平成28年3月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 ライオン株式会社に対する健康増進法に基づく勧告公表

平成28年3月1日、消費者庁は、ライオン株式会社に対し、健康増進法第32条第1項の規定に基づき、勧告を行ったことを公表した。その主な内容は次のとおり。 ライオン株式会社が「トマト酢生活トマト酢飲料」と称する特定保健用食品に関し、日刊新聞紙に掲載した広告は、健康の保持増進の効果について、著しく人を誤認させるような表示であり、健康増進法第31条第1項の規定に違反するものであるところ、かかる行為は、国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認められた。 ・勧告の概要 (1) 対象商品 「トマト酢生活トマト酢飲料」と称する特定保健用食品 (2) 表示内容 ライオン株式会社は、あたかも、本件商品に血圧を下げる効果があると表示することについて消費者庁長官から許可を受けているかのように示し、また、薬物治療によることなく、本件商品を摂取するだけで高血圧を改善する効果を得られるかのように示す表示をしていた。 ・実際 本件商品は「本品は食酢の主成分である酢酸を含んでおり、血圧が高めの方に適した食品です。」を許可表示とし、食生活の改善に寄与することを目的として、その食品の摂取が健康の維持増進に役立つ、又は適する旨を表示することのみが許可されている特定保健用食品であって、血圧を下げる効果があると表示することについて消費者庁長官から許可を受けているものではなく、また、高血圧※2は薬物治療を含む医師の診断・治療によらなければ一般的に改善が期待できない疾患であって、薬物治療によることなく、本件商品を摂取するだけで高血圧を改善する効果が得られるとは認められないものであった。 参考 健康増進法 (誇大表示の禁止) 第三十一条 何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。 2 (省略) (勧告等) 第三十二条 内閣総理大臣は、前条第一項の規定に違反して表示をした者がある場合におて、国民の健康の保持増進及び国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときは、その者に対し、当該表示に関し必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。 2 内閣総理大臣は、前項に規定する勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。 3 (省略) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1529.pdf2 しらす加工品の過酸化水素使用基準の改正に関する部会報告書公表 平成28年3月14日、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部基準審査課は、3月11日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会において検討されたしらす加工品の過酸化水素使用基準の改正に関する部会報告書を公表した。 これは、食品安全委員会において食品健康影響評価がなされたことを踏まえ、添加物部会において審議され、報告が取りまとめられたもので、厚生労働大臣への答申後、パブリックコメントの手続きを経て告示改正が行われる。その主な内容は次のとおり。 (1) 食品添加物としての有効性 生しらすに3%の過酸化水素を噴霧、10分間放置し、90秒間煮沸した後、10℃で保管した釜揚げしらすについて、一般生菌数及び揮発性塩基窒素(VBN)を7日間(製造日を含む。)測定した。また、過酸化水素で処理をしていない未処理群を設定し、比較を行った。 一般生菌数については、製造日において過酸化水素処理群が未処理群と比較して1/10であった。また、消費期限の目安である10の6乗個/gに達するまでの期間は、対照群が4日であったのに対し、過酸化水素処理群では6日に延長された 。 また、VBNは、未処理群では6日目から増加し、7日目には初期腐敗といわれる30mg/100gを超えたが、過酸化水素処理群では7日間VBNの増加は認められなかった。 (2) 改正案 過酸化水素は、釜揚げしらす及びしらす干しにあってはその1kgにつき0.005g以上残存しないように使用しなければならない。その他の食品にあっては、最終食品の完成前に過酸化水素を分解し、又は除去しなければならない。 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000116228.pdf