食品衛生行政の動き(国を中心に)2026年7月
株式会社 中部衛生検査センター 顧問 道野 英司
※URLは7月23日現在
1 食品表示適正化に向けた夏期一斉取締りの実施
消費者庁は6月25日、7月1日から7月31日までの間、食品表示の取締り強化を都道府県等に通知したことを公表しました。重点事項は、①本年4月にアレルギー表示の特定原材料とした「カシューナッツ」の適正表示の徹底とアレルギー表示の推奨品目とした「ピスタチオ」の表示指導、➁違反事例に占める割合が多い原産地・原料原産地表示の監視指導の徹底、➂カンピロバクター食中毒予防の周知、④清涼飲料水と誤認をさせない「経口補水液」の陳列・掲示方法の周知です。https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms203_260625_01.pdf
2 食品中の農薬及び動物用医薬品の残留基準の改正
消費者庁は7月3日、食品、添加物等の規格基準の一部を改正し、 農薬アフィドピロペン、農薬グルホシネート、動物用医薬品ジニトルミド、農薬フェリムゾン、農薬ペントキサゾン及び農薬メピコートクロリド の残留基準を改正しました。(施行通知)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/pesticide_residues/notice/assets/standards_cms208_260703_01.pdf
3 「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」に係る項目解説及び自己点検表の改正
消費者庁は6月19日、標記指針を推進するための項目解説及び自己点検表の一部を改正し、都道府県等に周知を依頼しました。https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/health_food/assets/standards_cms106_260622_01.pdf
4 輸入食品に対する検査情報の更新
(検査命令実施通知)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72154.html
(モニタリング検査実施通知)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000201772_00009.html
(違反事例)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/ihan/index.html
5 食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価の案件候補の募集
食品安全委員会は7月1日、リスク評価の案件候補の募集を開始しました(7月31日まで)。同委員会は食品安全基本法に基づき、国民の健康への影響が大きいと考えられるもの等について、自らの発意により食品の安全性に関するリスク評価を行っています。https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_kikaku_selftasking_080701.html
6 食品中の放射性物質の調査結果(令和7年9~10月調査分)
消費者庁は6月26日、令和7年9月から10月に全国13地域で流通する食品中の放射性セシウムから受ける放射線量の調査結果を公表しました。年間放射線量として0.0006~0.0010ミリシーベルトと推定され、年間上限線量1ミリシーベルトの0.1%程度であり、極めて小さいとしました。https://www.caa.go.jp/notice/entry/046699/
(解説)輸入食品のアフラトキシン汚染
今年6月の東京の平均気温は昨年に比べて低かったようですが、7月に入って気温が高い日が続き、今年も猛暑のようです。高温多湿の時期には、細菌性食中毒とともに、腐敗、変敗、カビ発生などの食品の品質や施設設備の管理にもさらなる注意を要する時期です。カビ毒のアフラトキシンは、食品安全分野、特に輸入食品で長く課題とされてきました。厚生労働省の輸入食品の検査結果を見ても、昭和40年代に検査が強化されて以降、ピーナッツ、香辛料、トウモロコシ、乾燥果実などからの検出事例が継続し、近年でも輸入食品の年間の違反は100件を超え、違反事例の約15%を占めています。
アフラトキシンはアスペルギルス属のカビの一部が産生する毒素です。肝臓がんを引き起こす発がん性物質であることがよく知られ、さらに急性、慢性、遺伝毒性、免疫抑制などの毒性が確認されています。また、加熱に強く、食品の製造加工や調理では分解、失活しないため、原料段階での管理が重要となります。
アフラトキシンには複数のタイプがあり、検出される主要なものは4種類(B1、B2、G1、G2)です。また、飼料中のアフラトキシンB1、B2が動物の体内で代謝され、アフラトキシンM1、M2として乳中から検出されます。食品衛生法では、総アフラトキシン(B1、B2、G1、G2の合計)10 μg/kg(10ppb)を超えて含有する食品、アフラトキシンM1が 0.5 µg/kgを超えて含有する乳はいずれも同法違反となります。コーデックスにおいて国際基準が設けられているほか、主要国も基準を設けて対策を講じています。
コーデックスの資料によると、海外の穀類からのアフラトキシンの検出例はトウモロコシ、小麦、米等が主要なものです。発生要因は干ばつで弱った植物や害虫の食害部位などに環境中のカビが付着して成育、毒素を産生します。わが国ではトウモロコシ(デントコーンといって、コーンスターチ、コーンオイルなどの原料となる)を年間約500万トン輸入し、その半分はアメリカ産に依存していますが、年間数トンから数十トンがアフラトキシンの検出により、法違反となって輸入できないケースとなっています。年によって検出状況が変化しますが、これは生育環境、特に干ばつ、収穫期の降雨量など自然現象の影響が大きいようです。国内での検出報告は稀で、農林水産省によると、2011(平成23)年に国内で生産された米でアフラトキシン検出事例が確認されたほか、中小規模の穀類の乾燥調製施設のほこりにアフラトキシン作るカビが含まれていたとされています。このため、農林水産省は米の乾燥調製、貯蔵、出荷を行っている小中規模の生産者に向けて、「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」を策定し、対策を講じています。
また、ピーナッツやナッツ類について令和6年(2024年)と10年前の平成26年(2014年)の輸入検査の結果を比較すると、ピーナッツについては、中国産は違反率1.1パーセントから0.6パーセントに、アメリカ産は1パーセントからゼロに改善しました。一方、ナッツ類については、アメリカ産が0.6パーセントから1.2パーセントとなり、検出事例の多くを占めるアーモンドの安全対策が課題となってきました。
カリフォルニアのアーモンド協会のホームページによると、大学への委託研究でアーモンド畑に棲みついているネーベルオレンジワームという虫の食害がアーモンドのアフラトキシン汚染の原因のひとつであることがわかり、サンプル検査、加工に加えて、害虫対策のための果樹園環境の改善を進めています。
アーモンドの実の収穫は、機械で木をゆすって地面に実を落とし、乾燥、殻をむいて出荷します。落下せずに木に残ったアーモンドの実にネ―ベルオレンジワームが入って越冬するので、冬の間にこれらの木に残った実を除去します。また、収穫期にはアーモンドを速やかに収穫し、ネーベルオレンジワームの成熟、産卵を防ぎます。収穫後の殻付きのアーモンドは水分が多いとカビが繁殖し、アフラトキシンを産生するので、湿度の管理が重要となります。木から落としたアーモンドは畑の地面から回収され、野積みして乾燥させます。ここで雨が降ったり、積み上げ方が悪かったりすると水分が溜まってカビが生えるので、整然と積み上げ、カバーします。
こうした対策をとって、アメリカ側で検査され、安全性が確認されたものについて、輸入検査が緩和されており、輸出国側の対策が効果を上げている例と言えそうです。