「食品衛生行政」国の動き 平成31年2月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 A型肝炎発生届受理時の検体の確保等について

 平成31年2月6日、厚生労働省は健康局結核感染症課長及び医薬・生活衛生局食品監視安全課長の連名で各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。A型肝炎は、ノロウイルスと同様、患者の便に含まれるウイルスが加熱しないで食べる食品を汚染し食品由来感染症を起こすことから連名で出されたもので、その主な内容は次の通り。

 A型肝炎については、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項の規定に基づく医師の届出による患者報告数は、2018年は首都圏を中心に報告数が925例であり、2019年第1週~第3週においては、すでに46例となっており、例年に比べて届出数が多い傾向にある(例年約100~300件/年)。
 最近のA型肝炎患者の届出状況に鑑み、引き続き、A型肝炎の患者発生届を受理した場合はウイルス株の分子疫学的手法による解析が実施できるよう、患者の糞便検体の確保に努め、ウイルス株の分子疫学的手法による解析並びにライブラリーとの照合を行うため国立感染症研究所への塩基配列情報等の送付についてお願いする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000477617.pdf

2 「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」(平成15 年厚生労働省告示第301 号)の改正について

 平成31年2月8日、消費者庁次長及び厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官の連名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 「食品衛生法等の一部を改正する法律」が平成30 年6月13 日に公布され、平成31 年4月1日に施行を予定している規定に対応することに加え、近年の監視指導実態を反映することを目的とした、「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針の一部を改正する件」(平成31年消費者庁・厚生労働省告示第1号)が本日公布され、同指針中「第二 監視指導の実施体制等に関する事項」として、広域的な食中毒事案発生時の関係機関相互の連携体制の確保、原因調査等における研究機関との連携体制の確保等について定める等の改正が行われた。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000477971.pdf

3 「平成30年農林水産物・食品の輸出実績」について

 平成31年2月8日、農林水産省は標記実績を公表した。その主な内容は次の通り。

平成30年の我が国の農林水産物・食品の輸出額は9,068億円、前年比12.4%の増加。
1.農産物、林産物及び水産物それぞれの輸出実績。
 農産物:5,661億円(対前年比+14.0%)
 林産物: 376億円(対前年比+6.0%)
 水産物:3,031億円(対前年比+10.3%)
2.輸出先を見ると、1位 香港、2位 中国、3位 米国。
3.食品別に見ると
 加工食品3,101億円 そのうちアルコール飲料618億円
 畜産物446億円 そのうち牛肉247億円、牛乳・乳製品153億円
 青果物290億円 そのうちりんご139億円
 その他農産物1.050億円 そのうち緑茶153億円
水産物2,263億円 そのうちホタテ貝(生鮮、冷蔵、冷凍等)476億円
 水産調製品764億円 そのうちなまこ(調製)210億円、練り製品(魚肉ソーセージ等)106億円 

http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kaigai/190208.html

4 腸管出血性大腸菌O157による食中毒患者(疑い)の発生について

 平成31年2月25日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 今般、同一系列の焼き肉店を2月8日から2月12日にかけて利用し、下痢、嘔吐等を呈する有症者の一部から、腸管出血性大腸菌O157(VT1,2)が検出されていることが判明した。
 現在、関係自治体において、原因の調査等が進められているところ。
 腸管出血性大腸菌による感染症法に基づく届出情報や食品による健康被害の苦情等の相談があった場合は、同系列店舗の利用状況を調査し、関連性を確認するとともに、必要に応じて食中毒調査を実施すること。また、該当する情報を得た場合には当職まで速やかに連絡すること。等
 食中毒の被害拡大防止の観点から対応をよろしくお願いする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000483100.pdf

焼き肉店社告
https://www.skylark.co.jp/company/news/press_release/pk637h000001ivo6-att/0225.pdf

5「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」について

 平成31年2月25日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品監視安全課名をもって各都道府県等衛生主管(部)局宛標記事務連絡を出した。その主な内容は次の通り。

 今般、各都道府県等から「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化に伴う食品等事業者への監視指導について」(平成31年2月1日付け薬生食監発0201第1号)を踏まえた質疑があったので、「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」を更新するとともに、厚生労働省ホームページに掲載したので、業務の参考のためお知らせする。
 新たに追加されたQは都道府県等から寄せれた質問で、
問 23
1 厚生労働省ホームページで公表している手引書の内容は難しすぎるため、各都道府県等が、小規模な事業者でも対応できるよう、簡易版の手引書を作成し、それに基づいて指導してもよいか。
から問27まで追加された。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000483084.pdf

更新されたQ&A
  https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000483069.pdf

6 消除予定添加物名簿の公示及び訂正の申出手続について

 平成31年2月28日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛に標記通知を出した。これは、「消除予定添加物名簿」が28日、平成31 年厚生労働省告示第45 号をもって公示され、同条第3項の規定に基づき、訂正の申出を受け付けることに伴うもので、「既存添加物名簿」(平成8年厚生省告示第120号)にその名称が記載されている添加物について、その販売等の状況からみて、当該添加物並びにこれを含む製剤及び食品が現に販売の用に供されていないと認めるときは、当該添加物の名称を記載した表(消除予定添加物名簿)を作成の上公示し、必要な手続を経て「既存添加物名簿」から消除することができることによるもので、今後も使用を希望する人は所定の手続きにより申し出をする必要がある。消除されると今後使用が禁止される。
 今回告示された既存添加物は次の通り。

 イタコン酸、魚鱗箔(魚類の上皮部から抽出して得られたものをいう。)、クーロー色素(ソメモノイモの根から抽出して得られたものをいう。)、香辛料抽出物(チャービルから抽出し、又はこれを水蒸気蒸留して得られたものに限る。)、 骨炭色素(骨を炭化して得られた、炭素を主成分とするものをいう。)、ゴマ柄灰抽出物(ゴマの茎又は葉の灰化物から抽出して得られたものをいう。)、シアナット色素(シアノキの果実又は種皮から抽出して得られたものをいう。)、フェリチン、ヘゴ・イチョウ抽出物(イチョウ及びヘゴの葉から抽出して得られたものをいう。)及びレバン(枯草菌の培養液から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000483945.pdf

消除予定添加物名簿
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000483946.pdf

7「食品表示基準Q&A」の一部改正について

 平成31年3月1日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県等食品表示担当部(局)長宛標記通知を出した。これは、食品表示基準の施行から約3年が経過し、経過措置期間の終了が近づいている中、事業者、地方公共団体等からの問合せ等を受け、食品表示基準における解釈で運用を変更する必要があると判断した点、明確化すべきと判断した点等について、別紙新旧対照表のとおり本Q&Aを改正したもので、追加されたQの主なものは次の通り。

 (加工-172)小規模の事業者(注)が消費者に販売する食品は、栄養表示をしようとする場合を除き、栄養成分の量及び熱量の表示を省略することができますが、小規模の事業者が製造し、小規模でない事業者が販売する場合も、栄養成分の量及び熱量の表示を省略することができますか。

 (加工-173)小規模の事業者が製造し、小規模でない事業者が販売する際、小規模でない事業者が栄養成分の量及び熱量の表示を追記した場合、栄養成分の量及び熱量の表示を追記した者の氏名又は名称及び住所を表示する必要がありますか。

 (生鮮-30)国内の2箇所以上の養殖場で養殖した水産物の原産地として地域名を表示する場合について、どのように表示すればよいですか。

遺伝子組換え食品に関する事項
 (GM-45)分別生産流通管理証明書は、電子媒体で取り扱ってもよいです

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190301_0013.pdf

別紙新旧対照表
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190301_0014.pdf