平成27年1月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 豚の食肉の生食に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集

平成27年1月8日、内閣府食品安全委員会事務局は標記について意見・情報の募集を公表した。意見・情報受付締切日は平成27年2月6日である。  同案は、(案)微生物・ウイルス寄生虫評価書、豚の食肉生に係る食品健康影響評価 2014年12月食品安全委員会微生物・ウイルス専門調査会としてまとめられたもので、その要約は次のとおり。  食品安全委員会微生物・ウイルス専門調査会は、厚生労働省からの諮問を受け、豚の食肉(内臓を含む。以下同じ。)の生食について、E型肝炎ウイルス(以下「HEV」という。)、細菌(サルモネラ属菌及びカンピロバクター・ジェジュニ/コリ)及び寄生虫(トキソプラズマ、旋毛虫(トリヒナ)及び有鉤条虫)を危害要因として、現在入手できる知見に基づき、食品健康影響評価を実施した。  今回の評価は、厚生労働省から諮問された規格基準案(①豚の食肉は、飲食に供する際に加熱を要するものとして販売の用に供さなければならない旨②販売者は直接一般消費者に販売することを目的に、豚の食肉を使用して、食品を製造、加工又は調理する場合には、中心部を63℃30分間以上加熱又はそれと同等以上の殺菌効果のある加熱殺菌が必要である旨)に基づいたリスク管理措置を実施することによる食中毒のリスク低減効果を評価した。  評価に当たっては、厚生労働省が示した規格基準案の②について、危害要因ごとに加熱殺菌の妥当性に焦点を置いて評価を行った。  評価の結果、豚の食肉は、食肉内部までHEVや寄生虫などの危害要因に汚染されていると考えられ、豚の食肉の生食に起因すると推定されるE型肝炎患者及び細菌による食中毒事例が発生していることから、規格基準案の①については導入することが妥当であると考えた。 規格基準案の②について、細菌及び寄生虫については、中心部を63℃30分間の加熱により不活化されることが確認された。危害要因の中で最も加熱抵抗性が高いHEVに関しては、63℃30分間の加熱条件でHEVの不活化が確認された知見があること、現在、我が国において中心部を63℃30分間又はそれと同等以上の加熱殺菌を行うことが定められている加熱食肉製品において、E型肝炎発症事例は報告されていないことから、豚の食肉の中心部を63℃30分間又はそれと同等以上の加熱を行うことにより、HEVのリスクは一定程度減少すると考えられた。しかしながら、HEVに係る加熱抵抗性に関する知見が限定的であることに加え、調理による加熱温度と食肉の内部温度の関係は、調理方法や食肉の部位、大きさ等により変わってくるため、一律の加熱殺菌条件を示すことは現時点では困難である。  このため、豚の食肉を生で喫食しないこと、現実的なより高い温度で加熱することが重要であるとされた。 消費者が豚の食肉を喫食する際は、中心部まで十分によく加熱し、さらに、生の豚の食肉と他の食品との交差汚染を避けることが必要である。野生鳥獣である猪及び鹿の食肉についても、豚の食肉と同様に生食のリスクが高く、十分な加熱を徹底することについて、リスク管理機関における適切な対応を行うことが必要である。また、高齢者、小児、妊婦等の一般的に抵抗力の弱い方については、より一層の注意が必要である。  今回の評価においては、本案件が緊急性が高いものと解されたため、現在入手できる知見に基づき、評価を行ったものである。このため、リスク管理機関等は今後、新たな知見を蓄積することに努め、新たな知見が蓄積された際には、リスク管理機関は、改めて評価を求めることを検討すべきである。 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095150010&Mode=02 食品衛生法第19 条第1 項の規定に基づく乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品の表示の基準に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令公布  平成27年1月9日、標記府令が内閣府令第1号をもって公布され、同日、消費者庁長官から各都道府県知事等宛に通知が出された。なお、改正府令は公布日から施行される。 改正の主な内容は次のとおり。また、運用上の注意として具体的な表示方法が示されている。 (1) 乳等省令に新たにナチュラルチーズ(ソフト及びセミハードのものに限る。)におけるリステリア・モノサイトゲネスに係る成分規格が設定されたところであるが、容器包装に入れた後、加熱殺菌したもの又は飲食に供する際に加熱するものにあっては、当該成分規格の適用除外とされたことを踏まえ、容器包装に入れた後、加熱殺菌したナチュラルチーズである場合には、容器包装に入れた後、加熱殺菌した旨を、飲食に供する際に加熱するナチュラルチーズである場合には、飲食に供する際に加熱する旨を表示することとしたこと。 (2) 発酵後殺菌した発酵乳について、乳等省令で定める発酵乳の成分規格のうち、乳酸菌数又は酵母数を適用除外とする改正が行われたことを踏まえ、発酵後に殺菌した発酵乳である場合には、殺菌した発酵乳である旨を表示することとしたこと。 (3) 発酵乳及び乳酸菌飲料の乳酸菌数について、乳等省令において製造時発酵温度が摂氏25 度前後の乳酸菌も測定可能とする測定法の改正が行われたことを踏まえ、製造時の発酵温度が摂氏25 度前後である場合には、製造時の発酵温度が摂氏25 度前後である旨を表示することとしたこと。 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1403.pdf3 食品への異物の混入防止について通知  平成27年1月9日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛に標記通知を出した。その主な内容は次のとおり。 (1) 食品等事業者における異物の混入防止のための取組が徹底されるよう、指導すること。特に次の事項に留意すること。 1) 食品取扱設備等の衛生管理に当たっては、分解や組立てを適切に行うとともに、故障又は破損があるときは、速やかに補修し、常に適正に使用できるよう整備しておくこと。 2) 施設及びその周囲は、維持管理を適切に行うことにより、常に良好な衛生状態を保ち、そ族及び昆虫の繁殖場所を排除するとともに、窓、ドア、吸排気口の網戸、トラップ、排水溝の蓋等の設置により、そ族、昆虫の施設内への侵入を防止すること。 3) 食品取扱者は、衛生的な作業着、帽子、マスクを着用し、作業場内では専用の履物を用いるとともに、指輪等の装飾品、腕時計、ヘアピン、安全ピン等、食品製造等に不要なものを食品取扱施設内に持ち込まないこと。 4) 洗浄剤、消毒剤その他化学物質については、使用、保管等の取扱いに十分注意するとともに、必要に応じ容器に内容物の名称を表示する等食品への混入を防止すること。 (2) 食品等事業者において、食品等の製造、加工及び調理等が衛生的に行われるよう、食品取扱者及び関係者に対し、食品等の衛生的な取扱方法、食品等の汚染防止の方法等食品衛生上必要な事項に関する衛生教育を適切に実施するよう指導すること。 (3) 食品等事業者において、食品等の製造又は加工にあたっては、異物混入の可能性について点検を行い、原材料及び製品への異物の混入防止のための必要な措置を講ずるよう指導すること。 (4) 保健所の助言及び指導の下、迅速かつ効果的な原因究明を実施し、食品衛生上の被害拡大防止対策を速やかに講ずるため、消費者等からの食品等に係る苦情であって、健康被害につながるおそれが否定できないものを受けた場合は、保健所等へ速やかに報告するよう指導を徹底すること。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/20150109_1.pdf4 消費者から寄せられた食品への異物混入情報への対応について通知  平成27年1月9日、消費者庁消費者安全課は都道府県・政令指定都市 消費者行政担当及び国民生活センター担当宛に次の内容の通知を出した。 今般、食品中に異物が混入している事案が多数報道されており、消費者の食品に対する不安が高まっていることを踏まえ、消費者から健康被害につながるおそれが否定できない異物混入等の相談情報が寄せられた際には、保健所等にも適切に情報が提供されるよう協力を求める。 http://www.caa.go.jp/safety/pdf/150109kouhyou_2.pdf5 乳中のアフラトキシンM1の規制値設定について意見募集  平成27年1月19日、厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課は標記意見募集を行った。締切は平成27年2月17日。その内容は次のとおり。 現在、我が国において、食品中のアフラトキシンについては、総アフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1及びG2の総和)を10μg/kgを超えて検出する食品は、食品衛生法第6条第2号に違反するものとして取り扱っている。今般、乳中のアフラトキシンM1(以下「AFM1」という。)について、国際的なAFM1の基準値設定の動向及びAFM1が遺伝毒性発がん物質であることを勘案し「乳に含まれるAFM1 を0.5μg/kgを超えて検出する食品は、食品衛生法第6条第2号に違反するものとして取り扱うこと。」について意見を求めるものである。 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140395&Mode=06 発酵乳等の表示基準の一部改正に関するQ&A通知  平成27年1月20日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛、標記Q&Aを通知した。 これは、平成27年1月9日改正された、「食品衛生法第19条第1項の規定に基づく乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品の表示の基準に関する内閣府令」に関するもので、その問いは次のとおり。 問1 なぜ、「乳等表示基準府令」を改正することにしたのですか。 問2 改正された表示基準はどのような内容ですか。 問3 表示の対象となるナチュラルチーズは、どのようなものですか。 問4 ナチュラルチーズの「容器包装に入れた後、加熱殺菌した旨」又は「飲食に供する際に加熱を要する旨」の表示は、具体的にどのような文言による表示が可能ですか。 問5 リステリアが増殖する可能性のあるナチュラルチーズについて、流通時及び家庭において適切に温度管理させるためには、どのようにすればよいですか。 問6 消費者、特にリステリアにより重症化するリスクの高い妊婦や高齢者等に対して、リステリアに対する注意喚起はどのように行えばよいですか。 問7 表示の対象となる殺菌した発酵乳及び乳酸菌飲料とは、どのような食品ですか。 問8 発酵後に殺菌した発酵乳及び乳酸菌飲料の表示は具体的にどのような文言による表示が可能ですか。 問9 表示の対象となる発酵乳又は乳酸菌飲料であって、製造時の発酵温度が摂氏25度前後のものとは、どのような食品ですか。 問10 発酵乳又は乳酸菌飲料であって、製造時の発酵温度が摂氏25度前後のものの表示は、具体的にどのような文言による表示が可能ですか。 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1407.pdf