「食品衛生行政」国の動き 平成30年4月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 平成27年度食品中の残留農薬等検査結果

 平成30年4月4日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課残留農薬等基準審査室は、標記調査結果を公表した。これは、平成27年度に実施された食品中に残留する農薬、飼料添加物及び動物用医薬品の検査結果を取りまとめるため、地方公共団体及び検疫所等における検査結果を合わせて集計したもので、その主なものは次のとおり。

(1)全体
 検査の総数は、平成27年度は約298万件であった。検出数は、国産品と輸入品を合わせて約1万件、検出割合は0.36%であった。基準値超過数及び検査全体に占めるその割合は、それぞれ231件及び0.008%であった。

(2)畜水産物
 国産品については、約17万件の検査が実施された。検査全体に占める基準値超過数は25件、割合は0.015%であった。また、輸入品については、約11万件の検査が実施され、基準値超過数は12件、割合は0.011%であった。
 国産品で検出率の高いものは次のとおり。(%)
 メトクロプラミド4.72、ヒドロコルチゾン2.59、DDT 2.11、ドキシサイクリン1.85
 輸入品で検出率の高いものは次のとおり。(%)
 エトキシキン17.91、ナイカルバジン10.14、ラサロシド4.25、プロメトリン1.19

(3)加工食品
 国産品については、約3 万件の検査が実施された。基準値を超過したものはなかった。また、輸入品については、約78 万件の検査が実施され、基準値超過の割合は0.008%であった。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194458.html

平成27年度 食品中の残留農薬等検査結果
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000194453.pdf

2 「平成29 年度特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)」の調査結果について

 平成30年4月9日、消費者庁食品表示企画課は標記調査結果を公表した。その内容は次のとおり。

 平成29 年度特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)については、市場に流通している特定保健用食品40品目及び機能性表示食品60品目を調査対象として買い上げ、許可等申請又は届出の際に提出された資料(以下「申請等資料」という)に記載された分析方法に則って分析試験を実施した。以下のとおり、特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分(以下「関与成分等」という。)について調査結果を取りまとめたので、公表する。

1)調査対象集計結果
 100品目(57社)内訳-特定保健用食品 40品目(31社)機能性表示食品 60品目(32社)

2)関与成分等調査結果
 ① 関与成分等が申請等資料の記載どおり適切に含有されていた品目98品目(55社)
 ② 関与成分等が申請等資料の記載どおり適切に含有されていなかった品目2品目(2社)

3)その他
 上記2品目のうち1品目は生鮮食品又は単一の農林水産物のみが原材料である加工食品であり、表示値を下回る可能性がある旨の表示がされている。また、他1品目については、既に製造・販売を終了している。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_180409_0001.pdf

3 世界保健機関(WHO)がリステリア症予防のためにアフリカの16ヶ国を支援

 国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部食品安全情報(微生物) No.8 / 2018(2018.4.11)に標記記事が掲載されている。その主な内容は次のとおり。

 世界保健機関(WHO)は、2017年に南アフリカ共和国で発生し、現在、アフリカ大陸のその他の国の脅威となっているリステリア症アウトブレイクについて、アフリカの16ヶ国に準備と対応の支援を行なっている。
 南アフリカ共和国では、同国で広く喫食されているready-to-eat(そのまま喫食可能な)食肉製品の汚染が原因で2017年1月以降200人近くが死亡した。この食品は、西アフリカの2ヶ国(ナイジェリア、ガーナ)、南部アフリカ開発共同体(SADC)加盟の13ヶ国(アンゴラ、ボツワナ、コンゴ民主共和国、レソト、マダガスカル、マラウイ、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、スワジランド、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ)およびウガンダに輸出された可能性がある。
 南アフリカ共和国の公衆衛生当局は最近、同国のPolokwane(リンポポ州)にある工場をアウトブレイクの感染源と特定した。これを受け、同国の内外で当該食品の回収が実施された。しかし、リステリア症は潜伏期間が長いことおよび全国的な大規模回収には数々の困難が存在することから今後も新たな患者が発生する可能性が高い。
 WHOの健康危機管理プログラム(Health Emergencies programme)、グローバルアウトブレイク警報・対応ネットワーク(GOARN:Global Outbreak alert and Response Network)および国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)が、可能性のあるアウトブレイクへの準備・検出・対応の能力強化のため、優先順位の高い上記16ヶ国に協力している。

http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2018/foodinfo201808m.pdf

4  有毒植物による食中毒防止の徹底について

 平成30年4月26日、 厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次のとおり。

 毎年、特に春先から初夏にかけて、有毒植物を食用の植物と誤って喫食したことによる食中毒が多く発生している。本年も別添のとおり、イヌサフランを誤食したことによる死亡事例が発生しているほか、スイセンを誤食したことによる食中毒事例が複数例報告されている。
 ついては、食用と確実に判断できない植物については、絶対に「採らない」、「食べない」、「売らない」、「人にあげない」よう、継続的に消費者に注意喚起を行うとともに、必要に応じ、農林部局等関係部局とも連携し、事業者に対する監視指導を行うようお願いする。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000204883.pdf

5 殻付き卵に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Braenderup)感染アウトブレイク

 国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部食品安全情報(微生物) No.09/ 2018(2018.4.25)に標記記事が掲載されている。その主な内容は次のとおり。

 米国疾病予防管理センター(US CDC)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Braenderup)感染アウトブレイクを調査している。
 2018年4月16日までに、S. Braenderupアウトブレイク株感染患者が9州から計23人報告されている(図)。WGS解析により、本アウトブレイクの患者由来分離株は遺伝学的に相互に近縁であることが示された。この遺伝学的近縁関係は、本アウトブレイク患者の感染源が共通である可能性が高いことを意味している。
 疫学・追跡調査および検査機関での検査から得られたエビデンスは、Rose Acre Farms社が生産した殻付き卵が本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことを示している。
 2018年4月16日、Cal-Maine Foods社は、Rose Acre Farms社から納入されたノースカロライナ州Hyde郡の農場由来の卵を自主回収すると発表した。

http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2018/foodinfo201809m.pdf

6 ロメインレタスに関連した複数州における腸管出血性大腸菌O157:H7集団感染症に関する続報を公表

 平成30年5月9日、食品安全委員会が公表した食品安全関係情報に標記報告が記載されている。  米国疾病管理予防センター(CDC)は、2018年4月18日及び20日、ロメインレタスに関連した複数州における腸管出血性大腸菌O157:H7集団感染症に関する続報を公表した。概要は以下のとおり。

Ⅰ. 4月18日付け
1. 前回4月13日の更新以降、新たに5州(アラスカ州、アリゾナ州、カリフォルニア州、ルイジアナ州及びモンタナ州)から18人の患者がこの調査に追加された。
2. 2018年4月18日現在、腸管出血性大腸菌O157:H7集団感染株の感染者53人が16州から報告されている。発症日は2018年3月13日から4月6日まで、年齢は10歳から85歳、年齢中央値は34歳、70%が女性である。腎不全の一種である溶血性尿毒症症候群を発症した5人を含む31人が入院、死亡者は報告されていない。
3. これまでに収集された情報によると、アリゾナ州ユマの栽培地帯からのロメインレタスが腸管出血性大腸菌O157:H7で汚染されていたことと、それにより感染症が発生した可能性が示唆されている。現時点では、共通の栽培者、供給元、販売業者或いはブランドは特定されていない。

Ⅱ. 4月20日付け
1.  新たな情報に基づき、CDCはアリゾナ州ユマ産の全てのタイプのロメインレタスが対象となるよう、消費者への警告を拡大する。この警告には、ロメインレタスの株全体及び中の柔らかい部分、刻みロメインレタスに加えて、ロメインレタスが入ったサラダミックスが含まれることになる。
2.  アリゾナ州ユマ産でないことを確認できない限り、店舗及びレストランで、ロメインレタスを購入、喫食しないこと。
3.  製品ラベルでは産地を特定できないことがある。産地が不明である場合は、全てのロメインレタスを捨てること。
4.  この警告の拡大は、アラスカ州で新たに報告された患者の情報に基づいている。アラスカ州の患者は、アリゾナ州ユマ産のロメインレタスの株全体を喫食したと報告している。(新たなアラスカ州の患者は次回の集計更新時に追加となる。最新の4月18日時点の集計には反映されていない。)

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2018&from_month=04&from_day=07&to=struct&to_year=2018&to_month=04&to_day=20&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc

7 食品衛生法等の一部を改正する法律案の審議状況

 平成30年3月13日、内閣から国会に提出された「食品衛生法等の一部を改正する法律案」は、4月13日参議院の審議終了し全会一致で可決された。その後、ただちに衆議院に送付され、5月8日現在、審議を待っている状況。なお、参議院における食品衛生法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議については、次にアクセスすることによりみることが出来る。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/196/f069_041201.pdf