平成26年10月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 食品表示基準を定めることに関して消費者委員会に諮問

平成26年9月19日、内閣府(消費者庁)は、消費者委員会に食品表示基準(栄養素等表示基準値及び栄養機能食品に係る規定及び別表を除く。)を定めることについて諮問した。 これを受け、消費者委員会は、平成26年9月24日第31回食品表示部会を開催し審議を開始した。 審議が終了した後、消費者委員会委員長から内閣総理大臣に答申が出され、その後、厚生労働省、農林水産省及び財務省と協議が行われた後、内閣府令として公布されることとなり、その時期は平成27年1月以降になるものと思われる。いづれにしても、平成27年6月末までには内閣府令を施行しなければならなくなっており、機能性表示食品についても同時に施行するとなれば平成27年4月1日施行の可能性もある。 諮問された食品表示基準は、消費者庁が平成26年7月から8月にかけて意見募集を行った食品表示基準案について、意見に基づき修正した内容のもので、その主な修正点は次の通り。 (1) 製造所固有記号の使用に係るルールの改善 <意見募集時提示案> 原則として、2以上の工場で製造する商品のみに利用可能 ● 製造所固有記号を使用する場合には、次のいずれかの事項を表示 ① 製造所所在地等の情報提供を求められたときに回答する者の連絡先 ② 製造所所在地等を表示したHPアドレス等 ③ 当該製品の製造を行っている全ての製造所所在地等 <修正案> 上記案に次を追加 ● ただし、対象については、業務用食品を除くこととする。 (2) 栄養成分表示の義務化に係るナトリウムの表示 <意見募集時提示案> <修正案> 食塩相当量□g ナトリウム◎mg (ナトリウム◎mg) (食塩相当量□g) (3) 栄養成分表示の義務化に係る小規模事業者の考え方 <意見募集時提示案> 義務となる熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物及びナトリウム(「食塩相当量」で表示)の表示を省略できる小規模事業者として消費税法第9条に規定する小規模事業者(課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者)とする。 <修正案> ● 当分の間、中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第5項に規定する小規模企業者(おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人)以下の事業者)についても、栄養成分表示の省略を認める。 (4) 栄養強調表示に係るルールの改善(低減された旨の表示) <意見募集時提示案> 低減された旨の表示(※)をする場合(熱量、脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類及びナトリウム)【中略】には、絶対差に加え、新たに、25%以上の相対差が必要(栄養強調表示をするための要件の変更) ※ 表示例:○○30%カット、△△~gオフ、××ハーフ <修正案> 上記案に次を追加 ● ナトリウムについては、食品の保存性及び品質を保つ観点から、25%以上その量を低減することが困難な食品については、相対差についての特例を認める。 (5) 小包装の食品における省略可能な表示事項 <意見募集時提示案> ● 表示可能面積が30cm²以下の場合は、安全性に関する表示事項(「名称」、「保存方法」、「消費期限又は賞味期限」、「表示責任者」及び「アレルゲン」)については、省略不可とする。 <修正案> 上記案に次を追加 ● 表示可能面積がおおむね30cm²以下の場合は、安全性に関する表示事項(「名称」、「保存方法」、「消費期限又は賞味期限」、「表示責任者」、「アレルゲン」及び「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」)については、省略不可とする。 ● 加えて、表示責任者を表示しなくてもよい場合(食品を製造し、若しくは加工した場所で販売する場合、不特定若しくは多数の者に対して譲渡(販売を除く。)する場合又は食品関連事業者以外の販売者が容器包装入りの加工食品を販売する場合)には、製造所又は加工所の所在地(輸入品にあっては、輸入業者の営業所所在地)及び製造者又は加工者の氏名又は名称(輸入者にあっては、輸入業者の氏名又は名称)も省略不可とする。 (6) 経過措置期間 <意見募集時提示案> ● 経過措置期間(食品表示基準の施行後、新ルールに基づく表示への移行の猶予期間)は、加工食品は2年、添加物は1年(いずれも、栄養成分表示については5年)とする。生鮮食品は、経過措置期間なし。 <修正案> ● 加工食品及び添加物の全ての表示について5年とする。 ● 生鮮食品の表示については、1年6ヶ月とする。 (食品表示基準の概要) http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/141003_shiryou1.pdf (第32回 食品表示部会資料) http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/bukai/032/shiryou/index.html2 食品表示基準(栄養素等表示基準値及び栄養機能食品に係る規定及び別表に限る。)消費者委員会へ諮問  平成26年10月8日、内閣府(消費者庁)は、平成26年9月19日付けで諮問を行った食品表示基準で除外した「栄養素等表示基準値及び栄養機能食品に係る規定及び別表」について、食品表示法第4条第1項の規定に基づく食品表示基準(栄養素等表示基準値及び栄養機能食品に係る規定及び別表に限る。)として消費者委員会へ諮問した。 今後、消費者庁は、消費者委員会食品表示部会で先の諮問事項と合わせて審議後、消費者委員会から答申を受理し、食品表示法第4条第2項の規定に基づいて関係省庁と協議を行い、食品表示基準を策定する予定。 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1334.pdf3 フグの取扱いに係る監視指導の強化について通知  平成26年10月8日、厚生労働省は、医薬食品局食品安全部監視安全課長名を持って各都道府県等衛生主管部(局)長あて表記通知を出した。その内容は次の通り。 今般、フグ調理の練習後のマフグの肝臓を自宅に持ち帰り、喫食し、死亡する事例が発生した。ついては、各自治体の条例等に基づき、フグを取扱う施設に対し、除去した有毒部位については焼却等により確実に処分するよう、あらためて指導方よろしくお願いする。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000060712.pdf4 野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)(案)意見募集  平成26年10月10日、厚生労働省は、表記指針(案)に対する意見募集を公表した。意見・情報受付締切日は平成26年10月31日、連絡先は医薬食品局食品安全部監視安全課である。 この指針(案)の基本的な考え方は次の通り (1) 野生鳥獣肉の処理に当たっては、野生鳥獣を屋外で捕殺、捕獲するという、家畜とは異なる処理が行われることを踏まえた、独自の衛生管理が必要となる。 (2) 本案は、野生鳥獣肉を取り扱う者が、食用に供される野生鳥獣肉の安全性を確保するために必要な取組として、狩猟から処理、食肉としての販売、消費に至るまで、野生鳥獣肉の安全性確保を推進するため、狩猟者や野生鳥獣肉を取り扱う食肉処理業者等の関係者が共通して守るべき衛生措置を盛り込んだものである。また、食用として問題がないと判断できない疑わしいものは廃棄とすることを前提に、具体的な処理方法を記載している。 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140250&Mode=05 食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)の改正を通知  平成26年10月14日、厚生労働省は、医薬食品局食品安全部長名をもって各都道府県知事等に「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)について」通知した。 これは、食品衛生法第50条第2項に基づき都道府県、指定都市及び中核市が営業施設の衛生管理上講ずべき措置を条例で定める場合の技術的助言として示している、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」(平成16年2月27日付け食安発第0227012号別添。最終改正;平成25年10月22日食安発1022第5号。)について保健所等への報告に関する規定を追加したもので、先のHACCPによる衛生管理を実施しようとする食品等事業者の取組を促す観点からの改正に合わせ、平成27年3月末までに関係条例の改正が行われることとなる。改正の内容は次の通り Ⅰ危害分析・重要管理点方式を用いる場合の基準の第2食品取扱施設等における衛生管理 15情報の提供に、次の(3)が追加され、Ⅱ危害分析・重要管理点方式を用いずに衛生管理を行う場合の基準の第2食品取扱施設等における衛生管理 13情報の提供において前記15が引用されるため、Ⅱ危害分析・重要管理点方式を用いずに衛生管理を行う場合の基準においても次の(3)が適用されることとなる。 (3) 消費者等から、製造、加工又は輸入した食品等に係る異味又は異臭の発生、異物の混入その他の苦情であって、健康被害につながるおそれが否定できないものを受けた場合は、保健所等へ速やかに報告すること。 また、運用上の注意事項として「健康被害につながるおそれが否定できないもの」の具体的な例が次の通り示されている。 「製造、加工又は輸入した食品等に係る異味又は異臭の発生、異物の混入その他の苦情であって健康被害につながるおそれが否定できないもの」に該当するかどうかについては、食品安全の観点から、個別具体的に判断されるべきものであるが、例示として考えられるものは、以下のとおり。 (1) 苦情の件数にかかわらず、金属片、ガラス片等の異物、病原微生物、食品等の製造等に用いられない化学物質等の混入の疑いなどに関する苦情を受けた場合。 (2) 苦情の件数にかかわらず、食品等を喫食したことによる健康被害の自己申告を含む苦情を受けた場合。 (3) 一件又は少数の件数である段階では健康被害につながるおそれがあると直ちに判断できない場合であっても、類似する苦情が複数寄せられたこと等により、健康被害につながるおそれが否定できないと判断される場合。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000062878.pdf6 栄養素等表示基準値及び栄養機能食品に係る食品表示基準(案)についての意見募集  平成26年10月17日、消費者庁食品表示企画課は、標記についてパブリックコメントを求めた。 意見募集期間 平成26年11月15日(土) この(案)は、平成26年10月8日、内閣府(消費者庁)から消費者委員会へ諮問された「食品表示基準(栄養素等表示基準値及び栄養機能食品に係る規定及び別表に限る。)」と同じもので、その主な内容は次の通り。 * 第2条の定義中 十 栄養機能食品について次の通り改めた。 食生活において別表第十一の第一欄に掲げる栄養成分(ただし、錠剤、カプセル剤等の形状の加工食品にあっては、カリウムを除く。)の補給を目的として摂取をする者に対し、当該栄養成分を含むものとしてこの府令に従い当該栄養成分の機能の表示をする食品(健康増進法(平成十四年法律第百三号)第二十六条第一項に基づく許可又は同法第二十九条第一項に基づく承認を受け、特別の用途に適する旨の表示をする食品(以下「特別用途食品」という。)及び添加物を除き、容器包装に入れられたものに限る。)をいう * 次の定義が新たに加えられた 十一 栄養素等表示基準値 国民の健康の維持増進等を図るために示されている性別及び年齢階級別の栄養成分の摂取量の基準を性及び年齢階級(十八歳以上に限る。)ごとの人口により加重平均した値であって別表第十の上欄の区分に応じそれぞれ同表の下欄に掲げる値をいう。 * 第3条第2項中、特定保健用食品の表示について関与成分に係る所に栄養素等表示基準値が引用された。 * 第7条及び第21条中、栄養機能食品について、「栄養機能食品に係る栄養成分の機能」として具体的な表示事項が示された。 * 別表第十及び第十一が新たに示された。 http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/141015_shiryou6.pdf7 不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案閣議決定  平成26年10月24日、政府は、不当な表示を防止するために課徴金制度を導入する標記一部改正法案を閣議決定し、今国会に提出する。 その目的は、不当な表示による顧客の誘引を防止するため、不当な表示を行った事業者に対する課徴金制度を導入するとともに、被害回復を促進する観点から返金による課徴金額の減額等の措置を講ずるとしており、その主な内容は次の通り。 ● 対象行為:優良誤認表示、有利誤認表示を対象とする。 不実証広告規制に係る表示行為について、一定の期間内に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出がない場合には、当該表示を不当表示と推定して課徴金を賦課する。 ● 賦課金額の算定:対象商品・役務の売上額に3%を乗じる。 ● 対象期間:3年間を上限とする。 ● 主観的要素:違反事業者が相当の注意を怠った者でないと認められるときは、課徴金を賦課しない。 ● 規模基準:課徴金額が150万円未満となる場合は、課徴金を賦課しない。(注 課徴金額が3%とすると売上額は5,000万円以上となる) http://www.caa.go.jp/planning/pdf/141024-0.pdf