「食品衛生行政」国の動き 令和元年6月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1. ラグビーワールドカップ2019の開催における食品衛生対策について

 令和元年6月4日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は、次の通り。

 本年9月20 日から11 月2日にかけて、ラグビーワールドカップ2019が全国12都市で開催される予定となっている。(別紙参照)
 ついては、開催期間中の飲食に起因する危害の発生を防止するため、関係する地方自治体においては、会場、宿泊施設、食事を提供する施設等における食品衛生上の対策について万全を期すよう、特段の配慮方お願いする。
 また、その他の地方自治体においても、関係する地方自治体から管轄下の食品等事業者が製造、加工又は調理した食品等が会場や宿泊施設等の関連施設で使用されるとして、監視指導の依頼があった場合は協力に特段の配慮方お願いする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000515535.pdf

2. 食品衛生法施行規則の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について

 令和元年6月6日、厚生労働省は、大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、同日をもって「改正する省令」が公布され、「改正する件」が告示されたことに伴うものでその主な内容は、次の通り。なお、施行は、公布日又は告示日。

・食品衛生法第10 条の規定に基づき、アルゴン、イソブチルアミン、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン及び2-メチルブチルアミンを省令別表第1に追加したこと。

・法第11 条第1項の規定に基づき、アルゴン、イソブチルアミン、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン及び2-メチルブチルアミンの成分規格を設定したこと。

・イソブチルアミン、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン及び2-メチルブチルアミンについては、「着香の目的以外に使用してはならない。」との使用基準が設定されたこと。

https://www.mhlw.go.jp/content/000516066.pdf

3. 令和元年度食品衛生法等の規定に基づく食品等の表示に係る夏期一斉取締りの実施について

 令和元年6月11日、消費者庁は、次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。
 これは、「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」に基づき食品衛生の監視指導の強化が求められる夏期において、食品等の表示の適正を確保する観点から、全国一斉に取締りを実施するもので、その主な内容は、次の通り。

(1)実施時期:令和元年7月1日から同月31 日まで
(2)主な監視指導事項
 ア アレルゲン、期限表示等の衛生・保健事項に関する表示
 イ 保健機能食品を含めた健康食品に関する表示
 ウ 生食用食肉、遺伝子組換え食品等に関する表示
 エ 道の駅や産地直売所、業務用加工食品に関する表示
 オ 食品表示基準に基づく表示方法の普及・啓発
(3)カンピロバクター食中毒対策の推進について
 カンピロバクター食中毒は、日本で発生している細菌性食中毒の中で、近年、発生件数が最も多く、平成30 年においても事件数319 件、患者数1,995 人(厚生労働省公表食中毒統計)で推移していること、及び「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル ~鶏肉等におけるCampylobacter jejuni/coli」(平成30 年5月8日、内閣府食品安全委員会公表)において、「健康被害解析及び鶏肉・鶏内臓(以下、「鶏肉等」という。)の汚染実態調査結果から、厚生労働省及び消費者庁より発出された『カンピロバクター食中毒対策の推進について』の通知内容を事業者が遵守することにより、生食又は加熱不十分の鶏肉等の喫食割合が減少し、食中毒が減少すると考えられる。」と示されていることに鑑み、カンピロバクター食中毒の予防対策について、引き続き、加熱が必要な旨の確実な情報伝達等により、加熱用の鶏肉等が生食又は加熱不十分で提供されることのないよう、別添4の啓発パンフレット等を活用し、食品衛生部局と連携しつつ、食品関連事業者等への周知啓発を図ること。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_190625_0003.pdf

4. 令和元年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施について

 令和元年6月19日、厚生労働省は、大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。実施時期は、消費者庁次長通知と同じ7月の1ヶ月間。その主な内容は、次の通り。

 食品衛生法第22 条の規定に基づく「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」(平成15 年厚生労働省告示第301 号)第三の六に基づき、夏期に多発する食中毒の発生防止を図るとともに、積極的に食品衛生の向上を図る見地から、例年のとおり、全国一斉に標記取締りを行うこととしましたので、別添の実施要領(※別添略とされ公表されず)に基づき遺漏なく実施するようお願いする。
 実施に当たっては、平成30 年度の夏期一斉取締りの結果を参考とし、大量調理施設等に対する監視指導を行うとともに、腸管出血性大腸菌、カンピロバクター等による食中毒防止対策等について監視指導をお願いする。また、監視指導の結果、汚染食品を発見した場合のほか、食中毒が発生した場合には、流通経路の遡り調査を徹底して行い、汚染源を排除するための適切な措置を講ずるとともに、関係機関に対して速やかに情報提供するようお願いする。
 本実施要領は、夏期一斉取締りの実施に当たっての基本的事項のみを示しているため、各都道府県等において、都道府県等食品衛生監視指導計画等に基づき、適宜事項を追加して実施してください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000524388.pdf

5. 器具・容器包装のポジティブリスト制度における規格基準について

 令和元年6月21日開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会器具・容器包装部会において改正告示案が示された.別表第1第1表案(基ポリマー)として(1)基ポリマー(プラスチック)、(2)基ポリマー(コーティング等)及び(3)基ポリマーに対して微量で重合可能なモノマーが、第2表案として添加剤・塗布剤等が示されている。なお、乳等省令で規定されている器具、容器包装の規格基準の告示への移行案はまだ示されていない。告示の案は、次の通り。

 第3器具及び容器包装、A器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格中に次の9が加えられている。

 9 法第18条第3項の規定により、令第1条に定められた合成樹脂の原材料であって、これに含まれる物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を除く。)及びそれらの使用にあたっての制限については別表第1に掲げるものであること。ただし、別表第1に掲げる物質の他、着色の目的に限って使用する物質は、食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号)別表第1に掲げる着色料若しくは溶出又は浸出して食品に混和するおそれのないように加工されている着色料であること。別表第1第1表(1)及び(2)の表中の使用可能ポリマー欄に掲げる合成樹脂の原材料であって、これに含まれる物質(以下「基ポリマー」という。)は、当該基ポリマーを使用して製造される器具若しくは容器包装に含有されることが許容される量又は当該基ポリマーを使用して製造される器具若しくは容器包装から溶出し、若しくは浸出して食品に混和することが許容される量が特段の定めが無い場合をもって、法第18条第1項の規格に定められているものとし、同表の使用可能食品欄及び使用可能最高温度欄に規定する制限を超えて器具及び容器包装の原材料として使用してはならない。また、同表第1表(2)の表中の使用可能ポリマー欄に掲げる基ポリマーはプレポリマーを適切な基材上で化学反応により高分子化又は架橋されなければならない2なお、基ポリマーの構成成分に対して98重量%超が別表第1第1表(第一)又は(2)の表の使用可能ポリマー欄に掲げる物質で構成され、残りの構成成分は同表第1表(3)の表に掲げるモノマーの共重合体で構成されること。同表第2表の表中の物質名欄に掲げる合成樹脂の原材料であって、これに含まれる物質は、同表第1表(1)及び(2)の表中の区分欄に従い、対応する同表第2表(1)の表中の区分別使用制限欄に定める量を超えて、該当する基ポリマーを使用する合成樹脂に含有してはならない。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000520541.pdf

別表第1第1表案
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000520539.pdf

別表第1第2表案
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000520537.pdf

6. 平成30年度食品衛生法等の表示に係る年末一斉取締り結果について

 令和元年6月25日、消費者庁は、標記結果を公表した。これには年末一斉取締り結果及び平成30 年度夏期・年末(総括)一斉取締り結果があり、その主な内容は、次の通り。

 食品表示法の措置概要について、命令及び指示はなく、それ以外の措置が夏期2,290件、年末2,017件であった。
 許可を要する営業施設及び許可を要しない営業施設への監視指導施設数、違反件数等では、監視指導延べ施設数が夏期386,939施設、年末386,939施設、表示違反が確認された延べ施設が夏期2,481施設、年末2,151施設であった。

年末一斉取締り結果
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_190625_0002.pdf

平成30 年度夏期・年末(総括)一斉取締り結果
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/food_labeling_information_190625_0001.pdf

7 フグ処理者の認定基準に関する検討会とりまとめ案公表

 令和元年6月28日開催された厚生労働省の第3回フグ処理者の認定基準に関する検討会において標記案が検討された。案の主な内容は、次の通り。

・食品衛生法第6条の規定により、有毒・有害食品等について販売禁止されており、同条第2号のただし書きの規定により、例外的に、フグの有毒部位 除去等により販売等が認められている。そのため、確実に魚種を特定し、有毒部位を除去できる知識及び処理技術が必要である。
・フグの有毒部位の除去等に必要な知識及び技術を有するか否かは、試験(講習会における試験を含む。以下同じ。)による確認が必要である。
・フグ処理者を認定する際の基準を平準化する観点から、フグ処理者に必要な知識として習得すべき内容、技術として習得すべき内容について、フグ処理者の認定基準としてそれぞれに項目化する。
・本検討会とりまとめを踏まえて、都道府県等において認定基準の見直しを行い、認定基準に適合する都道府県等の資格は、他の都道府県等において受入れることとする。
・フグ処理者の認定基準案として、水産食品の衛生に関する知識(学科)、フグに関する一般知識(学科)、フグの処理(実技)フグの種類の鑑別、フグの処理と鑑別等が示されている。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000523013.pdf