平成29年7月号のレポートを掲載しました。

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 食品用器具及び容器包装の製造等における安全性確保に関する指針(ガイドライン)について通知

平成29年7月10日、厚生労働省は医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長名をもって各都道府県知事等宛に標記通知を出した。その内容は次のとおり。
食品用器具及び容器包装については、本年6月16日付けで公表された「食品用器具及び容器包装の規制に関する検討会」の取りまとめにおいて、ポジティブリスト制度の対象となる材質の器具及び容器包装を製造する事業者においては適正な製造管理(GMP)を制度として位置付ける必要があるとされ、また、ポジティブリスト制度の対象とならない材質の器具及び容器包装を製造する事業者においても、製造管理に関する自主的な取組を推進していくことが望ましいとされたところです。
今般、「食品用器具及び容器包装の製造等における安全性確保に関する指針(ガイドライン)」を別添のとおり策定しました。
ガイドラインは、今後の食品用器具及び容器包装のポジティブリスト制度の導入を見据えつつ、その円滑な導入及び運用の前提となるよう策定したものです。各都道府県等におかれては、ガイドラインの内容について、中小規模の事業者の状況も踏まえつつ、関係事業者への周知及び指導をよろしくお願いします。
また、関係事業者の製造管理に資する情報として、ポリオレフィン等衛生協議会、塩ビ食品衛生協議会及び塩化ビニリデン衛生協議会の自主基準の対象となっている化学物質のリストを取りまとめましたので、業務の参考として送付します。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000170736.pdf 

2 と畜・食鳥検査等に関する実態調査の結果について通知

平成29年7月18日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛に標記通知を出した。各都道府県等の協力を得て調査したもので、平成28年度のその主な内容は次のとおり。
(1)と畜場数
一般と畜場173 簡易と畜場3 計176
(2)一般と畜場のと畜頭数
 牛 1,048,971、馬 9,953、豚 16,158,868、めん羊 4,915、山羊 2,854
(3)簡易と畜場のと畜頭数
豚 158、めん羊 150
(4)と畜検査手数料(円)
平均 牛  792、 仔牛  391、 豚 330、 馬  789、 めん羊、山羊 224
最低 牛  400、 仔牛  150、 豚 160、 馬  400、 めん羊、山羊  60
最高 牛1,300、  仔牛1,020 、 豚 600、 馬 1,300、 めん羊、山羊 500
(5)と畜料金 
平均 牛 8,558 、 豚 2,105
最低 牛  0 、 豚  0
最高 牛32,400 、豚21,600
(6) 規模別食鳥処理場数
大規模食鳥処理場    146 ( 7.3% )
認定小規模食鳥処理場 1,856 ( 92.7% )
計          2,002 ( 100.0% )
(7)規模別処理羽数
大規模食鳥処理場 認定小規模食鳥処理場 計
総数 766,484,649 ( 100.0% ) 22,900,433 ( 100.0% ) 789,385,082 ( 100.0% )
ブロイラー 686,806,409 ( 89.6% ) 9,944,229 ( 43.4% ) 696,750,638 ( 88.3% )
成鶏  79,284,922 ( 10.3% ) 11,359,358 ( 49.6% ) 90,644,280 ( 11.5% )
その他 393,318 ( 0.1% )  1,596,846 ( 7.0% )  1,990,164 ( 0.3% )
(8)食鳥検査手数料(平日,円)
平均  4.28、  最低  3 、  最高  6
(9)と畜検査員数、実際に検査を行った職員(平成28年度末日時点)
自治体職員 1,954
(10)食鳥検査員数、実際に検査を行った職員(平成28年度末日時点)
総数 1,057(内訳、自治体職員 814、指定検査機関職員 243)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000171490.pdf 

3 ノロウイルスによる食中毒の予防及び調査の結果について

平成29年7月21日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課名をもって各都道府県等食品衛生主管部(局)食品衛生担当課宛標記事務連絡を出した。これは、平成28年11月24日付けで各都道府県等に調査を依頼し、その結果をまとめたものである。調査目的はノロウイルスを病因物質とする食中毒発生施設の調理従事者の行動および施設の衛生状況把握で、調査方法は平成28年12月~29年1月にノロウイルスを病因物質とする食中毒事例(65事例)が発生した施設及びその調理従事者に対し調査を実施したもので、その主な内容は次のとおり。
(1)作業室での手洗い等に関する事項
手洗い設備は使用できる状態である              53/65     82%
(2)手袋に関する事項
食品に直接触れる作業において、手袋(使い捨て手袋)を使用しているか
使用している                        21/65     32%
(3)便所に関する事項
便所の清掃状況について:頻度   1日に1回以上      22/65     34%
(4)従事者に関する事項
健康状態の確認記録がある                  18/65     28%
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000172041.pdf

4 「新たな時代に対応した評価技術の検討 -化学物質の毒性評価のための(Q)SAR及びRead acrossの利用- 」の取りまとめ公表

平成29年7月26日、内閣府食品安全委員会事務局標記とりまとめを公表した。その主な内容は次のとおり。
食品安全委員会は、2003年の設立以来、食品分野の化学物質、食中毒原因微生物等について、国際的に合意されたリスクアナリシスの考え方に基づき、人の健康に与える影響を科学的に評価してきた。
評価対象物質が多様化し、毒性試験をめぐる社会的情勢が変化している中で、より科学的に妥当性の高い食品健康影響評価を行うためには、これまでに活用した評価方法に加えて新しい評価方法についても活用していく必要性が生じている。
食品安全委員会は、今後の積極的な活用が見込まれる評価方法について現状と課題を整理し、今後の取組の方向性について提言するため、平成28年44、評価技術企画ワーキンググループを立ち上げた。今般、同ワーキンググループにおいて、コンピュータ上での化学物質の毒性評価方法である(Q)SAR(構造活性相関(Structure-Activity Relationship, SAR)及び定量的構造活性相関(Quantitative Structure-Activity Relationship, QSAR))及びRead acrossについて検討し、議論の経過を取りまとめたものである。
(Q)SAR及びRead acrossは、化学物質の構造などを参考にその物質の毒性等を推定する方法で、活用には毒性試験データを収載した毒性データベースとソフトウェア(評価支援ツール)が必要で、専門家がデータベースの情報や評価支援ツールの出力結果等を参考にすることにより、毒性の判断の精度が向上し、ひいては評価結果の頑健性が一層増すことが期待でき、特に、食品に含まれる微量の化学物質のうち、毒性試験データが乏しい物質の毒性評価等において、今後積極的に活用する意義は大きいと考える。
http://www.fsc.go.jp/osirase/wg_gijyutsukikaku_1.html 
取りまとめ
http://www.fsc.go.jp/osirase/wg_gijyutsukikaku_1.data/wg_gijyutsukikaku_houkoku_1.pdf 

5 欧州食品安全機関(EFSA)、食品媒介病原体としてのE型肝炎ウイルス(HEV)に関連する公衆衛生リスクに関する科学的意見書を公表

平成29年7月26日、食品安全委員会が公表した食品安全関係情報に標記意見書が掲載されている。その内容は次のとおり。
欧州食品安全機関(EFSA)は、同年7月11日、食品媒介病原体としてのE型肝炎ウイルス(HEV)に関連する公衆衛生リスクに関する科学的意見書を公表した(89ページ、2017年6月8日採択)。
 E型肝炎ウイルス(HEV)はEU/EEA諸国においてヒトに重大な感染症を引き起こし、過去10年にわたり28人の死亡例を含む21,000人以上の急性臨床症例が報告され、HEV症例報告が10倍に増加している。症例の大半(80%)はフランス、ドイツ及び英国から報告された。しかし、全ての加盟国において報告が義務付けられているわけではなく、また各国でサーベイランス方法も異なっていることから、症例報告数は比較できないうえ、真の症例数は恐らくもっと多いであろう。
 欧州では食品媒介によるHEV感染が主たる感染経路となっている。ブタやイノシシがHEVの主な感染源である。免疫不全者や、リスク集団とされる肝臓の既往症をもつ人、免疫抑制疾患の人及び免疫抑制療法を受けている人における集団感染及び散発例が確認されている。
 当該意見書では、検出、特定、特性分析及び食料生産動物及び食品中のHEVの追跡のための現行の手法を見直した。また、HEVの保有宿主や食品媒介経路に関する文献を精査し、HEVの疫学情報及び食品中の存在及び残留に関する情報を分析し、フードチェーンに沿った可能な管理措置を調査した。現時点で、宿主動物の肉、肝臓及び製品の摂取からHEV感染を予防する効果的な唯一の管理手段は、十分な加熱処理である。
 感染性評価や合意された分子型別プロトコルを含めた有効な定性定量検出手法の開発が、定量的微生物リスク評価及び効果的な管理措置の開発において求められている。と畜時に腸内容物にウイルスが高濃度で含まれている豚の割合を最小化するために、豚群でのHEVの疫学及び制御に関する更なる調査が必要である。豚肉、イノシシ肉及びシカ肉製品の生での摂取は避けるべきである。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04750370149 
当該意見書は以下のURLから入手可能。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.2903/j.efsa.2017.4886/epdf 

6 米国疾病管理予防センター(CDC)、サルモネラ属菌と食品に関する特集を公表
 平成29年7月26日、食品安全委員会が公表した食品安全関係情報に標記特集が掲載されている。その内容は次のとおり。
米国疾病管理予防センター(CDC)は7月5日、サルモネラ属菌と食品に関する特集を公表した。概要は以下のとおり。
 CDCは、サルモネラ属菌が米国において毎年100万人の食中毒を起こしていると推定する。ここ数年の間に、サルモネラ症集団感染は汚染されたキュウリ、鶏肉、卵、ピスタチオ、生鮮マグロ、スプラウト及び他の多くの食品に関連している。
 自分がサルモネラ感染しているか?
以下の症状のある時は医師又は医療提供者に連絡すること。
・下痢及び101.5°F(約38.6℃)を超える熱
・3日を超えて改善しない下痢
・血便
・水分保持できない長期間の嘔吐
・非常に少ない排尿、口及び喉の乾燥、起立時の眩暈等、脱水症状
1.様々な食品からサルモネラ感染症になる。サルモネラ属菌は、牛肉、鶏肉、卵、果物、豚肉、スプラウト、野菜、並びにナッツバター、冷凍ポットパイ、チキンナゲット及びチキンの詰め物等の加工食品さえも含む多くの食品から見つかることがある。汚染食品は、通常見かけも匂いも正常である。
2.サルモネラ症は、夏によりよく起こる。温暖化した気候と冷蔵していない食品は、サルモネラ属菌が増殖するのに理想的な条件である。
3.サルモネラ症は、重症化し得るし特定の人々にはより危険である。(略)
4.サルモネラ属菌は、思った以上に中毒を起こしている。1人のサルモネラ症検査確定症例に対して、確認されていないサルモネラ症例が29人いる。食中毒になったほとんどの人が医師にかかったり検査所に検体を送ったりしないので、何の病原菌で病気になったかわからない。
5.サルモネラ属菌を回避するために、生卵又は加熱不十分な(半熟卵白又は卵黄)卵を喫食しない。
 洗浄(手と表面を良く洗う)、分離(生鮮食肉と他の食品を分離する)、加熱(適切な温度まで加熱する)及び冷却(迅速に食品を冷蔵する)のガイドラインに従う。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04750270104

7 平成25~26年度 食品中の残留農薬等検査結果について公表

平成29年7月27日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課残留農薬等基準審査室は平成25年度及び平成26年度に実施された食品中の残留農薬等検査について、地方公共団体及び検疫所から報告があった検査結果をとりまとめ公表した。本集計結果から、基準値超過の割合はいずれも低く、我が国で流通している食品における農薬等の残留レベルは十分に低いものと考えられるとしており、HACCP導入におけるハザード分析に活用できるものである。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172356.html 
検査結果の主なものは次のとおり。
(1)全体
検査の総数は、平成25 年度は345 万件、平成26 年度は314 万件であった。
国産品・輸入品を合わせた全体での検出割合は、平成25 年度は0.34%、平成26 年度は0.45%であった。
基準値超過数及び割合は、平成25 年度は240 件及び0.007%、平成26 年度は282 件及び0.009%であった。
(2)農産物
輸入品については、平成25 年度は110 万件、平成26 年度は85 万件の検査が実施された。
検査全体に占める基準値超過の割合は、平成25 年度は0.010%、平成26 年度は0.018%であった。
国産品については、平成25 年度は109 万件、平成26 年度は100 万件の検査が実施され、基準値超過の割合は、平成25 年度、平成26 年度共に0.002%であった。
(3)畜水産物
輸入品については、平成25 年度は13 万件、平成26 年度は10 万件の検査が実施された。
検査全体に占める基準値超過の割合は、平成25 年度は23件、0.018%、平成26 年度は14件、0.014%であった。
国産品については、平成25 年度、平成26 年度共に17 万件の検査が実施され、基準値超過の割合は、平成25 年度は10件、0.006%、平成26 年度は14件、0.008%であった。
(4)加工食品
輸入品については、平成25 年度は93 万件、平成26 年度は99 万件の検査が実施された。
検査全体に占める基準値超過の割合は、平成25 年度、平成26 年度共に0.008%であった。
国産品については、平成25 年度、平成26 年度共に3 万件の検査が実施され、いずれの年度においても基準値超過したものは無かった。
平成25~26 年度 食品中の残留農薬等検査結果
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000172509.pdf