レジオネラ症

レジオネラ症について

レジオネラ症は,レジオネラ属菌の中で主にレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の気道感染によっておこる感染症で、症状はレジオネラ肺炎及び感染しても肺炎を伴わないで自然に治癒するポンテアック熱の二つのタイプがあります。このうちレジオネラ肺炎は、抵抗力が衰えている高齢者において腎不全、多臓器不全などを起こし易く、死亡例も報告されています。したがって、症状が重篤になりやすいレジオネラ肺炎について注意することが大切です。


レジオネラの電子顕微鏡写真 (東京都立衛生研究所Webサイトより引用)

レジオネラ属菌とは?

レジオネラ属菌は、0.3~0.9×2~5μmの大きさのグラム陰性(赤く見える)・好気性桿菌で、通常用いられる血液寒天培地には発育せず、特殊なBCYEα寒天培地に発育します。レジオネラ属菌は土壌、湖沼、河川などの自然界に広く分布し、クーリングタワー、噴水、給湯器、シャワー、加湿器、24時間風呂、温泉水などからの分離例が報告されています。 レジオネラ属菌は、アメーバ(細菌捕食性原虫)の体内で分裂・増殖することが知られており、アメーバに捕食された菌は、体内で1,000個程度まで増殖し、アメーバを死滅させて環境水中に放 出されます。したがって、これらの環境水中には、通常水100mLあたり10個から100個ですが、多い場合には10万個以上に達することもあります。 お風呂の配管内面、貯水槽内、循環風呂のろ過材などに生物膜(バイオフィルム)が形成されると、生物膜内に生息しているアメーバの体内で増殖し、浴槽水を汚染します。また、この菌は、感染したヒトのマクロファージ(単球)、好中球(中性好性白血球)などの食細胞の中に取り込まれても、その細胞内で死滅せずに増殖することが可能であると考えられています。


1000倍 赤く見えるのがレジオネラ(東京都立衛生研究所Webサイトより引用)

レジオネラ肺炎の症状

レジオネラ肺炎の患者は、軽い咳と微熱程度から重い肺炎に罹り意識障害を起こす重症例まで様々な症状を示します。主な感染経路は、お風呂でレジオネラ属菌を含む直径5μm以下の微細なエアロゾル(液体の粒子が空気中に浮遊している状態)を吸入することです。 レジオネラ属菌を含むエアロゾルを吸引して2~10日(平均潜伏期間は4~5日)で発病し、寒気と震え、高熱、全身の疲れ・だるさ感、頭痛、筋肉痛などを伴って、痰の少ない咳、少量の粘調性の痰、胸痛、呼吸困難などの呼吸器症状が現れます。レジオネラ肺炎は、健常者でも罹りますが、糖尿病患者、慢性の呼吸器疾患のある者、免疫不全者、高齢者、幼若者などがハイリスク(罹りやすい)グループと考えられています。

ポンティアック熱の症状

ポンティアック熱の患者は、レジオネラ肺炎を発症した患者と異なり、肺炎を伴わないインフルエンザ様の症状を示します。感染後数時間から2日程度の潜伏期を経て発病し、全身の疲れ・だるさ感、寒気と震え、筋肉痛、発熱、頭痛、乾いた咳、めまい、おう吐などの症状が見られます。本症は、治療によって1週間程度で軽快します。

レジオネラ属菌汚染防止対策

○浴槽水の残留塩素が1リッターあたり1~2㎎または水温50℃以上か20℃以下でレジオネラ属菌の増殖 を抑制することができます。 ○レジオネラ属菌が検出された浴槽水は、残留塩素を使用水1リッターあたり10㎎以上、または65℃以 上の湯を5分以上作用させることでレジオネラ属菌を死滅させることが可能です。ただし、有機質を多く含む水質では塩素系薬剤等の殺菌効果が期待できないので、配管、ろ過装置、貯水槽などを十分洗浄、熱消毒するなどの対策が必要になります。

引用文献

1)レジオネラ症防止対策について:平成11年11月26日、厚生省生活衛生局企画課通知 2)古谷 信彦, 舘田 一博:環境感染、レジオネラ、病院感染を起こす代表的な 微生物 (感染経路と病原性)、Vol. 15 (2000) No. Supplement P 46-48 3)吉田真一、:医療、レジオネラ症、Vol. 52 (1998) No. 10 P 628-631