「食品衛生行政」国の動き 令和元年12月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 ポジティブリスト制度の適用について

 2019(令和元)年12月23日開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会器具・容器包装部会において標記が検討された。主なものは、ポジティブリスト(告示)の規格が未整備の物質の使用を、施行日以降も一定期間認める猶予期間(5年程度を想定)を設定する必要があるというもので、その概要は次の通り。

○ 器具・容器包装のポジティブリスト制度は、令和2年6月1日から施行される。
○ 器具・容器包装ポジティブリスト制度の施行に向けたパブリックコメント等で、猶予期間の設定の要望が寄せられている。
 現時点で事業者間の確認や調整が完了せず制度施行後に物質の追加収載の手続を行うための期間が必要であること、及び、現在使用している原材料の切替を余儀なくされている事業者が、製品設計、原材料調達、製品試験、顧客への周知等を行う期間が必要であることを考慮し、ポジティブリスト(告示)の規格が未整備の物質の使用を、施行日以降も一定期間認める猶予期間を設定する必要があるというもの。
○ さらに、施行前の告示日から施行日の間にも新たな原材料(ポジティブリスト非収載物質)を使用する器具・容器包装が流通することが避けられない実態や、食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会における議論も踏まえ、このような一定期間(5年程度を想定)の経過措置を検討することとする。(資料1)
○ ポジティブリストに収載するために必要な情報が現時点で確認できていないものについては、確認作業を継続している物質(「継続確認既存物質リスト」)として、厚生労働省のホームページに別途掲載する予定である。(資料2-1)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08595.html

2 野生鳥獣肉による食中毒防止の徹底について

 2019(令和元)年12月20日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。これは、11月10日札幌市内の飲食店(イタリア料理店)において、加熱不十分な「クマ肉のロースト赤ワインソース(推定)」を原因食品とする6名の旋毛虫(トリヒナ)食中毒事案が発生したことに伴うもので、その主な内容は次の通り。

 近年は、本事案以外にも、クマ肉を原因食品(推定を含む。)とする旋毛虫食中毒事案の発生が続いているところ(別添2)ですので、改めて、クマ肉のロースト料理等野生鳥獣肉の調理に際しては、中心部の温度が摂氏75度で1分間以上又はこれと同等以上の効力を有する方法により、十分加熱して喫食又は提供をするよう、継続的に、消費者に対する注意喚起及び関係事業者に対する継続的な監視指導をよろしくお願いします。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000579314.pdf

3 平成31年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果(中間報告)の公表

 2019(令和元)年12月25日、厚生労働省医薬・生活衛生局 食品監視安全課 輸入食品安全対策室は標記中間報告を公表したこれは、平成31年度輸入食品監視指導計画に基づく、平成31年4月から令和元年9月までの監視指導結果(中間報告)を取りまとめたもので、その主な内容は次の通り。
(注)【 】内は昨年度同期間の数値

 平成31 年4月から令和元年9月までの輸入届出の件数は、1,298,431 件【1,228,569 件】、重量は12,488 千トン【12,197 千トン】であった。
 これに対し、112,319 件【103,262 件】(モニタリング検査30,985 件【30,496件】、検査命令34,558 件【28,842 件】、自主検査48,681 件【45,769 件】等の合計から重複を除いた数値)の検査を実施し、407 件【385 件】で法違反が確認され、積戻しや廃棄等の措置を講じた。
 条文別の違反件数は、法第11 条(食品の規格(微生物、残留農薬、残留動物用医薬品)、添加物の使用基準等)違反が248 件と最も多く、次いで法第6条(アフラトキシン、シアン化合物等の有毒・有害物質の付着等)違反が117 件、法第10 条(指定外添加物の使用)違反が38 件、法第18 条(器具又は容器包装の規格)違反が17 件、法第62 条(おもちゃの規格)違反が2件、法第9条(食肉の衛生証明書の添付)違反が1件であった。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08636.html

4 食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政省令の制定について

 2019(令和元)年12月27日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、同日「食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令」が公布されたこと及び10月9日公布された「食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」について、その主な内容及び留意すべき事項で、その主な点は次の通り。

第1 営業許可に関する事項
1 営業許可業種の概要等
 営業許可の見直しに当たっては、食中毒のリスクの高さ、法第13条第1項に基づく規格基準の設定の有無及び過去の食品事故・食中毒の発生状況を踏まえて食品衛生上の配慮を特に要するものを営業許可業種として位置付けたものである。業種の主なものは次の通り。

 第6号 集乳業
 生乳を集荷し、これを保存する営業をいうこと。「生乳」とは、搾乳後に殺菌等の処理が行われていない動物の乳を指し、旧第9号において規定されていた生牛乳又は生山羊乳よりも広い対象であること。また、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26 年厚生省令第52号。以下「乳等省令」という。)第2条第2項にいう「生乳」とは、「搾取したままの牛の乳」を指しており、本号の定義と異なることに留意されたいこと。

 第7号 乳処理業
 生乳を処理し、若しくは飲用に供される乳の製造(小分けを含む。)をする営業又は生乳を処理し、若しくは飲用に供される乳の製造をし、併せて乳製品(飲料に限る。)若しくは清涼飲料水の製造をする営業をいうこと。なお、「生乳」の意味については、第6号と同じであること

 第13号 乳製品製造業
 本号の許可の対象となる乳製品は、乳等省令第2条第12項に規定する乳製品(同条第20 項に規定するアイスクリーム類を除く。)及び同条第40項に規定する乳酸菌飲料のうち、無脂肪固形分3.0%未満を含むものとすること(施行規則第66 条の9関係)。
 施行規則第66条の9に規定する食品以外の乳・乳製品を原材料とした食品(チーズや発酵乳を一定程度含む菓子やそうざい製品、ソフトクリームの原材料となるいわゆるソフトクリームミックス等)を製造する際は、乳製品製造業の許可を取得した施設のほか、食品の特性に応じ、菓子製造業、アイスクリーム製造業、そうざい製造業等の許可を取得した施設で製造しても差し支えないこと。

 第14号 清涼飲料水製造業
 旧第19号の営業ではジュース、コーヒー等の製造ができることとしていたが、本号では、旧第20号に規定されていた乳酸菌飲料製造業(生乳を使用しないものに限る。)を統合し、生乳を使用しない乳酸菌飲料の製造(小分けを含む。)を可能とするとともに、生乳を使用しない乳飲料も製造することができるものとしたこと。

 第15号 食肉製品製造業
 旧第13号で製造可能とされていた食肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するもの)に加え、これらと併せて食肉又は食肉製品を使用したそうざいについても、本号の営業で製造することができるものとしたこと。食肉製品製造のための食肉の細切については、食肉処理業の許可を必要としないこと。

2 営業許可の対象業種の施設基準
 条例制定に当たり行政手続法(平成5年法律第88号)に基づく意見公募手続(パブリックコメント)については、同法第3条第3項において、地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、パブリックコメントに係る規定は適用しない旨が規定されているが、施設基準の設定が営業者に与える影響等を考慮し、施設基準に係る条例の制定に先立ち、同法第46条に基づく行政手続条例等に基づきパブリックコメントを実施するなど、関係者の意見聴取を行うよう努めること。

3 営業許可の申請
 HACCPに沿った衛生管理の取組の種別の記載については、第3号施行日(令和3年6月1日)以降に初めて行われる営業許可の申請の際に求めるものであること。なお、複合型そうざい製造業及び複合型冷凍食品製造業の許可の申請に際しては、HACCPに基づく衛生管理が前提であることを申請者に十分に説明するとともに、許可後、可能な限り速やかに施設に立ち入り、衛生管理の状況について確認されたいこと(同条第6号関係)。

第2 営業届出に関する事項
1 営業届出制度の概要等
 法第68条第3項に規定する営業以外の場合で学校、病院その他の施設において継続的に不特定又は多数の者に食品を供与する集団給食施設の設置者又は管理者については、飲食店営業の営業者と同じくHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行うものであることから、営業届出の対象とすること。

第3 営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に係る経過措置
 改正法の第3号施行日の際現に営業届出の対象となる営業を営んでいる者は、第3号施行日から起算して6月を経過する日までに、都道府県知事に届け出なければならないこと(改正法附則第8条)。届出に際しては、営業許可の申請と同様に、食品衛生申請等システム(電子申請システム)を積極的に活用されたいこと。

第4 改正法の施行日
 第3号施行日は、令和3年6月1日とすること。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000582237.pdf

省令
https://kanpou.npb.go.jp/20191227/20191227g00195/20191227g001950058f.html

5 食品衛生法第五十八条第一項に規定する食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合等を定める命令の制定について

 2019(令和元)年12月27日、消費者庁と厚生労働省は消費者庁次長及び大臣官房生活衛生・食品安全審議官の連名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、同日「食品衛生法第五十八条第一項に規定する食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合等を定める命令(令和元年内閣府令・厚生労働省令第11号。以下「共同命令」という。)が公布され、その主な内容及び留意すべき事項を示したものでその主な点は次の通り。

1 食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合について
法令の趣旨及び内容等
 法第58条第1項に規定する食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合として厚生労働省令・内閣府令で定めるときは、次のいずれかに該当する場合としたこと(法第58条第1項、共同命令第1条関係)。
(1) 当該食品等が不特定かつ多数の者に対して販売されたものでなく、容易に回収できることが明らかな場合(共同命令第1条第1号関係)
(2) 当該食品等を消費者が飲食の用に供しないことが明らかな場合(共同命令第1条第2号関係)

運用上の留意点
(1) 共同命令第1条第1号に関して想定される具体的な事例は以下のようなものであること。
 (i) 地域の催事で販売された焼きそばについて、催事場内での告知等で容易に回収が可能な場合
 (ⅱ) 部外者が利用しない企業内の売店で販売された弁当であって、館内放送等で容易に回収が可能な場合
 (ⅲ) 通信販売により会員のみに限定販売されている食品であって、顧客に対して個別に連絡することで容易に回収が可能な場合
(2) 共同命令第1条第2号に関して想定される具体的な事例は以下のようなものであること。
 (i) 食品等が営業者間の取引にとどまっており、卸売業者の倉庫に保管されている場合
 (ⅱ) 食品等が消費期限又は賞味期限を超過している場合
消費期限又は賞味期限の到来後の食品に関しては、法第58条の対象とは取り扱わず、任意の届出として取り扱うよう留意すること。

3 都道府県知事が行う報告について
運用上の留意点
 国において、食品等の回収の届出に関する情報を公表することとしているが、消費者に対し分かりやすく健康への危険の程度を伝えるため、程度の分類を行い報告すること。分類に当たっては、次の3分類とし、直ちに分類が判断できない場合はCLASSⅡに分類し、その後の情報を踏まえ適切な分類に変更すること。

CLASSⅠ:喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が高い場合
(例)
・腸管出血性大腸菌に汚染された生食用野菜
・ナチュラルチーズなど加熱せずに喫食する食品
・ボツリヌス毒素に汚染された容器包装詰食品
・アフラトキシン等発がん性物質に汚染された食品
・シール不良等により、腐敗、変敗した食品
・有毒魚(魚種不明フグ、シガテラ魚等)
・有毒植物(スイセン、毒キノコ等)
・硬質異物が混入した食品(ガラス片、プラスチック等)

CLASSⅡ:喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が低い場合
(例)
・一般細菌数や大腸菌群などの成分規格不適合の食品

CLASSⅢ:喫食により健康被害の可能性が、ほとんど無い場合
(例)
・添加物の使用基準違反食品
・残留基準に違反する野菜や果物のうち、その摂取量が急性参照用量を超えないもの

 なお、法第59条第1項に基づき回収を命じた場合であっても、自主回収情報と同様に国において公表することに留意すること。
 また、食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)の趣旨に鑑み、食品衛生上の危害の発生のおそれがなく、まだ食べることができる食品がむやみに回収され無駄に廃棄されるなど、本制度が過剰な自主回収を誘発することのないように留意すること。

第3 施行期日等
1 第3号施行日は令和3年6月1日であること。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000582013.pdf

命令
https://kanpou.npb.go.jp/20191227/20191227g00195/20191227g001950025f.html