「食品衛生行政」国の動き 平成29年9月

(株)中部衛生検査センター
 学術顧問
森田邦雄

1 腸管出血性大腸菌感染症・食中毒の予防対策等の啓発の徹底について

平成29年9月13日、厚生労働省は健康局結核感染症課長及び医薬・生活衛生局食品監視安全課長の連名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出すとともに公表した。公表の内容は次のとおり。

本日、前橋市において、関東地方を中心に発生している腸管出血性大腸菌O157の食中毒事案に関連して、新たに確認された2人の患者のうち、1人が死亡した旨の報道発表がありました。
今回の発表を踏まえ、腸管出血性大腸菌による感染予防対策及び食中毒予防対策のため、別添のとおり都道府県等を通じ、医療機関に対する情報提供及び食品等事業者に対する注意喚起を行いましたのでお知らせいたします。

【これまでの対応】
○ 8月22日、埼玉県の「そうざい専門店」における食中毒事案を踏まえ、各都道府県等あてに健康被害の苦情等相談があった場合は、同様製品の喫食状況調査、関連性の確認等をするよう通知。
○ 9月1日、感染症発生動向調査における腸管出血性大腸菌O157による患者報告数の増加を踏まえ、都道府県等あてに、広域的な食中毒事案の発生に対応するための詳細な調査 (喫食状況を含むO157患者の行動調査)の依頼を行うとともに、事業者等への的確な食中毒予防対策についての注意喚起、指導等の依頼を実施。
○ 9月4日、厚生労働省において、関係都道府県等と打ち合わせ会議を 行い、各自治体での食中毒調査の状況等について共有するとともに、その後の調査状況の共有体制を確認 。
○ 9月13日、前橋市において腸管出血性大腸菌O157の食中毒事案に関連した死亡事案が発生したことを踏まえ、感染予防対策及び食中毒予防対策について注意喚起。

【今後の対応】
○ 現在調査中の腸管出血性大腸菌O157の状況を把握するとともに、これらの調査結果 などを踏まえ、食中毒予防対策の注意喚起や指導など必要な措置を講じていく。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177379.html

また、通知の主な内容は次のとおり。
腸管出血性大腸菌による感染予防対策及び食中毒予防対策のため、下記のとおり、医療機関に対する情報提供及び食品等事業者に対する注意喚起等について、特段のご対応方よろしくお願いします。


1 腸管出血性大腸菌に関し、改めて感染予防策や治療法等について、「溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン」(溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン作成班編集)(http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0182/G0000665/0001)等も参考の上、確認を行うことを医療機関に対し情報提供すること。
2 腸管出血性大腸菌による食中毒は、無症状病原体保菌者が調理中に食品を汚染する場合や汚染された食品の殺菌不足等により発生しており、家庭内の二次感染の報告もあることから、改めて、腸管出血性大腸菌による感染予防対策、食中毒予防対策に関する関係事業者への普及啓発、注意喚起等の指導の徹底を図ること。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11135000-Shokuhinanzenbu-Kanshianzenka/0000177378.pdf
 

2 食品由来病原体に関連する年間患者数・入院患者数・死亡者数の推定(フランス、2008~2013年)

国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部の食品安全情報(微生物)No.19 / 2017(2017.09.13)に標記報告が紹介されている。その内容は次のとおり

食品由来疾患のサーベイランス、予防策および制御対策の優先順位を決定するには、年間の食中毒患者数・入院患者数・死亡者数の推定が必要である。本研究の目的は、2008~2013年のフランスにおけるこれらの推定値を得ることであった。主要な15種類の食品由来病原体(細菌10種類、ウイルス3種類、寄生虫2種類)について検討したところ、これらの病原体による年間の食中毒患者数は128万~223万人、入院患者数は16,500~20,800人、死亡者数は250人と推定された。食中毒患者数および入院患者数の70%以上は、カンピロバクター属菌、非チフス性サルモネラ属菌およびノロウイルスによるものであった。非チフス性サルモネラ属菌およびリステリア(Listeria monocytogenes)が食中毒関連死亡の主要な原因であった。E型肝炎ウイルスは、フランスで毎年約68,000人の患者の原因になっていると推定され、これまであまり認識されていなかった食中毒病原体であることが示唆された。フランスでの食品由来疾患の年間患者数・入院患者数・死亡者数はかなりの数に上ることから、食品安全政策の立案者は食品由来疾患の予防および制御対策の優先順位を決定する必要がある。
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2017/foodinfo201719m.pdf
 

3 新たな加工食品の原料原産地表示制度に関する説明会資料公表

平成29年9月21日、消費者庁は、9月から10月にかけて全国で開催される、新たな加工食品の原料原産地表示制度に関する説明会の資料を公表した。その内容は次のとおり。

新たな加工食品の原料原産地表示制度について
○ 食品表示基準一部改正のポイント
○ 食品表示基準の一部を改正する内閣府令
○ 食品表示基準について( 新旧対照表)
○ 新たな原料原産地表示制度に関するQ&A
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_170921_0001.pdf
 

4 プエラリア・ミリフィカを原材料に含む「健康食品」の取扱いについて

平成29年9月22日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課長及び食品監視安全課長並びに消費者庁食品表示企画課長の連名で各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次のとおり。

厚生労働省では、本年8月24日及び9月4日に薬事・食品衛生審議会新開発食品評価調査会を開催し、当該調査会において、都道府県等の調査結果等の検討を行い、当該食品については、女性ホルモン(エストロゲン)様作用が原因と考えられる健康被害情報が多数報告されていることを踏まえ、プエラリア・ミリフィカを原材料に含む「健康食品」を製造・販売等する事業者は、製品の製造管理、消費者に対する情報提供及び健康被害情報の収集の改善を実施し、これらの改善が適切に実施されない事業者は、食品の安全性を確保し危害の発生を未然に防止する観点から、製品の取扱いを中止する等の対応をとることとされた。
ついては、事業者を管轄する都道府県等においては、本通知に基づき適切に対応されるようお願いする。

(参考)
プエラリア・ミリフィカ(学名:Pueraria candollei var.mirifica)(別名:白ガウクルア White Kwao Krua)は、タイ北部等に広く分布しているマメ科の植物で、塊根に強い女性ホルモン(エストロゲン)様物質が含まれることが報告されている。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/pueraria0922.pdf
 

5 「フグの衛生確保について」の一部改正について通知

平成29年9月21日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その主な内容は次のとおり。

フグの取扱いについては、「フグの衛生確保について」(昭和58 年12 月2日付け環乳第59 号厚生省環境衛生局長通知)により取り扱っている。
平成28年4月、養殖トラフグの肝臓の可食化に関する佐賀県からの提案内容について厚生労働省から内閣府食品安全委員会に対し、「佐賀県及び佐賀県内事業者が提案する養殖から提供まで管理された方法により取り扱われる養殖トラフグの肝臓」に係る食品健康影響評価の依頼を行い、平成29年3月28日、同委員会から、食品健康影響評価が答申された。
同委員会の評価書では、提案された方法による毒性検査等では、局長通知別表1及び別表1の2に掲げる種類のフグの可食部位以外の部位である肝臓について、食品としての安全性の確保が確認できない旨等の記載がなされた。当該評価の結果等を踏まえ、局長通知の記の1に次の文言が加えられた。
なお、次の(1)及び(2)で示す場合のうち、個別の 毒性検査により有毒でないことを確認しようとするときは、当該検査の方法、検査対象部位等について、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課にあらかじめ協議されたい
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000178275.pdf
 

6 「大量調理施設衛生管理マニュアル」に基づく対応について事務連絡

平成29年9月22日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課名をもって各都道府県等食品衛生主管部(局)食品衛生担当課宛標記事務連絡を出した。その内容は次のとおり。

「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成9年3月24 日付け衛食第85 号)については、平成29 年6月16 日付けで改正について通知したところです。
調理従事者等の衛生管理については、当該マニュアルⅡの5.(4)⑪では、「食中毒が発生した時の原因究明を確実に行うため、原則として、調理従事者等は当該施設で調理された食品を喫食しないこと。ただし、原因究明に支障を来さないための措置が講じられている場合はこの限りでない。(試食担当者を限定すること等)」としています。当該措置について、調理員が少数であり試食担当者を限定することが困難な施設等においては、試食担当者を限定する場合のほか、記録の確認及び必要に応じた検便検査により、調理従事者が体調不良者でないことが確認されている場合も含まれることとして差し支えありませんので、食品等事業者から相談があった場合は、指導等よろしくお願いします。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000179041.pdf
 

7 野生鳥獣肉の衛生管理等に関する実態調査の結果について通知

平成29年10月5日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。野生鳥獣肉の衛生管理等に関する実態調査については、平成29年4月26日付け生食監発0426第1号により依頼し、調査結果を取りまとめたものである。調査の結果、項目によっては、ガイドラインの遵守状況が十分ではないことが確認されているため、引き続き、ガイドラインの各項目の内容が実施されるよう関係事業者の指導について特段の対応をお願いしている。
野生鳥獣肉の衛生管理等に関する実態調査結果の概要の主なものは次のとおり。

① 取扱動物別の施設数
シカ専用の処理施設 93、イノシシ専用の処理施設 148、シカ及びイノシシ専用の処理施設 264、シカ・イノシシ以外の野生鳥獣も取扱う処理施設 121、無回答 4、合計 630
② 処理施設へ運搬される野生鳥獣及び運搬方法
処理場に搬入される野生鳥獣の状態 施設数
生体 100、止め刺しされたと体526(内278 施設は内臓摘出されていないと体のみを受入)、無回答 4、合計 630
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000179807.pdf