「食品衛生行政」国の動き 2020(令和2)年4月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 令和元年度全国生活衛生・食品安全関係主管課長会議資料

 令和2年4月10日、厚生労働省は標記資料を公表した。これは、医薬・生活衛生局食品基準審査課、食品監視安全課等並びに消費者庁の食品表示企画課、表示対策課及び消費者安全課の業務について令和2年度に向け、各業務の従前の経緯、今後の取組及び都道府県等に対する要請として記載されており、各課の資料のほか参考資料もけいさいされている。 食品監視安全課の参考資料に都道府県別食品衛生監視員数一覧があり、平成30年度全国の総数は8,405人、そのうち専任は1,224人となっている。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000204654_00002.html

2 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について

 令和2年4月10日、消費者庁表示対策課長、農林水産省消費・安全局消費者行政・食育課長及び厚生労働省健康局がん・疾病対策課長の連名で各都道府県等食品表示主管部(局)長宛標記通知を出した。これは、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が国内外の食料品のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしつつあることを受け、一般消費者の需要に即した食品の生産体制を確保する観点から、健康被害を防止することが重要なアレルギー表示や消費期限等を除き、食品表示法第4条第1項の規定に基づき定められた食品表示基準の規定を弾力的に運用する旨を通知したものである。
 なお、今回の運用は、食品の生産及び流通の円滑化を図るために講じるものであり、消費者を欺瞞(ぎまん)するような悪質な違反に対しては、これまでどおり厳正な取締りを行うとしている。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms214_200410_1.pdf

3 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた製造所等及び製造所固有記号の表示の運用について

 令和2年4月10日、消費者庁は、食品表示企画課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。これは、同日出された「新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について」に関連するもので、食品表示基準第3条に基づき容器包装に表示される「製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称」(以下「製造所等」という。)については、食品による健康危害が発生した際に、速やかに調査を実施する上で重要な情報であるものの、食品表示基準運用通知の運用期間中においては、製造所等及び製造所固有記号の取扱いの特例として、他の製造所等に食品の製造又は加工を委託する場合など、基準第3条に基づき容器包装に表示された製造所等と実際の製造所等が異なる場合であっても、製造所等の表示の取扱いの特例として、当面の間、別添届出様式を用いて届け出ることにより、実際の製造所等と容器包装に表示された製造所等が異なることとなっても差し支えないこととする等としている。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms204_200410_01.pdf

4 有毒植物による食中毒防止の徹底について

 令和2年4月22日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 例年、特に春先から初夏にかけて、有毒植物の誤食による食中毒が多く発生しています。本年も別添のとおり、スイセン、バイケイソウ等の有毒植物の誤食による食中毒事例(令和2年4月20日現在、事件数5件、患者数13名)が報告されています。
 つきましては、各都道府県等におかれては、厚生労働省で作成したリーフレットや自然毒のリスクプロファイル等を活用するなどにより、食用と確実に判断できない植物については、絶対に「採らない」、「食べない」、「売らない」、「人にあげない」よう注意喚起を行うようお願いします。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000624181.pdf

5 栄養素等表示基準値の改定に関する調査事業報告書

 令和2年4月24日、消費者庁は標記報告者を公表した。その主な内容は次の通り。

 食品表示基準第2条に規定している栄養素等表示基準値は、厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(以下「食事摂取基準」という。)(2015 年版)」に基づき設定している。 厚生労働省は平成31 年3月22 日、食事摂取基準(2020 年版)を公表した。
 このため食事摂取基準(2020 年版)に基づき、栄養素等表示基準値の改定の検討並びに栄養機能食品の1日当たりの摂取目安量に含まれる機能に関する表示を行っている栄養成分の量の下限値及び上限値の一部並びに栄養強調表示の基準値の一部の改定の検討を行った。
 検討を行った結果、栄養素等表示基準値は食事摂取基準(2020 年版)に基づく改定は行わないこととされた。
 また、栄養機能食品に含まれる栄養成分の量の下限値及び上限値並びに栄養強調表示の基準値の改定に関する検討の結果、栄養素等表示基準値の改定は行わないこととされたため、栄養機能食品に含まれる栄養成分量の下限値及び上限値並びに栄養強調表示の基準値の改定についても、行わないこととされた。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2019/pdf/food_labeling_cms206_200424_01.pdf

 また、同日、難消化性糖質及び食物繊維のエネルギー換算係数の見直し等に関する調査・検証事業報告書も公表している。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2019/pdf/food_labeling_cms206_200424_02-2.pdf

6 食品衛生法等の一部を改正する法律による改正後の食品衛生法第18条第3項の施行に伴う関係告示の整備について

 令和2年4月28日、厚生労働省は 医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、器具又は容器包装にかかわる改正が令和2年6月1日から施行されることに伴い、「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」及び「食品衛生法第十八条第三項ただし書の規定により人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量を定める件」が同日告示されたため、その趣旨、主な内容及び留意すべき事項を通知したもので、その主な内容は次の通り。

(1)新法第18条第3項の規定に基づき政令で定める材質(合成樹脂をいう。)の原材料であって、これに含まれる物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を除く。)ごとに定められた器具若しくは容器包装に含有されることが許容される量又は器具若しくは容器包装から溶出し、若しくは浸出して食品に混和することが許容される量について、第18条第1項の規格に定められたものでなければならないとされ(ポジティブリスト制度)、これを踏まえ、合成樹脂製の器具又は容器包装等の規格を食品、添加物等の規格基準(以下「規格基準告示」という.)に規定した。

(2)第18条第3項ただし書の規定により、合成樹脂が食品に接触する部分に使用されず、人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量(以下「おそれのない量」という。)を超えて溶出し、又は浸出して食品に混和しないよう加工されている場合には、規格基準告示に規定されたポジティブリストに収載された物質以外のものも使用可能とされていることから、おそれのない量を食品中濃度として0.01mg/kgと定め、食品擬似溶媒中濃度としては、食品擬似溶媒中濃度として 0.01mg/L と考えて差し支えないものとした。

(3)規格基準告示については、器具又は容包装等の規格として、 食品、添加物等の規格基準第3器具及び容器包装の部A 器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格第8号に新法第18条第3項に規定される「政令で定める材質の原材料であって、これに含まれる物質」に関する規格を定めたこと。

イ 個別の物質の規格については、別表第1に規定したこと。
ロ 別表第1に掲げる原材料であって、これに含まれる物質についての規定を定めたこと。

なお、官報掲載を省略した規格基準告示の改正部分については、以下の厚生労働省のホームページで閲覧が可能である。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kigu/index.html(令和2年4月28日現在)

(4)適用期日については、令和2年6月1日から適用されるものであること。ただし、規格基準告示については、令和2年6月1日より前に販売され、販売の用に供するために製造され、若しくは輸入され、又は営業上使用されている器具又は容器包装と同様のもの(以下「経過措置対象のもの」という。)が同日から起算して5年を経過する日(令和7年5月31日)までの間に販売の用に供するために製造され、若しくは輸入される場合、それに使用される原材料であって合成樹脂のものについては、別表第1に掲げられているものとみなすことができる。なお、本経過措置中の「同様のもの」とは、令和2年6月1日より前に販売され、販売の用に供するために製造され、若しくは輸入され、又は営業上使用されている器具又は容器包装に使用されていた物質(合成樹脂の原材料に限る。)をその使用されていた範囲内で使用して製造又は輸入された器具又は容器包装をいうこと。そのため、これまで使用経験のない合成樹脂区分の基ポリマーに対して添加剤を使用する場合、添加剤をこれまで使用経験のない量に増量して使用する場合、又は製造記録や輸入実績等によりこれまで使用されていた範囲内であることが説明できない場合等は、本経過措置の対象とならないこと。

(5)規格基準告示の経過措置期間中に、関係事業者は経過措置対象のものとして取り扱う器具又は容器包装の経過措置終了後の規格基準告示への適合性を確認するとともに、別表第1への追加及び同表の修正が必要な場合は、必要な情報を厚生労働省へ提出する必要があること。また、原材料の変更が必要な場合にはその変更を適切に行う必要があること。なお、提出方法等については、別途厚生労働省のホームページで示すこととする。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000626049.pdf