「食品衛生行政」国の動き 令和元年7月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 栄養成分表示の義務化に係る周知・普及について

 2019(令和元)年7月2日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等及び関係団体宛標記通知を出した。その主な内容は、次の通り。

 一般用加工食品について原則として栄養成分表示を義務化することを定め平成27年4月1日に施行された食品表示法に基づく食品表示基準についは、経過措置期間が2020(令和2)年3月31日をもって終了します。
 このため、消費者庁では、食品関連事業者への指導等により一層の周知、普及が急務であると考えている。
 ついては、消費者庁として可能な限りの対応を行いたいと考えているので、食品関連事業者を対象とした栄養成分表示に係る研修会等への講師派遣の御要望等がありましたら、消費者庁食品表示企画課宛てに御連絡願います。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_190702_0001.pdf

2 アレルギー物質を含む食品の表示について

 2019(令和元)年7月5日開催された第56回消費者委員会食品表示部会において消費者庁は標記説明資料を提出し説明した。その中で、くるみについて義務化を視野に入れた検討とし、アーモンドについては推奨品目への追加検討としている。

https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/190705_shiryou4.pdf

3 改正食品衛生法第18条第3項ただし書に規定する人の健康を損なうおそれのない量を定めることについて(案)

 2019(令和元)年7月8日開催された、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会器具・容器包装部会において標記おそれのない量が提示された。
 改正後の食品衛生法第18条第3項において、政令で定める材質の原材料は、ポジティブリストに収載された物質でなければならないが、同項ただし書において、食品に接触する部分に使用されず、人の健康を損なうおそれのない量として定める量を超えて食品側に移行しない場合には、ポジティブリストに収載された物質以外のものも使用可能とされている。
 このため、食品安全委員会は器具容器包装専門調査会が検討した、同条第3項ただし書きに規定する人の健康を損なうおそれのない量は、食事中濃度で0.5 µg/kg以下となる範囲で設定できると厚生労働省に答申した。今回の検討の概要は、次の通り。

 食事中濃度が0.5µg/kg以下となる食品への移行量は、0.01mg/kg以下と算出される。
 したがって、改正食品衛生法第18条第3項ただし書の規定により人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量は、0.01mg/kg食品とする。なお、食品への移行量0.01mg/kgは、食品擬似溶媒中濃度として0.01mg/Lと考えて差し支えないと考えられる。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000526346.pdf

4 「食品衛生法において定められた公衆衛生上必要な措置の実施のためのガイドライン案」に関する御意見の募集について

 2019(令和元)年7月19日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課は標記募集を開始した。締切日は、8月17日。これは、平成30 年6月13 日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴い、施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置を厚生労働省令で定めることとなるが、その実施のためのガイドラインを策定するものである。ガイドライン案の構成は、次の通り。

第1 一般衛生管理(改正食品衛生法50 条の2第1項第1号関係)
 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関する基準について

第2 HACCP に基づく衛生管理(改正食品衛生法第50 条の2第1項第2号関係)
 危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組に関する基準について

第3 HACCP の考え方を取り入れた衛生管理(改正食品衛生法第50 条の2第1項第2号関係)
 法第50 条の2第1項第2号の政令で定める小規模な事業者が行う取り扱う食品の特性に応じた取組(簡略化された取組)の基準は、厚生労働省が確認をした手引書の内容とする。

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190140&Mode=0

5 バーベキューにおける食品安全に関する消費者行動のインターネット調査

 2019(令和元)年7月23日、消費者庁 消費者安全課は標記調査を公表した。消費者庁では、全国の消費者を対象に、食品安全の観点からバーベキューにおける行動等について、アンケート調査を実施した。本調査は、直近1年間でバーベキューを経験した方を対象にしており、最近のバーベキュー事情に沿った調査となっている。その主な内容は、次の通り。

・調査方法:インターネット調査
・実施期間:2019(令和元)年6月21 日(金)~6月23 日(日)
・有効回答数 2,000 人
・「肉や魚が中心までよく焼けているか、肉や肉汁の色を確認する」、「肉等を焼くときに使うトングや箸は専用に使う(食べるときに使う箸と使い分けている)」や「十分に加熱されるよう、食材を焼く位置を変えたり、火の加減を確認する」という、食品の加熱やトングの使い分け等の項目では、約8割の方が「どちらかといえばできている」又は「できている」と回答した。なお、年代によるクロス集計結果では、「肉魚が中心までよく焼けているか、肉や肉汁の色を確認する」について、「どちらかといえばできている」又は「できている」と回答した割合は、20 代においては約75%であったのに対し、60 代においては約92%と差が見られた。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/pdf/food_safety_190723_0001.pdf

6 農林水産物・食品の輸出拡大に向けた輸出先国の規制への対応を強化するための緊急増員について

 2019(令和元)7月23日、厚生労働省及び農林水産省は同時に標記増員を公表した。その内容は、次の通り。

 輸出先国の規制に関する相手国との協議や輸出のための施設認定の迅速化などを図ることにより、関係省庁とも調整を行いつつ、工程表で示された項目を着実に実施するため、厚生労働省に28人(食品監視安全課14名、地方厚生局12名、国立医薬品食品衛生研究所2名)の定員を緊急的に増員します。また、内閣審議官1人を農林水産省に配置するとともに、農林水産省に20人(食料産業局輸出促進課に16人及び水産庁加工流通課に4人)の定員を緊急的に増員します。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05862.html

http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kaigai/190723.html

7 世界保健機関(WHO)、A型肝炎及びE型肝炎に係るファクトシートを更新

 2019(令和元)年7月24日、食品安全委員会が公表した食品安全関係情報に標記情報が登載されている。その概要は、以下のとおり。

A型肝炎
(1) A型肝炎は、軽度から重度までの疾病を引き起こすウイルス性の肝臓疾患である。
(2) A型肝炎ウイルス(HAV)は、汚染食品及び水の摂取、あるいは感染者との直接の接触を通して伝播される。
(3) A型肝炎感染者のほぼ全員は完治し、免疫は生涯保持される。しかしながら、ごく少数だがA型肝炎感染者が劇症肝炎により死亡することがある。
(4) 2016年にはA型肝炎が約7,134人の死因となったとWHOは推定している(ウイルス性肝炎による死亡率の0.5%を占める)。
(5) A型肝炎感染の危険性は、安全な水の欠如及び不衛生な設備や不衛生状態(汚れた手等)に関連する。
(6) 食品あるいは水からの感染の危険性が低い国においては、男性間性交渉者(MSM)及び薬物注射をする人(PWID)の間で集団感染が発生している。
(7) 流行が長期化することがあり、相当な経済的損失の原因となる可能性がある。
(8) A型肝炎予防のための安全で効果的なワクチンが利用可能である。
(9) 安全な水の供給、食品安全、衛生設備の改善、手洗い及びA型肝炎ワクチンが、当疾病に抗する最も効果的な手段である。感染レベルの高い国を旅行する人、MSM及びPWID等、高リスクの人は予防接種を受けることが可能である。

E型肝炎
(1) E型肝炎は、E型肝炎ウイルス(HEV)として知られるウイルスの感染によって引き起こされる肝臓疾患である。
(2) 毎年、世界では約2,000万人がHEVに感染し、E型肝炎発症者は推定330万症例になると推定されている。
(3) E型肝炎は2015年に約44,000人の死因となったとWHOは推定している(ウイルス性肝炎による死亡の3.3%を占める)。
(4) ウイルスは、主に汚染した水を介して、糞口経路で伝播する。
(5) E型肝炎は世界中で確認されているが、当該疾病は東南アジアで最もよく見られる。
(6) 中国ではE型肝炎ウイルス感染を予防するワクチンが開発、認可されているが、他の国ではまだ使用できない。
(7) 比較的良い衛生状態及び水供給のある地域においては、E型肝炎疾患はまれであり、時折散発的な症例があるだけである。これらの症例の大部分は遺伝子型3ウイルスにより引き起こされる。通常は加熱不十分な動物の肉(動物の肝臓等、特に豚肉)の摂取による動物由来ウイルスの感染が原因であり、水あるいは他の食品の汚染とは関連していない。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2019&from_month=06&from_day=29&to=struct&to_year=2019&to_month=07&to_day=11&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc

8 「食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(案)」に関する御意見の募集について

 2019(令和元)年7月26日,厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課は標記意見募集を開始した。締め切りは8月24日。その主な内容は、次の通り。

・改正後の食品衛生法第54条の規定により都道府県が施設についての基準を定めるべき営業(施行令第35条関係)として、調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、これを販売する営業、水産製品製造業、液卵製造業、複合型そうざい製造業、複合型冷凍食品製造業、 漬物製造業及び食品の小分け業を新たに規定し合計32業種が規定されている。
・法第57条第1項に規定する営業の届け出を必要としないものとして、容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品又は添加物のうち、冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化により食品衛生上の危害の発生のおそれがないものの販売をする営業等が規定されている。 ・公布日、2019(令和元)年9月上旬(予定)。施行期日、改正法の公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日。

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190146&Mode=0

9 「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案」に関する御意見の募集について

 2019(令和元)年7月26日,厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課は標記意見募集を開始した。締め切りは8月24日。その主な内容は、次の通り。

・食品衛生法施行規則関係
 食品又は添加物の輸入に関し、
 イ 輸入時に輸出国の衛生証明書の添付が必要な食品として、乳及び乳製品を追加する。
 ロ HACCPに沿った衛生管理が行われていることが求められる輸入食品は、食肉及び食鳥肉とする。等か規定されている。
 改正後の法第50条の2の営業者が遵守すべき衛生管理に関する事項として、
 イ 改正後の法第50条の2第1項第1号に掲げる事項に関する同項の厚生労働省令で定める基準は、次の事項に関するものとする。
 ・食品衛生責任者等の選任 ・施設の衛生管理 ・設備等の衛生管理 ・使用水等の管理 ・ねずみ及び昆虫対策 ・廃棄物及び排水の取扱い ・食品又は添加物を取り扱う者の衛生管理 ・検食の実施 ・情報の提供 ・回収 ・廃棄 ・運搬 ・販売 ・教育訓練
 第2号に掲げる事項に関する同項の厚生労働省令で定める基準は、次の事項に関するものとする。
 ・危害要因の分析 ・重要管理点の決定 ・管理基準の設定 ・モニタリング方法の設定 ・改善措置の設定 ・検証方法の設定 ・記録の作成
 第2号の政令で定める営業者にあっては、改正法による改正後の法第50条の2第1項第2号に掲げる事項に関する同項の厚生労働省令で定める基準は、ロの基準を簡略化したものとする。
 法第50条の2第2項の規定に基づき、営業者は衛生管理計画及び必要に応じて手順書を作成しなくてはならないこととする。
 法第50条の2第1項第2号の政令で定める営業者のうち、小規模な事業者等として厚生労働省令で定めるものは次のとおりとする。
・飲食店営業、喫茶店営業及び調理機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業者等が規定されている。
・その他、と畜場法施行規則及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律施行規則の改正案が示されている。
・公布日:2019(令和元)年9月(予定)。施行期日:2020(令和2)年6月1日(予定)。

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190147&Mode=0

10 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会資料

 2019(令和元)7月29日開催された標記部会において次の資料が公表された。

・既存添加物の安全性評価について
「基原、製法、本質からみて、現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないもの」に分類された109品目のうち、海外での評価結果が得られた38品目について、その安全性の評価を行ったため、その結果を報告する。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000532674.pdf

・平成 30 年度 マーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査 の結果について、次の表の添加物ついて加工食品群による摂取量調査を実施した。
保存料安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸
着色料ノルビキシン及びビキシン、食用タール色素(12品目)
甘味料アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア抽出物6
製造用剤プロピレングリコール
結着剤オルトリン酸、縮合リン酸

 その結果、摂取量は、ADIに対して0から16%の範囲であった。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000532679.pdf

・平成 30 年度 清涼飲料水中の安息香酸の摂取量調査の結果について
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000532680.pdf

11 今日の食品関連課題に対する欧州の消費者の意識レベルの最新の調査結果を発表

 国立医薬品食品衛生研究所安全情報部の食品安全情報(微生物)No.15 / 2019(2019.07.24)に標記調査結果が登載されている。その主な内容は、次の通り。

 欧州食品安全機関(EFSA)は、欧州連合(EU)域内での住民意識調査として行われるユーロバロメーター(Eurobarometer)を新たに実施し、その結果を初の世界食品安全デー(2019年6月7日)に発表した。

・欧州の消費者が食品を購入する際に最も重要と考える要因は、原産地(53%)、価格(51%)、安全性(50%)および味(49%)の順であった。

・EU加盟20数カ国において最も頻繁に挙げられた懸念事項は、食肉中に残留する抗生物質・ホルモン剤・ステロイド剤(44%)、食品中の残留農薬(39%)、魚・肉・乳製品中の環境汚染物質(37%)、および食品・飲料に使用される着色剤・保存料・香料などの添加物(36%)であった。

・食品関連リスクの情報源として信頼度が最も高かったのは、科学者(82%)および消費者団体(79%)で、次いで農家(69%)、国の機関(60%)、EUの機関(58%)、NGO(56%)およびジャーナリスト(50%)の順であった。消費者の信頼度が低かったのは、スーパーマーケット/レストラン(43%)、食品業界(36%)、および有名人/ブロガー/インフルエンサー(19%)であった。

http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2019/foodinfo201915m.pdf