「食品衛生行政」国の動き 平成26年7月

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 食肉等の生食に関する対応について(案)が示された

平成26年6月20日開催された、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会食肉等の生食に関する調査会において「食肉等の生食に関する対応について(案)」が示された。 この中で、生食に係る食肉等の種別ごとの対応方針として次の点が示されており、今後、豚の食肉・内臓について、法的に生食用としての提供を禁止する(具体的には、豚の食肉・内臓は中心部加熱が必要である旨の規格基準を設定する)ために、食品安全委員会の意見を求めた後、食品衛生法第11条第1項に基づく規格基準が設けられるものと思われる。 食肉等の種別ごとの対応方針 ① 生食による公衆衛生上のリスクが高く、検討の優先順位が高いもの ○ 豚の食肉・内臓については、 ・ 危害要因がE型肝炎ウイルス(以下、HEV)であり、危害要因による健康被害の重篤性等が大きく、HEV が血液や筋肉から検出されており内部汚染であること ・ これまでは社会的通念として生食すべきではないことは認識されていたが、飲食店等おいて提供実態があること ・ 豚は、HEVに加えて寄生虫による危害も考えられるが、内部までの加熱以外のリスク低減策が考えられないこと を踏まえ、法的に生食用としての提供を禁止する(具体的には、豚の食肉・内臓は中心部加熱が必要である旨の規格基準を設定する)。 その他留意すべき事項 既に規格基準が設定されている牛肝臓については、現在実施されている牛肝臓に対する放射線照射に関する研究を実施し、有効性及び安全性の検討を引き続き実施することが重要である。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000048838.pdf

2 表示に関する調査会報告書とりまとめ(案)示された 平成26年6月25日開催された消費者委員会の第26回食品表示部会において、従来検討されてきた食品表示法に基づく表示に関し「栄養表示に関する調査会、生鮮食品・業務用食品の表示に関する調査会、加工食品の表示に関する調査会報告書とりまとめ(案)」が示された。 内容は、「栄養表示に関する調査会 報告書」、「生鮮食品・業務用食品の表示に関する調査会報告書」及び「加工食品の表示に関する調査会報告書」と分けてまとめてあり、従来からの検討内容が記載されている。 この中で、製造所固有の記号に関し、加工食品の表示に関する調査会報告書において次のように記載されており、④に書いてある通り現状維持を含め、今後更に検討されることとなっている。 4-3 製造所固有記号について 新基準案では、次の場合、製造所固有記号による表示を認める方向性(以下、「基本的考え方」という。)が示された。 (1) 包材の共通化という事業者のメリットを維持する観点から、原則、2以上の製造所において同一商品を製造・販売する場合のみ、固有記号の利用を認める。 (2) 固有記号を利用する事業者には、消費者からの問合せに応答する義務を課す。 (3) 一定の猶予期間を設けて、現在届出がなされている固有記号を全廃して新固有記号制度へと移行し、①固有記号に有効期限を設け更新制とする、②届出内容の変更・廃止届出を新たに義務付ける。 (4) 消費者庁に新固有記号データベースを構築し、消費者からの検索が可能 となる一般開放及び事業者からの電子申請手続について検討する。 基本的考え方のうち、(2)~(4)の方向性はとりまとめられたが、(2)については、電話での応答によってはトラブルが生じることが考えられるため、努力規定とすべきとの意見が出され、(1)については、次の通り、基本的考え方に代わる意見が出され、継続審議となった。 ① 表示基準府令第1条第2項第3号において、製造所又は加工所の所在地を表示することが原則であり、事業者が製造所固有記号を利用するメリットのために行政が新固有記号データベースの構築・運用費用を負担する根拠が不明瞭であるため、例外規定である製造所固有記号は原則廃止するべきである。 ② 例外規定を認める条件を明確化し、表示面積により記載が難しいなど、定められた条件を満たした場合のみ製造所固有記号による表示を可能とする。 ③ 冷凍食品農薬混入事件を受けて、製造所の所在地等に即時にたどり着くことができなかったという事実を踏まえ、自社の複数の工場で生産をしている場合のみ製造所固有記号による表示を可能とする。 ④ 行政目的の制度として不備がなければ、現行制度の問題点が整理されていない段階で実態を踏まえずに大きな改正をすべきではなく、現時点では、明らかに問題とされているデータベースの構築など(2)~(4)の取組みに留めるべきである。 栄養表示に関する調査会、生鮮食品・業務用食品の表示に関する調査会、加工食品の表示に関する調査会報告書とりまとめ(案) http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/140625_shiryou1.pdf 栄養表示に関する調査会報告書 http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/140625_shiryou2-1.pdf http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/140625_shiryou2-2.pdf 生鮮食品・業務用食品の表示に関する調査会報告書 http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/140625_shiryou3-1.pdf http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/140625_shiryou3-2.pdf 加工食品の表示に関する調査会報告書 http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/140625_shiryou4-1.pdf http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/140625_shiryou4-2.pdf3 「食品への意図的な毒物等の混入の未然防止等に関する検討会」報告書公表 平成26年6月27日、農林水産省は、平成26年4月から開催してきた、「食品への意図的な毒物等の混入の未然防止等に関する検討会」の報告書を取りまとめ公表した。 これは、平成25年12月29日、株式会社アクリフーズ群馬工場が製造した数種類の冷凍食品から極めて高濃度(最大15,000 ppm)のマラチオンが検出され、群馬工場が製造する全製品を自主回収すると記者会見で公表し、その後、同工場の準社員が群馬工場内で冷凍食品の製造中にマラチオンを故意に混入した容疑で平成26年1月25日に逮捕されたことを受けて、㈱マルハニチロHは、食品安全管理、危機管理対応に関するグループの抜本的対応策について検討するため第三者検証委員会を設置し、同委員会が平成26年5月29日にとりまとめた最終報告(提言)に基づき、対策を進めている。 これを受け、関係府省庁は平成26年3月14日に消費者安全情報総括官会議を開催し、政府としての今後の対応方針をとりまとめた。この中で、農林水産省は、「事業者による食品防御等の取組について検討する」こととし、外部有識者からなる「食品への意図的な毒物等の混入の未然防止等に関する検討会」を平成26年4月に設置し、今般の事案から得られる食品事業者に対する教訓について検討するとともに、この中で指摘された食品事業者による食品防御の取組の促進について検討し、これらの検討結果について広く関係者への共有を図ることとするものである。 本報告書は、食品防御の考え方を確認するとともに、㈱アクリフーズの一連の事案から食品事業者が教訓とすべき事柄や課題について議論を行ったもので、取りまとめのポイントは次の通り 1.今般の食品への意図的なマラチオンの混入事案から得られる教訓 (1)危機管理に関する問題 (2)食品事業者のガバナンス (3)食品防御 2.食品事業者が食品防御に取り組むに当たり参考となる事項 (1)食品防御に対する意識を向上させる (2)意図的な混入をしたいと思わせない職場の風土をつくる (3)意図的な混入が実行し難い環境をつくる 3.検討内容の食品事業者への普及等 http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/seisaku/pdf/140627-01.pdf4 食品衛生月間の実施 平成26年7月1日、厚生労働省は、食品衛生管理の徹底及び地方公共団体等におけるリスクコミュニケーションへの取組の充実等を図るため、8月の1か月間を「食品衛生月間」と定め、実施にあたっては「食品衛生月間実施要領」を定め、各地方公共団体のほか、関係省庁、関係団体等にご協力いただく旨公表した。 その趣旨としては、食品は、国民の生命及び健康に密接な関わりを有し、その衛生の確保及び向上を図ることは、国民が健やかな日常生活を営む上で極めて重要である。 昨年の食中毒発生数については、患者数20,802人、事件数については931件、死者数は1人であった。(確定値) 特に夏期は、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌といった細菌による食中毒が多発しており、規模の大きい食中毒事例も多発している。 このような状況の中、国民が健康で安心できる食生活を送るためには、食品等事業者はもとより、国民に対する食品衛生思想の普及・啓発、食品の安全性に関する情報提供及びリスクコミュニケーションの推進並びに事業者のコンプライアンスの徹底を通じた食の安全の確保を図ることが必要不可欠である。 このため、本年度においても、8月を食品衛生月間と定め、全国的に食品衛生思想の普及・啓発をより一層強力に推進するものである。とし、主催は厚生労働省、都道府県、保健所設置市及び特別区実施期間は、平成26年8月1日(金)から同月31日(日)までの1か月間 等としている。 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049664.html5 食品表示基準(案)についての意見募集 平成26年7月7日、消費者庁食品表示企画課は食品表示基準(案)についての意見募集を開始した。募集の趣旨は、昨年の第183回通常国会において、「食品表示法」が成立し、消費者庁では、食品表示法の施行に向けた準備を進めきた。食品表示法に基づく新たな食品表示基準の検討については、消費者委員会食品表示部会において、昨年11月より約半年にわたり、議論されたところで、今般、その内容を踏まえた食品表示基準(案)を作成したので、広く国民の皆様の御意見を募集するというもので、寄せられた御意見については、内容を検討の上、食品表示基準作成の参考とするとしている。 なお、意見募集期間は、平成26年7月7日(月)から平成26年8月10日(日)までである。 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/140707_iken.pdf 食品表示基準(案)は340ページにわたり、その主なものは次の通りである。 第一章 総則 (適用範囲) 第一条 この府令は、食品関連事業者等が、加工食品、生鮮食品又は添加物を販売する場合について適用する。ただし、加工食品又は生鮮食品を設備を設けて飲食させる場合には、第四十条の生食用牛肉の注意喚起表示の規定を除き、適用しない。 (定義) 第二条 この府令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。一 加工食品~十七 特定分別生産流通管理(略) 第二章 加工食品 第一節 食品関連事業者に係る基準 第一款 一般用加工食品 (横断的義務表示) 第三条 食品関連事業者が容器包装に入れられた加工食品(業務用加工食品を除く。以下この節において「一般用加工食品」という。)を販売する際(設備を設けて飲食させる場合を除く。第六条及び第七条において同じ。)には、次の表の上欄に掲げる表示事項が同表の下欄に定める表示の方法に従い表示されなければならない。ただし、別表第四の上欄に掲げる食品にあっては、同表の中欄に掲げる事項については、同表の下欄に定める方法に従い表示されなければならない。(注、上欄に記載されている主なもの) 名称、保存の方法、消費期限又は賞味期限、原材料名、添加物、栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム)の量(注、ナトリウムの量にあっては食塩相当量(ナトリウムの量に二.五四を乗じたもの。)としている。)及び熱量、食品関連事業者の氏名又は名称及び住所(食品関連事業者のうち表示内容に責任を有する者の氏名又は名称及び住所)、製造所又は加工所の所在地(輸入品にあっては、輸入業者の営業所所在地)及び製造者又は加工者の氏名又は名称(輸入品にあっては、輸入業者の氏名又は名称)(注、食品関連事業者の住所又は氏名若しくは名称が製造所若しくは加工所の所在地又は製造者若しくは加工者の氏名若しくは名称と同一である場合は、製造所若しくは加工所の所在地又は製造者若しくは加工者の氏名若しくは名称を省略することができる。) また、原則として同一製品を二以上の製造所で製造している場合にあっては、製造者の住所及び氏名並びに製造者が消費者庁長官に届け出た製造所固有の記号(アラビア数字、ローマ字、平仮名若しくは片仮名又はこれらの組合せによるものに限る。以下この項において同じ。)又は販売者の住所、氏名及び販売者である旨並びに製造者及び販売者が連名で消費者庁長官に届け出た製造の製造所固有の記号(以下「製造所固有記号」という。)の表示をもって製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称の表示に代えることができる、と現行の規定の通り販売者名のみによる記載が認められている。 なお、この場合においては、次に掲げるいずれかの事項を表示しなければならない。 一 製造所の所在地又は製造者の氏名若しくは名称の情報の提供を求められたときに回答する者の連絡先 二 製造所固有記号が表す製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称を表示したウェブサイトのアドレス(二次元コードその他のこれに代わるものを含む。) 三 当該製品を製造している全ての製造所の所在地又は製造者の氏名若しくは名称並びに製造所固有記号 2 前項に定めるもののほか、食品関連事業者が一般用加工食品のうち次の表の上欄に掲げるものを販売する際(設備を設けて飲食させる場合を除く。)には、同表の中欄に掲げる表示事項が同表の下欄に定める表示の方法に従い表示されなければならない。 (注、表示の項目としてアレルゲン、特定保健用食品、遺伝子組換え食品、乳児用規格適用食品、原料原産地名が記載されている。) (個別的義務表示) 第四条 前条に定めるもののほか、食品関連事業者が一般用加工食品のうち別表第十八 の上欄に掲げるものを販売する際(設備を設けて飲食させる場合を除く。)には、同表の中欄に掲げる表示事項が同表の下欄に定める表示の方法に従い表示されなければならない。ただし、容器包装の面積が三十平方センチメートル以下である一般用加工食品にあっては、同表の中欄に掲げる表示事項の表示を省略することができる。 (義務表示の特例) 第五条 前二条の規定にかかわらず、次の表の上欄に掲げる場合にあっては、同表の下 欄に掲げる表示事項の表示は要しない。 (推奨表示) 第六条 食品関連事業者は、一般用加工食品を販売する際には、次の各号に掲げる事項の表示を積極的に推進するよう努めなければならない。 一 飽和脂肪酸の量 二 食物繊維の量 (任意表示) 第七条 食品関連事業者が一般用加工食品を販売する際に、次の表の上欄に掲げる事項 (特色のある原材料等に関する事項にあっては、酒類を販売する場合及び食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合を除く。)が当該一般加工食品の容器包装に表示される場合には、同表の下欄に定める方法に従い表示されなければならない。 第八条(表示の方式等) (表示禁止事項) 第九条 食品関連事業者は、第三条、第四条、第六条及び第七条に掲げる表示事項に関 連して、次に掲げる事項を一般用加工食品の容器包装に表示してはならない。 一 実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語 二 第三条及び第四条の規定により表示すべき事項の内容と矛盾する用語 三 乳児用規格適用食品以外の食品にあっては、乳児用規格適用食品である旨を示す用語又はこれと紛らわしい用語 四~十一 省略 第二款 業務用加工食品 第十条 食品関連事業者が業務用加工食品を販売する際(義務表示) 第十一条~第十四条 省略 第二節 食品関連事業者以外の販売者に係る基準 第十五条~第十七条 省略 第三章 生鮮食品 第一節 食品関連事業者に係る基準 第一款 一般用生鮮食品 第十八条~第二十三条 省略 第二款 業務用生鮮食品 第二十四条~第二十八条 省略 第二節 食品関連事業者以外の販売者に係る基準 第二十九条~第三十一条 省略 第四章 添加物 第一節 食品関連事業者に係る基準 第三十二条~第三十六条 省略 第二節 食品関連事業者以外の販売者に係る基準 第三十七条~第三十九条 省略 第五章 雑則 (生食用牛肉の注意喚起表示) 第四十条 食品関連事業者が牛の食肉(内臓を除く。)であって生食用のものを容器包 装に入れずに消費者に販売する場合には、次に掲げる事項が店舗の見やすい場所に表示されなければならない。この場合において、表示は、邦文をもって、当該牛肉を一般に購入し、又は使用する者が読みやすく、理解しやすいような用語により正確に行われなければならない。 一 一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがある旨 二 子供、高齢者その他食中毒に対する抵抗力の弱い者は食肉の生食を控えるべき旨 (努力義務) 第四十一条 食品関連事業者等は、第三条及び第四条に掲げる事項のうち、第五条の規定により表示の義務がない事項について表示しようとするときは、同条に定める方法により表示するよう努めなければならない。 2 食品関連事業者等は、この府令に基づく表示を適正に行うために必要な限度において、その販売する食品及び当該食品関連事業者等に対して販売された食品の表示に関する情報が記載された書類を整備し、これを保存するよう努めなければならない。 附則 (施行期日) 第一条 この府令は、食品表示法の施行の日から施行する。 (食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令等の廃止) 第二条 次に掲げる府令及び告示は、廃止する。 省略 (経過措置) 第三条 施行日から二年を経過した日【検討中】までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、第二章の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。 2 前項の規定にかかわらず、施行日から五年を経過した日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)の第三条第一項に規定する栄養成分の量及び熱量に係る表示については、同項及び同条第三項、第五条、第八条並びに第九条の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。 第四条 施行日から一年を経過した日【検討中】までに製造され、加工され、又は輸入される添加物(業務用添加物を除く。)及び同日までに販売される業務用添加物の表示については、第四章の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。 2 前項の規定にかかわらず、施行日から五年を経過した日までに製造され、加工され、又は輸入される添加物(業務用添加物を除く。)の第三十二条第一項に規定する栄養成分の量及び熱量に係る表示については、同項及び同条第四項、第三十三条、第三十五条並びに第三十六条の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。 第五条 省略 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/140707_kijun.pdf6 夏期の食中毒予防のための消費者等への普及啓発 平成26年6月9日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部企画情報課長及び監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛てに夏期の食中毒予防のため、消費者及び関係事業者に対する食品衛生に関する正しい知識の普及啓発の実施方通知を出した。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/140609syokuchudokuyobou.pdf この中で次の関係情報が示されている。 ○ 政府広報オンラインお役立ち情報 http://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/ ○ 政府広報オンラインお役立ち情報 「ご注意ください!お肉の生食・加熱不足による食中毒」 http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201005/4.html ○ 政府インターネットテレビ 「つけない!増やさない!やっつける!家族と自分を食中毒から守る予防法」 http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg6419.html ○ 厚生労働省家庭でできる食中毒予防の6つのポイント http://www1.mhlw.go.jp/houdou/0903/h0331-1.html (リーフレット) http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/point0709.pdf ○ 食品安全委員会食中毒予防のポイント http://www.fsc.go.jp/sonota/shokutyudoku.html7 平成26年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施 平成26年6月13日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部長名をもって各都道府県知事等に夏期に多発する食中毒等の食品による事故の防止を図るとともに、積極的に食品衛生の向上を図る見地から、例年のとおり、全国一斉に標記取締りを行うこととしたので、実施要領に基づき遺漏なく実施されるようお願いする通知を出した。 実施期間は原則として、平成26年7月1日(火)から7月31日(木)この中で特に、大量調理施設等に対する監視指導を行うとともに、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター等による食中毒防止対策等について監視指導を指示し、大量調理施設については次の通り記載している。 ① 弁当屋、仕出し屋、旅館等 いずれの施設も大規模な食中毒が発生する可能性が高いことから、同施設に対し、「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成9年3月24日付け衛食第85号別添(最終改正:平成25年10月22日付け食安発1022第10号))、「腸管出血性大腸菌感染症による患者の集団発生について」(平成14年7月5日付け健感発第0705001号・食監発第0705003号)及び「大規模腸管出血性大腸菌食中毒の防止について」(平成19年7月31日付け食安監発第0731002号)を参考に、監視指導を行う。 旅館については、品質の劣化しやすい生もの等を調理する機会が多いという特殊な事情を踏まえ監視指導を行う。 また、生食用魚介類加工品は、冷蔵保存下を出てから可能な限り速やかに(最大2時間を目安にする。)消費されるよう指導する。 ② 学校、病院等 平成25年度の取締りの結果、依然として学校・病院・診療所において、設備及び食品の取扱いについて違反が多く発見されている。監視指導に当たっては、過去の監視において問題があった施設、過去に食中毒が発生した施設等を中心に監視指導を行う。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/140613kakiissei.pdf8 食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書まとまる 平成26年7月18日開催された消費者庁の第8回食品の新たな機能性表示制度に関する検討会において、「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書(案)」が示され、ほぼ案の通りまとめられた。今後、消費者庁は、より具体的に考え方を示すガイドラインを示し、パブリックコメントを求めたうえで、来年早々には届出等の制度を設け、平成27年4月から施行するものと思われる。 報告書の目次は次の通り、 1 はじめに 2 米国における食品の機能性表示制度 (1)ヘルスクレーム及び条件付きヘルスクレームの表示制度 (2)DS制度 3 新制度に係る安全性確保の在り方 (1)対象となる食品及び成分の考え方並びに摂取量の在り方 ア 食品、成分及び摂取量の評価 イ 医薬品等との相互作用の評価 ウ 評価結果等の情報開示 (2)生産・製造及び品質の管理 (3)健康被害等の情報収集 (4)危険な商品の流通防止措置等 4 食品の機能性表示を行うに当たって必要な科学的根拠の考え方 (1)最終製品を用いた臨床試験 (2)最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー 5 消費者にとって誤認のない食品の機能性表示の在り方 (1)適切な機能性表示の範囲 ア 対象食品 イ 対象成分 ウ 対象者 エ 可能な機能性表示の範囲 (2)消費者に誤認を与えないための情報の在り方 ア 容器包装への表示 イ 容器包装への表示以外の情報開示 6 国の関与の在り方 (1)販売前届出制の導入 (2)新制度の規定・適切な運用 (3)新たな機能性表示制度の名称(方向性) (4)消費者教育等 7 おわりに 報告書の中で記載されているものの主な点は次の通り。 * 3  新制度に係る安全性確保の在り方 (1)対象となる食品及び成分の考え方並びに摂 取量の在り方 、ア 食品、成分及び摂取量の評価中(イ)安全性試験に関する情報の評価として次の通り記載されている。 「食経験よりも摂取量が増加する等、食経験に関する情報のみでは当該食品の安全性が十分とはいえない場合については、特定保健用食品の安全性評価に必要な情報を参考に、次のような安全性試験に関する情報を評価することが適当である。 なお、当該食品そのものではなく、機能性関与成分で安全性を評価した場合、その評価結果が当該成分を含む食品に適用できることの合理的な根拠があるか等についても確認する必要がある。 ・ in vitro試験、in vivo試験(遺伝毒性試験、急性毒性試験、反復投与試験、生殖発生毒性試験等) ・ 人を対象とした試験(過剰摂取試験、長期摂取試験等)」 * 4  食品の機能性表示を行うに当たって必要な科学的根拠の考え方については、 次の(1)と(2)の二つの区分が記載されている 「(1)最終製品を用いた臨床試験 最終製品を用いた安全性及び有効性の臨床試験を行い、安全性と表示しようとする機能性が実証された製品について、機能性表示を認めることが適当である。 臨床試験の方法は、原則として特定保健用食品の試験方法に準じることが適当である。(注1)ただし、有効性試験については、平成23年度消費者庁予算事業「食品の機能性評価モデル事業」の結果を踏まえ、研究計画について「UMIN臨床試験登録システム(注2)」等に事前登録が行われていること(被験者1例目が登録される前の登録を必須とする。)、また、結果については、その内容を誰もが適切に評価できるよう、国際的にコンセンサスの得られた指針(CONSORT声明(注3)等)に準拠した形式で査読付き論文により報告されることが適当である。 なお、事前登録や国際指針への準拠を必須要件とすることについては、その考え方やシステムが普及する前又は過渡期に公表された論文をいかす観点から、適切な経過措置期間を設けることが適当である。」 (注1)特定保健用食品の申請に当たっては、原則として、最終製品を用いた臨床試験により、安全性及び有効性の確認を行っていることが要件とされている。具体的には、安全性について長期摂取試験(原則として1倍量を12週間以上摂取)及び過剰摂取試験(原則として3倍量を4週間以上摂取)が、また、有効性については、原則として1倍量を12週間以上摂取させる試験が、それぞれ必須とされている。他方、新制度においては、3(1)アのとおり、機能性関与成分を中心とする食品そのものの安全性について十分な食経験を確認できる場合、安全性に係る臨床試験等の実施は必ずしも要しない。ただし、特定保健用食品制度の考え方を準用すれば、上述のとおり、長期摂取時の安全性及び有効性については同一の試験により評価可能となるため、新制度において最終製品を用いた臨床試験による実証を選択する場合、臨床試験による長期摂取時の安全性及び有効性を確認することが可能となる。 (注2)出版バイアスの防止等を目的に2005年6月1日より 開始した、国内最大の臨床試験登録システム。UMIN(大学病院医療情報ネットワーク(University Hospital Medical Information Network))とは、国立大学附属病院長会議のもとで運用されているネットワークサービスのこと。世界保健機関(WHO)の臨床試験登録国際プラットフォームInternational Clinical Trial Registry Platform: ICTRP)にもリンクされている。 (注3)ランダム化比較試験(RCT)報告の標準化を目的とした国際指針で、1996年に初版が公表された。医薬系の主要国際誌の多くは、CONSORT声明チェックリストに準拠することをRCT論文投稿時の条件としている。本報告書公表時点の最新版(第3版)は、2010年に公表された「CONSORT 2010声明」である。 「(2)最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー 平成25年度消費者庁予算事業「新たな機能性表示制度の検討に向けた消費者意向等に関する調査事業」の結果などを踏まえ、次の事項を満たしたものについて、機能性表示を認めることが適当である。 ・ 機能性関与成分に関するレビューを行う場合、当該レビューに係る成分と最終製品の成分の同等性が認められるか、考察すること。 ・ いずれの食品形状においても、Totality of Evidenceの観点から肯定的であると判断された機能であること。 ・ サプリメント形状の加工食品においては、摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られていること。 ・ その他加工食品及び生鮮食品においては、摂取量を踏まえた臨床研究(介入試験又は観察研究)で肯定的な結果が得られていること。 ・ 複数の機能性関与成分についてそれぞれ機能性を表示しようとする場合は、安全性及び有効性について相互作用等の有無が確認されているという前提のもと、成分ごとに機能性を実証すればよいこと。 科学的根拠レベルに関する具体的要件は、次のとおりとすることが適当である。 ・ 査読付きの学術論文等、広く入手可能な文献(1次研究。未公表論文についても収集することが望まれる。)を用いたシステマティック・レビューを必須とし、機能性表示をしようとする機能性関与成分の機能について、Totality of Evidenceの観点から肯定的といえるかどうか評価を行うこと。 ・ システマティック・レビューの結果、査読付きの臨床研究論文が1本もない場合又は表示しようとする機能について、査読付きの臨床研究論文がこれを支持しない場合は、機能性表示を行うための科学的根拠が十分ではないとみなし、機能性表示を認めないこと。 ・ システマティック・レビューに当たっては、その結果の客観性・透明性を担保するために検索条件や採択・不採択の文献情報等、結果に至るプロセス、スポンサー・共同スポンサー(研究の発案、運営及び/又は資金に責任を負う個人、会社、研究機関又は団体)及び利益相反に関する情報、出版バイアスの検討結果について、詳細に公表すること。 ・ 海外で行われた研究についてもレビュー対象になり得るが、日本人への外挿性を考慮すること。 ・ システマティック・レビューについても出来るだけ事前登録を行い、新たな知見を含めた検討を定期的に実施、公表していくよう努めること。 なお、システマティック・レビューの実施者については特に定めはないが、レビュー結果の責任は最終製品に係る企業等が負うことが適当である。 システマティック・レビューで有用な結果を得るには、論文の質を適切に吟味し、質の低い論文をいかに除外していくかが重要となる。システマティック・レビューの質を担保する一環として、論文の質に関する要件を設定することも検討すべきである。」 (注)システマティック・レビューは、関連研究(学術文献等)について、事前に設定したプロトコールに従い網羅的に収集し、データの偏り(バイアス)を可能な限り除去しつつ、治療や予防等の効果の有無や程度を系統的に評価する手法。システマティック・レビューには、定性的に評価する手法と定量的に評価する手法とがあり、後者はメタ・アナリシスとも呼ばれる。 * 5  消費者にとって誤認のない食品の機能性表示の在り方、(1)適切な機能性表示の範囲 、エ 可能な機能性表示の範囲 について次の通り記載されており、厚生労働省が示す、当該範囲内であれば、身体の特定の部位に言及した表現のみをもって、直ちに医薬品に該当するとは判断しないという点について、今回は示されなかったが、今後、具体的に示されることが注目され、特定保健用食品の表示の在り方にも影響するものと思われる。 「前記ウに示した対象者における健康維持・増進に関する表現とすることが適当である。 また、厚生労働省より、当該範囲内であれば、身体の特定の部位に言及した表現のみをもって、直ちに医薬品に該当するとは判断しないと示されたことを踏まえ、身体の特定の部位に言及した表現を行うことも可能とすることが適当である。ただし、疾病の治療効果又は予防効果を暗示する表現や、「肉体改造」等の健康の維持・増進の範囲を超えた、意図的な健康の増強を標ぼうするものと認められる表現は、医薬品として薬事法(昭和35年法律第145号)の規制対象となることに留意すべきである。 疾病の治療又は予防を目的とする表示、疾病リスク低減表示を始めとした疾病名を含む表示については、診療機会の逸失等を招く可能性があり、国の管理下(医薬品・特定保健用食品)で慎重に取り扱われるべきであるため、対象としないことが適当である。」 * 6  国の関与の在り方については次の通り記載されている 「(1)販売前届出制の導入 米国のDS制度では届出制が導入されているが、販売後の届出であるため国が製品情報を把握していない期間が生じる、機能性表示に係る科学的根拠等が届出・開示対象となっていない等の理由により、科学的根拠が不十分な製品が流通している可能性や製品の有効性に関する科学的根拠情報が得られない可能性がある。 これらの問題点を解消するため、新制度では次の要領で販売前届出制を導入することが適当である。  安全性や有効性等の根拠情報を含めた製品情報について、企業等は消費者庁に対し販売前の定められた期日までに届出を行うこと。  届け出られた情報については、原則として販売前に開示すること。ただし、合理的な理由から公開されるべきでないもの(製品規格等の機密情報等)を除く。  届け出られた情報に対しては、販売前から国民が自由にアクセスできるようにするとともに、専門家に向けたものだけでなく、一般消費者が理解、活用しやすいように専門用語を平易な言葉に置き換えるなどした情報も整備すること(一般消費者向けに作成された情報についても、届出・開示を必須とすること。)。 (2)新制度の規定・適切な運用 表示事項や届出事項等、新制度の表示に係る基準については、食品表示法に基づく食品表示基準に規定することが適当である。 また、新制度は、特定保健用食品制度のような事前規制型の制度ではないため、販売前届出制の導入に加えて、消費者庁が中心となり、食品表示法に基づく収去等、販売後の監視を徹底することにより、新制度の適切な運用を図ることが適当である。 (3)新たな機能性表示制度の名称(方向性) 新制度の名称については、既存の制度との名称の混同を避ける観点から、「保健」、「栄養」の文言は使用しないこととし、また、新制度に基づく食品を摂取 さえすれば食生活のバランスを考慮しなくてよいという誤認を与えないという観点から、「健康」の文言は使用しないことが適当である。」 * 7  おわりについては次の通り記載されている 本検討会では、閣議決定に基づき、企業等の責任において科学的根拠を基に機能性を表示できる新たな方策について、新制度に係る安全性確保の在り方、新制度に基づく機能性表示に必要な科学的根拠の考え方、消費者にとって誤認のない機能性表示の在り方及び国の関与の在り方の方向性に関する議論を行った。 この過程では、事業者団体から、国の関与の在り方として、いわゆるサプリメント法案の検討を求める意見も出されたが、農林水産物も含めた全ての食品を対象とする今般の閣議決定の趣旨に即しているとは言い難く、また、当該法案が機能性表示の在り方のみならず全ての事業者に対する一般的な業規制措置を講ずるものと考えられることから、そうした立法措置の必要性については、まずは業界において議論を深めることが期待される。 消費者庁を始めとした関係省庁は、本検討会における議論の方向性を踏まえ、新制度に係る食品表示基準案の立案作業に着手することが適当である。また、新制度の施行に当たっては、関連指針等を整備することも必要であり、その詳細については、今後、関係者の意見を聴きながら検討を進めていくことが適当である。新制度が、消費者、企業等の双方にとって分かりやすく、利用しやすい制度となることを期待する。 なお、新制度については、企業等の責任において科学的根拠を基に機能性を表示するという、これまでの機能性表示制度とは全く異なる考え方の下に設計される制度であることから、施行後2年を目途に新制度の施行状況を検討し、その検討結果に基づいて必要な措置が講ぜられることを期待する。 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/140718_shiryo_1.pdf9 輸入した冷凍ししゃもに係る異物の混入 平成26年7月25日、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課は各都道府県等衛生主管部(局)宛に「伊村産業株式会社が輸入した冷凍ししゃもに係る異物の混入について」事務連絡を出した。 事務連絡の主な内容は次のとおりである。 山口県において伊村産業株式会社が製品の自主回収を進めているので、山口県からの依頼があった際は、速やかに流通調査を行い、販売者等の関係事業者から問い合わせがあった際には、自主回収が迅速に進むよう適宜指導すること。 また本事例に関連し、輸入者において該当製品の販売中止及び自主回収を行っているところですが、万が一、当該製品が販売されていることを確認した際には、適切に販売中止及び回収が行われるよう指導すること。 本事例の概要 輸入者 伊村産業株式会社 販売者 株式会社センショク 品名 子持ちからふとししゃも(冷凍食品) 原産国 ベトナム 輸入年月日 2014.5.29他 回収理由 小分け用に販売店へ出荷した一部の冷凍ししゃもの容器内に異物(汚物と思われるもの及び殺鼠剤と疑われるもの)が混入していたため。 殺鼠剤の成分 「塩化ダイファシノン」と考えられている。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000052338.pdf 食品安全委員会は「ダイファシノンの概要について」情報を提供している。その主なものは次の通り 日本で農薬として登録されているのはダイファシン系の殺鼠剤であり、田畑及び山林の野鼠(やそ)防除に使用が認められている。 中毒症状は、経口摂取の場合、腹痛、喀血、血尿、皮下出血。症状は遅れて現れることがある。直ちに医療機関に連絡すること。 急性毒性 ・ 経口:ラット LD50(半数致死量) = 3.0 mg/kg ・ 経皮:ウサギ LD50 = 3.6 mg/kg ・ 本来食品関連で使用する薬剤ではないため、ADI(一日摂取許容量)やARfD(急 性参照用量)は設定されていない。 http://www.fsc.go.jp/sonota/kinkyu/20140724_diphacinone.pdf