平成29年1月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 健康牛のBSE検査の見直しについての依頼通知

平成29年1月25日、厚生労働省医薬・生活衛局生活衛生・食品安全部長及び農林水産省生産局畜産部長の連名をもって各都道府県知事等に標記依頼通知を出した。その主な内容は次のとおり。 食品安全委員会から、国内でと畜される48か月齢超の健康牛のBSE検査について、BSE検査を廃止しても人への健康リスクは変わらないとする評価結果の答申があったことから、厚生労働省においても48か月齢超の健康牛のBSE検査の廃止について、パブリックコメント、審議会報告等を経て、厚生労働省関係牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則(「以下「省令」という。」)を改正し、平成29年4月1日に施行することを予定している。 地方自治体からは、全国一斉に健康牛のBSE検査が見直されるよう国が調整してほしいとの要望があり、改正後の省令の施行時において、平成25年7月に健康牛のBSE検査の検査対象月齢を48か月齢超に引き上げたときと同様に、全地方自治体において一斉に健康牛のBSE検査の見直しが行われるようお願いする。 なお、健康牛のBSE検査の見直し以降も、生体検査で神経症状等を示す牛のBSE検査、と畜場等における特定危険部位の除去、飼料規制等のBSEのリスク管理措置は引き続き実施される。 国としても、今後とも、国産牛肉の安全性について、国民に対し丁寧な説明を行っていくので、こうした状況を理解の上、消費者、生産者、流通業者等の関係者の理解を得ながら準備を進めるようお願いする。 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000149669.pdf 中間とりまとめに関する主な意見 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000145929.pdf2 不当景品類及び不当表示防止法に基づく課徴金納付命令が初めて行われた 平成29年1月27日、消費者庁は、三菱自動車工業株式会社(以下「三菱自動車工業」という。)に対し、景品表示法第7条第1項の規定に基づく措置命令及び同法第8条第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行い公表した。同法における課徴金制度は平成28年4月1日から設けられたもので、今回が初めての適用となる。今回の主な点は次のとおり。 三菱自動車工業が特約販売契約を締結する自動車販売業者を通じて供給する軽自動車並びに普通自動車及び小型自動車に係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)が認められた。 ・対象となった表示の概要(例) a 表示媒体 カタログ及び自社ウェブサイト b 表示期間 遅くとも平成28年4月1日から同月20日までの間 c 表示内容 燃料消費率について、eK ワゴン(LTMX、M、二輪駆動)の場合、実際に表示できる上限26.1㎞/Lをカタログの表示では30.4 ㎞/L としていた。 (1) 対象商品 前記2(1)ア(イ)記載の普通自動車等のうち別表8記載の26商品 (2) 命令の概要 三菱自動車工業は、平成29年8月28日までに、別表8中の「課徴金額」欄記載の額を合計した4億8507万円を支払わなければならない。 http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/170127premiums_1.pdf 参考:景品表示法(関係条文) (不当な表示の禁止) 第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。 一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 第二節 措置命令 第七条 内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなっている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。 一 ~四 略 第三節 課徴金 (課徴金納付命令) 第八条 事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるとき、又はその額が百五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。 一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であること又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であることを示す表示3 「佐賀県及び佐賀県内事業者が提案する養殖から提供まで管理された方法により取り扱われる養殖トラフグの肝臓」に係る食品健康影響評価について意見・情報募集 平成29年2月1日、内閣府食品安全委員会事務局評価第二課は食品安全委員会かび毒・自然毒等専門調査会がまとめた標記評価について、意見・情報を募ることとした。 期限は平成29年3月2日。 要約の主な点は次のとおり。 かび毒・自然毒等専門調査会では、主に、①フグの毒化機構並びに養殖方法における危害要因及び制御ポイント、②HPLC-FL法によるTTXの分析の妥当性、③検査部位(R4部位)の妥当性、及び④分析対象物質をTTXのみとすることの妥当性の観点から評価を行った。 ①については、毒化機構に関する未解明な点を考慮すると、提案された方法により陸上養殖されたトラフグの肝臓について、その危害要因及び制御するべき点を特定することができず、現時点においては、食品としての安全性が確保されていると確認することはできない。 ②については、今回提案されたHPLC-FL法は、食品の安全性を確認する試験法として、その妥当性の確認が行われたことはない。 さらに、特定事業者の管理下で陸上養殖されたトラフグの肝臓のR4部位を、提案されたHPLC-FL法を用いる機器分析で分析したデータはない。 このため、提案された個別の毒性検査の方法が、特定事業者の管理下で陸上養殖されたトラフグの肝臓の食品としての安全性を確保するために十分な方法であるかについて、今回提出された資料から判断することはできない。 ③については、提案書において検査部位であるR4部位の毒力が相対的に強いとされたが、解剖学的、生理学的に説明可能な知見は報告されていない。また、トラフグ肝臓内の毒力の分布に大きなばらつきがあるとする報告もある。 よって、今回提出された資料をもって、R4部位をHPLC-FL法を用いて検査することにより、提案の方法で陸上養殖されたトラフグの肝臓全体の安全性を保証できると判断することはできない。 ④については、今回の提案では、分析対象物質はTTXのみとしているが、陸上養殖トラフグの肝臓に、TTXに匹敵する強い毒性を持つ類縁体が含まれる可能性を否定することはできない。また、麻痺性貝毒(以下「PSP」という。)によるフグの毒化機構についても不明な点が多く、陸上養殖トラフグの肝臓にPSPが蓄積する可能性を否定することはできない。 これらのことから、分析対象物質をTTXのみとすることが、陸上養殖トラフグの肝臓の安全性を確保する上で妥当であるかについて判断することはできない。 以上のことから、現時点の知見及び提出された試験・検討結果からは、提案された方法により陸上養殖されたトラフグの肝臓について、個別の毒性検査を行うことにより、食品としての安全性が確保されると確認することはできない。今回の提案は、従来、可食部位ではなかった部位の一部分を機器分析により個別検査し、TTX濃度が検出下限値以下であれば販売等を認めるという、新たな管理体制への移行を求めるものである。このような管理体制の変更については、下痢性貝毒の管理方法の変更の際と同様、まずは、機器分析のデータを十分に蓄積する必要がある。その上で、致死以外の影響も含め、詳細な毒性データに基づいて人への健康影響について検討を行う必要があると考える。 http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_kabi_torafugu_290201.html 評価書 http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_kabi_torafugu_290201.data/pc1_kabi_torafugu_290201.pdf