平成27年5月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 「食品表示基準について」通知の一部改正について

平成27年6月1日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛に平成27年3月30日付通知の一部を改正する通知を出した。これは、平成27年5月19日、食品衛生法施行規則の別表第1にクエン酸三エチルが新たに指定されたことに伴うものであるが、「食品表示基準について」通知後事業者等からの問合せを受け改正したものも含まれており、その主な点は次のとおり。  通知文中(加工食品)、4 任意表示(1)栄養機能食品に係る栄養成分の機能の文の最後に「栄養機能食品の基準を満たしているか否かは販売時に判断するものであるが、販売時に栄養機能食品の基準を満たすものであっても、摂取時に栄養機能食品の基準を満たさなくなる食品に栄養成分の機能を表示することは望ましくない。」が追加され、5 表示の方式、次の(2)の全文が削除されている。 「(2) 詰合せ食品の表示方法について ① 詰合せ食品の表示の基本的な考え方 ア 当該詰合せ食品が、「一つの独立した食品」としてみなせるか、それとも「単なる寄せ集め食品・おまけつき食品」か判断する。 イ 基本は個々に表示した上、さらに外装に表示する「単なる寄せ集め食品・おまけつき食品」の表示の方が情報が多いことを踏まえ、「一つの独立した食品」に該当する食品であっても、「単なる寄せ集め食品・おまけつき食品」の表示を選択することも可能とする。 ② 分割して販売する可能性がある場合(単なる寄せ集め)及びメインとなる個別食品がある場合(おまけつき食品) (例:お中元用の飲料詰合せ、個包装された和菓子の詰合せ、ドレッシングを添付したサラダ、豚肉に包装たれを添付した生姜焼きセット) ア 個別の構成要素である食品について独立して表示するのが原則。この際、個別食品に別途一括表示がなされることとなるが、詰合せの外装から個々の表示が確認できない場合、個別食品への表示に加え、外装にも表示する。ただし、店頭にて個別食品を陳列する等して、個別食品の表示を確認できる場合はその限りではない。 イ この際、個別食品ごとに義務付けられる表示については、個別食品に表示する。 ウ 個別食品の一部が未包装の生鮮食品からなるものについては、外装に当該個別食品について生鮮食品としての表示を満たす表示を行う。 ③ 一つの独立した食品の表示方法(例:カップ麺、赤飯セット、味付けカルビ) ア 全体を一つの食品とみなし、外装に一括表示するのが原則。この際、各構成要素は加工食品の原材料という扱いになるため、個別食品ごとに義務付けられる表示は適用されない。 イ この場合、当該詰め合わせは製造行為とみなされ、表示責任者は詰め合わせをした事業者となる。」 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150601_tuchi-bun.pdf http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150601_tuchi-shinkyu.pdf2 豚の食肉を生食用として販売することを禁止する告示改正  平成27年6月2日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部長名をもって各都道府県知事等宛に「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」を通知した。これは、平成27年6月2日付で改正された次の内容に関する通知で、適用期日は平成27年6月12日である。このため、適用日より前に製造、加工及び調理された豚の食肉であっても、適用日以降は、規格基準を満たさないものは販売等できない。  法第11条第1項の規定に基づき、食品、添加物等の規格基準(以下「規格基準」という。)第1食品の部B食品一般の製造、加工及び調理基準の項の9に、新たに豚の食肉の基準を追加し、以下のとおり改正したこと。  牛の肝臓又は豚の食肉は,飲食に供する際に加熱を要するものとして販売の用に供されなければならず,牛の肝臓又は豚の食肉を直接一般消費者に販売する場合は,その販売者は,飲食に供する際に牛の肝臓又は豚の食肉の中心部まで十分な加熱を要する等の必要な情報を一般消費者に提供しなければならない。ただし,第1 食品の部D 各条の項〇 食肉製品に規定する製品(以下9において「食肉製品」という。)を販売する場合については,この限りでない。  販売者は,直接一般消費者に販売することを目的に,牛の肝臓又は豚の食肉を使用して,食品を製造,加工又は調理する場合は,その食品の製造,加工又は調理の工程中において,牛の肝臓又は豚の食肉の中心部の温度を63℃で30分間以上加熱するか,又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならない。ただし,一般消費者が飲食に供する際に加熱することを前提として当該食品を販売する場合(以下9において「加熱を前提として販売する場合」という。)又は食肉製品を販売する場合については,この限りでない。加熱を前提として販売する場合は,その販売者は,一般消費者が飲食に供する際に当該食品の中心部まで十分な加熱を要する等の必要な情報を一般消費者に提供しなければならない。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/150602hp_1.pdf3 豚の食肉の基準に関するQ&Aについて通知  平成27年6月2日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部基準審査課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛に標記Q&Aを通知した。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/150602hp.pdf4 平成27年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施について通知  平成27年6月3日、厚生労働省は医薬食品局食品安全部長名をもって各都道府県知事等宛に標記通知を出した。これは、夏期に多発する食中毒等の食品による事故の防止を図るとともに、積極的に食品衛生の向上を図る見地から、例年のとおり、全国一斉に標記取締りを行うもので、実施計画の策定に当たっては、平成26年度夏期一斉取締りの結果を参考とし、大量調理施設等に対する監視指導を行うとともに、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター等による食中毒防止対策等について監視指導を行うようとしている。  実施期間は原則として、平成27年7月1日(水)から7月31日(金)までとし、実施期間中、大量調理施設、弁当屋、仕出し屋、旅館等、広域流通食品等を製造及び販売する施設、浅漬等の製造等を行う施設、生食用食肉等を取扱う施設等について、特に積極的に立入検査を実施し、施設基準、管理運営基準、製造基準、保存基準等の違反の発見及び排除に努めるとともに、食品等の製造、加工、運搬、保管等における衛生的な取扱いについても指導を行うこと。  また、消費者等に対し、食品衛生に関する正しい知識の普及啓発を図る観点から、厚生労働省ホームページ等に掲載している内容等を参考に、手指の洗浄の重要性等の食品衛生に関する情報提供を積極的に行うこと。特に、食肉については、生で喫食せず中心部まで十分に加熱して喫食すること及び調理に使用するトングや箸等が他の食材を汚染することがないよう注意喚起や啓発を行うこと。さらに、食肉以外の加熱が必要な食品についても十分に加熱して喫食するよう注意喚起や啓発を行うこととしている。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000088092.pdf5 食品等の表示に係る夏期一斉取締りの実施について通知  平成27年5月28日、内閣府食品安全委員会事務局は標記報告書を公表した。  平成27年6月18日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛に「平成27年度食品衛生法等の規定に基づく食品等の表示に係る夏期一斉取締りの実施について」を通知した。  夏期一斉取締りに当たっては、次のとおり監視指導とともに、啓発活動を実施するとしている。 (1) 保健機能食品と紛らわしい名称等の適正化  「保健機能食品以外の食品における表示の適正化について(協力要請)」(平成27年3月31 日付け消表対第446号)(別紙2)を踏まえ、引き続き、保健機能食品以外の食品について、「機能〇〇食品」等と表示された表示の適正化を図る。 (2) 保健機能食品の表示の適正化  特定保健用食品については、直近の一般紙広告実態調査(平成27年6月1日~同月10 日)においては、許可表示の欠落による2件の改善要請事例があった。また、機能性表示食品については、広告等の問合せが、多数寄せられている状況があり、これらのことを踏まえ、「機能性表示食品の広告等に関する主な留意点」パンフレット(別紙3)を作成した。今後、これらを活用し、保健機能食品の表示の適正化を図る。 (3) 米粉パン等の表示の適正化等  小麦アレルギー対策の一環として製造されている、米粉を使用したパン等の一部で、製造工程における小麦の混入(コンタミネーション)や表示欠落が原因と思われるアレルギーに関する事故情報が散見されていることを踏まえ、「米粉製品による小麦アレルギー注意喚起パンフレット」(別紙4)等を作成した。今後、これらを活用し、米粉製品を製造、販売する事業者に対して、適正表示及びコンタミネーションの防止対策の監視指導を徹底するとともに、周知に関して農林水産省と連携を図る。 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1459.pdf6 FDA(米国食品医薬品庁)のトランス脂肪酸規制に関する食品安全委員会の見解  平成27年6月19日、食品安全委員会は米国FDAのトランス脂肪酸規制に関し次の通り見解を示した。  平成27年6月、FDAは、トランス脂肪酸が多く含まれる部分水素添加油脂は、GRAS(従来から使われており安全が確認されている物質)ではないとして、食品に使用するためにはFDAの承認が新たに必要(2018年から)と決定しました。  このFDAによる規制の対象は、トランス脂肪酸ではなく、部分水素添加油脂(マーガリンやショートニング等の原料)です。さらに、規制の内容は、使用禁止ではなく、現在GRASとなっており食品に自由に使用できる部分水素添加油脂を、3年後にGRASの対象ではなくするということです。新規にFDAに承認申請し認められれば、使用可能とのことです。  今回の米国の規制は、トランス脂肪酸の削減を目的としています。しかし、日本と米国では脂肪やトランス脂肪酸の摂取量が異なることに留意する必要があります。 <トランス脂肪酸の平均摂取量(エネルギー比)※> ○アメリカ:2.2%   ○日本:0.3% ※食品安全委員会「食品中に含まれるトランス脂肪酸」評価書より トランス脂肪酸とは、脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。WHOでは、心血管系疾患のリスクを低減し、健康を増進するための目標として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー比1%未満に抑えるよう提示しています。 諸外国では、トランス脂肪酸摂取量がこのWHOの目標を超えている国や、我が国やドイツのように目標値内におさまっている国もあり、その対応は各国の状況に合わせて様々です。 日本では、食品に含まれるトランス脂肪酸について、食品健康影響評価を行い、平成24年3月8日の食品安全委員会において評価書を確定し、消費者庁、厚生労働省、農林水産省に通知しました。大多数の日本国民のトランス脂肪酸の摂取量は、WHOの目標を下回っています。脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要がありますが、通常の食生活では、健康への影響は小さいと考えられます。 また、例えばマーガリン等におけるトランス脂肪酸の量は、銘柄にもよりますが、平成22年のものは平成18年のものより減少しており、低減に向けた取組が行われています。さらに、食品中のトランス脂肪酸を低減すると、飽和脂肪酸の含有量が増加する傾向があり、 飽和脂肪酸については、摂取目標量の上限(エネルギー比7%)を超える性・年齢階級があることに留意が必要と考えます。 <日本人の飽和脂肪酸の年齢層別摂取量中央値(エネルギー比)※> 女性:7.4%(20〜29歳)、7.3%(30〜39歳) ※食品安全委員会「食品中に含まれるトランス脂肪酸」評価書より 脂質自体は重要な栄養素でもありますが、近年は、食生活の変化により脂質の摂取過剰が懸念されており、トランス脂肪酸だけを必要以上に心配せず、脂質全体の摂取量に十分配慮し、バランスの良い食事を心がけることが大切です。 http://www.fsc.go.jp/osirase/trans_fat.html7 食品衛生月間の実施  平成27年6月23日、厚生労働省は、食品衛生管理の徹底及び地方公共団体等におけるリスクコミュニケーションへの取組の充実等を図るため、8月の1か月間を「食品衛生月間」とし、実施にあたっての「食品衛生月間実施要領」を定め公表した。 食品衛生月間実施要領の主な点は次のとおり 1. 趣旨 食品は、国民の生命及び健康に密接な関わりを有し、その衛生の確保及び向上を図ることは、国民が健やかな日常生活を営む上で極めて重要である。 昨年の食中毒発生数については、患者数19,355人、事件数については976件、死者数は2人であった。(確定値) 特に夏期は、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、ぶどう球菌、腸管出血性大腸菌といった細菌による食中毒が多発しており、規模の大きい食中毒事例も多発している。 このような状況の中、国民が健康で安心できる食生活を送るためには、食品等事業者はもとより、国民に対する食品衛生思想の普及・啓発、食品の安全性に関する情報提供及びリスクコミュニケーションの推進並びに食品等事業者のコンプライアンスの徹底を通じた食の安全の確保を図ることが必要不可欠である。 このため、本年度においても、8月を食品衛生月間と定め、全国的に食品衛生思想の普及・啓発をより一層強力に推進するものである。 2. 実施機関 (1) 主催 厚生労働省、都道府県、保健所設置市及び特別区 (2) 後援 文部科学省、農林水産省及び消費者庁に申請 (3) 協賛 公益社団法人日本食品衛生協会、一般財団法人日本公衆衛生協会、 独立行政法人国民生活センター、独立行政法人日本スポーツ振興センター に申請 3. 実施期間 平成27年8月1日(土)から同月31日(月)までの1か月間 4. 実施目的 食中毒事故の防止と衛生管理の向上を図るため、食品等事業者及び消費者に対し、食品衛生思想の普及・啓発、食品の安全性に関する情報提供及びリスクコミュニケーションの推進を図ることを目的とする。 <日本人の飽和脂肪酸の年齢層別摂取量中央値(エネルギー比)※> http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049664.html8 平成24年度の食品廃棄物等の可食部・不可食部の量の把握調査の結果公表  平成27年6月30日、農林水産省食料産業局は食品関連事業者の食品廃棄物等の発生抑制の取組を推進するため、「平成26年度食品産業リサイクル状況等調査委託事業」により食品産業における食品廃棄物等の年間発生量のうち可食部・不可食部の量について食品関連事業者を対象としたアンケート調査を行い、結果を取りまとめ公表した。その概要は次のとおり。 調査方法 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律第9条第1項に基づき、平成24年度の食品廃棄物等の発生量等を報告した食品関連事業者に対し、郵送によるアンケート調査。 調査内容 平成24年度の食品廃棄物等の発生量のうち可食部・不可食部の量 結果概要 各事業者からの回答に基づき、食品産業全体での可食部・不可食部の量を推計した結果、平成24年度の食品産業全体の食品廃棄物等の発生量約1,916万トンのうち 可食部の量は331万トン (食品ロスに相当する量) 不可食部の量は1,586万トン となり、このうち、可食部の量を業種別にみると次のとおりであった。 食品製造業・・・・141万トン 食品卸売業・・・・13万トン 食品小売業・・・・58万トン 外食産業・・・・119万トン http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/150630.html