「食品衛生行政」国の動き 平成30年8月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について

 平成30年8月8日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、調製液状乳にかかわる標記省令及び告示の改正が8月8日公布され,同日施行されたことに伴う運用通知で、その主なものは次の通り。

1. 乳等省令関係
 (1)生乳、牛乳若しくは、特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料とし、これに乳幼児に必要な栄養素を加え液状にしたものを「調製液状乳」として乳等省令に定義したこと。
 (2)成分規格として、「発育し得る微生物 陰性」を規定し、製造基準として、「保存性のある容器に入れ、かつ、摂氏120 度で4分間加熱殺菌する方法又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法により加熱殺菌」することを規定したこと。また、同製法により製造されたものには、保存基準として、「常温を超えない温度で保存すること」を規定したこと。
 (3)常温保存可能品である調製液状乳について現行の常温保存可能品である乳飲料の大臣認定制度及び保存基準を同一に規定し、成分規格として「細菌数 0」を規定したこと。
 (4)容器包装については、現行の乳飲料等の容器包装又はこれらの原材料の規格及び製造方法の基準と同一の規格基準等を規定したこと。
 (5)使用する原材料及び添加物等については、調製粉乳と同じく「乳又は乳製品のほか、その種類及び混合割合につき厚生労働大臣の承認を受けて使用するもの以外のものを使用しないこと」を規定したこと。
 (6)調製液状乳に使用する原材料等に関する大臣承認については、「乳等に使用する添加物、乳等の容器包装等に係る厚生労働大臣の承認について」(平成9年1月29 日付け衛乳第27 号)によること。
 (7)調製液状乳の常温保存可能品に係る大臣認定については、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部改正について(通知)」(平成23 年8月31 日付け食安発0831 第5号)によること。

2. 告示第370 号関係
 乳等省令において、調製液状乳が新たに規定されたことから、添加物の使用基準の一部を改正することとしたこと。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000342402.pdf

2 特別用途食品における乳児用液体ミルクの許可基準設定について公表

 平成30年8月8日、消費者庁は、乳児用液体ミルクの普及実現に向けて、「健康増進法施行令第3条第2号の規定に基づき内閣総理大臣が定める区分、項目及び額(消費者庁告示)」及び「特別用途食品の表示許可等について(消費者庁次長通知)」を改正し、特別用途食品における乳児用液体ミルクの許可基準を設定・施行し、公表した。その主な内容は次の通り。

・特別用途食品における乳児用調製乳の区分追加
 乳児用液体ミルクの名称を乳児用調製液状乳とした上で、新たに「乳児用調製乳」の区分を追加し、その下に「乳児用調製粉乳」及び「乳児用調製液状乳」の区分を設定。
・乳児用調製液状乳の必要的表示事項を規定
 当該食品が母乳の代替食品として使用できるものである旨(ただし、乳児にとって母乳が最良である旨の記載を行うこと。)、標準的な使用方法等の必要的表示事項を新たに規定。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_180808_0003.pdf

3 「特別用途食品の表示許可等について」の一部改正について

 平成30年8月8日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その内容は次の通り。

 特別用途食品の表示許可等については、「特別用途食品の表示許可等について」(平成29年3月31日消食表第188号 最終改正:平成29年10月30日消食表第529号)により運用しておりますが、この度、乳児用液体ミルクについて、母乳代替食品としての用に適する旨を表示するための特別用途食品の許可基準を策定し「特別用途食品の表示許可等について」の一部を別紙新旧対照表のとおり改正しましたので、貴管下で所管する事業者等の関係者に対して周知いただきますようよろしくお願い申し上げます。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_180808_0004.pdf

新旧対照表
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_180808_0006.pdf

4 平成29年度食料自給率及び食料自給力指標について

 平成30年8月8日、 農林水産省は標記自給率等を公表した。その主なものは次の通り。

 カロリーベース食料自給率について、平成29年度においては、平成28年に天候不順で減少した小麦、てんさいの生産が回復した一方で、米について食料消費全体に占める米の割合が減少したことや、畜産物における需要増に対応し、国産品が増加したものの、輸入品がより増加したこと等により、前年度と同じく38%であった。

主な食品の自給率(%)
米のうち主食用100、小麦14、ばれいしょ69、大豆7、野菜79、牛肉36、豚肉49、鶏肉64、鶏卵96、牛乳・乳製品60、魚介類52
なお、畜産物について、飼料自給率を考慮した場合の自給率(%)
牛肉10、豚肉6、鶏肉8、鶏卵12、牛乳・乳製品26

http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/180808.html

平成29 年度食料需給表
http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/180808-1.pdf

5 HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A公表

 平成30年8月28日、厚生労働省は標記Q&Aを公表した。これは、平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律において、原則として、全の食品等事業者にHACCP に沿った衛生管理に取り組む必要が生じたことから、HACCP に沿った衛生管理の制度化に関してよく寄せられる質問 に答えるもので、そのQの主なものは次の通り。

・問1 HACCP に沿った衛生管理の制度化より、現在の衛生管理はどのように変わるのか。何か新しい設備を設けなければならないのか。
・問3 どのような事業者が「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象事業者になるのか。小規模事業者とはどの程度の規模を指すのか。
・問6 「HACCPに沿った衛生管理」に関する省令はいつ公布されるのか。
・問8 HACCPに沿った衛生管理を実施していることを、事業者はどのようにして認証を受けるのか。また、営業許可の要件になるのか。
・問13 事業者が民間認証を取得している場合は「HACCPに沿った衛生管理」を実施していると言えるのか。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000347634.pdf

6 平成29年度「輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果」及び「輸入食品監視統計」の公表

 平成30年8月31日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室は標記監視指導結果及び統計を公表した。その概要は次の通り。[ ]カッコ内は平成28 年度の数値。

(1)輸入届出時における法違反の有無の確認
 届出件数約243 万件[約234 万件]、届出重量約3,375 万トン[約3,230万トン]について、法に基づく規格、基準等への適合性について審査を実施。
(2)モニタリング検査※(※件数については延べ数)
 ① モニタリング計画:97,509 件[95,929 件]
 ② 実施件数:99,455 件[98,164 件](実施率:約102%[約102%])、うち違反件数:153 件[136 件]
(3)検査命令
 ① 全輸出国の17 品目及び30 カ国・1 地域の72 品目(平成30 年3 月31日現在)
 ② 実施件数:59,477 件(延べ91,685 件)[56,877 件(延べ86,629 件)]、うち違反件数:228 件(延べ228 件)[235 件(延べ235 件)]
(4)違反状況
 ① 違反件数:821 件[773 件](違反率:届出件数の0.03%[0.03%]、検査件数:約20 万件[約20 万件])
 (違反件数:微生物規格220 件[190 件]、有害・有毒物質及び病原微生物202 件[176 件]、添加物137 件[108 件]、残留農薬91 件[120 件]、器具、腐敗、変敗、異臭及びカビの発生等60 件[46 件]、残留動物用医薬品36 件[44 件]、容器包装規格25 件[50 件]、他54 件[42 件])

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000176071_00001.html

概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000348738.pdf

全体版
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000348735.pdf