「食品衛生行政」国の動き 平成31年3月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 「食品の営業規制に関する検討会とりまとめ案(政省令関係事項)」に関する意見の募集について

 平成31年3月7日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課は標記についてパブリックコメントを求めた。意見の提出期限は平成31年4月5日。
 これは、食品の営業規制に関する検討会において、食品衛生法等の一部を改正する法律により改正された後の食品衛生法における営業規制の見直しの内容について検討を行ってきたところであり、具体的にはHACCPに沿った衛生管理の制度化に伴い創設した営業届出制度、昭和47年以来の検討となる営業許可対象業種の見直し、さらに、各都道府県等が条例で定める営業許可に係る施設基準について、今般の法改正で、厚生労働省令において 設けることとなった参酌基準について議論したものをまとめた案で、主な点は次の通り。

5 営業許可業種の見直し及び施設の参酌基準の素案等
 3)共通基準素案
ケ 手洗い設備
 従事者が必要な手洗いを行うため、適切な温度の水を供給する機能を有する流水受水槽式の設備を必要な数設けること。水栓は洗浄後の手指 の再汚染が防止できる構造であること。
イ 乳処理業
①範囲
○ 乳処理業は乳及び乳製品のうち飲料を処理し、又は製造する営業とする。ただし、清涼飲料水の製造に当たって、清涼飲料水製造業の許可を要しない。
カ 清涼飲料製造業
①範囲
○ 清涼飲料水製造業は清涼飲料水を製造する営業とする。ただし、乳飲料及び乳酸菌飲料の製造に当たって、生乳を使用しない場合は乳処理業及び乳製品製造業の許可を要しない。
ケ 食肉製品製造業
①範囲
○ 食肉製品製造業で製造が可能な食品の範囲を食肉の含量50%未満の惣菜に拡大する。
○ 食肉製品製造のための食肉処理には食肉処理業の許可は求めない。
・新たに、漬物製造業、液卵製造業等が許可業種とする。
・届け出業種として、想定されるものとしては、海藻加工業、農産保存食料品製造業、食酢製造業、その他の調味料製造業、砂糖製造業・精製業等
・乳類販売業、並びに、食肉販売業・魚介類販売業のうち包装済み食品のみを取り扱う業については、届出業種に移行させる。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495180411&Mode=0

2 「食品衛生管理に関する技術検討会政省令に規定する事項の検討結果とりまとめ案」に関する意見の募集について

 平成31年3月7日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課は標記についてパブリックコメントを求めた。意見の提出期限は平成31年4月5日。

 この中で、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の対象事業者は、小規模な営業者その他の政令で定める営業者とし、その対象は次のとおりとしている。
①食品の製造又は加工を行う者のうち、一の事業所において、食品の製造及び加工に従事する者の総数が50人未満の者
②当該店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理事業者
(例:菓子の製造販売、食肉の販売、魚介類の販売、豆腐の製造販売等)
③提供する食品の種類が多く、変更頻度が頻繁な業種
(例:飲食店、給食施設、惣菜の製造、弁当の製造等
④一般衛生管理の対応で管理が可能な業種等
(例:包装食品の販売、食品の保管、食品の運搬等)

 また、〈食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)に基づき省令で規定する内容の骨子(案)〉及び【食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための事項】について示されている。
 さらに、営業者が自主回収を行う場合の地方自治体への報告関係(省令)として、報告対象は、①食品衛生法に違反する食品等、②食品衛生法違反のおそれがある食品(ア.食品衛生法違反として自主回収を行う際に、同時に自主回収する食品等 イ.消費者等から、当該製品と因果関係が疑われるとして有症苦情が報告され、自主回収を行う食品等。)、また、適用除外として、①消費期限、②賞味期限を過ぎた食品等として検討している。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495180412&Mode=0

3 厚生労働科学研究補助金事業及び食鳥肉の汚染低減実証事業により得られた食鳥処理工程における微生物汚染低減策に関する事例集について

 平成31年3月11日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 厚生労働科学研究補助金事業(『食鳥肉におけるカンピロバクター汚染のリスク管理に関する研究』(研究代表者:国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長 朝倉宏))や食鳥肉における微生物汚染低減策の有効性実証事業(鹿児島県、岡山県、青森県)等における知見を整理し、事例集を作成した。ついては、食鳥処理場等におけるカンピロバクター等の汚染低減策及び衛生管理計画の作成について事業者に対する指導を行うにあたり活用ください。
 各事例においては、食鳥処理場で処理が行われた食鳥中抜と体等を過酢酸製剤、亜塩素酸ナトリウム等殺菌剤溶液に一定時間浸漬又はそれを用いて洗浄し、カンピロバクター汚染の低減効果を検証した。各自治体によって行われた食鳥肉における微生物汚染低減実証事業では、検証の結果、殺菌剤の適用を行わなかった検体に比較し、カンピロバクター属菌数がブロイラーで約67%低減されるなど、統計学的に有意な差が見られる結果も得られ、食鳥肉のカンピロバクター汚染に対して一定の低減効果があることが示された。
 一方で、食鳥中抜と体等の表面に付着したカンピロバクター属菌数を大幅に低減するものではなく、各食鳥処理場において、殺菌剤を使用する場合には、引き続き、解体処理工程において、腸管内容物による食鳥中抜と体等が汚染されることを防ぐ等の衛生的な作業が重要となる。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000487308.pdf

4 広域連携協議会の設置について

 平成31年3月18日、厚生労働省は各大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 改正後の食品衛生法第21 条の3第1項の規定により、厚生労働大臣は、監視指導の実施に当たっての連携協力体制の整備を図るため、国、都道府県等その他関係機関により構成される広域連携協議会を設けることができることとされており、また、「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令」が平成30 年11 月26 日に公布され、改正後の食品衛生法施行規則第21 条の規定により、広域連携協議会は、地方厚生局の管轄区域ごとに、当該地方厚生局並びに当該地方厚生局の管轄区域内の都道府県、保健所を設置する市及び特別区をその構成員として設けることとされている。
 この規定に基づき、今般、北海道広域連携協議会、東北広域連携協議会等7つの設置規程をもって、厚生労働大臣が地方厚生局の管轄区域ごとに広域連携協議会を設けたことを知らせたものである。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000489925.pdf

5 豚コレラ及びアフリカ豚コレラに関する特定症状について

 平成31年3月18日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課名をもって各都道府県等衛生主管部(局)宛標記事務連絡を出した。その主な内容は次の通り。

 農林水産省から別添のとおり通知があったので、業務の参考までにお知らせする。ついては引き続き、畜産部局への御協力方よろしくお願いする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000494300.pdf

6 野生鳥獣肉の衛生管理等に関する実態調査の結果について

 平成31年3月22日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 野生鳥獣肉の衛生管理等に関する実態調査については、平成30年10月3日付け薬生食監発1003第1号により御協力をお願いしたところですが、調査結果を別添のとおり取りまとめたので、お知らせする。
 調査の結果、項目によっては、ガイドラインの遵守状況が十分ではないことが確認されたため、引き続き、ガイドラインの各項目の内容が実施されるよう関係事業者の指導について特段の対応をお願いする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000491542.pdf

7 特別用途食品に関する質疑応答集について

 平成31年3月26日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 特別用途食品の表示許可等については、「特別用途食品の表示許可等について」(平成29年3月31日消食表第188号 最終改正:平成30年8月8日消食表第403号)により運用しているが、この度、別添のとおり、特別用途食品に関する質疑応答集を定めることしたので、貴管下で所管する事業者等の関係者に対して周知いただきたい。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_190326_0001.pdf

特別用途食品に関する質疑応答集
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_190326_0002.pdf

8 平成31年度輸入食品監視指導計画を策定

 平成31年3月26日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室は標記計画を公表した。輸入食品監視指導計画は、食品衛生法第23条に基づき、日本に輸入される食品、添加物、器具、容器包装及びおもちゃの安全性を確保するため、輸出国における生産の段階から輸入後の国内流通までの各段階において厚生労働本省及び検疫所が実施する措置等について、毎年度定めるもので、計画の主な内容は次の通り。

(1) 輸出国段階での措置
  ○ 輸出国政府との二国間協議、技術協力、計画的な現地調査等の実施
  ○ 食肉、食鳥肉等に係る輸出国及びと畜場等におけるHACCPに基づく衛生管理に関する情報収集及び周知
  ○ 諸外国の食品衛生、経済連携協定等に伴う輸入動向に基づく対応
(2) 輸入時段階での措置
  ○ 輸入者への輸入前指導を含む安全性確保に関する指導の実施
  ○ 輸入届出の審査による食品衛生法への適合性の確認
  ○ 輸入届出内容と実際の貨物が同一であることの確認等
  ○ 多種多様な食品等の安全性を幅広く監視するためのモニタリング検査の実施
    (検査件数約99,000件(平成30年度検査件数約98,500件))
  ○ 食品衛生法違反の可能性が高いと見込まれる食品等の輸入者に対する検査の命令
  ○ 食品衛生法違反判明時の輸入者への改善結果報告の指導
  ○ 海外からの問題発生情報等に基づく緊急対応の実施

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000203379_00006.html

平成31年度輸入食品監視指導計画
https://www.mhlw.go.jp/content/000493730.pdf

9 「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」及び「機能性表示食品に関する質疑応答集」の一部改正

 平成31年3月26日、消費者庁は標記一部改正を公表した。その主な改正は次の通り。

 別紙2 軽症者が含まれたデータの取扱いについてが追加され、機能性表示食品制度は、疾病に罹患していない者を対象に、機能性関与成分によって特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものであるが、保健の目的が期待できる旨の表示として、「鼻目のアレルギー反応」、「中長期的な血清尿酸値」及び「食後の血清尿酸値の上昇」に関する表示をする場合の科学的根拠において、次に示す範囲内に限り、軽症者が含まれたデータについても、例外的にその使用を認めることとする。(35p)

機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(新旧対照表)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/pdf/food_with_function_clains_190326_0002.pdf

機能性表示食品に関する質疑応答集
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/pdf/food_with_function_clains_190326_0003.pdf

10 食品表示基準についての一部改正

 平成31年3月28日、消費者庁は標記一部改正を公表した。その主な改正は次の通り。

 別添安全性審査済みの遺伝子組換え食品の検査方法に目次を加え、検査方法の一部を改正した。

食品表示基準について(新旧対照表)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190328_0006.pdf

11 冠表示における原料原産地情報の提供に関するガイドラインの制定

 平成31年3月29日、消費者庁は標記ガイドラインを制定したことを公表した。その主な内容は次の通り。

 消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保に資するよう、できる限り産地情報を充実させることが望ましいという観点から、食品関連事業者が「冠表示」をしている一般消費者向け商品の原材料の産地情報を、自主的に情報提供するための指針とする。
 本ガイドラインにおいて自主的に原料原産地情報を提供する「冠表示」とは、「商品名に特定の原材料名を冠している表示」又は「商品名に近接した箇所に特定の原材料の使用を特に強調している表示」とする。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/pdf/country_of_origin_190329_0001.pdf

12 食中毒健康危機管理実施要領の改正について

 平成31年3月29日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 「食品衛生法等の一部を改正する法律」のうち、平成31年4月1日に予定している広域的な食中毒事案への対策強化に関する規定の施行に伴い、今般、食中毒発生時における厚生労働省医薬・生活衛生局の対応について定めた標記要領を改正したのでお知らせする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000496250.pdf

13 「食中毒処理要領」及び「食中毒調査マニュアル」の改正について

 平成31年3月29日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 「食品衛生法等の一部を改正する法律」のうち、平成31年4月1日に予定している広域的な食中毒事案への対策強化に関する規定の施行に伴い、今般、「食中毒処理要領」及び「食中毒調査マニュアル」を改正したのでお知らせする。
 改正内容は、広域的な食中毒事案が発生した場合の対応、地方厚生局は、関係機関の連絡及び連携体制を確保するため、法第21条の3に基づく広域連携協議会に係る必要な事務を処理する等である。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000496797.pdf

14 食中毒統計作成要領の改正について

 平成31年3月29日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。主な改正点は次の通り。

 別表2 食中毒病因物質の分類における「26 その他」の例示として、「2種類以上の病因物質が原因となるとき等」を追加した。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000496381.pdf

15 農林漁業者等による農林漁業体験民宿施設の取扱いについて

 平成31年3月29日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。主な改正点は次の通り。

 平成17 年7月21日付け食安監発第0721002号監視安全課長通知により、農林漁業体験民宿に係る各都道府県等が定める施設基準等の許可要件については、各都道府県等において関係部局間で十分に協議を行い、施設の規模、提供される食事の種類、数量等を考慮し、必要に応じ条例改正の検討や弾力的運用を行うなど、適切に対応されるようお願いしているところ。
 今般、「平成30 年地方分権改革に関する提案募集」において、別紙のとおり、農林漁業体験民宿において、宿泊者以外への食事提供が可能となるよう更なる規制緩和を求める提案がありました。当省からは、農林漁業体験民宿として食品の営業許可を受けた施設において、現在の施設のまま食事の提供対象を拡大できるか否かについては、許可権者である地方自治体において判断いただきたい旨回答したところです。
 上記を踏まえ、「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成30 年12 月25日閣議決定)において、農林漁業体験民宿における食事の提供については、営業施設の許可要件は都道府県等において定め、当該許可要件に基づいて許可権者である都道府県等が許可することを明確化するため、改めて地方公共団体に周知することとされましたので、御了知願います。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000496774.pdf

16 米国食品医薬品庁(FDA)、米国農務省(USDA)及びFDAが家畜及び家きん細胞株由来細胞培養食品を規制するための公式協定を発表した旨を公表

 2019年3月26日、食品安全委員会が公表した食品安全総合情報システムに標記記事が掲載された。その主な内容は次の通り

 米国食品医薬品庁(FDA)は2019年3月7日、米国農務省(USDA)の食品安全検査局(FSIS)及び米国健康福祉省(HHS)のFDAが家畜及び家きん細胞株由来細胞培養食品を協同監督するための公式協定を発表した旨を公表した。概要は以下のとおり。
 当該公式協定は、FSIS及びFDAにおける監督の役割及び責任、並びに当該製品の開発及び商取引への参入規制のための両機関の協働について記述する。この共同の取り組みにより、家畜及び家きん細胞株由来細胞培養製品の安全な生産と、正確な表示が保証される。
 FDA 及びFSISは、培養済み細胞のハーベスト時、FDA からFSISへの規制監督移管に相互協力する。FSISに、培養済み細胞がUSDA検査印を添付する食肉製品へと加工するのに適格かどうか判断するための情報を提供する等、協働する。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2019&from_month=02&from_day=23&to=struct&to_year=2019&to_month=03&to_day=08&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc