食品衛生行政の動き(国を中心に)2026年1月
株式会社 中部衛生検査センター 顧問 道野 英司
※URLは1月24日現在
1 ノロウイルスによる食中毒事例の報告について
厚生労働省は1月15日、都道府県等に対して昨年10月16日から12月31日の間に報告されたノロウイルスによる食中毒の原因と対策をとりまとめて通知しました。報告された事例の原因の多くが調理従事者を介していると考えられるため、調理従事者が既にノロウイルスに感染していることを想定した手洗いの徹底、体調に関する正確な自己申告、ノロウイルスを含めた検便実施等の指導を要請しました。https://www.mhlw.go.jp/content/001633182.pdf
2 感染症発生動向調査
厚生労働省/国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所によると、第51週(12月15日から21日)の感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、都道府県別の上位3位は富山県(11.17)、群馬県(10.60)、岐阜県(9.78)でした。https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/index.html
3 令和7年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施結果の公表
厚生労働省は12月25日、令和7年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施結果について公表し、都道府県等に通知しました。同一斉取締では立ち入りを行った食肉取扱施設4万3千施設のうち、生食用又は不十分な加熱での販売・提供について指導した施設数は1,692施設、また1万余りの大量調理施設に立ち入りを行いました。https://www.mhlw.go.jp/content/001622627.pdf
4 令和7年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果(中間報告)の公表
厚生労働省は12月22日、令和7年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果の中間報告(上半期分)を公表しました。4月から9月の輸入件数は127万件、重量は1100万トン、検査件数10万8千件、違反件数359件で昨年度と概ね同様でした。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67133.html
5 輸入食品に対する検査情報の更新
(検査命令実施通知)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56307.html
(モニタリング検査実施通知)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56306.html
6 器具・容器包装へのポリエチレン、ポリプロピレンの物理的再生利用が可能に
消費者庁は12月26日、「食品、添加物等の規格基準別表第1第1表に規定する基材を構成するモノマー等について」(通知)を一部改正し、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度において、ポリエチレン及びポリプロピレンの物理的再生処理使用を可能としました。(改正通知)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/notice/assets/standards_cms101_251226_03.pdf
(改正通知(反映後))
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/positive_list_new/assets/standards_cms101_251226_06.pdf
(「食品用器具及び容器包装の製造に用いる合成樹脂の原材料としての リサイクル材料の使用に関する指針」の一部改正)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/notice/assets/standards_cms101_251226_02.pdf
(「器具及び容器包装のポジティブリスト制度に関するQ&A」の 一部改正)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/positive_list_new/assets/standards_cms101_251226_01.pdf
7 食品表示法に基づく食品表示基準の一部改正に係る消費者委員会への諮問
消費者庁は1月13日、食品表示法に基づき、アレルギー表示の対象となる特定原材料にカシューナッツを追加する等食品表示基準の一部改正について消費者委員会へ諮問しました。※食物アレルギーについては解説参照
https://www.caa.go.jp/notice/entry/044743/
8 食品安全に関する意見交換会(放射性物質、食品添加物及び農薬等)の開催及び参加者の募集
消費者庁、内閣府食品安全委員会、厚生労働省及び農林水産省は1月15日、食品安全に関する意見交換会(放射性物質、食品添加物及び農薬等)を対面及びオンラインにより、2月9日に宮城県、2月19日に福岡県、2月25日に大阪府、3月12日(木)に東京都において開催することを公表し、参加者の募集を開始しました。https://www.caa.go.jp/notice/entry/044794/
(解説)食物アレルギー
1 食物アレルギーとは
食物を摂取した際、食物に含まれるたんぱく質(アレルゲン)を身体が異物として認識、過剰に防御して、不利益な症状を起こすことを食物アレルギーといいます。皮膚粘膜症状、呼吸器症状、消化器症状など様々な症状が誘発され、かゆみ、じんましん、せき、くちびるやまぶたの腫れ、さらには短時間で血圧低下、意識障害などの複数臓器に及ぶ全身性の重篤な過敏反応(アナフィラキシー)を起こすこともあります。こうした症状は、年齢、体調、原因となるアレルゲンやその量などによっても異なっています。即時型食物アレルギーのほか、食物依存性運動誘発性アナフィラキシー、新生児・乳児消化管アレルギーなども食物アレルギーに含まれますが、詳しくは専門的な情報を参照願います。食物アレルギーの有症率は乳児期が最も高く加齢とともに減少すると考えられています。食物アレルギー研究会のまとめによると、わが国におけるIgE依存性の食物アレルギー有症率は乳児が7.6%-10%、2歳児が6.7%、3歳児が約5%、保育所児が4.0%、学童以降が6.3%とされ、全年齢を通して1-2%程度としています。また、即時型食物アレルギーの主要な原因食物は乳児期には鶏卵、牛乳、小麦、成長するにつれて牛乳や鶏卵は減少し、魚卵、果物、ナッツ類、甲殻類、小麦などが増加します。
なお、ヒスタミン食中毒や乳糖不耐症は、前記のような免疫的機序を伴わないため食物アレルギーには含まれません。
2 アレルギー疾患対策基本法と食物アレルギー
平成26年に制定されたアレルギー疾患対策基本法では、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎と並んで食物アレルギーが対象とされています。この法律では「アレルギー疾患対策基本指針」を定め、令和3年に改正された指針では、国は、アレルギー疾患を有する者の食品の安全の確保のため、食品表示等について①科学的な知見の集積、➁原因物質の定期的調査による表示の充実、③外食・中食における表示について実行可能性にも配慮しながら、適切な情報提供に関する取組を積極的に推進するなどと定めています。3 食品表示法に基づく食物アレルギー表示
食品の表示制度では平成13年4月から食物アレルギーに関する表示を義務化しました。現在、食品表示法では食物アレルギーの重篤度、症例数を考慮して、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)の8品目を特定原材料に指定し、①特定原材料を含む加工食品、➁特定原材料由来の添加物を含む生鮮食品の一部、③特定原材料由来の添加物が表示の義務付けの対象です。また、過去に一定の頻度で健康被害がみられた特定原材料に準ずるアレルゲンとして20品目を含む旨の表示が推奨されています。担当する消費者庁は引き続き疫学調査を定期的に実施し、特定原材料及び特定原材料に準ずるものを見直すとしています。食物アレルギーを持つ人にとって表示に不備があると、アレルギー症状による健康被害を生じることがあるので、正確な表示が求められます。製品に含まれる個々の特定原材料の総たんぱく質量が数ppmレベルに満たない場合はアレルギー症状を誘発する可能性が極めて低いため、数ppm以上含まれていれば表示が必要になります。このため、事業者は製品に使用されているすべての原材料、添加物を把握します。これらの中に複数の原材料、添加物で構成される複合原材料が使用されている場合には、2次原材料、3次原材料と遡り、表示対象の特定原材料や特定原材料に準ずるもの(以下「特定原材料等」)をすべて確認します。また、製造工程では 特定原材料等を含む製品を製造した後は製造ラインを十分洗浄し、特定原材料等を含まない製品から順に製造を行うなど特定原材料等の他の製品への混入を防止する必要があります。さらに意図しない混入、加工助剤の残存、粉体の飛散対策にも配慮が必要です。こうした徹底した混入防止策を図った上でも、ロットにより意図しない混入の可能性が否定できない場合には、注意喚起表示を行います。輸入食品についても、同様に特定原材料等の使用の有無、意図しない混入の有無や程度を把握して表示を行う必要があります。また、輸出国の表示基準と国内基準が異なることがあるため、注意する必要があります。
表示作成に当たっては、特定原材料等をもれなく表示することが最も重要ですが、重複記載を避ける、誤認を避ける、加工によりアレルゲンではなくなった特定原材料等に由来する食品を除外する、対象としている特定原材料等が8品目か28品目か明確にするなど詳細なルールがあるので、食品アレルギーに関する製造管理や表示については、食品表示法、関連の政省令、告示、食品表示Q&Aさらには加工食品の食物アレルギーハンドブックを十分参照する必要があります。
4 外食などにおける食物アレルギー情報の提供
現行の食品表示制度は、飲食店などの業態に食物アレルギー表示を義務付けていません。正確な食物アレルギー情報を消費者に提供するためには、加工食品のような詳細な製品や製造の管理が必要ですが、これらの業態の事業や施設の規模では相当な困難が伴います。このため、外食・中食業界では「外食・中食におけるアレルゲン情報の提供に向けた手引き」を自主的に食物アレルギー情報の提供に取り組もうとする事業者のためのガイドラインとして作成しています。消費者庁が実施した「外食・中食における食物アレルギーに関する情報提供の取組に係る実態調査」では、「食物アレルギーに関する対応は必要だと思う」と回答した事業者は80%を超えたものの、「現在、食物アレルギーに関する対応を行っている」と回答した事業者は51%、このうち、最も行われている対応が「お客様からの問合せに対する口頭での回答」で89%、「メニュー表への表記」は43%、「ホームページ上での周知」は41%、「アレルギーチェックシート等の専用用紙を用いたお客様確認」は23%にとどまりました。
食物アレルギーのある人や不安がある人が安心して外食などを楽しむには、飲食店などの業態でも、食物アレルギー対応を行う事業者や店舗の拡大、口頭だけではなくメニュー表への記載やホームページ上での周知などの利用しやすい情報提供方法の推進、これらの情報の正確性を確保するための原材料確認や厨房などの工程管理の見える化などが進むことが望まれます。