「食品衛生行政」国の動き 令和元年9月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱い等について

 2019(令和元)年9月13日に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会において、標記について報告され、パブリックコメント後の「ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領(案)」が示された。その主な内容は次の通り。

 ゲノム編集技術とは、特定の機能を付与することを目的として、染色体上の特定の塩基配列を認識する酵素を用いてその塩基配列上の特定の部位を改変する技術と定義する。なお、最終的に、外来の遺伝子及びその一部を含む場合は組換えDNA技術に該当するものとする。
〇届出の対象となるゲノム編集技術応用食品
ゲノム編集技術応用食品の中で、その食品が、
・ゲノム編集技術によって得られた生物の全部若しくは一部である場合
・ゲノム編集技術によって得られた微生物を利用して製造された物である場合
であって、その生物又は微生物の遺伝子の状況が外来の遺伝子及びその一部が残存しないことに加えて、特定の塩基配列を認識する酵素の切断等に伴う塩基の欠失、数塩基の置換、挿入、さらに結果として1~数塩基の変異が挿入される結果となるものを届出の対象とする(法令に基づく届出義務ではない)。
したがって、届出されたゲノム編集技術応用食品を利用して製造加工された食品については、届出は要しない。
また、微生物由来のゲノム編集技術応用添加物の場合も規定されている。

〇届出の方法等
・当該添加物がゲノム編集技術により得られた微生物を利用して製造された、ゲノム編集技術応用食品及び添加物については、その開発者、その代理人その他適切な資料を提出することができる者が、原則として上市前に一定の情報を届け出るものとし、届出がされた内容の一部を厚生労働省は公表するものとする。

・ゲノム編集技術応用食品等については、当該食品等が届出又は安全性審査のいずれかの対象に該当するか否かを確認するため、届出等に先立ち、開発者等は厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課新開発食品保健対策室に、事前相談を申し込むこと。

・事前相談において、届出に該当すると確認されたゲノム編集技術応用食品等については、開発者等は上市する前に、必要な添付資料とともに厚生労働省に届出を行うこと。

・厚生労働省は届出を受けた後、厚生労働省ホームページに掲載、公表する。

https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000546889.pdf

2 酒精飲料中のメタノールの規制値について

 2019(令和元)年9月13日に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会において標記規制値の見直しが提案された。「酒精飲料中のメタノールの取扱いについて」として提出され、今後、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼し、評価結果を受けた後、改正のための所要の手続を進めることとしている。その主な内容は次の通り。

 酒精飲料(酒精分1容量パーセント以上を含有する飲料をいう。)中のメタノールについては、昭和29 年7月15 日付け衛食第182 号「有害飲食物等取締令の廃止について」及び昭和60 年1月31 日付け衛検第42 号「酒精飲料中のメタノール含有量について」により取り扱っているところであり、1mg/1cm3 以上のメタノールを検出した直接飲用に供することを目的とした酒精飲料は、食品衛生法第6条第2号違反として措置している。
 メタノールは果実等を原料とする酒精飲料に含まれるが、一部の酒精飲料については主に原料に由来するメタノールのため我が国の規制値を超えることが避けられず日本国内で流通できない実態があること、また、我が国の規制値が諸外国と比較して低い傾向にあることから見直しに係る要請があった。特に一部のメキシコ産テキーラについて前述の実態があることを踏まえて要請されたため、厚生労働省においてメキシコにおける規制値と同程度の1.2mg/ml に変更することについて検討を開始した。

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000547053.pdf

3 「アーモンド」を特定原材料に準ずるものに追加

 2019(令和元)年9月19日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛「食品表示基準について」の一部改正について通知した。これは、平成30年度「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」の内容を踏まえ、「アーモンド」を特定原材料に準ずるものに追加したもので、そのほか、食品表示基準の解釈を明確化すべきと判断した事項について、別紙新旧対照表のとおり「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)」を一部改正したものである。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190919_0004.pdf

新旧対照表
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190919_0005.pdf

4 ゲノム編集技術応用食品等の食品衛生上の取扱いについて

 2019(令和元)年9月19日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。同時に医薬・生活衛生局食品基準審査課長名をもって各検疫所長あてゲノム編集技術応用食品等の取扱いに関する留意事項について通知を出した。その主な内容は次の通り。

 ゲノム編集技術を利用して得られた食品及び添加物(以下「ゲノム編集技術応用食品等」という。)の食品衛生上の取扱いについて、別添のとおりゲノム編集技術応用食品等の食品衛生上の取扱要領(9月13日開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会において報告されたもの)を決定したことから、今後は同要領に従い取り扱うよう取り計られたい。
 なお、輸入届出時又は輸入相談時において、ゲノム編集技術応用食品等であることが確認され、別添のゲノム編集技術応用食品等の食品衛生上の取扱要領に示す事前相談手続を経ていないことが判明した場合は、輸入者等に対して、本取扱要領を周知するとともに厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課新開発食品保健対策室に事前相談を行うよう指導されたい。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000549471.pdf

ゲノム編集技術応用食品等の取扱いに関する留意事項について
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000549474.pdf

なお、同日、消費者庁はゲノム編集技術応用食品の表示について公表し、現段階では食品表示基準の表示の対象外としている。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/genome/pdf/genome_190919_0001.pdf

ゲノム編集技術応用食品に係るQ&A
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_act_190919_0011.pdf

5 「食品ロスの削減の推進に関する法律」の施行及び2019年10月の食品ロス削減月間について

 2019(令和元)年9月24日、消費者庁は、2019(令和元)年5月31日に公布された「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称 食品ロス削減推進法)が、10月1日から施行され、法律が施行される10月が「食品ロス削減月間」、10月30日が「食品ロス削減の日」であることを公表した(法第9条)。
 また、消費者庁は、農林水産省、環境省と共に、食品ロスの削減に向けた取組の普及に取り組む旨公表。

https://www.caa.go.jp/notice/entry/016611/

6 「食品衛生法第58条第1項に規定する食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合等を定める命令案」に関する御意見の募集について

 2019(令和元)年9月30日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課は標記募集を公表した。締め切りは10月29日。その主な内容は次の通り。

〇 改正法による改正後の法第58条(食品リコール情報の報告制度)第1項の規定による食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合は、営業者が製造等した食品等について、当該営業者が回収に着手する時点において次に掲げる状況のいずれかに該当する場合とする。
①当該食品等が不特定又は多数の者に対して販売されたものではないなど、容易に回収できることが明らかな場合
②当該食品等を消費者が飲食の用に供しないことが明らかな場合

〇 営業者が、食品等を回収する場合は、回収に着手した後遅滞なく、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
①営業者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)
②営業者が回収の事務を他の者に指示又は委託した場合は当該者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)
③当該食品等の商品名及び一般的な名称、食品等に関する表示の内容その他の当該食品等を特定するために必要な事項
④当該食品等が改正法による改正後の法第58条第1項各号のいずれかに該当すると判断した理由


https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190216&Mode=0

概要
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000192717