「食品衛生行政」国の動き 2022(令和4)年4月

 
(株)中部衛生検査センター顧問
森田邦雄
 

1 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン

 令和4年3月30日、消費者庁は、食品表示法に基づく食品表示基準Q&Aの別添として標記ガイドラインを公表した。これは、食品表示基準上、食品添加物が不使用である旨の表示(以下「食品添加物の不使用表示」という。)に関する特段の規定はなく、現状では、食品関連事業者等が容器包装に、任意で「無添加」、「不使用」等の表示を行っているため、食品添加物の不使用表示を類型化し、さらに、各類型のうち、現時点で食品表示基準第9条第1項第1号、第2号及び第13号に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示についてガイドラインを取りまとめたもので、その概要は、次の通り。

 本ガイドラインは、食品添加物の不使用表示に関して、消費者に誤認等を与えないよう留意が必要な具体的事項をまとめたものであり、食品添加物の不使用表示を一律に禁止するものではない。食品関連事業者等が、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否か自己点検を行う際に用いることができるものである。

 容器包装における表示を作成するに当たり注意すべき食品添加物の不使用表示を以下のとおり10の類型に分け例示が示されている。

類型1:単なる「無添加」の表示
例:単に「無添加」とだけ記載した表示のうち、無添加となる対象が消費者にとって不明確な表示

類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
例:「人工甘味料不使用」等、無添加あるいは不使用と共に、人工、合成、化学、天然等の用語を使用した表示

類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例1:清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」と表示
(清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反である。)
例2:食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の食品添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該食品添加物を無添加あるいは不使用と表示

類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示

類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示

類型6:健康、安全と関連付ける表示

類型7:健康、安全以外と関連付ける表示

類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示

類型9:加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示

類型10:過度に強調された表示

 包装資材の切替えに一定程度の期間が必要であること等を考慮し、2年程度(令和6年3月末)の間に、適宜、表示の見直しを行うことが求められる。

 なお、この期間に製造・販売等された加工食品が見直し前の表示で流通することはやむを得ないと考えるが、2年に満たない間においても、可能な限り速やかに見直しを行うことが望ましい。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf

2 有毒植物による食中毒防止の徹底ついて

 令和4年4月6日、厚生労働省は医薬・活衛局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長宛標記通知を出した。

 その概要は、次の通り。
 例年、特に春先から初夏にかけて、有毒植物の誤食による食中毒が多く発生しています。令和3年もスイセン、イヌサフラン、バイケイソウ等の有毒植物の誤食による食中毒事例(事件数15件、患者数20名)が報告されています。

 つきましては、各都道府県等におかれては、厚生労働省で作成したリーフレットや自然毒のリスクプロファイル等を活用するなどにより、食用と確実に判断できない植物については、絶対に「採らない」、「食べない」、「売らない」、「人にあげない」よう注意喚起を行うようお願いします。

https://www.mhlw.go.jp/content/000925869.pdf

 

3 食品衛生法等に基づく処分の理由の提示について

 令和4年4月20日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品監視安全課長名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長 宛標記通知を出した。

 その主な内容は、次の通り。
 標記については、「食品衛生法等に基づく処分の理由の提示について」(平成30年3月29日付け薬生食監発0329第1号。以下「平成30年通知」という。)にて、営業者に対して、営業の禁停止処分等の不利益処分を行う場合には、当該処分を通知する書面に、具体的事実関係と適用する法条の適用関係が明らかになるよう記載することが必要であるとお示ししたところです。

 今般、行政手続法(以下「行手法」という。)第12条の規定に基づく処分基準(以下「処分基準」という。)を設定・公開する自治体において、食品衛生法第55条第1項の規定に基づく営業停止処分(条番号は当該処分時点のもの)をする際、当該処分の理由を通知する書面に、処分基準の適用関係を示さなかったことから、当該処分に対する行政不服審査法第2条の規定に基づく審査請求の裁決にて、行手法第14条第1項本文の要求する理由の提示として不十分であると指摘された例が見られました。

 行手法第14条第1項本文に基づいて、どの程度の理由を提示すべきかは、平成30年通知記1に示す同項本文の趣旨に照らし、①当該処分の根拠法令の規定内容、②当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、③当該処分の性質及び内容、④当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきであること。

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220421I0010.pdf

4 3-アセチル-2,5-ジメチルフランの取扱いについて

 令和4年4月22日、厚生労働省は医薬・生活衛生局食品基準審査課長及び食品監視安全課長連名をもって各都道府県等衛生主管部(局)長 宛標記通知を出した。

 その主な内容は、次の通り。
 3-アセチル-2,5-ジメチルフランについては、令和元年10月21日付け薬生食基発1021 第1号・薬生食監発1021第1号「類又は誘導体として指定されている18項目の香料に関するリストについて」において、ケトン類に該当する物質として掲載されている。

 この度、国立医薬品食品衛生研究所等において実施された3-アセチル-2,5-ジメチルフランに関する一般毒性・遺伝毒性・発がん性包括毒性試験の結果等について、同研究所等に所属する安全性生物試験研究の専門家に意見を求めたところ、3-アセチル-2,5-ジメチルフランについては、食品の着香の目的で使用する場合、人における発がんの懸念は高くはないと考えられるものの、遺伝毒性発がん物質である懸念が否定できないとされた。

 このため、令和5年1月1日以降、添加物としての3-アセチル-2,5-ジメチルフラン並びにこれを含む製剤及び食品は、販売又は販売の用に供するための製造、輸入、加工、使用、貯蔵若しくは陳列を自粛するよう指導されたいこと。ただし、令和4年12月31日までに製造、輸入等された食品の販売にあっては、この限りではない。

https://www.mhlw.go.jp/content/000932544.pdf