「食品衛生行政」国の動き 2021(令和3)年8月

 
(株)中部衛生検査センター顧問
森田邦雄
 

1 令和3年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施について

 令和3年8月中旬、厚生労働省は標記通知をホームページに掲載した。これは、6月10日、大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛通知されたものである。夏期一斉取締りについては、毎年7月に全国の各自治体において統一して行われてきたもので、監視指導に係わるものについては事前に公表しないという厚生労働省の判断から、これらに関する通知は公表されてこなかった。

 その主な内容は、次の通り。

 食品衛生法第22 条の規定に基づく「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」に基づき、夏期に多発する食中毒の発生防止を図るとともに、積極的に食品衛生の向上を図る見地から、全国一斉に標記取締りの実施をお願いしているところです。

 本年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止とそれに伴う保健所における業務負 担の大幅増加に鑑み、別添を参考に都道府県等食品衛生監視指導計画等に基づき実施可能 な範囲で行っていただくようよろしくお願いします。また、本年度の夏期一斉取締りの実 施結果については、御報告いただく必要はありません。

 実施期間は、原則として、令和3年7月1日(木)から9月30日(木)までの期間、都道府県等において、期間を定めて夏期一斉取締りを実施することができる。

 実施に当たっての留意事項として、今年度の夏期一斉取締りにおいては、新型コロナウイルス感染症拡大防止とそれに伴う保健所における業務負担の大幅増加に鑑み、次の事項に留意のうえ、令和元年度食品、添加物等の夏期一斉取締り実施要領も参考とし、特に夏期に多発する腸管出血性大腸菌やカンピロバクター等による食中毒の原因施設となる頻度が高い施設を中心に実施すること。

https://www.mhlw.go.jp/content/000805685.pdf

2 プラントベース食品関連情報

 令和3年8月20日、消費者庁は、標記情報を公表した。この中で、プラントベース食品って何?とするリーフレットで、プラントベース食品とは、近年、多様な消費者の嗜好を反映し、動物性原材料ではなく、植物由来の原材料を使用した食品が増えています。

 プラントベース食品は、このような植物由来の原材料を使用し、畜産物や水産物に似せて作られていることが特徴です。

 これまでに、大豆や小麦などから、「肉」、「卵」、「ミルク」、「バター」「チーズ」などの代替となる加工食品が製造・販売されています。また、一部の飲食店においてメニューとして提供などもされています。

 プラントベース食品等の表示に関するQ&Aでは、景品表示法関係及び食品表示法関係に分け、次のようなQなどが載せられている。

 プラントベース(植物由来)食品(※)である「肉」(以下「代替肉」といいます。)の商品名に例えば「大豆肉」、「ノットミート」と表示することは景品表示法上問題となりますか。

 プラントベース(植物由来)食品について、一括表示の原材料名はどのように記載すべきでしょうか。例えば、代替肉や液卵と記載可能ですか。

https://www.caa.go.jp/notice/other/plant_based/

3 令和2年度食料自給率・食料自給力指標について

 令和3年8月25日、農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室は、標記食料自給率等を公表した。

 その主な内容は、次の通り。

 食料自給率とは、国内の食料供給に対する食料の国内生産の割合を示す指標です。我国の食料の国内生産及び消費の動向を把握するため、毎年公表しています。

 カロリーベースの食料自給率については、原料の多くを輸入している砂糖、でん粉、油脂類等の消費が減少したものの、米の需要が長期的に減少していること、小麦が特に作柄が良かった前年に比べて単収が減少したことにより、前年度より1ポイント低い37%となりました。

 また、畜産物の生産が増加したことにより、品目別自給率(重量ベース(飼料自給率を反映しない))は、牛肉が35%から36%に、豚肉が49%から50%に、鶏肉が64%から66%に、牛乳・乳製品が59%から61%にそれぞれ上昇し、カロリーベース食料国産率(飼料自給率を反映しない)は前年度と同じ46%となりました。なお、飼料自給率は、前年度と同じ25%となりました。

 生産額ベースの食料自給率については、豚肉、鶏肉、野菜、果実等の国内生産額が増加したこと、魚介類、牛肉、鶏肉、豚肉等の輸入額が減少したこと等により、前年度より1ポイント高い67%となりました(生産額ベース食料国産率(飼料自給率を反映しない)についても、前年度より1ポイント高い71%)。

 食料自給率について主なものをみると次の通り(%)。

 米97、豆類8、野菜80、果実38、牛肉36(9)、豚肉50(6)、鶏肉66(8)、鶏卵97 (12)、牛乳・乳製品61(26)、魚介類55。

 注、畜産物の( )内数値は、飼料自給率を考慮した値である。

https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/210825.html

 食料需給表

https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/210825-4.pdf



4 「営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A」について

 令和3年8月26日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課名をもって各都道府県等衛生主管部(局)宛標記事務連絡を出した。

 その内容は、次の通り。

 標記については、令和2年12月28日付け事務連絡(令和3年5月31日改正、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課)にてお知らせしているところです。

 今般、別添のとおり「営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A(別添1及び別添2)」を改正するとともに、厚生労働省ホームページに掲載しましたので、業務の参考のためお知らせします。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000824207.pdf

5 令和2年度における「輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果」及び「輸入食品監視統計」の公表

 令和3年8月27日、厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室は表記結果等を公表した。

 その主なものは、次の通り。[ ]カッコ内は令和元年度の数値

 令和2年度の輸入届出件数は、約235万件[約254万件]であり、輸入届出重量は、約3,106万トン[約3,327万トン]でした。届出に対して200,876件[217,216件]の検査を実施し、このうち691件(延べ729件)[763件(延べ800件)]を法違反として、積み戻し又は廃棄等の措置を講じた。

 モニタリング検査については、99,730件[99,059件]の計画に対し、延べ102,070件(実施率:約102%)[99,636件(実施率:約101%)]を実施し、延べ146件[144件]を法違反として、回収等の措置を講じた。

 検査命令については、次の通り。

① 全輸出国の17 品目及び29か国・1地域の80 品目(令和3年3 月31 日時点)
② 実施件数:68,941 件(延べ82,161 件)[69,185 件(延べ92,635 件)]、うち違反件数:198 件(延べ201 件)[201 件(延べ201 件)]

 違反状況については、次の通り。

① 違反件数:691 件[763 件](違反率:届出件数の0.03%[0.03%]、検査件数:約20 万件[約22 万件])

 違反の内訳は、微生物規格158 件[180 件]、有害・有毒物質及び病原微生物155 件[179 件]、添加物111 件[140 件]、残留農薬137 件[127 件]、腐敗、変敗(異臭やカビの発生等)52 件[52 件]、残留動物用医薬品15 件[16 件]、器具及び容器包装規格22 件[35 件]、他43 件[34 件])

https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000824495.pdf

 令和2年度輸入食品監視統計

https://www.mhlw.go.jp/content/000824534.pdf