「食品衛生行政」国の動き 平成29年8月

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 平成28年度食料自給率等について公表

 平成29年8月9日、農林水産省は、平成28年度食料自給率及び食料自給力指標について、以下のとおり公表した。
 カロリーベース食料自給率について、平成28年度においては、小麦及びてんさい等について、作付面積は拡大したものの、天候不順により単収が落ち込み生産量が減少したこと等により、38%となった。(前年39%)
 生産額ベース食料自給率について、平成28年度においては、野菜及び果実について、輸入額が減少する中で国内生産額が増加したこと等により、68%となった。(前年66%)
 品目別カロリーベース食料自給率の主なものは次のとおり。(%)
米(主食用) 100、小麦 12、かんしょ 94、ばれいしょ 69、大豆 7、野菜 80、
みかん 100、りんご 60、牛肉 38(前年40)、豚肉 50(前年51)、鶏肉 65(前年66)、
鶏卵 97(前年96)、牛乳乳製品 62(前年62)、魚介類(食用)  56、
畜産物について、飼料自給率を考慮した場合の自給率は次のとおり。
牛肉 11、豚肉 7、鶏肉 9、鶏卵 13、牛乳乳製品 27
http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/170809.html 
食料需給表
http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/170809-1.pdf

2 加工食品の原料原産地表示制度について答申

 平成29年8月10日、消費者委員会委員長は内閣総理大臣あてに標記答申を行った。
平成29年3月22日付けで内閣総理大臣から諮問を受けた標記の件に関し、消費者委員会食品表示部会において審議を行い、当該部会において結論が得られたことを受け答申したもので、答申には、諮問された食品表示基準案を適当とする前提条件として10項目が示されている。この答申を受け、消費者庁は8~9月に、食品表示基準の一部改正に係る内閣府令を公布するものと思われる。
なお、答申において、諮問の内容と変更があった点は次のとおり。
(1) 食品表示基準第3条第2項表1の五イの(ロ)
 一定期間使用割合が5%未満である対象原材料の原産地について、当該原産地の表示の次に括弧を付して、5%未満である旨の表示を義務付けるが、第3条第2項表1の四の規定に基づく「その他」の表示に対しては、当該表示を義務付けない。
(2) 施行は今回の食品表示基準の一部改正に係る公布の日からとし、経過措置期間は府令の施行の日から平成34年3月31日までとする。(諮問は平成32年3月31日)
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2017/__icsFiles/afieldfile/2017/08/09/20170810_toshin_betsu.pdf 

3 腸管出血性大腸菌O157による食中毒患者の発生について通知

 平成29年8月22日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その内容は次のとおり
今般、埼玉県が「でりしゃす籠原店」(そうざい専門店)で加工販売されたポテトサラダを喫食した8名が腹痛、下痢、血便、溶血性尿毒症症候群(HUS)等を主症状とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生した旨公表しています。
当該ポテトサラダは、別の事業者が製造したポテトサラダをベースに当該店舗でハム、リンゴ等を加え調理したもので、8月7日に提供した「ハムいっぱいポテトサラダ」、8月8日に提供した「リンゴいっぱいポテトサラダ」を喫食した8名が発症し、6名の便から腸管出血性大腸菌O157を検出しています。
現在、関係自治体において原因の調査等が進められているところですが、同様製品による腸管出血性大腸菌による食中毒の被害拡大防止の観点から下記のとおり対応をよろしくお願いします。
1.腸管出血性大腸菌による感染症法に基づく届出情報や食品による健康被害の苦情等の相談があった場合は、同様製品の喫食状況を調査し、関連性を確認するとともに、必要に応じて食中毒調査を実施すること。
また、該当する情報を得た場合には当職まで速やかに連絡をお願いしたいこと。
2. 住民等から本事案及び当該販売者、製造事業者の製品との関連が疑われる症状の相談があった場合は、速やかに医療機関の受診を勧奨するなど適切な対応をすること。
3. 腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生した場合は、関連性を確認する観点から、平成22 年4月16 日付け食安発0416 第1号「腸管出血性大腸菌O157による広域散発食中毒対策について」に基づき、患者由来菌株を迅速に収集し、国立感染症研究所へ送付すること。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000175046.pdf

4 平成28 年度「輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果」及び「輸入食品監視統計」の公表

 平成29年8月31日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課 輸入食品安全対策室及び生活衛生・食品安全企画課 検疫所業務管理室の連名をもって標記統計等を公表した。その主な内容は次のとおり。
         注 [ ]カッコ内は平成27年度の数値
(1)輸入届出時における法違反の有無の確認
届出件数約234 万件[約226 万件]、届出重量約3,230 万トン[約3,190万トン]について、法に基づく規格、基準等への適合性について審査を実施。
(2)モニタリング検査(※件数については延べ数)
① モニタリング計画:95,929 件[95,090 件]
② 実施件数:98,164 件[97,187 件](実施率:約102%[約102%])、うち違反件数:136 件[173 件]
(3)検査命令
① 全輸出国の17 品目及び31 カ国・1 地域の69 品目(平成29 年3 月31日現在)
② 実施件数:56,877 件[58,874 件](延べ86,629 件[延べ93,859 件])、うち違反件数:235 件[239 件](延べ235 件[延べ239 件])
(4)違反状況
① 違反件数:773 件[858 件](違反率:届出件数の0.03%[0.04%]、検査件数:約20 万件[約20 万件])
(違反件数:微生物規格190 件[222 件]、有害・有毒物質及び病原微生物176 件[153 件]、残留農薬120 件[135 件]、添加物108 件[121 件]、器具、容器包装規格50 件[31 件]、腐敗、変敗、異臭及びカビの発生等46件[106 件]、残留動物用医薬品44 件
[52 件]、他42 件[39 件])
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11135000-Shokuhinanzenbu-Kanshianzenka/0000176075.pdf 

5 加工食品の原料原産地表示制度の変更に関する食品表示基準の一部を改正する内閣府令の公布

 平成29年9月1日、消費者庁は新たな加工食品の原料原産地表示制度を定めた食品表示基準の一部を改正する内閣府令(平成29 年内閣府令第43 号)が公布・施行されたことを公表した。
また、この改正に伴い、食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に対する意見募集の結果を公示し、関係通知等を改正するとともに、新たな加工食品の原料原産地表示制度に関するパンフレット及びリーフレットを作成した。
原料原産地表示制度に係る相談については、引き続き消費者庁の相談窓口(03-3507-8800(代表))に問い合わせて下さい。なお、今般新たに食品関連事業者等からの相談に対応するため、農林水産省においても原料原産地表示制度専用の相談窓口が設置された。
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_170901_0009.pdf 
食品表示基準の一部を改正する内閣府令新旧対照条文
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_170901_0001.pdf 
改正後の食品表示基準について
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_170901_0003.pdf 
改正後の新たな原料原産地表示制度に関するQ&A
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_170901_0004.pdf
食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に対する意見募集の結果について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235080039&Mode=2 

 また、今回の改正に関する説明会が、北海道、宮城、東京、石川、愛知、大阪、岡山、福岡及び沖縄で開催することを公表している。
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/foods_index_18_170901_0019.pdf 

6 腸管出血性大腸菌による食中毒等の調査及び感染予防対策の啓発について通知

 平成29年9月1日、厚生労働省は健康局結核感染症課長及び医薬・生活衛生局食品監視安全課長の連名で各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その内容は次のとおり
平成29年8月の感染症発生動向調査における腸管出血性大腸菌O157(以下「O157」という。)の患者数は例年より多く、特に、関東地方を中心にO157/VT2が、直近5年間で最も流行した年のピーク時を超える水準(※第33週(8/14~8/20)のO157/VT2株報告数は144件で、過去5年で最も流行したのは2016年の第33週(8/15~8/21)123件 件数は暫定値)となっています。
また、国立感染症研究所における検査の結果、同一遺伝子型のO157(O157/VT2株)が多くの患者から広域、散発的に検出されていることが判明しています。このため、広域的な発生に対する詳細な情報を収集する必要があることから、当分の間、O157/VT2株が検出された場合には腸管出血性大腸菌曝露状況調査票(添付)を用いた調査を行います。当該調査票を国立感染症研究所感染症疫学センターまで提出されるようお願いします。また、O157による食中毒等の原因究明にあたっては、国と関係自治体間の情報共有及び調査協力が重要なことから、当方からの個別の要請等について迅速に対応されるようお願いします。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000176274.pdf