リステアリア菌食中毒

 リステリア属菌は、下の写真のとおりグラム染色により青く染まるグラム陽性桿菌で、河川水、動物の腸管内など環境中に広く分布しています。リステリア属菌の内、ヒトに対して病原性を示すリステリア モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes) のことをリステリア菌と呼んでいます。

   (グラム染色道場より)

 欧米では、ナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモン、生野菜等を原因食品としたリステリア菌集団食中毒が発生しています。しかし、わが国では、乳製品や食肉加工品等から僅かにリステリア菌が検出される程度で、リステリア菌食中毒の発生はほとんどありません。この原因として、欧米では、ナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモンの消費量が多いこと、わが国であまり生食しない野菜を生食すること等食習慣の違いが考えられます。近年、わが国でも食習慣の欧米化に伴いリステリア菌食中毒の発生が危惧されています。

 2020年3月、米国カリフォルニア州やハワイ州で、リステリア菌に汚染された韓国産エノキダケを原因食品とするリステリア菌集団食中毒が発生し、4人が死亡、30名が入院しました。わが国では生で食べる習慣のないエノキダケをサラダとして生で食べたことが原因と考えられます。

 リステリア菌に汚染された食品を食べてから数週間後に、悪寒、高い発熱、筋肉痛等のインフルエンザ様症状が現れます。健常者ではほとんど発症することはなく、発症しても軽症で済みますが、免疫力の低下した人、高齢者および乳幼児では重症となり髄膜炎や敗血症を引き起こすこともあり注意が必要です。また、妊婦では流産・早産・死産を起こすことがあります。なお、健常者であれば、食品の汚染菌数が10,000cfu/g 以下であれば発症リスクは極めて低いとされています。

 リステリア菌は、4℃以下の低温や12%の食塩濃度でも増殖することから、冷蔵庫や塩漬けによる保存を過信することは危険です。食中毒発生防止対策として、「生の食肉類を食べないこと」、「肉類は十分に加熱して食べること」、「生で食べる野菜や果物は良く洗って食べること」、「生肉の調理に使用した器具類は十分洗浄消毒すること」、「冷蔵庫内に保存した食品は消費期限内に必ず食べること」等が挙げられます。