「食品衛生行政」国の動き 平成30年9月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 平成30年北海道胆振東部地震の被害を受けた地域における食品表示法に基づく食品表示基準の運用について

 平成30年9月7日、消費者庁表示対策課長、農林水産省消費・安全局消費者行政・食育課長及び厚生労働省健康局がん・疾病対策課長の連名で各都道府県等食品表示主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 平成30年北海道胆振東部地震において災害救助法の適用を受けた被災地において、譲渡又は販売される食品については、必ずしも食品表示基準に基づく義務表示事項の全てが表示されていなくとも、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととする。
 なお、アレルギー表示及び消費期限については、被災者の方々の食事による健康被害を防止することが何より重要であるため、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があることから、これまでどおり、取締りの対象となる。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_180907_0001.pdf

2 平成30年北海道胆振東部地震の被害を受けた地域における乳児用液体ミルクの取扱いについて

 平成30年9月7日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県等食品表示主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 平成30 年北海道胆振東部地震において災害救助法の適用を受けた被災地における使用を目的として譲渡・販売される、母乳代替食品としての用に適する旨を表示した乳児用液体ミルクについて、特別用途食品制度における乳児用調製液状乳の許可及び承認を受けていない場合も、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととする。
 ただし、アレルギー表示及び消費期限については、被災者の方々の食事による健康被害を防止することが何より重要であるため、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があり、これまでどおり、取締りの対象となる。
 なお、海外から輸入された乳児用液体ミルクを譲渡・販売する際にも、消費者の食品選択上、必要な情報が適切に提供されることが必要なため、容器包装に記載された母乳代替食品の目的や使い方、注意事項等の情報は食品に近接したポップや掲示、付属の紙などにより、消費者に提供されることが望ましく、このため、事業者等から問合せがあった場合にはその旨御指導いただくようお願いする。
 あわせて、食品衛生上、開封後の飲み残しは保管しない旨、御指導いただくようお願いする。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_180907_0002.pdf

3 製造物責任(PL)法の逐条解説公表

 平成30年9月7日、消費者庁は標記逐条開設を公表した。本逐条解説は、原則として改正後民法及び改正後製造物責任法に基づいて記載し、民法改正法及び民法改正整備法の施行日は、一部の規定を除き、平成32年(2020年)4月1日。
 逐条解説(平成30年9月)の構成は、凡例、第1条から第6条、附則及び民法改正整備法の経過措置等から成っている

http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/product_liability_act_annotations/

4 「農林水産省豚コレラ防疫対策本部」における対応方針の決定について

 平成30年9月9日、農林水産省は標記決定を公表した。これは、岐阜県岐阜市の養豚農場において、家畜伝染病である豚コレラの患畜が確認されたことを受け、「農林水産省豚コレラ防疫対策本部」を開催し、今後の防疫措置について対応方針を決定いたしたもので、発生の概要等その主なものは次の通り。

(1)9月3日、岐阜県は、岐阜市の養豚場から飼養豚が死亡しているとの通報を受け、検査を実施し、その時点では、豚コレラが否定されたことから経過観察としていました。
(2)9月8日、岐阜県が再度中央家畜保健衛生所において検査を実施したところ豚コレラの疑いが生じたため、農研機構動物衛生研究部門で精密検査を実施したところ、9日、患畜であることが確認されました(中国においてアフリカ豚コレラが続発しておりますが、精密検査を実施した結果、アフリカ豚コレラの感染でないことを確認しております。)。
(3)これを受けて、「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」に基づき、本日「農林水産省豚コレラ防疫対策本部」を開催し、今後の防疫措置について対応方針を決定いたしました。
(4)豚コレラは、豚、いのししの病気であり、人に感染することはありません。また、感染豚の肉が市場に出回ることはありません。

http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/180909_31.html

5 岐阜県における豚コレラの患畜の確認に伴う対応について

 平成30年9月9日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 今般、岐阜県において、豚コレラの患畜が確認されたことを受け、農林水産省から平成30年9月9日より、輸出の可否が確認できるまでの間、輸出検疫証明書の発行を停止する旨、連絡がありました。
 ついては、各都道府県等においては、輸出される豚及びイノシシの肉(これらの製品を含む。)について、別途通知するまでの間、衛生証明書の発行を見合わせるようお願いする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000351513.pdf

6 腸管出血性大腸菌O121による食中毒患者の発生について

 平成30年9月10日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 今般、長野県において「モスバーガーアリオ上田店」で提供された食事を原因とする腸管出血性大腸菌O121による食中毒が発生した旨公表した(別添)。ついては、下記のとおり対応をよろしくお願いする。


・ 腸管出血性大腸菌による感染症法に基づくO121届出情報を入手した場合及びや食品による健康被害の苦情等の相談があった場合は、長野県の情報を参考に同系列店の利用や喫食状況等を確認するとともに、必要に応じて食中毒調査を実施すること。また、該当する情報を得た場合には当職まで速やかに連絡すること。
・腸管出血性大腸菌O121よる食中毒調査を実施する場合は、関連性を確認する観点から、患者由来菌株を迅速に収集し、国立感染症研究所へ送付すること

(参考)
 患者は平成30年8月20 日に、モスバーガーアリオ上田店が提供した食事を喫食した4グループ8名中の4グループ4名で、環境保全研究所が行った検査により、患者便から腸管出血性大腸菌O121が検出された。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000351787.pdf

7 食品表示基準の弾力的運用を踏まえた周知チラシについて

 平成30年9月10日、消費者庁は表示対策課名をもって各都道府県等食品表示主管部(局)宛標記事務連絡を出した。これは、被災地に食品を円滑に流通させつつ、アレルギー疾患をお持の方の健康被害を防止するため、3省連名通知の趣旨を避難所の管理者に徹底する必要があり、別添のチラシを作成したので、本チラシを管内全避難所の管理者への周知に御活用くださいというもので、チラシの主な内容は次の通り。

 このたび、平成30年北海道胆振東部地震の被害を受けられた地域(9月6日時点179市町村)に限り、被災地への食品の円滑な供給を図るため、食品の表示ルールの弾力的な運用をしています。
・このため、表示事項の記載のない食品が流通する場合があります。アレルギーや消費期限については、従来どおり表示されます。
・表示のない食品を提供する場合は、次のことに十分気をつけてください。
〇アレルゲンを含むかどうか不明な場合は、アレルギー疾患を有する被災者の方に渡さないでください。
〇期限表示が不明な場合は、長期保存をさけ、早めに食べるようにしてください。開封後の食品は、食べ残しを保管せず、適切な喫食方法で、速やかに消費してください。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_180910_0001.pdf

8 腸管出血性大腸菌O121による食中毒患者の発生について

 平成30年9月14日、厚生労働省は9月10日に引き続き、医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 現在までの関係自治体の調査において、8月10 日から23 日の間にモスバーガーチェーンの19 店舗を利用したことが分かっている28 名の患者(12 県市)のうち、検査が終了した12 名分(9店舗)からの分離株の遺伝子型が一致していることが判明している。
 なお、8月に発生した腸管出血性大腸菌O121(VT2)について、当該チェーン店利用歴のない患者7名分からの分離株のうち、1名は当該チェーン店利用歴のある者からの分離株と一致したものの、残り6名分の遺伝子型は不一致でした。遺伝子型の一致するこれらの患者において、現時点で共通する感染源の確定には至って内容。
 ついては、この28 名の患者が利用したとする店舗及び関係施設を所管する都道府県等は、必要な調査及び監視指導を行うとともに、今後新たに患者が発生した場合においても同様に調査等を実施し、その結果の報告をお願いする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000355356.pdf

9 「食品表示基準について」の一部改正について

 平成30年9月21日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その主なものは次の通り。

 「食品、添加物等の規格基準」の改正を踏まえ、無菌充填豆腐及び防かび剤(フルジオキソニル)に関する表示方法等を改正し、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律に基づき、保護対象とされる予定の「Mortadella Bologna(モルタデッラボローニャ)」について「ボロニアソーセージ」と名称表示ができるよう定めた食品表示基準の一部を改正する内閣府令が、平成30年9月21日に施行された。
 また、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」が改正され、新たに「調製液状乳」の規格基準が設定された。
 これらを踏まえ、食品表示基準の解釈を「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)」で明確化すべきと判断した点について、別紙新旧対照表のとおり一部改正した。

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_180921_0007.pdf

別紙新旧対照表
http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_180921_0008.pdf

10 有毒な野生キノコによる食中毒の注意喚起について

 平成30年9月25日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り

 8月以降、ツキヨタケ等の有毒な野生キノコを食用キノコと誤認して採取、喫食したことによる食中毒事案が別添1のとおり相次いで報告されており、ニセクロハツ(推定)による死亡事例も発生している。
 ついては、これから秋の行楽シーズンを迎えることを踏まえ、毒キノコによる食中毒を未然に防止するため、食用のキノコと確実に判断できないキノコ類の採取、譲渡、販売び喫食を行わないよう、改めて消費者及び食品関係事業者に対して、より一層の注意喚起及び情報提供を行うようお願いする。
 なお、厚生労働省では、ホームページにおいて「自然毒のリスクプロファイル」として毒キノコに関する情報を提供するとともに、毒キノコに関するリーフレット等(別添2)を掲載している。また、厚生労働省のTwitter においても秋季の間は、毎週、毒キノコの注意喚起を行っているので御活用ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000360603.pdf

11 中国産生食用ウニの取扱いについて

 平成30年9月25日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室長名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。その内容は次の通り。

 今般、国内で発生した複数の腸炎ビブリオ食中毒事例において、中国産生食用ウニの関与が疑われており、現在、関係都道府県等による調査が行われているところ。
 ついては、当面の間、下記の製造者及び製造所の中国産生食用ウニの輸入届出があった場合は、輸入の都度、腸炎ビブリオに係る自主検査を指導するようお願いする。


DALIAN JIAYIN AQUATIC PRODUCT CO.,LTD.
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/180925.pdf

12 と畜場及び食鳥処理場におけるHACCP 導入状況調査結果について

 平成30年9月25日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課名をもって書く都道府県等衛生主管部(局)宛標記事務連絡を出した。平成30年7月1日現在の調査結果の主なものは次の通り。

 牛のと畜場については、総施設数139か所で、すでに導入している施設は66か所(47.5%)、導入の途中は42か所(30.7%、)、豚のと畜場については、総施設数155か所で、すでに導入している施設は65か所(41.9%)、導入の途中は49か所(31.6%)、大規模食鳥処理場については、総施設数146か所で、すでに導入している施設は64か所(43.8%)、導入の途中は58か所(39.7%)、認定小規模食鳥処理場については、総施設数1502か所で、すでに導入している施設は14か所(0.9%)、導入の途中は49か所(3.3%)であった。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000361129.pdf

13 フランスにおける2002~2016年のE型肝炎の監視に関する報告書

 平成30年10月3日、食品安全委員会が公表した食品安全総合情報システムに標記情報が記載されていた。その主な内容は次の通り。

 フランス衛生監視研究所は2018年9月11日、フランスにおける2002~2016年のE型肝炎の監視に関する報告書を公表した。
 2002~2016年にかけてE型肝炎の診断のために検体が送られた人数は指数関数的に増加した(209人 vs 76,000人)。E型肝炎と診断された患者数も増加し、とりわけフランス本土で発症した患者数が増加した(9人 vs 2,292人)。2007年以降、フランス本土発症患者の90%以上は遺伝子型3であった。またE型肝炎の入院患者数も増加し(57人 vs 653人)、南部で最も年間の入院患者数が多かった。集団感染の場合、疑われた感染原因は豚の生の肝臓で作られたソーセージの摂取が最も多かった。
 2010年以降、高性能の分子的及び血清学的診断検査が可能になりE型肝炎の情報が進歩したことから、検査受診者数が顕著に増加し、フランス本土で発生した患者数も増加した。
 フランスではE型肝炎ウイルスの主な保有体は豚肉で、主に生の肝臓食品などの食品を介した感染源である。予防のためには、これらの食品を中心部まで加熱調理する必要性を消費者に伝えることが必要である。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2018&from_month=08&from_day=25&to=struct&to_year=2018&to_month=09&to_day=13&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc