「食品衛生行政」国の動き 平成30年7月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 平成30年7月豪雨を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の運用について

 平成30年7月13日、消費者庁表示対策課長,農林水産省消費・安全局消費者行政・食育課長及び厚生労働省健康局がん・疾病対策課長の連名をもって各都道府県等食品表示主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 平成30 年7月豪雨による被害により、被災地への食料の円滑な供給が重要な課題となっていることを踏まえ、引き続き適正な食品表示がなされていることが重要ではあるものの、食品の譲渡・販売の態様等を総合的に勘案し、食品の安全性に係る情報伝達について十分な配慮がなされていると判断されるとともに、消費者の誤認を招くような表示をしていない場合には、平成30 年7月豪雨において災害救助法(昭和22 年法律第118 号)の適用を受けた被災地において、譲渡又は販売される食品については、必ずしも食品表示基準に基づく義務表示事項の全てが表示されていなくとも、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととしますので、適切な対応をお願いします。
 なお、アレルギー表示及び消費期限については、被災者の方々の食事による健康被害を防止することが何より重要であるため、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があることから、これまでどおり、取締りの対象となりますので、適切な対応をお願いします。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_180713_0001.pdf

2 平成30年7月豪雨を受けた乳児用液体ミルクの取扱いについて

 平成30年7月13日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県等食品表示主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 平成30 年7月豪雨による被害により、被災地への食料の円滑な供給が重要な課題となっていることを踏まえ、引き続き適正な表示がなされていることが重要ではあるものの、食品の譲渡・販売の態様等を総合的に勘案し、食品の安全性に係る情報伝達について十分な配慮がなされていると判断されるとともに、消費者の誤認を招くような表示をしていない場合には、平成30 年7月豪雨において災害救助法(昭和22 年法律第118 号)の適用を受けた被災地における使用を目的として譲渡・販売される、母乳代替食品としての用に適する旨を表示した乳児用液体ミルクについて、特別用途食品制度における許可及び承認を受けていない場合も、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととしますので、適切な対応方よろしくお願いします。
 ただし、アレルギー表示及び消費期限については、被災者の方々の食事による健康被害を防止することが何より重要であるため、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があり、これまでどおり、取締りの対象となります。
 なお、海外から輸入された乳児用液体ミルクを譲渡・販売する際にも、消費者の食品選択上、必要な情報が適切に提供されることが必要なため、容器包装に記載された母乳代替食品の目的や使い方、注意事項等の情報は食品に近接したポップや掲示、付属の紙などにより、消費者に提供されることが望ましく、このため、事業者等から問合せがあった場合にはその旨御指導いただくようお願いします。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_180713_0002.pdf

3 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について(清涼飲料水の規格基準の一部改正)

 平成30年7月13日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成30 年厚生労働省告示第269号)が本日告示された。その改正の概要等については、下記のとおり。

第1 改正の概要
 清涼飲料水については、水道法やコーデックス委員会等の国際基準との整合性を踏まえ、平成26 年12 月に規格基準の改正を行ったが、当時、改正を行わなかった亜鉛、アンチモン、ヒ素、マンガン、亜硝酸性窒素、ホウ素、鉄及びカルシウム・マグネシウム等(硬度)について、今般、内閣府食品安全委員会から評価結果の答申があったことから規格基準の改正を行うものである。

第2 改正の内容
 1 清涼飲料水の成分規格で規定する「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行わないもの」の基準値について(単位:mg/l)、亜鉛 基準値なし、アンチモン 0.005 以下、ヒ素 0.01 以下、マンガン 0.4 以下、亜硝酸性窒素 0.04 以下、ホウ素 5以下 に改正。
 2 清涼飲料水の成分規格で規定する「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもの」の基準値について(単位:mg/l)、亜鉛 基準値なし、アンチモン 0.005 以下、ヒ素 0.01 以下、マンガン 0.4 以下、亜硝酸性窒素 0.04 以下、ホウ素 5以下に改正。
 3 清涼飲料水の製造基準で規定する「ミネラルウォーター類、冷凍果実飲料及び原料用果汁以外の清涼飲料水」の原料として用いる水のうち水道水でない場合の基準値について改正。

第3 適用期日
 告示の日から適用すること。ただし、アンチモン、ヒ素、マンガン、亜硝酸性窒素及びホウ素については、公布の日から6月以内に限り、なお従前の例によることができること。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000334067.pdf

4 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について(豆腐の規格基準の一部改正)

 平成30年7月13日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成30 年厚生労働省告示第269号)が本日告示された。その改正の概要等については、下記のとおり。

第1 改正の概要
 豆腐の規格基準については、食品、添加物等の規格基準において規定されている。これまで豆腐は冷蔵等しなければならないと規定していたが、今般、無菌充填技術を用いた豆腐(以下「無菌充填豆腐」という。)について、常温保存が可能であることを確認したため、新たに無菌充填豆腐に関する規格基準を設定したものである。

第2 改正の内容
1 成分規格
 常温で保存する豆腐について、発育し得る微生物が陰性でなくてはならない旨の成分規格を新規に規定したこと。
2 製造基準
 無菌充填豆腐の製造時の殺菌又は除菌等の方法を設定したこと。
3 保存基準
 無菌充填豆腐については、冷蔵するか、又は十分に洗浄し、かつ、殺菌した水槽内において冷水(食品製造用水に限る。)で絶えず換水をしながら保存しなければならないとする規定の対象外としたこと。

第3 適用期日
 告示の日から適用すること。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000334065.pdf

5 平成30 年7月豪雨を受けた製造所固有記号の表示の運用について

 平成30年7月17日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 平成30 年7月豪雨により被災し、稼動できない工場(製造所)も発生しており、食料の円滑な供給が重要な課題となっていることから、製造所固有記号制度の取扱いの特例として、当分の間、別添届出様式により消費者庁食品表示企画課へ届け出ることにより、平成30 年7月豪雨において災害救助法(昭和22 年法律第118 号)の適用を受けた被災地の工場(製造所)で使用していた記号を他の工場(製造所)に例外的に使用できることとしたので、適切な対応方よろしくお願いします。
 なお、当該通知に基づく届出を行った事業者については、旧制度及び新制度にかかわらず、消費者から製造所固有記号について問合せがあった場合には、実際に製造された製造所の名称及び所在地を回答する旨併せて御指導いただくようお願いいたします。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_180717_0001.pdf

6 平成30 年7月豪雨を受けた製造所の表示の運用について

 平成30年7月19日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 平成30 年7月豪雨により被災し、稼動できない工場(製造所)も発生しており、食料の円滑な供給が重要な課題となっていることから、製造所の表示の取扱いの特例として、当分の間、平成30 年7月豪雨において災害救助法の適用を受けた被災地の工場(製造所)で製造していた食品について、他の製造者や製造所に委託する場合にあっては、別添届出様式を用いてFAX(FAX番号:03-3507-9292)により消費者庁食品表示企画課へ届け出ることにより、実際の製造所の所在地及び製造者の氏名と食品に表示された製造所の所在地及び製造者の氏名とが異なることとなっても差し支えないこととしますので、適切な対応方よろしくお願いします。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_180719_0001.pdf

7 と畜・食鳥検査等に関する実態調査の結果について

 平成30年7月20日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 と畜・食鳥検査等に関する実態調査については、平成30 年4月6日付け薬生食監発0406 第2号により御協力をお願いしたところですが、平成29 年度実績の調査結果を別添のとおり取りまとめましたので、お知らせします。

別添の主なもの。(いずれも平成29年度実績)
・と畜場数  一般と畜場175  簡易と畜場3  計178
・と畜頭数 牛、1,053,201   馬、9,821  豚,16,317,586  めん羊、5,127  山羊、3,227
・食鳥処理場数 大規模食鳥処理場146   認定小規模食鳥処理場1,776   計1,922
・処理羽数 ブロイラー709,690,524  成鶏91,423,974  その他2,070,143  計803,184,641

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000335447.pdf

8 日本マクドナルド株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について

 平成30年7月24日、消費者庁は、日本マクドナルド株式会社に対し、同社が提供する「東京ローストビーフバーガー」及び「東京ローストビーフマフィン」と称する料理並びにこれら料理を含むセット料理の各料理に係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令(別添参照)を行った。違反の概要は次の通り。

 例えば、「東京ローストビーフバーガー」と称する料理について、テレビコマーシャルにおいて、平成29年8月8日から同月24日までの間、「しっとりリッチな東京ローストビーフバーガー」との音声と共に、ローストされた牛赤身の肉塊をスライスする映像を放送するなど、対象料理についてあたかも、対象料理に使用されている「ローストビーフ」と称する料理には、ブロック肉(牛の部分肉を分割したもの)を使用しているかのように示す表示をしていた。
 実際には、対象料理に使用されている「ローストビーフ」と称する料理の過半について、成形肉(牛赤身のブロック肉を切断加工したものを加熱して結着させて、形状を整えたもの)を使用していた。

・命令の概要
ア 対象料理の内容について、それぞれ、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
イ 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
ウ 今後、同様の表示を行わないこと。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180724_0001.pdf

9 アルゴンの添加物として新規指定の可否について審議

 平成30年8月2日開催された食品衛生法に基づく薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会において「アルゴンの食品添加物の指定に関する部会報告書(案)」が採択され、近く、添加物として指定されることとなった。報告書の主なものは次の通り。

 アルゴンは、きわめて安定した元素で、他の元素と化合物を作りにくい希ガスのひとつであり、地球が誕生した当初から存在し、地球の内部から徐々に大気へ放出されている。1894年に大気分析の過程で新しい元素として発見され、地球大気中には、体積で窒素、酸素に次いで3番目(0.934%)に多く存在する。
 食品が酸素に触れると食品成分の化学的酸化と酵素酸化が発生し、それが食品の香り、味わい、色などに影響を与えることもある。食品の酸化を防ぐためには、食品を真空状態にするか、または、不活性ガスを充填するMA(Modified Atmosphere)包装により、食品が酸素と接触することを防ぐ必要がある。アルゴンは、その密度の高さから、同じ用途で使用されている窒素よりも効率よく置換することが可能である。

・残留酸素量の比較
 アルゴン包装、窒素包装で1000 個のRTE 食品1パックを製造し、その残留酸素量を確認した。その結果、アルゴン包装では、平均酸素残量が0.5%、全包装の98.5%について酸素残量が1%未満であったのに対し、窒素包装では、平均酸素残量が5%でほぼ半数の包装について酸素残量が5%を上回っていた。このことから、既に使用されている窒素と比較して効率よく置換が行われていることが確認された。
・ 使用基準について
 以下の理由から、使用基準を設定しないとすることが適当である。
 ・ 食品安全委員会の食品健康影響評価の結果、人の健康に悪影響を及ぼす恐れはなく、食品安全基本法第11条第1項第2号の人の健康に及ぼす悪影響の内容及び程度が明らかであるときに該当するとされていること。
 ・ コーデックス委員会において、アルゴンは、包装用ガスとして、加工助剤リストに収載されていること。
 ・ 米国において、アルゴンは、一般に安全とみなされる(GRAS)物質であって、果実・野菜ジュース及びワインへの使用が認められていること。
 ・ 欧州連合(EU)において、アルゴンは、原則、全ての食品への使用が認められていること。また、食品科学委員会(SCF)において、アルゴンは、包装用ガス及び噴霧ガスとして使用が認められ、一日摂取許容量(ADI)の設定が不要とされていること。

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000342040.pdf