「食品衛生行政」国の動き 2021(令和3)年3月

 
(株)中部衛生検査センター顧問
森田邦雄
 

1 「食品安全総合情報システム」公表

 令和3年3月19日、食品安全委員会が公表した標記システムに、次の記事が掲載されている。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2021&from_month=02&from_day=19&to=struct&to_year=2021&to_month=03&to_day=05&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc


(1)欧州食品安全機関(EFSA)及び欧州疾病予防管理センター(ECDC)、欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)及び英国の複数国にわたる家きん製品に関連したSalmonella Enteritidis sequence type (ST) 11の集団感染に係る合同緊急集団感染評価書を公表した。

 概要は、以下のとおり。
 2018年5月から2020年12月までの間、193人のS. Enteritidis ST 11によるヒト症例がデンマーク(2)、フィンランド(4)、フランス(33)、ドイツ(6)、アイルランド(12)、オランダ(3)、ポーランド(5)、スウェーデン(6)及び英国(122)(括弧内は患者数)で報告された。患者の5人に1人は入院した。1人の死亡が報告された。患者の50%は、18歳以下の子供であった。直近の患者は、英国から2020年12月に報告された。英国の疫学的研究によって、パン粉をまぶした冷凍鶏肉製品の喫食に関連したS. Enteritidis感染リスクの増加が確認された。

 非加熱喫食用でない(non-ready-to-eat)鶏肉製品(パン粉をまぶした製品など)の5バッチが集団感染株と一致するS. Enteritidisに検査陽性であった。これらのうち3バッチは、ポーランドの加工会社Bによって製造されたが、そこではS. Enteritidisは検出されなかった。この5つの陽性バッチは、ポーランドの様々な食肉供給業者、と畜場及び/又は農場に由来していた。これらの農場のいくつかは、2020年にS. Enteritidisに陽性であった(全ゲノムシークエンス解析によるタイピングは実施されていない)。一次産業現場でのタイピング情報が十分でないため、陽性であったポーランドの農場と汚染製品との間の微生物学的関連性を確認することはできなかった。関連製品に対する管理措置が実施された(差し止めやリコールなど)。

 ヒト及び食品のS. Enteritidis分離株の全ゲノムシークエンス解析では、単連結法(訳注:クラスタリング法の1つで、クラスタ間の距離を、それぞれのクラスタに属する要素同士の中で最も近い要素間の距離と定義する手法)を用いたクラスタリングにより、これらの分離株が単一のクラスタ(0~3の対立遺伝子の差異)を形成することが確認された。疫学及びトレーサビリティのデータ並びに当該結果は、フードチェーンにおける共通の汚染源を示唆する。

 回収が行われるよりも前に購入された関連鶏肉製品が適切に加熱調理されない場合など、これらの喫食に関連した感染リスクが依然として残っている。汚染源が不明であること、また、(検査された鶏肉製品から)他の血清型のサルモネラ属菌や(集団感染株とは異なる) S. Enteritidis株が確認されたことは、これらの鶏肉製品がEU/EEA及び英国においてサルモネラ属菌感染の再発リスクとなることを示唆する。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05560240149


(2)欧州疾病予防管理センター(ECDC)、Q熱に関する2019年疫学報告書を公表した。

 概要は、以下のとおり。
1. 2019年に欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)では、1,069例のQ熱症例が報告され、うち958例(90%)が確定症例であった。
2. 2019年のEU/EEAの届出率は、人口10万人対0.2症例であった。
3. 過去数年と同様、2019年においても春及び夏季に症例数が増加する季節性のパターンが観察された。
4. Q熱症例の届出率は、64歳まで年齢とともに増加し、14歳より上の年齢グループでは女性よりも男性の方が高かった

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05560230470


2 食品衛生監視票について

 令和3年3月26日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。

 その主な内容は、次の通り。
 食品衛生法等の一部を改正する法律の施行及び同法の経過措置期間の終了に伴い、本年6月1日から、食品衛生法第51 条第2項(条項番号は令和3年6月1日時点)に基づき、全ての食品等事業者がHACCP に沿った衛生管理を実施することとなりました。

 今般、食品衛生法施行規則の関係規程等を反映した食品衛生監視票、その使用方法及び評価の考え方をそれぞれ別添1、別添2及び別添3のとおり定めますので、本年6月1日以降、食品等事業者に対する法第28 条に基づく監視指導等の関係規程の適合性への評価の際に使用するようお願いします。

 また、監視指導の全国的な平準化の観点から特段の事情がない限り、本監視票に定める事項を変更せずに使用するようお願いします。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000760440.pdf

3 加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック

 ~知っていますか?「食物アレルギーの表示」~

 令和3年3月29日、消費庁は、標記ハンドブックを作成したことを公表した。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_210329_01.pdf

4 令和3年度輸入食品監視指導計画を策定

 令和3年3月26日、厚生労働省は、標記計画を公表した。これは、食品衛生法第23条に基づき、日本に輸入される食品、添加物、器具、容器包装及びおもちゃの安全性を確保するため、輸出国における生産の段階から輸入後の国内流通までの各段階において厚生労働本省及び検疫所が実施する措置等について、毎年度定めるもので、その主な内容は、次の通り。

(1) 輸出国段階での措置
○ 輸出国政府との二国間協議、技術協力、計画的な現地調査等の実施
○ 改正食品衛生法の施行に関する二国間協議等の実施
(2) 輸入時段階での措置
○ 輸入者への輸入前指導を含む安全性確保に関する指導の実施
○ 輸入届出の審査による食品衛生法への適合性の確認
○ 輸入届出内容と実際の貨物が同一であることの確認等
○ 多種多様な食品等の安全性を幅広く監視するためのモニタリング検査の実施
(検査件数約100,000件(昨年度検査件数約99,700件))
○ 食品衛生法違反の可能性が高いと見込まれる食品等の輸入者に対する検査の命令
○ 食品衛生法違反判明時の輸入者への改善結果報告の指導
○ 海外からの問題発生情報等に基づく緊急対応の実施
(3) 国内流通段階での措置
○ 食品衛生法違反判明時の回収等の指示
(4) その他
○ リスクコミュニケーションの実施

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17554.html

5 「生食用食肉の腸内細菌科菌群の試験法について」の一部改正について

 令和3年3月30日、厚生労働省は、大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。

 その内容は、次の通り。
 生食用食肉の腸内細菌科菌群の試験法については、平成23 年9月26 日付け食安発0926 第2号「生食用食肉の腸内細菌科菌群の試験法について」により通知しているところである。

 今般、別紙のとおり、選択増菌培養を削除する等改正することとしたので、関係者への周知をお願いするとともに、その運用に遺漏なきようお取り計われたい。

 なお、令和3年9月30 日までは、従前の例により検査を行うことができる旨申し添える。

https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000763139.pdf

6 「リステリア・モノサイトゲネスの検査について」の一部改正について

 令和3年3月30日、厚生労働省は、大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各検疫所長宛標記通知を出した。

 その内容は、次の通り。
 リステリア・モノサイトゲネスの検査については、平成26 年11 月28 日付け食安発1128 第3号「リステリア・モノサイトゲネスの検査について」により通知しているところである。

 今般、別紙のとおり、培養時間を変更する等改正することとしたので、関係者への周知をお願いするとともに、その運用に遺漏なきようお取り計われたい。

なお、令和3年9月30 日までは、従前の例により検査を行うことができる旨申し添える。

https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000763140.pdf

7 「食品安全総合情報システム」公表

 令和3年4月2日、食品安全委員会が公表した標記システムに次の記事が掲載されている。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?keyword=%EF%BC%AC%EF%BC%A4%EF%BC%95%EF%BC%90&query=&logic=and&calendar=japanese&year=&from=struct&from_year=2021&from_month=03&from_day=06&to=struct&to_year=2021&to_month=03&to_day=19&areaId=00&countryId=000&informationSourceId=0000&max=100&sort_order=date.desc

 フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は、3月9日、ビスフェノールB(BPB)は、ヒト及び環境生物に対して内分泌かく乱物質であるという評価結果を公表した。

 ANSESは、内分泌かく乱物質についての国家戦略の一環でBPBを評価した。ANSESは、入手可能なデータに基づいて、BPBは、世界保健機構(WHO)の定義及び欧州委員会の2013年の勧告に従って、内分泌かく乱物質として定義するための全てのハザード基準を以下のように満たしていると証明した。

・内分泌活性:BPBは、女性ホルモンであるエストロゲンの産生を増加させ、エストロゲン受容体を活性化させることによってエストロゲン様作用を示す。
・男性生殖機能への有害影響:精子の日常的な産生量の減少、男性生殖器の相対的な重量の減少
・内分泌活性と上記の有害影響との生物学的な関連性があり得る。

 これらの作用は、げっ歯類及び魚類でも一致して認められ、欧州で既に内分泌かく乱物質として認められているビスフェノールA(BPA)と同程度の用量では、同程度かわずかにそれを上回る。そのため、BPBはヒトの健康に深刻な影響を与える可能性があり、環境生物の健全性をかく乱させる可能性がある。

 また、BPBにばく露した場合、BPBの作用は、ヒト及び環境生物がばく露される可能性のあるBPAやビスフェノールS(BPS)のような同様の性質を持つ他のビスフェノール類の作用と相加的になる可能性がある。より多くの研究がなされているBPAとの類似性は、ビスフェノールBは雌の生殖や代謝といった他の影響を引き起こし、多くの環境生物に影響を与える可能性が高いことを示している。

 BPBは、一部の国、特に食品と接触するコーティングやポリマーに使用される、間接的な食品添加物として登録されている米国で、BPA及びBPSの一部の用途のための代替化合物として使用されている。REACH規則では、欧州における化学物質としての製造又は使用のために登録されていないが、欧州のヒト集団の生物学的検体及び中国の環境中で検出されている。

 BPBの内分泌かく乱物質の性質は、REACH規則において十分に懸念すべきレベルであり、ANSESは、高懸念物質(SVHC)として認定することを提案する。

 この認定によって、BPAの代替物としての使用又は製造の拡大を抑制することを目的とする。また、0.1%を超える濃度のBPBを含む製品の輸入業者による申告が義務となる。

 ANSESが提案した認定の資料について、欧州化学品庁(ECHA)のウェブサイトに4月23日まで意見募集される。このアプローチは、BPA及びBPBに類似した化学構造及び作用を持つ他のビスフェノール類についても適用することができる

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05570290475