平成26年9月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 平成25年度「輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果」及び「輸入食品監視統計」公表

平成26年8月29日、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室は標記の結果及び統計を公表した。 その主な内容は次の通り。〔 〕カッコ内は平成24年度の数値 ○ 平成25年度の輸入届出件数は約219万件〔約218万件〕であり、輸入届出重量は約3,098万トン〔約3,218万トン〕であった。 これに対し201,198件〔223,380件〕について検査を実施し、このうち、1,043件(延べ1,085件)〔1,053件(延べ1,122件)〕を法違反として、積み戻し又は廃棄等の措置を講じた。 ○ 平成25年度のモニタリング検査においては、93,711件〔89,959件〕の計画に対し、延べ95,730件〔93,066件〕(実施率:約102%〔約103%〕を実施し、152件〔175件〕を法違反として、回収等の措置を講じた。 ○ 違反の可能性の高い輸入食品等については、輸出国政府に対し、違反原因の究明及び再発防止対策の確立を要請するとともに、二国間協議や現地調査を通じて輸出国における衛生対策の推進を図った。 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000054478.html 厚生労働省ホームページ内「輸入食品監視業務」のページ http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/tp0130-1.html2 食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」の改正に関する意見募集  平成26年8月29日、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課は、平成26年5月12日改正通知した「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)について」の一部を改正する案についてパブリックコメントの募集を開始した。期限は平成26年9月29日(月)までである。 平成26年5月12日の改正は、食品衛生法第50条第2項に基づき都道府県、指定都市及び中核市が営業施設の衛生管理上講ずべき措置を条例で定める場合の技術的助言として示している、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」(平成16年2月27日付け食安発第0227012号別添。最終改正;平成25年10月22日食安発1022第5号。)について、食品の製造又は加工における衛生管理の手法として、HACCP(危害分析・重要管理点方式(食品の安全性を確保する上で重要な危害の原因となる物質及び当該危害が発生するおそれのある工程の特定、評価及び管理を行う衛生管理方式(Hazard Analysis and Critical Control Point))をいう。)を導入し、事業者が導入したものを選択するか、従来通り導入しないものを選択するか判断を委ねるものとしたことである。 今回の改正案は、HACCPを導入する場合においての情報提供について、Ⅰ 危害分析・重要管理点方式を用いる場合の基準の第2 食品取扱施設等における衛生管理中15 情報の提供に、次の(3)が追加されるものである。 (3)消費者等から、製造、加工又は輸入した食品等に係る異味又は異臭の発生、異物の混入その他の苦情であって、健康被害につながるおそれが否定できないものを受けた場合は、保健所等へ速やかに報告すること。 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140197&Mode=03 食品表示法第15条の規定による権限の委任等に関する政令(案)についての意見募集  平成26年9月5日、消費者庁食品表示企画課食品表示一元化検討チームは「食品表示法第15条の規定による権限の委任等に関する政令(案)」についてパブリックコメントの募集を開始した。 期限は平成26年10月4日(土)までである。その主な内容な次の通りで、(5)が国民の健康の保護及び増進を図るために必要と認められる事項に係るものである。 (1) 農林水産大臣の権限は、それぞれの地方農政局長に委任 (2) 国税庁長官の権限は、それぞれの国税局長等に委任 (3) 農林水産大臣の権限に属する法第6条第1項の指示等の事務は、主たる事務所及び事業所が一の都道府県の区域内のみにある食品関連事業者(以下「特定食品関連事業者」という。)に関するもののみ都道府県知事が行うこと (4) 消費者庁長官に委任された権限(原材料、原産地その他食品(酒類を除く。)の品質に関する表示の適正化を図るために必要と認められる事項に係るもの)に属する法第6条第1項の規定の指示等は、特定食品関連事業者の主たる事務所の所在地を管轄するそれぞれの都道府県知事が行うこととする。 (5) 消費者庁長官に委任された権限(アレルゲン、消費期限、栄養成分の量及び熱量その他国民の健康の保護及び増進を図るために必要と認められる事項に係るもの)の属する以下の事務は、それぞれの都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長)が行うこととする(※)。※ 消費者庁長官が自ら行うことも可能 1) 法第6条第1項又は第3項の食品関連事業者への指示等→当該食品関連事業者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事 2) 1)の指示に係る同条第5項の命令等→都道府県知事 3) 法第6条第8項の食品関連事業者等への命令等→当該食品関連事業者等の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事 4) 法第8条第1項の食品関連事業者等への報告の徴収及び物件の提出要求→当該食品関連事業者等の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事 5) 法第8条第1項の関係事業者への報告の徴収及び物件の提出要求→当該関係事業者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事 6) 法第8条第1項の立入検査、質問及び収去等→当該立入検査、質問及び収去等に係る場所の所在地を管轄する都道府県知事 7) 法第12条第1項又は第2項の申出の受付及び同条第3項の調査→当該申出の対象とする食品関連事業者等の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事 (注1) あわせて、1)~7)の事務を行った場合の都道府県知事から消費者庁長官への報告等について所要の規定を設ける。 (注2) 3)(業務停止命令を除く。)、4)~6)(法第8条第7項による委託に係るものを除く。)については、第一号法定受託事務とする。 (6) 施行期日 法の施行の日から施行 (7) 1)その他 前記(5)により特別区が処理する事務のうち、法第6条第1項、第5項及び第8項、第7条並びに第8条第1項、第6項及び第7項の事務(卸売市場法(昭和46年法律第35 号)第2条第2項に規定する卸売市場(花きの卸売のために開設されるものを除く。)に係るものに限る。)については、当分の間、都が処理 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235080029&Mode=04 食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針(案)及び食品表示法第6条第8項の規定に基づく命令等のガイドライン(案)について意見募集  平成26年9月5日、消費者庁食品表示企画課は、「食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針(案)」及び「食品表示法第6条第8項の規定に基づく命令等のガイドライン(案)」 についてパブリックコメントの募集を開始した。期限は平成26年10月4日(土)までである。その概要は次の通り。 (1) 指示及び指導並びに公表の指針(案) 1) 食品表示基準違反については、「指示・公表」を基本として、以下の条件を全て満 たす場合は「指導」 ○ 常習性がなく過失による一時的なものであること。 ○ 表示の是正(表示の修正・商品の撤去)を行っていること。 ○ 事実と異なる表示があった旨を、社告、ウェブサイトの掲示、店舗等内の告知等の方法を的確に選択し、速やかに情報提供していること。 2) 食品関連事業者が表示を適正に行っている根拠となる情報が記載されている書類の整備・保存を怠っている場合には、当該書類を整備・保存するよう「指導」し、その場合において、食品表示基準に違反する蓋然性が高い場合は「公表」 (2) ガイドライン(案) 1) 食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼすものとして内閣府令で定める事項に該当する食品表示基準違反について、緊急の必要があるときは、回収等を命じ、その内容を公表する。 ※1 食品衛生法により販売等をしてはならない食品については、食品衛生法の措置が優先 ※2 消費者の安全を迅速に確保する観点から行政指導による対応も可 http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kikaku/140808.html 食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼすものとして内閣府令で定める事項の例 アレルゲン、保存の方法、消費期限又は賞味期限、加熱を要するかどうかの別等 2) さらに、食品関連事業者等が直ちに食品表示基準に適合した表示を行うことが困難である場合は、その業務の全部又は一部の停止を命じ、その内容を公表 業務停止命令の対象となる例 ・製造又は加工の工程管理が不十分であるため正しい表示ができない場合 ・消費期限、保存の方法等の設定に科学的な根拠がなく直ちに適切な表示をすることができない場合 3) これらの措置を行った後、必要に応じて「指示・公表」を実施する。 ※ 「食品表示法第4条第1項の規定に基づいて定められた食品表示基準の違反に係る同法第6条第1項及び第3項の指示及び指導並びに公表の指針」に準じるものとする。 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235080030&Mode=05 フグによる食中毒予防の注意喚起  平成26年9月8日、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課は各都道府県等衛生主管部(局)宛てに「フグによる食中毒予防の注意喚起について」事務連絡を出した。 これは、平成26年8月~9月に発生した「豆あじ」等へのフグの混入6事例を例示し、注意喚起を図ったものである。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000057173.pdf6 食品表示基準を定めることに関して消費者委員会に諮問  平成26年9月19日内閣府(消費者庁)は消費者委員会に食品表示基準(栄養素等表示基準値及び栄養機能食品に係る規定及び別表を除く。)を定めることについて諮問した。 これを受け、消費者委員会は平成26年9月24日第31回 食品表示部会を開催し審議を開始した。 審議が終了した後、消費者委員会委員長から内閣総理大臣に答申が出され、その後、厚生労働省、農林水産省及び財務省と協議が行われた後、内閣府令として公布されることとなり、その時期は1月以降になるものと思われる。いづれにしても、6月の末までには内閣府令を施行しなければならなくなっており、機能性表示食品についても同時に施行するとなれば4月1日施行の可能性もある。 諮問された食品表示基準は、消費者庁が7月から8月にかけて意見募集を行った食品表示基準案について、意見に基づき修正した内容のもので、その主な修正点は次の通り。 (1)製造所固有記号の使用に係るルールの改善 <意見募集時提示案> 原則として、2以上の工場で製造する商品のみに利用可能 ・製造所固有記号を使用する場合には、次のいずれかの事項を表示 ①製造所所在地等の情報提供を求められたときに回答する者の連絡先 ②製造所所在地等を表示したHPアドレス等 ③当該製品の製造を行っている全ての製造所所在地等 <修正案> 上記案に次を追加 ただし、対象については、業務用食品を除くこととする。 (2)栄養成分表示の義務化に係るナトリウムの表示 <意見募集時提示案> <修正案> 食塩相当量□g ナトリウム◎mg (ナトリウム◎mg) (食塩相当量□g) (3)栄養成分表示の義務化に係る小規模事業者の考え方 <意見募集時提示案> 義務となる熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム(「食塩相当量」で表示)の表示を省略できる小規模事業者を、消費税法第9条に規定する小規模事業者(課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者)とする。 <修正案> ・ 当分の間、中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第5項に規定する小規模企業者(おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人)以下の事業者)についても、栄養成分表示の省略を認める。 (4)栄養強調表示に係るルールの改善(低減された旨の表示) <意見募集時提示案> 低減された旨の表示(※)をする場合(熱量、脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類及びナトリウム)【中略】には、絶対差に加え、新たに、25%以上の相対差が必要(栄養強調表示をするための要件の変更) ※ 表示例:○○30%カット、△△~gオフ、××ハーフ <修正案> 上記案に次を追加 ・ ナトリウムについては、食品の保存性及び品質を保つ観点から、25%以上その量を低減することが困難な食品については、相対差についての特例を認める。 (5)小包装の食品における省略可能な表示事項 <意見募集時提示案> 上記案に次を追加 ・ 表示可能面積が30cm²以下の場合は、安全性に関する表示事項(「名称」、「保存方法」、「消費期限又は賞味期限」、「表示責任者」及び「アレルゲン」)については、省略不可とする。 <修正案> ・ 表示可能面積がおおむね30cm²以下の場合は、安全性に関する表示事項(「名称」、「保存方法」、「消費期限又は賞味期限」、「表示責任者」、「アレルゲン」及び「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」)については、省略不可とする。 ・ 加えて、表示責任者を表示しなくてもよい場合(食品を製造し、若しくは加工した場所で販売する場合、不特定若しくは多数の者に対して譲渡(販売を除く。)する場合又は食品関連事業者以外の販売者が容器包装入りの加工食品を販売する場合)には、製造所又は加工所の所在地(輸入品にあっては、輸入業者の営業所所在地)及び製造者又は加工者の氏名又は名称(輸入者にあっては、輸入業者の氏名又は名称)も省略不可とする。 (6)経過措置期間 <意見募集時提示案> ・ 経過措置期間(食品表示基準の施行後、新ルールに基づく表示への移行の猶予期間)は、加工食品は2年、添加物は1年(いずれも、栄養成分表示については5年)とする。生鮮食品は、経過措置期間なし。 <修正案> ・ 加工食品及び添加物の全ての表示について5年とする。 ・ 生鮮食品の表示については、1年6ヶ月とする。