「食品衛生行政」国の動き 2020(令和2)年3月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 食品等取扱い事業者における新型コロナウイルス感染症への対応について(情報提供)

 令和2年3月3日、厚生労働省は健康局結核感染症課及び医薬・生活衛生局食品監視安全課の連名で各都道府県等衛生主管部(局)宛標記事務連絡を出した。その主な内容は、次の通り。

 食品等取扱い事業者における新型コロナウイルス感染症への対応に関して、農林水産省は食料産業局長、生産局長、農村振興局長、政策統括官、林野庁長官及び水産庁長官の連名で、各関係団体等の長宛て通知が発出された。
 食品等取扱い施設の従業員が新型コロナウイルス感染症に感染した場合の施設の営業継続等については、各事業者が事案に応じて判断することとなるが、事業者から貴管内の保健所等に相談があった際は、当該従業員の感染の状況や施設の衛生管理の状況等を踏まえて御助言・御指導願いたい。

 農林水産省の通知の主な内容は、次の通り

 新型コロナウイルス感染症については、厚生労働省から「食品等取扱い事業者の方へ」として、ホームページに食品に関するQ&A が掲載されています。
 これによれば、現在、食品を介して新型コロナウイルス感染症に感染したとされる事例は報告されておらず、また、製造、流通、調理、販売等の各段階で、食品取扱者の体調管理やこまめな手洗い等の一般的な衛生管理が実施されていれば、食品を介した感染を心配する必要はないとされています。
 このため、農林水産物を始めとする食品を取り扱う事業所等におかれましては、本内容を御了知の上、引き続き、一般衛生管理等を十分に行っていただくとともに、個別の事案ごとに事業継続等について判断を行い、判断に迷う場合には保健所に相談するなど、適切な対処を行っていただきますようお願いいたします。併せて、取引先に不当な取引条件を課すことのないようお願いいたします。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000603093.pdf

2 新型コロナウイルス感染症への対応として子ども食堂の運営上留意すべき事項について(情報提供)

 令和2年3月3日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課名をもって各都道府県等衛生主管部( 局)宛標記事務連絡を出した。その主な内容は、次の通り。

 標記について、別添のとおり、当省子ども家庭局、社会・援護局、社会・援護局障害保健福祉部及び老健局から、各都道府県、指定都市及び中核市宛て事務連絡が発出されましたので、業務の御参考まで情報提供します。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000603094.pdf

3 「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」(平成15 年厚生労働省告示第301 号)の改正について

 令和2年3月9日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、「食品衛生法等の一部を改正する法律」(平成30 年法律第46 号。)のうち、令和2年6月1日に施行を予定している規定に対応することを目的とした、「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針の一部を改正する件」(令和2年消費者庁・厚生労働省告示第1号)が本日告示されたことに伴うもので、その主な内容は次の通り。

 「第一 監視指導の実施に関する基本的な方向」中の「一 行政、食品関連事業者及び消費者の役割分担」に、公衆衛生上必要な措置(以下「HACCPに沿った衛生管理」という。)の実施が制度化されたことの意義を追記するとともに、国、食品等事業者及び都道府県等の役割について追記したこと。
 改正法によりHACCPに沿った衛生管理並びに器具及び容器包装の製造者による製造管理基準に沿った衛生管理の実施が制度化されたことから、「第二 監視指導の実施体制等に関する事項」中「一 監視指導の実施体制に関する基本的な事項」にその監視指導の実施体制について追記したこと。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000605728.pdf

4 令和元年度野生鳥獣肉の衛生管理等に関する実態調査の結果について

 令和2年3月9日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。これは、令和元年10月協力をお願いしたものの調査結果を取りまとめたもので、その主な内容は、次の通り。

 野生鳥獣肉の衛生管理に関するガイドラインの策定状況
 地域の実情に応じた独自のガイドラインを策定していると回答した自治体は36 自治体で平成30 年実態調査の結果と比較し、増減はなかった。
 野生鳥獣処理施設数が多い都道府県
 1 北海道 90  2 兵庫県 47  3岐阜県 41  4 宮崎県 38  5 長野県、大分県 32
 取扱動物別の施設数
 シカ専用の処理施設 83
 イノシシ専用の処理施設 144
 シカ及びイノシシ専用の処理施設 304
 シカ・イノシシ以外の野生鳥獣も取扱う処理施設 175
 合計 706

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000605879.pdf

5 令和元年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施結果について

 令和2年3月11日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。これは、「令和元年度食品、添加物等の夏期一斉取締り実施要領」に基づき実施した結果を取りまとめ、厚生労働省ホームページに掲載した旨を知らせたもので調査結果の主なものは次の通り。

 許可を要する営業施設調査(件数)
 監視指導延施設数 346,484 違反発見施設数 10,180 施設基準違反 2,894   
 管理運営基準違反 7,836  製造基準等違反 85
 処分件数
 営業禁止命令 7 営業停止命令 30 物品廃棄命令2
 食肉等の生食用としての提供に関する監視指導結果
 鶏肉を取り扱う施設 立入を行った施設数 50,163
 通知文書、パンフレット等の配布(情報提供)又は通知文書、パンフレット等を用いて指導した施設数 34,307
 生食用又は不十分な加熱での販売・提供について指導した施設数 1,333

https://www.mhlw.go.jp/content/000606869.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000606874.pdf

6 食品産業事業者の従業員に新型コロナウイルス感染者が発生した時の対応及び事業継続に関する基本的なガイドラインについて(情報提供)

 令和2年3月16日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課は各都道府県等衛生主管部(局)宛標記事務連絡を出した。これは、食品製造業、食品流通業、卸売市場及び外食産業の食品を取り扱う事業所の従業員に新型コロナウイルス感染症の感染者が発生した場合の対応について、農林水産省食料産業局長、生産局長、農村振興局長、政策統括官、林野庁長官及び水産庁長官の連名で、各関係団体等の長宛て通知が出されたので業務の参考までとして情報提供したものである。連名通知の主なものは、次の通り。

 本ガイドラインは、新型コロナウイルス感染者の報告が増加していることから、食品製造業、食品流通業(卸売、小売)、外食産業の食品を取り扱う事業所の従業員に新型コロナウイルス感染症の患者が発生した時に、保健所(感染症担当。以下同じ。)と連携し、感染拡大防止を前提として、食料安定供給の観点から、業務継続を図る際の基本的なポイントをまとめたものです。

重要業務の継続
 事業所は、濃厚接触者の出勤停止の措置を講じることにより、通常の業務の継続が困難な場合には、重要業務として優先的に継続させる製品・商品及びサービスや関連する業務を選定し、重要業務を継続するために必要となる人員、物的資源(マスク、手袋、消毒液等)等を把握してください。
(参考)従業員の確保状況による段階別の業務継続体制
 事業所は、従業員の確保状況に応じて、段階別に業務継続体制を決定します。
【第一段階】
(業務の内容)原則通常どおりの業務
(人員体制)早出・残業等で業務対応
【第二段階】
(業務の内容)重要業務の継続を中心とし、その他の業務は縮小・休止
小規模事業所の場合にあっては業務全体の休止も含め判断
(人員体制)早出・残業等での業務対応に加え、他部門からの応援

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000609110.pdf

7 「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」の策定について

 令和2年3月24日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。その内容は、次の通り。

 機能性表示食品に対する食品表示法、不当景品類及び不当表示防止法及び健康増進法に基づく事後的規制(自主規制を含む。)の透明性を確保し、不適切な表示に対する事業者の予見可能性を高めるとともに、事業者による自主点検及び業界団体による自主規制等の取組の円滑化を図ることにより、事業者の健全な広告等の事業活動の推進及び消費者の自主的かつ合理的な商品選択の機会を確保することを目的として、別添のとおり、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」を策定し、令和2年4月1日から運用を開始するので、関係者に対する周知をお願いする。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_200324_0002.pdf

指針
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_200324_0003.pdf

8 食品衛生法等の一部を改正する法律による改正後の食品衛生法第8条の施行に伴う関係法令等の整備について

 令和2年3月27日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、食品衛生法等の一部を改正する法律による改正後の食品衛生法第8条の施行に伴い、食品衛生法施行規則の一部を改正する省令、食品衛生法第8条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する指定成分等(令和2年厚生労働省告示)、食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件及び指定成分等含有食品の製造又は加工の基準(令和2年厚生労働省告示)が同日公布されたことに伴うもので、その主な内容は、次の通り。

 改正後の法第8条第1項に規定する食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物であって、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定したもの(以下「指定成分等」という。)として、コレウス・フォルスコリー、ドオウレン、プエラリア・ミリフィカ及びブラックコホシュを定めたこと。
 食品、添加物等の規格基準の第1 食品の部B 食品一般の製造、加工及び調理基準の項に、指定成分等含有食品を製造し、又は加工する場合は、厚生労働大臣の定める基準に適合する方法で行わなければならない旨規定したこと。
 製造基準告示により、3の厚生労働大臣が定める基準として、指定成分等含有食品を製造し、又は加工するときの基準を定めたこと。
 施行日又は適用期日、省令及び告示とも令和2年6月1日とし、告示については令和2年5月31 日までに製造され、又は加工された食品については、なお従前の例によることができること。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000614632.pdf

 なお、同日、食品表示法第六条第三項の内閣府令・財務省令で定める表示事項及び遵守事項等を定める命令の一部を改正する命令が公布され、指定成分等含有食品(食品衛生法第八条第一項に規定する指定成分等含有食品をいう。)に関する事項が加えられた。

https://kanpou.npb.go.jp/20200327/20200327g00060/20200327g000600032f.html

9 令和2年度輸入食品監視指導計画を策定

 令和2年3月30日、厚生労働省は標記計画を公表した。これは、食品衛生法第23条に基づき、日本に輸入される食品、添加物、器具、容器包装及びおもちゃの安全性を確保するため、輸出国における生産の段階から輸入後の国内流通までの各段階において厚生労働本省及び検疫所が実施する措置等について、毎年度定めるものである。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10479.html

計画
https://www.mhlw.go.jp/content/000615310.pdf

10 食品衛生法施行規則の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について

 令和2年3月31日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、改正する省令及び改正する件が同日公布され、食品衛生法第10条の規定に基づき、新たにプシコースエピメラーゼ(酵素)が添加物として省令別表第1に追加され。告示にプシコースエピメラーゼの成分規格を設定したことに伴うものである。

https://www.mhlw.go.jp/content/000616231.pdf

11 食品添加物表示制度に関する検討会報告書の公表について

 令和2年3月31日、消費者庁は標記報告書を公表した。これは平成31年4月から令和2年2月までの全9回にわたり、「食品添加物表示制度に関する検討会」を開催し、消費者の食品添加物の表示の利活用の実態や、海外における食品添加物の表示制度等も踏まえ、食品添加物表示制度の在り方について議論を行い、同日、「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」が取りまとめられたことから公表したもので、報告書の主な点は次の通り。

 報告書は、食品添加物表示制度の基本的な考え方 、食品添加物表示制度をめぐる情勢 、今後の食品添加物表示制度の方向性等にまとめられ、今後の方向性として次の記載がある。

(1)一括名表示、簡略名・類別名表示及び用途名表示の在り方
 一括名表示、簡略名・類別名の表示については、文字数の大幅な増加による表示可能面積と見やすさ・分かりやすさのバランスを考慮する必要があること、番号に置き換えることが可能なものとそうではないものが存在すること、番号による表示は消費者になじみがないこと、用途名の表示についてはコーデックスの機能分類をそのまま導入して併記すると、我が国の表示制度には存在しないなじみのない分類もあること、複数の機能を持つ添加物の用途名は事業者による差異が生じやすく、消費者が用途について誤認するおそれもあること等から、添加物の規制そのものが異なる中で表示制度だけを変更することは現時点では困難であり、現状維持とすることが適当と考えられる

(2)「無添加」、「不使用」の表示の在り方
 食品表示基準第9条の規定により、消費者を誤認させる表示や、表示すべき事項の内容と矛盾する表示等は禁止されていることから、この禁止事項に当たるか否かのメルクマールとなるガイドラインを新たに策定することを提案する。また、ガイドラインの策定等を通じて、事業者による既存の公正競争規約の改正、業界の新たな公正競争規約の策定が促されることによって、誤認を生じさせるおそれのある「無添加」等の表示が行われなくなることが期待され、ひいては、消費者の添加物に対する意識向上につながることも期待される。

(3)栄養強化目的で使用した食品添加物の表示
 表示を要しないという規定を見直し、原則全ての加工食品に栄養強化目的で使用した食品添加物を表示させる方向で検討することが適当である。
 ただし、その検討に当たっては、現在の表示状況、消費者の意向、事業者への影響について実態調査を実施するとともに、表示の事項間の優先順位、表示可能面積の問題等に関する消費者委員会食品表示部会における「表示の全体像」に関する議論も踏まえ、最終的な結論を得ることが適当であると考えられる。

(4)食品添加物表示の普及、啓発、消費者教育について
 検討会における検討事項は食品添加物の表示に関するものではあるが、食品添加物そのものに関する消費者の理解が進んでいないという状況に鑑み、食品添加物の表示の普及のほか、食品添加物の安全性や食品添加物がどのような食品にどのような目的で使用されるのかといったことも併せて普及、啓発を行うことが、食品表示の理解を深めるために適当であると考えられる。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms101_200331_01.pdf

報告書
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_003/pdf/food_labeling_cms101_200331_01.pdf