平成28年7月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 平成28年熊本地震を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の運用の終了

平成28年7月5日、消費者庁表示対策課長、農林水産省消費・安全局消費者行政・食育課長及び厚生労働省健康局がん・疾病対策課長の連名をもって、各都道府県等食品表示主管部(局)長宛に、平成28年4月20日付け通知に基づき食品表示法(平成25年法律第70号)の運用を緩和する措置を講じてきたところ、平成28年7月29日をもってこれらの通知を廃止する通知を出した。 http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/160705_pressrelease_0001.pdf2 と畜・食鳥検査等に関する実態調査の結果通知 平成28年7月8日、厚生労働省は医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛に、平成28年4月6日付けで依頼した、と畜・食鳥検査等に関する実態調査について、平成27年度実績の調査結果として取りまとめ通知した。 その主な内容は、次のとおりである。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000129883.pdf3 牛海綿状脳症(BSE)国内対策の見直しに係る食品健康影響評価(健康と畜牛のBSE検査の廃止)に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集 平成28年7月13日、内閣府食品安全委員会事務局評価第二課は厚生労働大臣から食品安全委員会に求められた、海綿状脳症(BSE)国内対策の見直しのうち、食用にと畜される健康と畜牛のBSE検査を廃止した場合に係る食品健康影響評価について、平成28年7月12日に開催された第614回食品安全委員会においてプリオン専門調査会における審議結果(案)が審議され、広く国民の皆様から意見・情報を募ることとした。 プリオン評価書(案)牛海綿状脳症(BSE)国内対策の見直しに係る食品健康影響評価(健康と畜牛のBSE検査の廃止)の概要は、次のとおりである。 諮問内容は、(1)BSE検査の検査対象月齢についての取りまとめ(2)特定危険部位(SRM)の範囲で、(1)を先行して評価した。 2013年5月評価以降の発生状況を踏まえると、日本においては、飼料規制等のBSE対策が継続されている中では、今後、定型BSEが発生する可能性はほとんどないものとした2013年5月評価書の評価は、妥当であると考えられる。また、非定型BSEに関しては、現在までに得られている知見に基づけば、H-BSEについては、実験動物への感染実験の結果から人への感染の可能性は確認できず、EUにおけるH-BSEの発生頻度は、2歳齢以上の牛100万頭につき、年当たり0.07頭と極めて低い。L-BSE感染牛の脳組織については人への感染の可能性が否定できないが、現行のSRM以外の組織の感染性は極めて低いと考えられる。日本又はEUにおけるL-BSEの発生頻度は、2歳齢以上の牛100万頭につき、それぞれ年当たり、0.07頭又は0.09頭と極めて低い。また、これまでに、疫学的に非定型BSEとvCJDを含む人のプリオン病との関連を示唆する報告はない。 諮問事項の(1)のBSE検査の検査対象月齢について、現在と畜場において実施されている、食用にと畜される48か月齢超の健康牛のBSE検査について現行基準を継続した場合と廃止した場合のリスクの差は非常に小さく、人への健康影響は無視できる。 また、引き続き、全てのと畜される牛に対すると畜前の生体検査が適切に行われなくてはならない。24か月齢以上の牛のうち、生体検査において、運動障害、知覚障害、反射異常又は意識障害等の神経症状が疑われたもの及び全身症状を呈するものを対象とするBSE検査が行われる必要がある。 諮問事項の(2)SRMの範囲の現行の「全月齢の扁桃及び回腸遠位部並びに30か月齢超の頭部(舌、頬肉、皮及び扁桃を除く。)、脊髄及び脊柱」から「30か月齢超の頭部(舌、頬肉、皮及び扁桃を除く。)及び脊髄」に変更した場合のリスクの比較については、飼料規制等を含めたBSE対策全般への影響について確認が必要と判断し、今後のリスク管理機関における整理を踏まえ、検討することとした。 http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc3_prion_japan_280713.html 評価書(案) http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc3_prion_japan_280713.data/pc3_prion_japan_280713.pdf4 欧州食品安全機関、食肉の保存及び輸送期間における腐敗菌の増殖に係る科学的意見書を公表 平成28年7月6日、食品安全委員会が公表した食品安全関係情報に欧州食品安全機関(EFSA) が平成28年6月30日公表した標記意見書が紹介されている。 http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2016&from_month=06&from_day=18 &to=struct&to_year=2016&to_month=07&to_day=01&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc 紹介された意見書の概要は次のとおりである。 シュードモナス属及び乳酸菌(LAB)は、好気下及び嫌気下(真空包装)それぞれの条件における腐敗菌の増殖について特定の冷蔵時間・温度設定の効果を評価する上で最も適した微生物である。シュードモナス属の増殖を牛肉、豚肉及びめん羊肉の枝肉についてモデル化し、特定の目標表面温度に冷却して、枝肉の中心温度が7℃に冷却された時(EC規則 No 853/2004)に起きる増殖と比較した。枝肉の表面の目標冷蔵温度(牛肉及びめん羊肉 1~10℃、豚肉 5~10℃)及び±1℃の温度での輸送を組合せた時のシュードモナス属の増殖を1~48h(初期菌数を1CFU/cm2と想定)についてモデル化した。最後に、シュードモナス属及びLABの増殖を、ひき肉/成型肉(meat preparation)に用いる食肉について1~7℃(全体)の温度で1~12日間保存された時をモデル化した。10の7乗CFU/cm2に達する時までの保存温度及び最初の菌数の影響も調査した。 出力結果から、表面温度が4~10℃の牛又はめん羊の冷蔵枝肉では全て、中心温度が7℃に冷却されているものと比較して、シュードモナス属の同等あるいは低度の増殖が推測された。豚の枝肉での結果は、目標とする表面温度及び使用された冷却曲線によって変化した。シュードモナス属及びLABは1~7℃で保存された食肉では確実に増殖し、7℃で11日間保存された場合は、LAB数は10の7乗CFU/cm2を超過すると推測された。 中心温度を7℃に冷却した時と同等又は低度の増殖が起きたときに用いた時間・温度冷却プロファイルは、当初の汚染度合に依存的であると結論付けられた。 当該意見書は以下のURLから入手可能である。 http://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/scientific_output/files/main_documents/4523.pdf http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu045103801495 食品衛生月間の実施 平成28年7月21日、厚生労働省は標記月間の実施を公表した。その内容は、次のとおりである。 (1) 趣旨 食品は、国民の生命及び健康に密接な関わりを有し、その衛生の確保及び向上を図ることは、国民が健やかな日常生活を営む上で極めて重要である。 昨年の食中毒発生数については、患者数22,718人、事件数については1,202件、死者数は6人であった。(確定値) 特に夏期は、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、腸管出血性大腸菌、黄色ブドウ球菌といった細菌による食中毒が多発しており、規模の大きい食中毒事例も多発している。 このような状況の中、国民が健康で安心できる食生活を送るためには、食品等事業者はもとより、国民に対する食品衛生思想の普及・啓発、食品の安全性に関する情報提供及びリスクコミュニケーションの推進並びに食品等事業者のコンプライアンスの徹底を通じた食の安全の確保を図ることが必要不可欠である。 このため、本年度においても、8月を食品衛生月間と定め、全国的に食品衛生思想の普及・啓発をより一層強力に推進するものである。 (2) 主催: 厚生労働省、都道府県、保健所設置市及び特別区 後援: 文部科学省、農林水産省及び消費者庁に申請 協賛: 公益社団法人日本食品衛生協会、一般財団法人日本公衆衛生協会、 独立行政法人国民生活センター及び独立行政法人日本スポーツ振興センターに申請 (3) 実施期間 平成28年8月1日(月)から同月31日(水)までの1か月間 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000093317.pdf6 平成27年度食料自給率等公表 平成28年8月2日、農林水産省は、平成27年度食料自給率及び食料自給力指標について、公表した。食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、どの程度が国内産で賄われているかを表す指標で、我が国の食料の国内生産及び消費の動向を把握するため、毎年公表している。食料自給力指標とは、国内生産のみでどれだけの食料を最大限生産することが可能かを試算した指標で、我が国の食料の潜在生産能力の動向を把握するため、平成27年から公表している。平成27年度の食料自給率の結果は、次のとおりである。 (1) カロリーベース食料自給率 平成27年度においては、魚介類の国内生産及び自給率の高い米の消費が減少する一方、小麦及びてん菜の国内生産が増加したことから、前年度と同率の39% (2) 生産額ベース食料自給率 平成27年度においては、野菜及び畜産物の国内生産額が増加したことから、前年度から2ポイント上昇の66% (3) 主な食品の自給率(%)、畜産物の( )内は飼料自給率を考慮した値 米97うち主食用100、小麦13、かんしょ94、ばれいしょ73、大豆7、野菜79、みかん104、りんご56、牛肉42(12)、豚肉51(7)、鶏肉67(9)、鶏卵95(13)、牛乳・乳製品63(27)、魚介類55うち食用60 http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/160802.html http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/160802-4.pdf