「食品衛生行政」国の動き 令和元年5月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1. 有毒植物による食中毒防止の徹底について

 平成31年4月25日、 厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その内容は、次の通り。

 例年、特に春先から初夏にかけて、有毒植物の誤食による食中毒が多く発生しています。本年も別添のとおり、イヌサフラン、スイセン等の有毒植物の誤食による食中毒事例(平成31年4月22日現在、事件数8件、患者数16名)が報告されており、患者の多くを高齢者が占めています。
 つきましては、各都道府県等におかれては、食用と確実に判断できない植物については、絶対に「採らない」、「食べない」、「売らない」、「人にあげない」よう、地域広報誌等、高齢者の目にもとまりやすい各種メディアの活用や高齢者施設等の関係団体を通じ、継続的に注意喚起を行うようお願いします。また、有毒植物の苗が、野菜の苗として販売されていた事例も複数報告されていることから、必要に応じ、農林部局等関係部局とも連携し、事業者に対する監視指導を行うようお願いします。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000505290.pdf

(参考)厚生労働省ホームページ
• 有毒植物による食中毒に注意しましょう
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yuudoku/index.html
• 自然毒のリスクプロファイル
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.html

2. 「食品表示基準について」の一部改正について

 令和元年5月7日、消費者庁は、次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その内容は、次の通り。また、これとは別に元号の改正に伴い関係する府令、省令の改正が行われている。

 元号を改める政令(平成31年政令第143号)が施行され、元号が「令和」に改められた。
 これを踏まえ、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の解釈を明確化すべきと判断した点について、別紙新旧対照表のとおり「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)」を一部改正した。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190507_0015.pdf

新旧対照表
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190507_0016.pdf

3. 世界保健機関(WHO)は、油脂業界、食品及び外食産業界は2023年までに工業的に生成されたトランス脂肪酸を排除するための世界的な取り組みに参加する必要がある旨の声明を公表

 令和元年5月17日、食品安全委員会が公表した食品安全関係情報詳細に標記声明が登載されている。その主な内容は、次の通り。

 世界中の食料供給から工業的に生成されたトランス脂肪酸を排除することはWHOの優先事項であり、2023年までのWHOの指針となる第13次総合事業計画(GPW)の目標である。
 この目標を達成するために、我々は政府機関の取り組み(commitment)だけでなく、産業界に対しても、工業的に生成されたトランス脂肪酸をより健康的な油脂類に置き換えることに取り組みし、行動するよう呼びかける。
 WHOは、外食産業を含む、油脂業界、食品業界に以下のことに取り組みするよう求める。
 工業的に生成されたトランス脂肪酸を排除するために食品の組成を改良する:世界中の製品ラインにおける全ての製品に対して、飽和脂肪酸へ置き換えることなく、全製品カテゴリーに対するWHOの勧告(全ての食品において総油脂量100g当たり2g未満)に沿うように、2023年までに、トランス脂肪酸(trans fat))排除の目標を設定し、取り組み、そして達成する。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05130720294

4. 改正後の食品衛生法第8条に基づく特別の注意を必要とする成分等を含む食品について

 令和元年5月17日、厚生労働大臣から薬事・食品衛生審議会会長に諮問された標記について、5月20日、食品衛生分科会 新開発食品調査部会で審議が開始された。諮問された食品は、次の4種類でいずれも植物である。

(1)プエラリア・ミリフィカ
強力なエストロゲン様作用を有する成分(ミロエストロール類)を含有するものの、生理活性の程度と含有量の量的相関関係の見極めが十分には出来ないこと

(2)ブラックコホシュ
肝障害を引き起こす作用本体成分は必ずしも明確ではないが、様々な生理活性を有する多種のアルカロイド類(マグノフロリン、レチクリン、ノルコクラウリン等)を含有すること

(3)コレウス・フォルスコリー
アデニル酸シクラーゼ活性化作用をもつ化合物フォルスコリンを含有するものの、生理活性の程度と含有量の量的相関関係の見極めは十分には出来ないこと

(4)ドオウレン
腫瘍のほか肝障害誘引作用を持つアルカロイド類(ケリドニン、サンギナリン)を含有するものの、生理活性の程度と含有量の量的相関関係の見極めは十分には出来ないこと

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000203059_00013.html

5. 食品衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部を改正する政令(案)に関する意見募集

 令和元年5月21日、標記意見募集が公表された。意見の締め切りは6月19日で、問い合わせは厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課。その主な内容は、次の通り。

(1)改正後の食品衛生法第18 条第3項の政令で定める材質は、合成樹脂とする。

(2)改正後の法第50 条の2第1項第2号の小規模な営業者その他の政令で定める営業者については、以下のとおりとする。
・ 食品又は添加物を製造し、又は加工する者のうち、主として食品又は添加物を製造し、又は加工する施設に併設し、又は隣接した店舗において、その施設で製造又は加工した食品又は添加物の小売販売をする者
・ 飲食店営業及び喫茶店営業その他の食品を調理する者として厚生労働省令で定める者
・ 容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品又は添加物のみを貯蔵し、運搬し又は販売する者
・ 食品又は添加物を分割して容器包装に入れ、又は容器包装で包み、小売販売する者その他の法第50 条の2第1項第1号に規定する一般的な衛生管理により公衆衛生上必要な措置を講ずることが可能なものとして厚生労働省令で定める営業をする者
・ 上記に掲げる者のほか、一の事業所において食品又は添加物の取扱いに従事する者の数が50 人未満である者

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190057&Mode=0

6. 日本マクドナルド株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について

 令和元年5月24日、消費者庁表示対策課は、日本マクドナルド株式会社に対し、同社が供給する「東京ローストビーフバーガー」と称する料理及び当該料理を含むセット料理並びに「東京ローストビーフマフィン」と称する料理を含むセット料理の各料理に係る表示について、景品表示法第8条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を行ったことを公表した。

・課徴金対象行為をした期間
平成29年8月2日から同年9月5日までの間
・命令の概要(課徴金の額)
日本マクドナルドは、令和元年12月25日までに、2,171万円を支払わなければならない。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/release/2019/pdf/fair_labeling_190524_0001.pdf

7. 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件及び食品衛生法第11 条第3項の規定により人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質の一部を改正する件について

 令和元年5月30日、厚生労働省は、大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等に標記通知を出した。これは、同日、食品衛生法第11 条第3項の規定により人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質として、農薬ビール酵母抽出グルカンを追加する告示が公布されたことによるものである。

https://www.mhlw.go.jp/content/000513777.pdf

8. 平成31年度輸入食品等モニタリング計画の改正について(韓国産ヒラメ等に係る衛生対策の確保)公表

 令和元年5月30日、医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室標記改正を公表した。
 これは、夏の食中毒シーズンの到来にあたり、6月より、寄生虫のクドアによる食中毒が継続して発生している韓国産ヒラメなどを対象とする輸入鮮魚介類の検査を全国の検疫所で強化するため、本日、「平成31年度輸入食品等モニタリング計画」を改正したもので、その主な内容は、次の通り。また、平成31 年度輸入食品等モニタリング計画の改正に関するQ&Aも掲載されている。

○韓国産ヒラメに対するKudoa septempunctata のモニタリング検査を輸入届出の20%から40%へ、2倍とする。
○生食用冷蔵むき身アカガイ、タイラギガイ、トリガイ、ウニに対する腸炎ビブリオのモニタリング検査を輸入届出の10%から20%へ、2倍とする。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000178994_00003.html

9. 食品ロスの削減の推進に関する法律の公布

 令和元年5月31日、消費者庁長官は、各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、同日「食品ロスの削減の推進に関する法律」が公布されたことに伴うもので、施行は本年11月30日までに政令で定める日。その概要の主なものは、次の通り。

・世界には栄養不足の状態にある人々が多数存在する中で、とりわけ、大量の食料を輸入し、食料の多くを輸入に依存している我が国として、真摯に取り組むべき課題であることを明示
・食品ロスを削減していくための基本的な視点として、①国民各層がそれぞれの立場において主体的にこの課題に取り組み、社会全体として対応していくよう、食べ物を無駄にしない意識の醸成とその定着を図っていくこと、②まだ食べることができる食品については、廃棄することなく、できるだけ食品として活用するようにしていくことを明記
・国・地方公共団体・事業者の責務、消費者の役割、関係者相互の連携協力
・政府は、食品ロスの削減の推進に関する基本方針を策定(閣議決定)
・都道府県・市町村は、基本方針を踏まえ、食品ロス削減推進計画を策定

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/promote/pdf/promote_190531_0001.pdf

概要
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/promote/pdf/promote_190531_0002.pdf

10. 平成30年度食品表示に関する消費者意向調査報告書公表

 令和元年5月31日、消費者庁は、標記報告書を公表した。
 この調査は、消費者の食品表示制度に対する理解度等を調査し、その結果を分析することで、食品表示法等の関係法令やガイドライン等の定着状況を把握するとともに、消費者の食品表示に対するニーズを把握し、食品表示制度の見直しに役立てることを目的とするもので、調査対象者は10,000人。この中で、食品を選ぶとき、当該食品の「安全性」をどの程度意識することがあるかとの質問に、常に意識する又はよく意識する人の合計が、男性では61.2%、女性で74.5%となっている。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2018/pdf/information_research_2018_190531_0001.pdf