「食品衛生行政」国の動き 2020(令和2)年7月

(株)中部衛生検査センター 学術顧問
森田邦雄

1 食品衛生法等の一部を改正する法律による改正後の食品衛生法第18条第3項の施行に伴う関係告示の整備について

 令和2年7月2日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品基準審査課長名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。これは,食品、添加物等の規格基準の第3器具及び容器包装の部A器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格の項に規定した別表第1に係る令和2年5月1日付け大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知の考え方を次の通り示したものである。
 審議官通知で示された第4運用上留意すべき事項1規格基準告示関係イ(2)については以下のとおり整理をしたこと。

 1 別表第1第1表(1)に規定される基ポリマー同士が化学的に反応して新たなポリマーが生成される場合は、当該各基ポリマーとは別に、生成されたポリマーを新たに規定する必要があること。
 2 同表(1)に規定される基ポリマー及び同表(2)に規定される基ポリマーが化学的に反応して新たなポリマーが生成される場合は、当該各基ポリマーとは別に、生成されたポリマーを新たに規定する必要があること。
 3 同表(2)に関しては、製造の実態を踏まえて整理しているため、同表(2)に規定される基ポリマー同士が化学的に反応し、当該各基ポリマーとは別に、生成されたポリマーを新たに規定する必要はないこと。ただし、塗膜以外の用途で新たに生成された基ポリマーを使用する場合はこの限りではない。

https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000645827.pdf

2 輸入生食用かきの取扱いについて(一部改正)

 令和2年7月2日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 輸入生食用かきについては食品衛生法第11条第2項の規定に基づき本年6月1日から輸出国の政府機関が発行する衛生証明書がなければ輸入ができなくなったことに伴い、令和2年5月15 日付け通知「輸入生食用かきの取扱いについて」により取り扱っているところである。
 米国については、輸入可能な州としてワシントン州のみが認められていたが今回の改正によりオレゴン州、コネチカット州及びニューヨーク州が追加された。

https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000645726.pdf

3 令和2年7月3日からの大雨を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について

 令和2年7月7日、消費者庁表示対策課長、農林水産省消費・安全局消費者行政・食育課長及び厚生労働省健康局がん・疾病対策課長の連名で各都道府県等食品表示主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 令和2年7月3日からの大雨による被害により、被災地への食料の円滑な供給が重要な課題となっていることを踏まえ、引き続き適正な食品表示がなされていることが重要ではあるものの、食品の譲渡・販売の態様等を総合的に勘案し、食品の安全性に係る情報伝達について十分な配慮がなされていると判断されるとともに、消費者の誤認を招くような表示をしていない場合には、令和2年7月3日からの大雨に係る災害救助法の適用を受けた被災地において、譲渡又は販売される食品については、必ずしも食品表示基準に基づく義務表示事項の全てが表示されていなくとも、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととしますので、適切な対応をお願いします。
 なお、アレルギー表示及び消費期限については、被災者の方々の食事による健康被害を防止することが何より重要であるため、従来どおり個々の容器包装に表示する必要があることから、これまでどおり、取締りの対象となりますので、適切な対応をお願いします。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms214_200707_01.pdf

4 令和2年7月3日からの大雨を受けた製造所等及び製造所固有記号の表示の運用について

 令和2年7月7日、消費者庁は食品表示企画課長名をもって各都道府県等食品表示主管部(局)長宛標記通知を出した。その主な内容は次の通り。

 「令和2年7月3日からの大雨を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の運用について」を受け、基準第3条に基づき容器包装に表示される「製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称」(以下「製造所等」という。)及び製造所固有記号については、食品による健康危害が発生した際に、速やかに調査を実施する上で重要な情報であるものの、食品表示基準運用通知の運用期間中においては、製造所等及び製造所固有記号の取扱いの特例として、下記のとおりとするので、適切な対応方よろしくお願いします。
 他の製造所又は加工所に食品の製造又は加工を委託する場合など、基準第3条に基づき容器包装に表示された製造所等と実際の製造所等が異なる場合であっても、製造所等の表示の取扱いの特例として、当面の間、別添届出様式(様式第1号)を用いて届け出ることにより、実際の製造所等と容器包装に表示された製造所等が異なることとなっても差し支えないこととします。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms101_200707_01.pdf

5 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件等について

 令和2年7月14日、厚生労働省は大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事宛標記通知を出した。これは、同日告示された農薬の残留基準値改正内容の運用等を示すとともに「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件及び食品衛生法第11条第3項の規定より人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質の一部を改正する件について」(平成31年1月22日付け生食発0122第1号)の記載内容の一部を改正したもので、その主な内容は次の通り。

 「残留基準値欄が空欄になっている食品及び表中にない食品については、一律基準(0.01ppm)が適用される。ただし、残留基準値が定められていない農産物に含まれるジベレリン(注 植物ホルモン)については、規格基準告示第1 食品の部A 食品一般の成分規格の8項に規定する「自然に食品に含まれる物質と同一であるとき」に該当するため、同8項に規定する「当該食品において当該物質が含まれる量は、当該食品に当該物質が通常含まれる量を超えてはならない」が適用される。
 天然由来のジベレリンは従来0.2ppm以下含有するとしていたものを今回0.3ppm以下に改める。
 残留基準値が定められていない農産物については、食品中のジベレリンの残留濃度が0.3ppmを超えた場合以外は、食品衛生法に基づく行政処分又は行政指導を行う必要はない。

https://www.mhlw.go.jp/content/000648769.pdf

6 「食品表示基準について」の一部改正について

 令和2年7月16日、消費者庁は次長名をもって各都道府県知事等宛標記通知を出した。これは、同日、食品表示基準及び食品表示法第六条第八項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令の一部を改正する内閣府令(令和2年内閣府令第52号)が公布され、その内容と改正に伴う。食品表示基準(平成27年内閣府令第 10 号)の解釈を明確にすべきと判断した事項等について、別紙新旧対照表のとおり「食品表示基準について(平成 27 年3月 30 日消食表第 139 号)」を一部改正したもので、その主な改正は次の通り。

 食品表示基準第3条の添加物について別表第6の用途の表示が次の通り改正された。人工甘味料又は合成甘味料が甘味料に、合成着色料が着色料に、合成保存料が保存料に

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200716_05.pdf

改正食品表示基準
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200716_24.pdf

食品表示基準について(新旧対照表)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200716_06.pdf

7 乳及び乳製品の衛生証明書の取扱いについて(一部改正)

 令和2年7月17日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。これは、同年5月12日付で食品監視安全課長名をもって各検疫所長宛出された通知について、衛生証明書の受入れ国に次の国を追加したものである。

ウルグアイ
https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000650158.pdf

8 「高度な機能」の条件を満たす自動販売機の機種リスト について

 令和2年7月22日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県衛等衛生主管部 (局)長宛標記通知を出した。これは、平成30年の食品衛生法改正により、調理機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業が許可の対象となり、令和元年12月27日付け生食発1227第2号厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知「食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政省令の制定について」においてその対象が示された。
 この通知で、高度な機能を有し、屋内に設置されたものは許可ではなく、届出の対象となること、「屋内」とは、「屋根、柱及び壁を有する建築物内」とし、平成3年6月1日から届出での対象となることから、「高度な機能」の条件を満たす自動販売機の機種のリストについて示したものである。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000651743.pdf

令和元年12月27日付け生食発1227第2号厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知
https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000582226.pdf

9 「営業許可申請 ・届出等に関する様式 、記載要領及び添付書類の取扱いについて」 の一部改正 について

 令和2年7月22日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県衛等衛生主管部 (局)長宛標記通知を出した。これは、 今般、食品衛生法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第140号。)が公布され、①食品衛生法第52条第1項の規定による営業の許可を受けた者から当該営業を譲り受けた者は、図面の内容及び食品衛生法施行規則第67条第1項第5号に掲げる事項に変更がない場合において、同条第1項の規定に基づき都道府県知事等に提出しなければならない書類について、図面や記載事項の省略が可能とされ、また、②相続による事業承継時の手続において、現行、同令第68条第2項の規定に基づき届出書に戸籍謄本の添付を求めているところ、これに代えて法定相続情報一覧図の写しの添付によることも可能とされたことに伴うものである。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000651693.pdf

10 令和元年度食料自給率・食料自給力指標について

 令和2年8月5日、農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室は標記食料自給率等を公表した。その主な内容は次の通り。

 食料自給率とは、国内の食料供給に対する食料の国内生産の割合を示す指標です。我が国の食料の国内生産及び消費の動向を把握するため、毎年公表しています。
 カロリーベースの食料自給率については、サンマ・サバ等の魚介類が不漁となり、米消費が減少した一方で、小麦の単収が増加したこと等により、対前年度から1ポイント上昇の38%となりました。
 なお、飼料自給率については、前年度並みの25%、カロリーベースの食料国産率(飼料自給率を反映しない)は対前年度から1ポイント上昇の47%となりました。生産額ベースの食料自給率については、豚肉等の国産単価が上昇した一方、野菜の国産単価が増収により下落し、サンマ・サバ等の魚介類が不漁となった等により、前年度並みの66%となりました。(生産額ベースの食料国産率(飼料自給率を反映しない)については、前年度並みの69%)
 食料自給率について主なものをみると次の通り(%)、  米97、豆類7、野菜79、果実38、牛肉35(9)、豚肉49(6)、鶏肉64(8)、鶏卵96(12)、牛乳・乳製品59(25)、魚介類52。
 注、畜産物の( )内数値は、飼料自給率を考慮した値である。

https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/200805.html

食料需給表
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/200805-1.pdf