「食品衛生行政」国の動き 平成31年4月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 食品ロス量(平成28年度推計値)の公表について

 平成31年4月12日、農林水産省食料産業局 バイオマス循環資源課 食品産業環境対策室は、標記平成28年度の食品ロスの量の推計結果を公表した。
 本来食べられるにも関わらず捨てられた食品ロスは、約643万トンと推計された。その概要は、次の通り。

 我が国では、食品廃棄物等(食品廃棄物及び有価として扱われる物)の量を削減するため、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」に基づき、国、地方自治体及び事業者等による取組が進められている。
 「食品ロス」については、平成27年9月に国際連合で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で定められている「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」のターゲットの1つに、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させることが盛り込まれるなど、近年、関心が高まっている。
 食品ロスの量は、平成28年度には約643万トンであったと推計され、前年度より3万トン減少した。食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量及び一般家庭から発生する家庭系食品ロス量の内訳は、以下のとおり。

           27年度  28年度
食品ロス      646万トン⇒643万トン(-3万トン)
事業系食品ロス   357万トン⇒352万トン(-5万トン)
家庭系食品ロス   289万トン⇒291万トン(+2万トン)

http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/190412_40.html

2 食品ロス削減に向けた納品期限緩和の取組の進捗と今後の展開について

 平成31年4月12日、農林水産省食料産業局 バイオマス循環資源課 食品産業環境対策室は、標記食品ロス削減に向けた小売事業者の納品期限緩和の取組等について公表した。その概要は、次の通り。

 食品ロスを削減するため、農林水産省は、補助事業にて製造業・卸売業・小売業の話合いの場となる「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」の設置を支援し、小売事業者の納品期限緩和等の商慣習の見直しを推進している。商慣習の一つとして、賞味期間の1/3以内で小売店舗に納品する慣例、いわゆる「1/3ルール」があり、この「1/3ルール」のもとでは、賞味期間の1/3を超えて納品できなかったものは、賞味期限まで多くの日数を残すにも関わらず、行き場がなくなり廃棄となる可能性が高まる。このため、厳しい納品期限を緩和することは食品ロスの削減につながることが期待され、現在の総合スーパー、食品スーパー、ドラッグストア及びコンビニエンスストアにおける対応を紹介している。

http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/190412.html

3 「平成30 年度特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)」の調査結果について

 平成31年4月22日、消費者庁食品表示企画課保健表示室は、標記調査結果を公表した。その主な内容は、次の通り。

 平成30 年度特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)については、市場に流通している特定保健用食品40 品目及び機能性表示食品60 品目を調査対象として買い上げ、許可等申請又は届出の際に提出された資料に記載された分析方法にのっとって分析試験を実施した。
 その結果、全ての調査対象品目における関与成分等は申請等資料の記載どおり適切に含有されていた。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_190422_0001.pdf

4 オイゲニルメチルエーテルの取扱いについて

 平成31年4月23日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品基準審査課長及び食品監視安全課長の連名で各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は、次の通り。

 オイゲニルメチルエーテルについては、平成25 年7月25 日付け食安基発0725 第1号・食安監発0725 第1号「類又は誘導体として指定されている18項目の香料に関するリストについて」おいて、フェノールエーテル類に該当する物質として掲載されているところ。
 この度、米国内で、オイゲニルメチルエーテルを含む平成25 年通知に掲載されている5品目の合成香料について、実験動物でがんを引き起こすデータが示されたことを踏まえ、米国食品医薬品局は、これら合成香料の暴露量は少量であり、意図した使用条件の下では公衆衛生上のリスクは生じないという見解を維持しつつも、食品添加物規則から除外する改正をした。
 我が国の安全性生物試験研究の専門家に意見を求めたところ、オイゲニルメチルエーテルについては、食品の着香の目的で使用する場合、直ちに国民の健康に影響を及ぼすとは考えにくいとされるものの、遺伝毒性の観点から、安全性に懸念がないと考えるにあたってはさらなる追加の知見が必要となる旨の意見提出を受けた。
 なお、その他の4品目については、食品の着香の目的で使用する場合、安全性に懸念は認められないとされた。
 上述の趣旨を踏まえ、オイゲニルメチルエーテルについて、平成31 年10 月22 日をもって平成25 年通知の別紙から削除することとし、次の対応を取ることとした。
 平成31 年10 月22 日以降、添加物としてのオイゲニルメチルエーテル並びにこれを含む製剤及び食品は、販売、又は販売の用に供するための、製造、輸入、加工、使用、貯蔵、又は陳列を自粛するよう指導されたいこと。ただし、平成31年10 月22 日までに製造、輸入等された食品の販売にあっては、この限りではない。

https://www.mhlw.go.jp/content/000504177.pdf

平成25年通知
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9541&dataType=1&pageNo=1

5 食品衛生法第18条第3項ただし書に規定する人の健康を損なうおそれのない量に係る食品健康影響評価 に関する審議結果(案)についての 意見・情報の募集

 平成31年4月24日、内閣府食品安全委員会事務局評価第一課は、標記募集(募集期限5月23日)を行った。改正後の食品衛生法に新設された第 18 条第 3 項は、食品に接触しない部分に使用される物質について、人の健康を損なうおそれのない量(以下「おそれのない量」という。)を超えて溶出し、又は浸出して食品に混和するおそれがないように器具又は容器包装が加工されている場合、ポジティブリスト制度の適用除外となることを規定している。
 おそれのない量について、厚生労働省から食品安全委員会への諮問がなされ、器具・容器包装専門調査会で審議してきた。審議結果案として、おそれのない量については、食事中濃度で 0.5 μg/kg以下となる範囲で設定できると考えられるとし、今回意見・情報の募集が行われた。

http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_kigu_osorenonairyou_310424.html

6 食品表示基準の一部を改正する内閣府令の公布について

 平成31年4月25日、食品表示基準の一部を改正する内閣府令(平成31年内閣府令第24号)が公布(平成35年4月1日施行)された。改正の主な内容は、次の通り。

 食品表示基準第3条第2項等の表中、遺伝子組換え食品に関する事項について、遺伝子組換えでない」、「非遺伝子組換え」等の表示のできる範囲が、従来は、「分別生産流通管理が行われたことを確認した非遺伝子組換え農産物である」とされていたものが、今回、「遺伝子組換え農産物の混入がない非遺伝子組換え農産物である」と改められ、従来5%未満の遺伝子組換え農産物の混入が認められていたものが、一定の検査法で不検出のものでなければ表示してはならないとされた。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/genetically_modified/pdf/genetically_modified_190425_0001.pdf

新旧対照条文
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190425_0006.pdf

この改正に合わせ「新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)」が公表されている
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/genetically_modified/pdf/genetically_modified_190425_0002.pdf

また、食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に対する意見募集の結果についても公表されている。
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000186467

7 食品の営業規制に関する検討会とりまとめ(政省令関係事項)公表

 平成31年4月26日、厚生労働省は,食品の営業規制に関する検討会での検討結果を取りまとめ公表した。これに基づき、今後、政令、省令案が示される。その主な内容は、次の通り。

 営業規制の見直し、営業届出制度、営業許可対象業種の見直し及び施設基準について検討され、「5 営業許可業種の見直し及び施設の参酌基準の素案等」(3)共通基準素案(4)営業許可業種ごとの範囲と個別基準の素案で次の記載がある。

〇乳製品製造業は、乳製品(乳酸菌飲料を含む。)を製造する営業とし、乳酸菌飲料製造業は、廃止する。
〇清涼飲料水製造業は、清涼飲料水を製造する営業とする。ただし、乳飲料及び乳酸菌飲料の製造に当たって、生乳を使用しない場合は、乳処理業及び乳製品製造業の許可を要しない。
〇食肉販売業において,未加熱のとんかつ、メンチカツ、コロッケなどの半製品を調整する場合は、別途の営業許可を要さない。その半製品を調理し、完成品を調理販売する場合は、飲食店営業の許可が必要。包装済の食肉のみを販売する場合は、届出とする。
〇食肉製品製造業で製造が可能な食品の範囲を食肉の含量50%未満のそうざいに拡大する。食肉製品製造のための食肉処理には食肉処理業の許可は求めない。
〇水産食品製造加工業(魚肉ねり製品製造業を含む。)は水産食品及びこれを主要原料とする食品を製造又は加工する営業とする。
〇「HACCPに基づく衛生管理」を行うそうざい製造施設にあっては、食肉処理、菓子(あん類を含む。)製造、めん類製造、又は魚介類処理にあたって、これらの食品に必要な営業許可を要しない(統合型のそうざい製造業)。
〇冷凍食品製造業は、 製造し、又は加工した食品を凍結させたものであって、容器包装に入れられたもののうち、冷凍食品として販売されるもの(清涼飲料水、食肉製品、鯨肉製品、魚肉ねり製品、ゆでだこ、ゆでがにを除く)を製造する営業とする。
〇漬物製造業、液卵製造業等新設
〇飲食店営業で、コンビニエンスストアの店舗内において調理、提供する施設、スーパーマーケットの店舗内において調理、提供する施設、飲物(酒類以外)又は茶菓を調理、提供する施設(従来の喫茶店営業)、その他、食材の下処理を行わず、既製品等を使用し、調理、提供する施設等(キッチンカーを含む。)を想定した簡易な飲食店営業の区分を設ける(簡易飲食店営業)。

https://www.mhlw.go.jp/content/000506150.pdf