コレラ菌感染症(コレラ)について

コレラの定義および分類

コレラは、コレラ菌(Vibrio cholerae)を病原体とする経口感染症で、海外の熱帯および亜熱帯地域で多く発生しています。国内での患者は、表1のとおり多くが海外からの帰国者で、国内での感染例はあまり多くありません。感染症法では、腸管出血性大腸菌感染症、赤痢、腸チフス、パラチフスとともに国内で監視する必要がある三類感染症に分類され、法律により届出や特定業種での就業制限が義務付けられています。  コレラ菌には、下痢の原因となるコレラ毒素(cholerae toxin)を産生するものと非産生のものがあり、感染症として扱うのはコレラ毒素を産生するコレラ菌のみです。  コレラ毒素を産生するコレラ菌としては、血清型O1とO139(ベンガル型)があり、血清型O1は型特異因子により小川型、稲葉型、彦島型に分類され、さらに、生物型としてアジア型(古典型)とエルトール型に分類されています。

コレラの症状

ヒトへの感染は、患者の便やおう吐物に排出されたコレラ菌に汚染された水や食品による経口感染が主で、経口摂取後、胃(胃酸)で死滅しなかった菌が、小腸下部に定着・増殖し、感染局所で菌が産生したコレラ毒素が細胞内に入って症状が現れます。 潜伏時間は、1日から3日で、突然下痢を起こし、下痢に続いて嘔吐を起こします。発熱、腹痛はない場合が多いのですが、米のとぎ汁のような大量の下痢便が何回も出て、急激に体液を失い、脱水症状が現れます。さらに進行すると意識障害や痙攣が起り、最悪の場合死に至る場合があります。

コレラ菌の検査と届出

検査では、便から菌を分離し、分離された菌がコレラ毒素を産生した場合にコレラ菌と判定します。検査には少なくとも2~3日かかります。  コレラ菌が分離された場合は、医師による届出が必要となりますので、かかりつけの医師や所轄保健所に相談して下さい。また、血清型O1以外のO2、O3、O4等は、分類上Vibrio choleraeですが、ナグビブリオ(non-agglutinable(非凝集) Vibrio cholerae:NAG Vibrio)と呼ばれ、食中毒の原因菌とされており、医師による届出の必要はありません。

表1.日本のコレラ患者発生状況、2000~2010年

∗患者&無症状病原体保有者(疑似症を除く):V.choleraeO1&O139CT+
∗∗国内/国外不明も含む。
患者報告は感染症発生動向調査(2011年3月18日現在報告数)
病原体報告は病原微生物検出情報(2011年3月17日現在報告数)