「食品衛生行政」国の動き 2022(令和4)年3月

 
(株)中部衛生検査センター顧問
森田邦雄
 

1 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 配付資料

 令和4年3月16日、厚生労働省は、標記資料を公表した。

 これは、3月17日開催される標記部会の資料で、 令和3年食中毒発生状況が報告されている。

  https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24326.html

2 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会器具・容器包装部会(オンライン会議)資料

 令和4年3月23日、厚生労働省は、同部会の配布資料を公表した。

 これは、容器包装のポジティブリスト制度見直しの方向を示すもので、次の資料が添付されている。

 食品用器具及び容器包装のポジティブリスト制度における既存物質の取り扱いに関する整理について(ポジティブリストの再整理の検討状況)

 新リスト案として公表し、事業者等からの意見募集を行う。なお、告示改正までのスケジュールについては、令和7年6月1日施行に向けて示されている。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000916058.pdf

 既存物質におけるポジティブリストの改編と物質の整理の内容として既存物質におけるポジティブリスト改編のイメージが示されている。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000916190.pdf

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24600.html

3 「食品安全総合情報システム」公表

 令和4年3月23日、食品安全委員会が公表した標記システムに次の記事が掲載されている。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?year=&from=struct&from_year=2022&from_month=2&from_day=26&to=struct&to_year=2022&to_month=3&to_day=11&max=100

(1)国際原子力機関(IAEA)は、2022年3月9日、放射線加工及び食品照射分野における仏・ Aerとのさらなる協働に関して報道した。概要は、以下のとおり。

 IAEAとフランスの技術リソースセンター・Aerialは、温度を変化させず、物質を残留させずに病原細菌を死滅させ、食品媒介疾患リスクを低減するために60ヵ国以上で使用されている技術である、食品照射に関する取り組みへの協働を強化する合意を交わした。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05790670301

(2)欧州食品安全機関(EFSA)は、2022年3月8日、食品の高圧処理(HPP: High-Pressure Processing)の有効性及び安全性に関する科学的意見書(195ページ、2022年1月26日採択)を公表した。概要は、以下のとおり。

高圧処理(HPP)は、微生物の不活性化のために用いられる非熱的処理であり、食品は400~600 MPaの静水圧(P)、一般に1.5~6分間の保持時間(t)で処理される。高圧処理を食品に適用する場合、その有効性(微生物の栄養細胞のlog10減少)に影響を与える主な要素には、内因的要素(水分活性及びpH等)、外因的要素(上述「P」及び「t」)並びに微生物関連要素(種類、分類単位、菌株及び生理的状態)がある。

 食品の高圧処理は、常用されている他の処理(例えば低温殺菌)と比較して、追加の微生物的あるいは化学的な食品安全上の懸念をもたらさないと結論づけられた。

 産業界で適用されている現在の高圧処理条件による牛乳/初乳中の病原体の減少は、加熱殺菌に関する法的要件により達成される水準を下回るものとなっている。しかしながら、国際基準機関が提案する達成基準(PC: Performance Criteria)に基づいた関連ハザードの特定のlog10減少(5~8 log10減少)を達成するための高圧処理の最小要件(P/tの組み合わせ)を特定することは可能である。産業的に使用される最も厳しい高圧処理条件(600MPa、6分間)では、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を除き上述のPCを満たすことができる。

 牛乳の十分な加熱殺菌を確認するために広く使用される、乳の内在酵素であるアルカリホスファターゼ(ALP)は、比較的耐圧性が高く、その使用は、過剰処理(overprocessing)の指標として使用に限定される。現在のデータは、産業界が適用する現在の高圧処理条件下で、高圧処理の有効性の検証のための適切な指標の提案を裏付けるほど強固なものではない。

 高圧処理を非加熱喫食用(RTE)加熱調理済み食肉製品に適用する場合における、リステリア・モノサイトゲネスのレベルの特定のlog10減少を実現する高圧処理の最小要件は特定可能であるが、これは他の種類のRTE食品には当てはまらない。これらの特定された最小要件は、対象とするRTE食品中の他の関連病原体(サルモネラ属菌及び大腸菌)を同等又はそれ以上の割合で不活性化すると考えられる。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05790470149

(3)米国食品医薬品庁(FDA)は、2022年3月7日、安全性評価の結果、ゲノム編集された肉用牛由来の製品の市販について低リスク決定(low-risk determination)を下したことを公表した。概要は、以下のとおり。

 スリック被毛の畜牛(Slick-Haired Cattle、滑らかな毛皮の畜牛)に関する決定は、食用動物における意図的遺伝子改変(intentional genomic alteration、IGA)についてのFDAで初めての執行裁量権行使の決定である。  FDAは、当該IGAによりいかなる安全性の懸念も引き起こされないと判断した後、2頭のゲノム編集肉用牛及びその子孫由来の食品を含む製品の市販について、低リスクであるとの決定を下したと本日公表した。当該IGAは、「スリック」被毛として知られる、従来の繁殖畜牛の一部に見られるものと同等の遺伝子型(遺伝子構成)及び短毛の被毛形質をもたらしている。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05790630105

4 令和3年度 新たな加工食品の原料原産地表示制度等に係る表示実態調査結果

 令和4年3月28日、消費者丁は、標記調査結果を公表した。

 これは、令和3年度特別用途食品(特定保健食品を除く)に係る栄養成分、特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)の結果で、その主な内容は、次の通り。

 市場に流通している 特別用途食品2品目、 特定保健用食品17品目及び機能性表示食品 81 品目を 調査対象として買い上げ、許可等申請又は届出の際に提出された資料(以下「申請等資料」といいます。)に記載された 分析方法に のっとって分析試験を実施した。

・関与成分等の調査結果:
①関与成分等が申請等資料の記載どおりに含有されていた品目
   99品目(88社)
②関与成分等が申請等資料の記載どおりに含有されていなかった品目
   機能性表示食品1品目(1社)

5 令和4年度輸入食品監視指導計画の策定について

 令和4年3月28日、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各検疫所長あて標記通知を出した。これは、食品衛生法第23条第1項の規定により、「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」(平成15年厚生労働省告示第301号)に基づき、令和4年度における食品、添加物、器具、容器包装及びおもちゃの輸入について国が行う監視指導の実施に関する計画を別添1のとおり定め、同条第3項の規定により官庁報告として公表したものである。

・計画の主な内容
(1) 輸出国段階での措置
 ○ 輸出国政府との二国間協議、技術協力、計画的な現地調査等の実施
(2) 輸入時段階での措置
 ○ 輸入者への輸入前指導を含む安全性確保に関する指導の実施
 ○ 輸入届出の審査による食品衛生法への適合性の確認
 ○ 輸入届出内容と実際の貨物が同一であることの確認等
 ○ 多種多様な食品等の安全性を幅広く監視するためのモニタリング検査の実施
  (検査件数約100,000件)
 ○ 食品衛生法違反の可能性が高いと見込まれる食品等の輸入者に対する検査の命令
 ○ 食品衛生法違反判明時の輸入者への改善結果報告の指導
 ○ 海外からの問題発生情報等に基づく緊急対応の実施
(3) 国内流通段階での措置
 ○ 食品衛生法違反判明時の回収等の指示
(4) その他
 ○ リスクコミュニケーションの実施

https://www.mhlw.go.jp/content/000759460.pdf

別添1
https://www.mhlw.go.jp/content/000759467.pdf

6 令和3年度野生鳥獣肉の衛生管理等に関する実態調査の結果について

 令和4年3月31日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。

これは、各自治体に依頼していたものをまとめてもので、調査の結果、項目によっては、ガイドラインの遵守状況が十分ではないことが確認されたため、引き続き、ガイドラインの各項目の内容が実施されるよう関係事業者の指導について、特段の対応をお願いするとしており、その概要は、次の通り。

 食肉処理業の許可を有する野生鳥獣の処理施設は、全国で計765 施設であり、昨年調査時から29(前回736)施設増加した。

 処理施設における厚労省ガイドライン遵守状況
「疾病排除」、「汚染を防止するための解体処理」、「冷蔵設備の温度管理」は各項目とも高い実施状況であった。一方、「細菌検査」、「金属探知の実施」、「解体処理の記録」、「トレーサビリティ」、「食道結紮」、「肛門結紮」については、遵守率は低かった。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000923057.pdf