛生法施行規則の一部が改正されたことによるもので、その主な内容は次の通り。

 食品衛生法施行令第35 条第30 号に規定される「密封包装食品製造業」を営もうとする者は、食品衛生法第55 条第1項の規定に基づき、都道府県知事の許可を受けなければならないこととされている。同号において、冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合においてボツリヌス菌その他の耐熱性の芽胞を形成する嫌気性の細菌が増殖するおそれのないことが明らかであって厚生労働省令で定める食品については、密封包装食品製造業の対象から除かれている。このため、「厚生労働省令で定める食品」に係る密封包装食品の製造については、法第55 条第1項に規定する許可の取得は不要となっている。

 改正省令は、科学的知見等を踏まえ、上記の「厚生労働省令で定める食品」に次の食品を新たな食品を追加する。
 施行期日は、公布の日。

玄米、精米、麦類、そばの実、コーヒー生豆、焙煎コーヒー豆、茶、焙煎麦、乾ししいたけ、落花生(生鮮のもの及びゆでたものを除く。)、節類、削節類、焼きのり、乾燥パン粉、ゼラチン、焼ふ、顆粒状の食品又は粉末状の食品、顆粒状又は粉末状の食品を圧縮成形した食品及び顆粒状又は粉末状の食品をカプセルに入れた食品並びにこれらの食品を混合した食品

https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000856820.pdf

3 密封包装食品製造業の許可の対象から除外される食品の追加要請手続について(食品衛生法施行規則第66 条の10 関係)

 令和3年11月18日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。

 これは、今般の省令改正において食品の追加について多くの要望があったことから、検討を引き続き行うため、追加要請手続を定めたものである。

 https://www.mhlw.go.jp/content/000856821.pdf

4 令和3年度食品、添加物等の年末一斉取締りの実施について

 令和3年11月下旬、厚生労働省は、標記通知をホームページに掲載した。

 これは、令和3年10月26日、大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛通知されたものである。

 年末一斉取締りについては、毎年12月に全国の各自治体において統一して行われてきたもので、監視指導に係わるものについては、事前に公表しないという厚生労働省の判断から、これらに関する通知は公表されてこなかった。

 その主な内容は、次の通り。
 食品衛生法第22 条の規定に基づく「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」に基づき、食品流通量が増加する年末における食中毒の発生防止を図るとともに、積極的に食品衛生の向上を図る見地から、例年、年末に全国一斉に食品、添加物等の取締りの実施をお願いしているところです。

 今年度の年末一斉取締りにおいては、新型コロナウイルス感染症拡大とそれに伴う保健所における業務負担の大幅増加に鑑み、次の事項に留意の上、令和元年度食品、添加物等の年末一斉取締り実施要領も参考とし、大量調理施設等食中毒の原因施設となる頻度が高い施設を中心に実施すること。

 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に沿った衛生管理等に係る法第51条の規定が本年6月1日に完全施行したことを踏まえ、施設に立入検査を実施する際には、厚生労働省が内容を確認した手引書に基づき、適切に指導及び助言を行うこと。なお、指導・助言に当たっては、個々の食品等事業者の規模や状況等に応じたきめ細やかな対応を行うこと。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000857008.pdf

5 食品安全関係素材集

 令和3年11月30日、食品安全委員会は標記素材集を公表した。

 これは同委員会が作成した電子顕微鏡写真、調理における写真素材などを集めたもので、当ウェブサイトで公開している画像等の情報を利用される際は、「内閣府ホームページ利用規約外部サイトが開きます」を御覧くださいとしている。

素材集には、次の情報が登載されている。
・食中毒菌の電子顕微鏡写真
・食肉の低温調理
・ハンバーグの調理
・トンカツの調理
・鶏の唐揚げの調理
・カキの調理
・ステーキの調理
・電子レンジによる加熱(白飯)
・電子レンジによる加熱(カレー)・

https://www.fsc.go.jp/sozaishyuu/