「食品衛生行政」国の動き 2022(令和4)年1月

 
(株)中部衛生検査センター顧問
森田邦雄
 

1 「食品安全総合情報システム」公表

 令和4年1月14日、食品安全委員会が公表した標記システムに次の記事が掲載されている。

  https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?year=&from=struct&from_year=2021&from_month=12&from_day=11&to=struct&to_year=2021&to_month=12&to_day=27&max=100

 フランス公衆衛生局は、12月21日、フランスにおける2020年の集団食中毒の年次監視データを公表した。

 概要は、以下のとおり。
・集団食中毒の届出件数は、2019年比で43 %の大幅な減少となった。これは、明らかに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック及び実施された人的接触距離確保の措置(外出制限、外食産業の店舗や集団給食施設の閉鎖、在宅勤務等)によるものと考えられる。
・2020年の集団食中毒の届出件数は1,010件で、患者数は6,814名であった。この内、396名(6 %)が病院に行き(入院又は救急部門)、9名(0.13 %)が死亡した。
・企業の社員食堂での集団食中毒の届出件数は、大幅に減少した(61 %減少)。以下の分野でも減少が見られた:外食産業(49 %減少)、学校給食(46 %減少)、家庭での食事(35 %減少)、社会医療施設の給食(26 %減少)。

 これまでの年のように、最も頻繁に確認された病原体は、サルモネラ属菌であり、特定の病原体が確認された食中毒の内の43 %に相当した(2019年は36 %)。

 他の最もよく疑われた病原体は、毒素を産生する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)及びセレウス菌(Bacillus cereus)であり、特定の病原体が疑われた集団食中毒の内の74 %に相当した。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05740640384

2 「食品安全総合情報システム」公表

 令和4年1月26日、食品安全委員会が公表した標記システムに次の記事が掲載されている。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?year=&from=struct&from_year=2021&from_month=12&from_day=28&to=struct&to_year=2022&to_month=1&to_day=14&max=100

(1)英国食品基準庁(FSA)は、1月10日、代替たん白質に関する消費者意識調査結果を公表した。

 概要は以下のとおり。
 当該調査(2021年12月)は、新たに出現している代替たん白質に関するものである。調査からは、英国の消費者の3分の1が培養肉を、4分の1が食用昆虫を試す可能性があることが示された。また、植物ベースの製品(多くは既に市場に出回っている)を試してみたいと考える消費者は10人に6人と、より多かった。

 当該調査研究からは、消費者に培養肉又は食用昆虫を試すこと促す要因の最上位が食品安全であることが示され、消費者にとって食品安全がいかに重要かが強調される。既に、食品安全に関連する保証は、消費者が植物ベースのたん白質を摂取したいと思う主な要因となっている。

 本報告書から得られた主要な結果は、以下である。

・消費者における代替たん白質に対する認知度は高く、各代替たん白質について聞いたことがある人の割合は、植物ベースのたん白質90%;、食用昆虫80%;、培養肉78%であった。
・安全に摂取できると認識している割合は、植物ベースのたん白質77%;、食用昆虫50%;、及び培養肉30%であった。
・10人に6人が植物ベースのたん白質を試してみたいと考えており、その理由として最も多かったのは、安全に摂取できるから(44%)で、次いで、健康上の理由(39%)、環境又は持続可能性を考えて(36%)であった。植物ベースのたん白質を試すことを妨げる最大の要因は、従来の肉への嗜好(36%)であった。
・培養肉を試したいと思う人の割合は34%、食用昆虫は26%であった。いずれの場合も、最も多い理由は環境及び持続可能性であった(培養肉;40%、食用昆虫;31%)。
・また、調査において選択肢として挙げられた代替たん白質を試したくないと回答した消費者に対して、どのような要因があれば代替たん白質を試す可能性があるかと質問したところ、以下のような結果であった。
培養肉では、試したいと思う要因はない;42%、安全に摂取できることが分かれば;27%、適切に規制されていれば;23%。
食用昆虫では、試したいとは思う要因はない;67%、安全に摂取できることが分かれば;13%、食欲を誘う外観であれば;11%。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05750480160

(2)米国疾病管理予防センター(CDC)は、1月6日、ベビーほうれん草に関連した複数州にわたる腸管出血性大腸菌O157:H7集団感染に関する情報を最終更新した(初報2021年11月15日)。

 概要は以下のとおり。
1.当該集団感染は終息した。汚染した食品の喫食により病気にならないよう、食品のリコールや集団感染の最新情報を常に把握しておくこと。

2.CDC、複数州の公衆衛生及び規制当局並びに米国食品医薬品庁(FDA)は、複数州にわたる腸管出血性大腸菌O157:H7集団感染について調査を行った。疫学及び検査のデータにより、「賞味期限」の日付が2021年10月23日であるJosie’s Organics社の、包装済みのベビーほうれん草が病因となったことが示された。2022年1月6日時点で、当該集団感染は終息している。

3.腸管出血性大腸菌O157:H7の集団感染株に感染した計15人が10州(インディアナ州、ミネソタ州、サウスダコタ州他)から報告された。発症日は、2021年10月13日から11月8日までであった。患者の年齢は、1歳から76歳で、年齢中央値は、26歳、80 %が女性であった。情報の得られた15人のうち4人が入院し、3人が腎不全の一種である溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した。死亡者の報告はなかった。

4.州及び地方の公衆衛生当局は、患者が発症前の1週間に喫食した食品について聞き取り調査を行った。聞き取り調査を受けた13人のうち11人(85 %)が、ほうれん草を喫食したと報告した。

5.全ゲノムシークエンス解析(WGS)により、患者の検体に由来する細菌が遺伝的に近縁であることが示された。これは、当該集団感染の患者が同じ食品により発症したことを示唆している。

6.ミネソタ州の当局者は、1人の患者宅から回収した残菜であるJosie’s Organics社のベビーほうれん草の容器中に腸管出血性大腸菌O157:H7の集団感染株を確認した。

7.FDAは、検査陽性であった製品検体の遡及調査を実施し、地理的に異なる2地域にある少数の農場にたどり着いた。しかしながら、調査者らは潜在的な汚染点を特定できなかった。

8. WGSでは、患者15人の検体由来の分離株において、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、スルフィソキサゾール、テトラサイクリン及びトリメトプリム-スルファメトキサゾールに対する耐性が予測された。現在、CDCの全米薬剤耐性監視システム(NARMS)検査機関による臨床分離株の標準薬剤耐性試験が実施中である。腸管出血性大腸菌O157:H7感染患者には抗菌性物質の投与は推奨されないため、これらの知見は治療ガイダンスに影響しない。

9.2021年11月15日、CDCは、「賞味期限」の日付が2021年10月23日であるJosie’s Organics社の、包装済みのベビーほうれん草を喫食、販売、あるいは提供しないよう勧告した

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05750350104