「過酢酸製剤」をめぐる動きについて

近年、食品のO157、ノロウイルス対策として、電解水が使用され始めていますが、本年(平成25年)になってさらに過酢酸製剤が注目されるようになっています。現在のところ食品に直接使用できるところまではきていませんが、その動きが見受けられます。

1 過酢酸製剤

 過酢酸製剤(以下、「PAA」)は、過酢酸、酢酸、過酸化水素、HEDP、過オクタン酸、オクタン酸の6剤を混合した、水に溶け易い酢酸臭の強い液体で、細菌、真菌(カビ、酵母)、ウイルスに対して幅広い殺菌性、殺ウイルス性を示し、炭疽菌等の芽胞にも有効で、WHOがグルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、次亜塩素酸Na、過酸化水素とともに炭疽菌の消毒薬として推奨しているものです。人体に対する感作性、アレルギー性、変異原性は低く、最終的に水と酸素に分解されるため、実質的にほぼ無害であると考えられています。

2 使用状況

 日本での年間使用量は約7,000㌧であり、医療関係では主に医療器具の殺菌消毒に使用されており、食品関係では清涼飲料水のペットボトル、プラスチックキャップ等容器包装のメジャーな殺菌剤となっています。

3 食品殺菌剤としてのPAA

(1) 平成25年8月19日現在で、PAAは我が国で使用できる食品添加物リストに含まれておらず、現在これを食品に直接作用させようとすると、食品衛生法第10条及び第54条に抵触することになります。
(2) 厚生労働省は、外国での情報収集から「PAAは、FAO/WHO、欧州食品安全機構がO157、サルモネラ属菌等に対する有効性及び安全性を確認しており、米国、カナダ、オーストラリアにおいて既に指定食品添加物として野菜、果物、食肉等の幅広い食品に使用されていることから、当該製剤を使用した食品が輸入されている可能性がある。」との見解を示しました。
(3) 現状では、輸入食品にPAAが使用されていることが確認されれば輸入禁止措置となるところですが、国は次のとおり運用することに決定しています。
  ア 薬事・食品衛生審議会の担当部会が「WHO等で有効性及び安全性が確認されており、人の健康を損なうおそれはない。」として、早急に食品添加物リストに追加する作業に入りました。
  イ PAAが食品添加物リストに追加されるまでの間、本製剤使用に係る輸入規制を行わないとする弾力的な取扱いをすることにしています。また、輸入時のモニタリング検査によりその残留量を薬事・食品衛生審議会に定期報告することとされています。

4 食品殺菌剤としてのPAAの将来

 PAAが細菌、真菌、ウイルスに対して幅広い殺菌性を示すことから、日本国内でも近い将来本製剤の使用が活発になるものと想像できます。課題は残留性と残臭性ですが、いずれも適切に改善されるものと考えらます。