サルモネラ感染症について

サルモネラ感染症の定義および分類

サルモネラ感染症は、腸チフスおよびパラチフスのチフス性疾患と腸炎型サルモネラ症(食中毒)の3つがあり、汚染した食品や水、ヒトを介して感染するので、食品取扱い者の腸内細菌検査(検便)の検査対象となっています。  原因菌のサルモネラ属菌としては、チフス菌(Salmonella Typhi)、パラチフスA菌(Salmonella Paratyphi A)および腸炎型サルモネラ菌があり、腸チフスは、チフス菌、パラチフスは、パラチフスA菌、腸炎型サルモネラ症は、その他のサルモネラ属菌(腸炎型サルモネラ菌)の感染により起ります。  腸チフス、パラチフスは、図1のとおり日本国内での発生は少なく、ほとんどが海外での感染ですが、輸入食品を介して感染する場合もあります。感染症法では、腸管出血性大腸菌感染症、コレラ、赤痢とともに国内で監視する必要がある三類感染症に分類され、法律により届出や特定業種での就業制限が義務づけられています。また、腸炎型サルモネラ症は、感染性胃腸炎として五類感染症に分類され、取扱いが異なっています。

サルモネラ感染症の症状

腸チフス菌およびパラチフスA菌は、口から入り、腸のリンパ節で増殖して潰瘍をつくる一方で、血流に乗って菌が全身に広がり症状が現れます。潜伏期間は2週間前後で、主な症状は、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、全身のだるさ、食欲不振などです。下痢は半分くらいのヒトにみられ、腸のリンパ節に潰瘍ができるため、腸出血や腸穿孔が見られます。国内での発生は稀ですが、原因不明の発熱が続く場合は、注意して下さい。 また、腸炎型サルモネラ症は、主に汚染した動物性食品の喫食により感染し、6~72時間の潜伏時間後に発熱と胃腸炎症状が現れます。

サルモネラ属菌の検査と届出

糞便や血液(腸チフス菌およびパラチフスA菌の場合)から菌を分離することで診断が行われ、菌の分離には2~3日はかかります。なお、弊社では、遺伝子増幅法(PCR法)による糞便からのサルモネラ属菌検査を行っており、陰性の場合は1日で検査結果報告が可能です。  腸チフス菌およびパラチフスA菌が分離された場合は、医師による届出が必要となりますので、かかりつけの医師や所轄保健所に相談して下さい。また、その他のサルモネラ属菌(腸炎型サルモネラ菌)が分離された場合は、医師による届出の必要はありません。

表1.腸チフス・パラチフスの年別・感染地域別報告数(2000~2011年)

2000~2007年3月:患者、疑似症患者、無症状病原体保有者 2007年4月~2011年:患者、無症状病原体保有者

病原微生物検出情報(感染症研究所)