食品衛生行政の動き(国を中心に)2026年2月
株式会社 中部衛生検査センター 顧問 道野 英司
※URLは2月19日現在
1 営業許可申請の標準的様式等の一部改正
厚生労働省は1月27日、昨年7月に公布した「従業員が常駐せず全自動調理器を用いて行う飲食業」に関する食品衛生法施行規則の改正省令の本年4月の施行に伴い、営業許可申請の標準的な様式等について改正を行い、都道府県等に通知しました。https://www.mhlw.go.jp/content/001643460.pdf
2 従業者が常駐せず全自動調理機を用いて行う飲食店営業に関するQ&A」
厚生労働省は1月27日、「従業者が常駐せず全自動調理機を用いて行う飲食店営業に関するQ&A」を厚生労働省ホームページに掲載しました。https://www.mhlw.go.jp/content/001643459.pdf
3 感染症発生動向調査
厚生労働省/国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所は、2026年5週(1月26日~2月1日)の感染症週報で感染性胃腸炎について「定点当たり報告数は第2週以降増加が続いており、過去5年間の同時期の平均と比較してやや多い。都道府県別の上位3位は群馬県(17.12)、東京都(14.91)、大分県(14.47)である。」としています。また、第6週(2月2日~2月8日)の速報値の上位は大分県(16.58)、東京都(14.34)、島根県(13.82)です。(解説参照)https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/index.html
4 輸入食品に対する検査情報の更新
(検査命令実施通知)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56307.html
(モニタリング検査実施通知)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56306.html
5 健康食品の適正な使用を促す情報の発信
消費者庁は1月23日、いわゆる「健康食品」に関する啓発事業を実施し、幅広い世代に「健康食品は薬の代わりにはならない」等の健康食品の誤った認識について気付きを促すソーシャルメディアへの情報発信、診断サイト開設、啓発イベント開催を行うと公表しました。https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms203_260122_01.pdf
6 食品、添加物等の規格基準の一部改正について(器具及び容器包装に係る用途別規格の整理等に関する取扱い)」の一部改正
消費者庁は2月13日、昨年5月に改正した器具・容器包装の規格基準についてその経過措置を2年から5年に延長する等について告示を改正、施行し、あわせて関係通知を改正しました(昨年5月30日に器具・容器包装の規格基準についてポジティブリスト制度の導入に伴い、その一部を改正して用途別規格の一部削除等を行いました。)。(告示)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/notice/assets/standards_cms101_260213_01.pdf
(施行通知)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/notice/assets/standards_cms101_260213_02.pdf
7 「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」を取りまとめ
農林水産省は2月3日、2025年の農林水産物・食品の輸出額は、1兆7,005億円となり、前年比で12.8%の増加、+1,934億円の増加となったことを公表しました(農産物:11,008億円(対前年比+12.1%)、林産物:735億円(対前年比+10.1%)、水産物:4,231億円(対前年比+17.2%)、少額貨物:1,031億円(対前年比+5.3%)、輸出先は、1位米国、2位香港、3位台湾)。https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/kikaku/260203.html
https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/kikaku/attach/pdf/260203-1.pdf
(解説)
「感染症週報と食中毒対策」
食中毒の原因となる細菌やウイルスの中には、腸管出血性大腸菌、赤痢菌、チフス菌、ノロウイルスのような感染力が強く、感染した調理従事者が食品を介して感染を広げるため、感染症としての対策が重要なものがあります。これらの感染症の患者は結核、インフルエンザ、新型コロナウイス感染症などと同様、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」)により、診断した医師に届出義務があります。こうした診断情報により、全国の感染症の発生や流行を探知し、流行防止対策、医療従事者や国民への情報提供が可能になっています。
国立健康危機管理機構国立感染症研究所ではこれらの感染症患者の情報を集計、分析して全国の発生状況を毎週、感染症週報として公表しています(国立危機管理機構は昨年4月に国立感染症研究所と国立国際医療センター研究所が統合し、総合医療研究センターとして設立されました)。
感染症法では届出の対象となる感染症を5つの類型に分類しています。1類感染症は感染力や重篤性からみた危険性が極めて高い感染症で、エボラ出血熱など7疾病が指定され、2類感染症は危険性が高い感染症として結核や急性灰白髄炎(ポリオ)など7疾病が指定されています。3類感染症は特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こしうる感染症として腸管出血性大腸菌、細菌性赤痢、コレラ、腸チフス、パラチフスが指定されており、これらは食品を通じて感染する、食中毒と関連する疾病です。また、4類感染症動物や飲食物などの物件を介して人に感染する44の感染症としてE型肝炎、A型肝炎などが指定されています。これらの1類から4類までの感染症は診断した医師は直ちに届出を行う必要があります。
5類感染症は国が感染症動向を調査し、必要な情報を国民一般や医療関係者に提供・公開していくことによって発生・まん延を防止する感染症で、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、麻疹、風疹、感染性胃腸炎など疾病が指定されています。麻疹、風疹など一部は全数の届出、その他は定点として指定された医療機関から発生情報が報告されます。
これらの毎週公表される感染症週報を見ると、3類や4類の感染症のうち、食中毒関連の細菌やウイルスによるものとしては、腸管出血性大腸菌、腸チフス、E型肝炎、A型肝炎などが年間を通じて発生しています。感染地域では国内のほか、アジア地域の国など海外もあります。推定原因は主に医師が患者から聞き取った情報から報告しているため、行政が調査を行った結果ではありませんが、具体的な食品名があげられているものもあり、食中毒発生との関連が疑われる事例があります。
また、5類感染症では毎年秋から冬を中心に感染性胃腸炎が増加します。感染性胃腸炎はノロウイルスやロタウイルスなどによるものが多く、主症状は嘔吐や下痢で、小児科医療機関2,000か所から発生状況が報告されています。感染性胃腸炎の多くがノロウイルスによるもので、感染性胃腸炎の患者が増加すると、有症状、無症状の感染者が食品取扱者にも増加するため、ノロウイルス食中毒の発生リスクの高い時期、地域の判断の目安となります。2026年5週(1月26日~2月1日)の感染症週報では「定点当たり報告数は第2週以降増加が続いており、過去5年間の同時期の平均と比較してやや多い。都道府県別の上位3位は群馬県(17.12)、東京都(14.91)、大分県(14.47)である。」としています。感染性胃腸炎の発生は昨年3月、4月には過去5年と比較して最も多い状況でしたが、昨年10月以降は少し落ち着きました。しかし、年初から急増して1月末から2月上旬には過去5年では最も多い水準となっています。
ノロウイルスは非常に感染力が強く、10個から数十個の経口摂取で感染が成立すると考えられています。感染者のふん便1グラム当たり最大100億個のウイルスが排出されるため、目に見えない量の感染者のふん便で他の人へ感染するリスクがあります。
厚生労働省では、ノロウイルスによる食中毒の原因の多くが調理従事者を介していると考えられるため、調理従事者が既にノロウイルスに感染していることを想定して、手洗いの徹底、体調に関する正確な自己申告、ノロウイルスを含めた検便実施等の指導について、飲食店、大量調理施設、生食用野菜等のそのまま喫食する食品の製造施設の事業者に対して、注意を喚起しています。