「食品衛生行政」国の動き 平成30年11月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 マイクロプラスチックによるヒトの健康影響に関する調査研究について情報提供
 (ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR))

 平成30年11月14日、食品安全委員会が公表した食品安全総合情報システムに標記の情報が登載されている。その概要は次の通り。

 食品中のマイクロプラスチック
 BfRは、食品中のマイクロプラスチック粒子に関して、化学物質の種類、粒子サイズ及び含有量についての信頼に足るデータを持ち合わせていない。BfRの要請を受け、欧州食品安全機関(EFSA)は、食品(特に魚介類)中のマイクロプラスチック及びナノプラスチックの存在に関する包括的な意見書を公表した(2016年5月)。
 EFSAによれば、特定のサイズのマイクロプラスチック粒子は経口吸収される可能性がある。しかし、消化管内での機序及び分解の可能性に関しては、現時点で、分析手法及び確実な根拠に基づく研究がないことから、十分な調査は行われていない。
 EFSAは、入手可能な研究に基づき、腸における吸収は非常に少ないと考える(げっ歯類での試験から得られた結果)。また、150μm(1μmは0.001mm)未満のマイクロ粒子のみが腸のバリア機能を通り抜けることができ、1.5μm未満のマイクロ粒子のみが、より奥に位置する各器官に到達することができると考える。現時点で、入手可能なヒトで行った調査研究に由来する結果はない。
 BfRが初めて独自に行った調査では、ヒトの腸管上皮細胞(培養)及び動物実験での試験が行われた。その結果、腸管上皮細胞からは、最大で直径約4μmのプラスチック粒子が吸収される場合があることが示された。しかし、動物実験では、1~10μmのプラスチック粒子を大量投与したにも拘らず、腸管上皮細胞からの検出は散発的であった。BfRは、マイクロプラスチック粒子の経口摂取に関して、種々の粒子モデルを用いて調査研究を行った。現時点で、腸組織の損傷を示すエビデンスは明らかになっていない。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2018&from_month=10&from_day=20&to=struct&to_year=2018&to_month=11&to_day=02&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc

2 食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令及び食品衛生法
 施行規則の一部を改正する省令公布

 平成30年11月26日、標記政令及び省令の改正が官報に登載され公布された。

 政令は、「食品衛生法等の一部を改正する法律附則第1条第2号に掲げる規定の施行期日は、平成31年4月1日とする」とするもので、附則第1条第2号に掲げる規定は、国及び都道府県等の相互連携を規定した改正法第21条の2、広域連合協議会を規定した同法第21条の3、食中毒の原因調査等の協議会の開催等を規定した同法第60条の2及びこれらに関連する改正規定の施行期日は平成31年4月1日とするものである。
 省令は、「食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴い、及び食品衛生法第21条の3第1項の規定に基づき、食品衛生法施行規則の一部を改正する省令」として公布され、施行規則の第21条が次の通り改正され、同規則第22条及び第23条が削除された。施行期日は平成31年4月1日である。

第21条 法第21条の3第1項の広域連携協議会は、地方厚生局の管轄区域ごとに、当該地方厚生局並びに当該地方厚生局の管轄区域内の都道府県、保健所を設置する市及び特別区をその構成員として設ける。

官報
https://kanpou.npb.go.jp/20181126/20181126h07396/20181126h073960002f.html

通知
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T181127I0020.pdf

3 食品表示の適正化に向けた取組について公表

 平成30年11月27日、消費者庁は、食品衛生の監視指導の強化が求められる年末において、食品の表示・広告の適正化を図るため、都道府県等と連携し、食品表示法、景品表示法及び健康増進法の規定に基づき下記の取組を実施することを公表した。その主な内容は次の通り。

・年末一斉取締りの実施について
 (1)実施時期:平成30 年12 月1日から同月31 日まで
 (2)主な監視指導事項
  ア アレルゲン、期限表示等の衛生・保健事項に関する表示
  イ 保健機能食品を含めた健康食品に関する表示
  ウ 生食用食肉、遺伝子組換え食品等に関する表示
  エ 道の駅や産地直売所、業務用加工食品に関する表示
  オ 食品表示基準に基づく表示方法の普及・啓発
・表示の適正化等に向けた重点的な取組について
 (1)蜂蜜を原因とする乳児ボツリヌス症の予防対策の推進について
 (2)食中毒等の健康被害発生時の連携につい
 (3)新基準への移行について

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_181127_0003.pdf

4 食品等の表示に係る平成30年度夏期一斉取締りの指導件数等公表

 平成30年11月27日、消費者庁は標記指導件数等を公表した。その主な内容は次の通り。

・食品表示法の措置概要(件数)
 命令0、指示0、命令及び指示以外の措置2,290
・許可を要する営業施設及び許可を要しない営業施設への監視指導施設数、違反件数
 監視指導延べ施設数386,939、表示違反が確認された延べ施設数2,481
・収去した食品等の検体数、違反件数等
 収去検体数16,877、違反検体数249(国産品244輸入品5)、
 違反内容、製造者加工者56、添加物32、アレルゲン28、期限表示20、保存方法19、栄養成分11
・許可を要する営業施設の違反件数の多いもの
 魚介類販売業227、食肉販売業 129、菓子製造業127

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_181127_0002.pdf

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_181127_0001.pdf

5 「食品衛生法等の一部を改正する法律」に基づく政省令案の検討状況に関する説明会資料公表

 平成30年11月29日、厚生労働省は、11月29日、東京をはじめとして全国で開催する説明会の資料をホームページに載せた。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000410105.pdf

6 米国食品医薬品庁(FDA)、食品安全分析に関する省庁間協力(IFSAC)による2016年の食中毒原因推定に関する新たな報告書を公表

 平成30年11月29日、食品安全委員会が公表した食品安全総合情報システムに標記の情報が登載されている。その概要は次の通り。

(1)サルモネラ症は、多種多様な食品が原因となっていた。
(2)腸管出血性大腸菌O157感染症は、ほとんどの場合、生の野菜作物(葉物野菜等)と牛肉に関連していた。
(3)リステリア・モノサイトゲネス感染症の多くは乳製品や果物と関連していた。
・乳製品及び果物は、依然として推定帰属率が最も高い上位2つのカテゴリーであるが、2つのカテゴリーの差は統計的に有意ではない。
・2015年の包装済みレタスに関連した複数州における大規模な集団感染の影響によって、リステリア感染症における生の野菜作物の推定帰属率は、2013年の3.4%から、2016年には12.5%に増加した。
(4)カンピロバクター症は、原因の推定から乳製品による集団感染を除くと、鶏肉が最も頻繁に関連していた。
・大部分の食品由来の集団カンピロバクター症は、消費が一般的ではない未殺菌乳と関連しており、これら集団感染症が、カンピロバクター症の原因食品として乳製品を過大評価する可能性がある。
・2016年の鶏肉の推定帰属率は、乳製品以外の食品カテゴリーと比べて有意に高かった。 乳製品を外して調整すると、鶏肉の帰属率は9.5%から30.3%に増加した。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05040450105

7 放射線照射された食品の検知法について

 平成30年11月28日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。その主なものは次の通り。

 平成19年7月6日付け食安発第0706001 号により通知した検知法について、熱ルミネッセンス(TL)試験法の対象食品を追加するなど、別添のとおり改めることとした。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000415144.pdf