「食品衛生行政」国の動き 2021(令和3)年10月

 
(株)中部衛生検査センター顧問
森田邦雄
 

1 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の運用の終了について

 令和3年10月26日、消費者庁表示対策課長、農林水産省消費・安全局消費者行政・食育課長及び厚生労働省健康局がん・疾病対策課長連名で各都道府県等食品表示主管部(局)長宛標記通知を出した。

 これは、令和2年4月10日、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が国内外の食料品のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしつつあることを受け、一般消費者の需要に即した食品の生産体制を確保する観点から、健康被害を防止することが重要なアレルギー表示や消費期限等を除き、食品表示法第4条第1項の規定に基づき定められた食品表示基準の規定を弾力的に運用する旨を通知したものについて、令和3年12月31日をもってこの通知を廃止することとしたものである。

  https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/assets/representasion_cms214_211026_01.pdf

2 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた製造所等及び製造所固有記号の表示の運用に係る通知の取扱いについて

 令和3年10月26日、消費者庁は、食品表示企画課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。

 これは、令和2年4月10日、「新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用について」に関連して、食品表示基準第3条に基づき容器包装に表示される「製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称」(以下「製造所等」という。)については、食品による健康危害が発生した際に、速やかに調査を実施する上で重要な情報であるものの、食品表示基準運用通知の運用期間中においては、製造所等及び製造所固有記号の取扱いの特例として、他の製造所等に食品の製造又は加工を委託する場合など、基準第3条に基づき容器包装に表示された製造所等と実際の製造所等が異なる場合であっても、製造所等の表示の取扱いの特例として、当面の間、別添届出様式を用いて届け出ることにより、実際の製造所等と容器包装に表示された製造所等が異なることとなっても差し支えないこととする等としていたものについて、同通知については、令和3年10月26日をもって廃止することとしたものである。

 ただし、令和3年10月26日までに届出されたものであって、令和3年12月31日までに製造されるものについては引き続き同通知による緩和措置の適用対象とするとしている。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/assets/food_labeling_cms204_211026_01_1.pdf

3 農業及び水産業における食品の採取業の範囲について(「食品の採取業に関するQ&A」の追加)

 令和3年10月29日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。

 これは、農家(生産者)及び生産者団体が行う農産物の簡易な加工を採取業として取り扱うこととし、今般、当該採取業通知に関する問い合わせへの対応等をとりまとめ、別添のとおり「食品の採取業に関するQ&A」を作成するとともに、厚生労働省ホームページに掲載したものである。

 食品衛生法第4条第7項において、この法律で営業とは、「業として、食品若しくは添加物を採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、若しくは販売すること又は器具若しくは容器包装を製造し、輸入し、若しくは販売することをいう。ただし、農業及び水産業における食品の採取業は、これを含まない。」と規定しており、「第57条 営業(第54条に規定する営業、公衆衛生に与える影響が少ない営業で、政令で定めるもの及び食鳥処理の事業を除く。)を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、その営業所の名称及び所在地その他厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。」の規定について、届け出の対象とならないことを示したものである

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000849632.pdf

4 令和3年11月は、薬剤耐性対策推進月間

 令和3年11月2日、食品安全委員会は、薬剤耐性対策推進月間にちなみ薬剤耐性菌の食品健康影響評価に関する情報を公表した。

 その主な内容は、次の通り。

 1) 薬剤耐性菌とは
 病原細菌に感染した患者の治療に抗菌剤が使われます。抗菌剤は、菌の分裂を止めてしまう、菌のタンパク質合成や遺伝子の複製を阻害するなど、様々な作用で菌に働きます。これに対して、細菌も抗菌剤を分解する酵素を出したり、抗菌剤の作用部位を変化させて結合できなくするなどして抵抗(耐性化)します。このような耐性化により、抗菌剤の効きが悪いまたは効かなくなった細菌を、薬剤耐性菌といいます。

 2) 薬剤耐性菌と食品
 抗菌剤は、人だけでなく、動物の治療や、飼料中の栄養成分の有効利用のためにも使われています。
 食品安全委員会では、家畜や水産動物への抗菌剤の使用によって選択される薬剤耐性菌について、畜水産物等の食品を介して、人に対する健康への悪影響が発生する可能性とその程度を、科学的に評価しています。
 なお、薬剤耐性菌も細菌の一種です。食肉については、十分に加熱して食べることが食中毒対策としても大切です。

 3) 2020年12月から2021年11月までの取組
 農林水産省から評価要請された亜鉛バシトラシン(飼料添加物)及びスルフォンアミド系合成抗菌剤(飼料添加物及び動物用医薬品)について、薬剤耐性菌ワーキンググループにおいて審議を行い、評価結果を農林水産省に通知しました。

https://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/amr_wg/amr_info.html